さて、アジングロッドと一括りに言っても、種類があり、現代アジングの主力となっているジグ単用ロッドにも調子の違いがあります。その違いについて今回は解説します。アジングを趣味に続けていく場合、今後のロッド選びの中核を為す知識ですので、ぜひとも基礎として知っておきましょう。初心者の方は、必要が迫られるまで読み飛ばしていただいて結構です。
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【第2章】アジングロッドの「調子」について知る
アジングロッドに限らず、釣り竿には「調子」=「アクション」と呼ばれるロッドの性格(曲がり方や反発スピード)を表す言葉があります。先調子、胴調子などという言葉を聞かれたことがある人も多いかもしれません。
この調子は、ロッドに使われている素材であったり、作り方で変わってきます。
ご存知のように、ロッドは円筒状に長細い形状をしております。先が細く、根元が太くが基本です。この円筒状の勾配の具合などで、ロッドの調子が変わってくるのです。
この勾配の変化を釣り用語でテーパーと呼んでいます。ロッドメーカーや設計者はこのテーパーを変化させたり、素材配置を考えることでロッドの性格づけをしていると考えていください。
ここでは、ロッド全般の調子については深く解説しませんが、ご興味のある方は、「ロッドの調子、アクションについて」で調べて見てください。
ノセ調子とカケ調子
アジングロッドを選ぶときに、よく使われるのが「ノセ調子」と「カケ調子」という言葉です。
「ノセ調子」は胴調子、スローからミディアムスロー、レギュラーテーパーと同義で語られることが多いです。全て、先に解説してきた、釣り竿の調子(アクション)を表す言葉だと思ってください。
「カケ調子」は先調子、ミディアムファストからファスト、フアストテーパーと同義で語られることが多い調子(アクション)です。
アジングロッドを購入する際、この「ノセ調子」か「カケ調子」で語られることが多く、それがいったいどういったアクションなのかを把握することで、それぞれの機能を知ることができます。
では、それぞれの調子、アクションについて詳しく解説していきます。
【Part.1】ノセ調子 | アクティブなアジング、ビギナーにオススメなロッドのアクション
同素材でロッドを作った場合、基本的にノセ調子はカケ調子のロッドに比べて柔らかく、ロッド全体で曲がるような調子になります。レギュラーテーパーとよばれたり、スローテーパーと呼称されたりすることもあります。
アジングロッドの場合、ロッド感度やロッド自体の軽量化が求められることもあり、そういったテーパーであっても比較的シャキっとした調子になることも多いのですが、「これはノセ調子だね」と評されるモデルは、後ほど解説するカケ調子のロッドに比べて、ゆったりした調子になります。
雑誌や、webの解説を見ると判を押したように「ノセ調子は初心者向き」と解説されることが多いのですが、これはなぜなのでしょうか。では、逆に中級者からベテランには向いていないということなのでしょうか? 先に答えを言ってしまうとそういうことではありません。なぜ「初心者向き」なのか。という部分を理解すれば、その理由が見えてきます。
ノセ調子の投げやすさ
ノセ調子=胴調子のロッドのメリットのひとつは、多少、語弊がありますが、ルアーキャストが万人向けという特徴があります。糸の先に結ばれたルアーを投げるとき、釣り竿を振りかぶって投げますよね。
ノセ調子のロッドの場合、ルアーの重さに関係なく振りかぶった際に、ロッドがある程度曲がってくれますので、振りかぶりさえすれば、その曲がりの反動でルアーが飛んでくれます。
キャストの方法を学べば、より飛ばすことができるようになるのですが、カケ調子よりも、わかりやすく言うと「投げ方」に寛大です。デメリットとしては、アジングをやり込むと必要になってくる1g以下の重さのルアーはカケ調子に比べて扱いにくくなりますが、ソリッドティップが採用されているモデルであれば、それも微々たるデメリットになります。
そして、そこを理解していれば効率よくロッドの力を利用してキャストするという方法もできるようになります。
アタリに対してフッキングがオートマチックなので釣りやすい
