バスプロ金森隆志はトラウトプロとの対談で何を得るのか。異種トップランナーのクリエイターズトーク!【金森隆志×菊地栄一】



情報過多の時代を生き抜くために大切なこととは?

金森「一見、無駄と思えることもいつしか己の糧となる」

菊地さんのひょんな問いが呼び水となり、現代シーンの分析が始まった。

菊地「金森さんは、電化製品などを買った時、例えばスマホでもいいんですけど、取扱説明書って読みますか?」

金森「全く、一切、読みません(笑)」

菊地「僕も同じく(笑)」

金森「操作しながら覚えますね。それでも困らない」

菊地「結果、最初から読んでしまうと不必要な情報まで頭に入ってしまう。それっていいことなのかな、どうなのかなって。僕のMacの使い方なんて、電源ONで1パーセント、メールにウェブ検索…おそらく全体の3パーセントくらいしか使ってないですけど(笑)」

金森「僕なんて、カッコつけて薄いMacを買ったはいいものの…4年は電源ONしてない(笑)」

一同:爆笑。

金森「まぁ、使わないより使ったほうが良いに越したことはないわけですが…。でも、釣りの場合、要らないものを取り過ぎて、どんどん視界を狭くしてしまうのもどうかなと」

菊地「ある程度のところまで完成するのはかなり早くなっていますよね。昔だったら、歳月もお金も必要だったことが、今なら半年以内で完成できる。それも無料で」

金森「かつて個体数の多い時代でも、1尾釣るまでの時間は果てしなく長かった…」

菊地「逆に言うと、僕も無駄な経験が多かった。でも、今ならすぐに精度が高くなれる」

金森「情報が少ない時代を過ごしてきた我々としては、その無駄も経験として残っている。けど今は、何かイレギュラーが起きた時に手が出ずに、竿を仕舞って帰ってきてしまうのではないかなと」

菊地「シチュエーション限定。釣りってそうじゃなかったはず…」

情報任せの釣り。損をしないための釣り。大事な休日を楽しむためには、事前の準備はもちろん必要だろう。その一方で、無駄を楽しむのも釣りなのではないか。そんな声にならない叫びも行間から聞こえてきそうだ。

次から次へとその目その耳に最新情報が注がれていく現代。「時には目を閉じ、耳をふさぐことも必要だと思う」。安・近・短が良しとされる時代に逆行して、本質のみに心血を注ぐのが金森さんのMYスタイル。真実がそこに。

菊地「正直な話、『釣れないルアーはない』と思っているんですよ。例えば、ベストセラーって、半分はユーザーさんの想いが作ってくれていると思うんです。より多く投げてもらうことで、より多くのバイトチャンスに巡り会える。結果、大切な時間に心を満たされるルアーになる」

金森「モノ作りって、突然生まれるような物ではないですよね。流行っているからウチも…ではない。商売ベースのモノ作りには夢がない、ストーリー性もない。それだけはやりたくない」

菊地「『ダッジ』は使わせてもらってます。見ただけで、これはどんな動きをするんだろう、これで釣ってみたい。そんな興味が湧き上がってきますね」

「手にしただけで温度が伝わって来るかのような造形美」。仮に開発経緯を知らずとも波長が伝わるのはなぜか。「レベルバイブにも同じ匂いを感じる。投げたくなる」。本物だけが持つ証。

金森「僕が気になったのは、このジョイントルアー。『ハイドラム ナノ』ですか? こんなに小さいのにジョイントかつデカリップ。菊地さんがダッジに抱いたような想いが僕にも湧き上がって来ています」

バス界では『幅広リップ=ウェイク』が即座に頭に浮かぶが、こちらは存分な潜行深度を確保するミノーとクランクのハイブリッドタイプ。FとSの2タイプを揃える。意外性のある存在に金森さんは興味津々だった。

菊地「ありがとうございます。コレ、60〜70cm潜るんですよ」

金森「え、ウェイクじゃない? いったい、どんな?(以下略)」

互いが創り上げたルアーを手に語り合う二人。話は尽きることがなく、なおも続いていく。

菊地「(前略)釣れても色を替えて飽きさせない。釣り続けるためのカラーローテーションなんですよ」

金森「スゲェ…そういうの嫌いじゃない、むしろ好き(笑)。方法論は異なるけど、徹底的に追求するという点ではバスと同じですね」

菊地「金森プロ、エリア界に(笑)。またぜひ遊びに来てください!」

年末の多忙な時期、過密スケジュールの隙間を縫って時間を割いていただいた両雄に感謝。機会があればバスフィッシングに挑む菊地さんの姿も見てみたい。そう感じたのは記者だけではないはずだ。



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