釣りという遊びは、魚のアタリ(魚信)に対して、フックを口の中に刺すためのアワセという動作が必要になります。魚が暴れたり、反転することで勝手にフックがしっかり刺さった、「向こうアワセ」なんてラッキーもありますが、基本的にはアングラーが、ロッドを立てたり、ラインを巻いてテンションを与えることで魚に鉤掛かりさせる必要があります。これをフッキングと言います。
ノセ調子のアジングロッドは、少ない力の入力でロッドが曲がり、ゆっくりと復元しようとします。
アジングという釣りはロッドを立てたり、煽ったりという動作を比較的頻繁に行う釣り方もあり、そういった操作時に、ノセ調子のロッドは曲がって、戻ろうとしているわけです。その振幅がゆったりしていることもあり、曲がりの復元の最中などに、アジのアタリがあると、そのまま、その復元力がフッキングパワーとして働いて、勝手にフッキングが終わっていた。なんて現象が増えるのです。
概念的な話で、ソリッドティップが採用されているロッドは、ティップの機能だけでフッキングが完了している場合も多々ありますが、「ロッドが曲がる」ことの負荷をロッド全体でスローに反発してフッキングパワーとして伝えます。
アングラーがアタリを仮に見逃していても、ルアーを操作したり、流すための操作をしていれば、ある程度のテンションが常に掛かっていますので、気がつけば魚がフッキング。フッキングさえしてしまえば明確にロッドにその動きがダイレクトにロッドに伝わってきますので、慌てずさらにアワセあげればフックアップ(鉤掛かりが完了すること)します。
アジのアタリに対して反応してアワセ動作を加えるというロッドアクションをせずとも魚を釣りやすいことから、ルアーの動かし方、流し方、沈め方に集中でき、釣果も上げやすくなります。
全体的にゆったりした「ノセ調子」のアクションのロッドは、アワセた時のパワーをアジングロッド特有の柔らかいティップだけでなくロッド全体で和らげてくれることもあり、アワセ切れ(ロッドをあおりすぎて、糸切れしれしまう)を防ぎ、なおかつ魚の引きに柔軟に追従することから、リールの設定が多少いい加減でも、魚をキャッチ(釣り上げること)できます。
このように釣果が上がればモチベーションを保つことができますし、アジングのテクニック面のキモとなるルアーの動かし方、流し方、沈め方に対する経験値を先に習得、増やすことができるので、「ノセ調子」のロッドをまず最初にオススメするのです。
【Part.2】カケ調子|より高難度な釣りに対応できる、現代アジングの完成形的アクション
さて、「ノセ調子」のロッドの解説を見れば、むしろ、アジングロッドの主流になりつつあるカケ調子のロッドなんて、むしろいらないんじゃないか?と思ってしまう人もいるかもしれませんが、突き詰めていくと、最終的にアジングを楽しむ人が持つロッドの調子は「カケ調子」のロッドが多くなります。
カケ調子は前述しましたように、ロッド全体で曲がるタイプではなく、ロッドの先部分と中間上寄りの部分だけが顕著に曲がるファストテーパー(釣り竿の勾配の設計が急。対義語にスローテーパー、レギュラーテーパー)、ファストアクション(ロッドの反発、戻りが早い。対義語にスローアクション)のロッドが多くなります。
構造的にキャストや空振りすると、ロッドが振幅を終えて真っ直ぐに戻るまでの時間も短く、印象としてはキビキビしたロッドが多くなります。素材的な工夫でノセ調子に仕上げることは可能ですが、一般論としては前述した通りです。
さて、では、なぜこのような調子はアジングを楽しむアングラーに最終的に好まれる傾向にあるのでしょうか。
現代アジング、アジの主食のプランクトン化
現代アジングは、プランクトンを主食とするアジを狙う機会が増え、ルアーを動かさずにフォール(ただルアーを沈ませる)や、レンジキープ(狙っている水深になるべくルアーを長く留める技法)を意識する釣りが増えていることがひとつの一因です。少し前までは、小魚などの動く餌をメインで食べるアジが多く、ルアーをロッドで動かしたり、リールを巻いたりすることでルアーに動きを与え、誘うことがテクニックの定番でした。
また、ターゲットの総数も多く、そういった動きのある釣りでも問題なく魚が釣れる事情がありました。
1.0g以下の軽いルアーが投げやすくなる
そんなこともあり、数年前までは扱いやすい1.5g以上の重さのジグヘッドフックがスタンダードとされていました。実際に、この重さのジグヘッドとワームをセットして現在も釣れないわけではありませんが、釣り人の増加、環境、アジの食性の変化により、より軽い重さのルアーを投げることを余儀なくされています。
そうなってくると軽いルアー、具体的には1.0g以下のルアーをキャストする際には、ティップ部分が繊細に曲がり、僅かな重量でも反発してくれるカケ調子のロッドが扱いやすい傾向があります。
アタリ感度性能の向上、フッキング性能の向上
また、なるべくルアーを動かさない釣りがメインになってきますので、アジのアタリを掴み、それを感じてアワセを入れ、小さなロッドの煽りでもアジにフッキングしやすくなるカケ調子との相性が良くなります。
潮感度性能の向上
カケ調子のほうが、アタリ感度性能(魚のアタリを感じる性能)がよくなるのは、同調子のほうが共振感度が得られやすいことに起因します。単純にアタリなどの感度情報を手元に伝えやすいと考えてください。アタリに対する感度のようにアジングロッドには不可欠な性能がノセ調子より得られら安いとも考えてください。
潮感度性能とは海にある潮流(川のような水の流れ)をアングラーに伝える性能で、アジングロッドに不可欠な機能の一つです。ロッドのティップ(竿先)で受けた性能をミッド(竿の中間部分)で受けてその圧力負荷を情報として伝える性能が潮感度性能ですが、全体的に曲がるノセ調子のロッドよりも、必要な部分だけが曲がりやすいロッドのほうが、情報が明確にアングラーに伝わります。
ノセ調子であろうが、カケ調子であろうがアジングロッドと呼ばれる釣り竿には、必要な機能が備わってはいますが、情報精度はノセ調子よりカケ調子より高い傾向があります。
【Part.3】ノセ調子、カケ調子。アジングの深みにハマるためのオススメロッド
では、具体的に編集部でオススメしたいロッドを具体的に紹介していきましょう。基本的にアジングロッドは全体的に先調子よりのものが多く、これは現代あジングが軽いジグヘッドを使って釣る方向にシフトしているからと言えるでしょう。ここで紹介するノセ調子について言うと、テーパーは先調子気味でアクションがややスローという性格のモノが多くなります。
ガイドポスト57(サーティフォー)【ノセ調子】
アジングのパイオニア的メーカーがラインナップする初心者向けモデルシリーズが「ガイドポスト」。後ろに続く数字はロッドの長さを表しており、57がノセ調子系としてはオススメ。若干素材的にスローになるように設計されており、ビギナーでも使いやすい。
機種名:GUIDEPOST LHR-57
価格:25,300円(税込)
長さ:5’7″
継数:2P
ティップ:ソリッドティップ
ルアー:0.3~2g(投げるのに適したルアーの重さの範囲です)
ライン:0.9~2lb
ブルーカレントIII 53(ヤマガブランクス)【ノセ調子】
巻く、動かすを主体に攻めのアジングを展開する意図が感じられるノセ調子のロッド。ティップはソリッドではなくチューブラーが採用されていることからもわかりやすい。フォールの釣りにももちろん使える。
機種名:BlueCurrent III 53
価格:22,000円(税抜)
長さ:5’3″
継数:2P
ティップ:チューブラーティップ
ルアー:MAX4.5g
ライン:0.06~0.3号/ナイロン・フロロカーボン1~3lb
スラム UTR61FS-T2(ティクト)【ノセ調子】
ノセ調子のロッドとして非常にポテンシャルの高いモデルがこちら。ティクトはライトゲームメーカーとして老舗で、アジング関連アイテムが充実している。そのティクトのフラッグシップシリーズの1本。価格もそれなりだが、見合った性能を備えている。
機種名:UTR-61FS-T2
価格:55,000円(税抜)
長さ:6’1″
継数:2P
ティップ:ソリッドティップ
ルアー:0.1~2g
ライン:PE#0.1~0.3~MONO 0.8~3lb
ルナキア LK632S-LMLS(テンリュウ)【カケ調子】
テンリュウは国内でも多くない日本メイドにこだわるブランクメーカー。このモデルはファストテーパーの典型的カケ調子ロッドだが、非常に汎用性が高いのが特徴。高い感度を武器にアタリに反応してしっかりと掛けていく釣りがオススメだが、ティップ部は繊細なので軽いリグもしっかりとキャストできるのでビギナーでも戸惑うことなく扱えるロッドだ。
機種名:LK632S-LMLS
価格:36,000円(税抜)
長さ:6’3″
継数:2P
ティップ:ソリッドティップ
ルアー:MAX 3g
ライン:MAX PE#0.4/MAX 3lb
Advancement65(ルアマガ×サーティフォー)【カケ調子】
ルアマガとサーティフォーが共同で開発したコラボロッド。アジングロッドの性能を突き詰めた上で、大物狩りを行える柳のような靭やかさを併せ持つ異色のバーサタイルライトゲームロッド。不意の大物にも対応できるロッドポテンシャルに注目。
機種名:Advancement65 HSR-65
価格:58,000円(税抜)
長さ:6’5″
継数:2P
ティップ:ソリッドティップ
ルアー:0.3〜5.0g
ライン:1.0〜2.0lb
コルト GCRTS-612L-HS(オリムピック)【カケ調子】
オリムピックも国内工場でブランクを製造するメーカー。つまりメイドインジャパン。そのオリムピックのコルトシリーズはアジングなどのライトゲームシーンで実績のあるラインナップを揃えている。王道といえるジグ単アジングを極めていくのにもってこいなアクションを持つ1本を紹介。
【マニアックコラム】ソリッドティップとチューブラーの機能について
当連載の#001にて、アジングロッドにはソリッドティップとチューブラーティップがあることを記載しました。もうすこし、それぞれにどのような特徴があるのかを解説しましょう。
ソリッドティップは、カーボン繊維を束ねて竿先にした構造のもので、カーボンが中に詰まっています。チューブラーより細く、なおかつ靭やかに曲がるのが特徴です。現代アジングを謳う、ほとんどのロッドに採用されていることから、アジングロッドのベーシックの仕様と言ってよいでしょう。
では、ソリッドティップだと何がよいのでしょう。ソリッドティップを採用していると、ティップ部分の靭やかさを生かして軽いルアーが投げれます。1.0〜1.5gを前後する重量となるジグ単(ジグヘッドとワームをセットしたもの)仕掛けをキャストするのにこの繊細なティップが武器になります。
アジングロッドはファストテーパーと呼ばれる先調子のものが多い設計になっているのも、ソリッドティップの機能が生きているからとも言えます。
まず、アジという魚はエサとなるベイトフィッシュやプランクトンを吸い込むように捕食する魚です。
そして、魚というのはラインの張りなどの違和感を嫌う傾向があります。ソリッドティップは魚がルアーを吸い込んだ際にもティップが追従し、アングラーには明確なアタリとして伝え、逆にアジには吸い込みやすく、違和感を緩和する働きがあります。
弱点は、その靭やかさゆえに、チューブラーに比べると、ルアーをダイレクトに動かしにくいという弱点を持ちますが、現代アジングはスローフォール&ドリフトが主軸の釣り方なので、ルアーをあまり動かさない釣りにシフトしていることもあり、その弱点を意識しなくて良くはなっています。
では、チューブラーティップにはどんな特徴があるのでしょうか。チューブラーティップは竿先が中空になっており、ソリッドティップほど曲がらない反面、ルアーをダイレクトに動かすことができ、なおかつ感度も若干ですが、ソリッドティップより良いと言われています。
現代アジングはスローフォール&ドリフトの釣りが主軸になっているとはいえ、しっかりと流れを自身で掴み、ルアーを狙ったレンジに能動的にコントロールすることのできる手返しの良さがあります。
アジの総量が多く、活性が高い地域の場合、こういった能動的なアクションで手返し良くアジングをすすめるのが効率的な場合も多く、待つ釣りではなく、ルアーを動かすことを前提に釣りをしたいと考える人にはチューブラーのアジングロッドはマッチするでしょう。攻めの釣りが展開できるのがチューブラーです。
1.5g以上のジグ単がメインストリームの場合、チューブラーの特性が生きることもありますが、仮にそれ以下の重さであっても、ロッドのテーパーをスローに設計することにより対応することが可能です。
マヅメ時などは、アジのエサが主流のプランクトンではなく、イワシなどの小型の魚にシフトする場合があり、そういった条件下ではルアーをキビキビと動かす釣りが得意なチューブラーに軍配が上がることもあります。
弱点はスローフォール&ドリフトの釣りはややソリッドティップのほうが扱いやすいことと、下からフォールしてくるルアーに喰いあげるようなアタリを取りづらいという傾向があります。
※本記事はアジングの教科書改訂版としてまとられ発売されています。
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