ノリーズの首領(ドン)、日本バスフィッシング界の象徴でもある田辺哲男が期待の若手プロスタッフに対して季節に沿ったお題を出し、それにいかに答えるか……いわばこの連載は修行の場なのだ。今回は、五三川・大江川など中部で活躍するヤングマスター・中川瑠凱が田辺さんに挑戦!
今月のお題「6月の川でトップウォーターをどう使うのか」
【Profile】
田辺哲男(たなべ・のりお)
1958年、神奈川県出身、東京都在住。若かりし日より渡米を繰り返し、アメリカで学んだバスフィッシングを日本に紹介。1993年のB.A.S.S.ケンタッキーインビテーショナルで外国人初の優勝を飾るなど、トーナメントでも活躍。ご存知、日本のバスフィッシングシーンに多大なる貢献をした重鎮である。
今どきの若いヤツはトップをやるのか?
ーースポーニングもひと段落した地域が多くなる6月、川の岸釣りをメインステージにしている中川瑠凱さんにお題をお願いします。
田辺「うん、川ね。こうしよう。トップがどんどんよくなる時期だから、まずはおすすめのトップを。そして、どういう場所でどういうふうに使うのかっていう」
ーー今どきの若いアングラーはトップをやるイメージがあんまりないですが……。
田辺「さすがに中川はやるでしょ。だってこの時期はトップが必要だし、ノリーズにはトップ系のルアーがいっぱいあるからさ。それをどう出してくるのか。まあ、どれくらい彼がトップをやるのか、俺も知らないんだけどね(笑)」
さて、今月の田辺さんのお題に、中川さんはどんな回答を出すのだろうか。
虎の穴メンバー、中部のヤングマスター中川瑠凱
【Profile】
中川瑠凱(なかがわ・りゅうが)
2002年、愛知県生まれ。得意な釣りは、トップウォーターとパワーフィネス。五三川、大江川をホームグラウンドとしている。伊藤巧の推薦でスタッフ入り。将来の目標は陸王で活躍すること。
基本的に流れのない大江川、五三川に流れが出た時がチャンス
これからの時期、釣りやすくなるのがトップウォーター。
産卵を終えたアフタースポーンからアフター回復のバスが多くなり、速い動きのベイトフィッシュではなく、虫、甲殻類、弱ったベイトフィッシュといった比較的食べやすいエサを意識するようになります。
バスのレンジに関しても中層~表層付近にサスペンドする個体が多くなるので、必然的にトップの出番が増えるのです。
ではまず、どういった場所で起用するかですが、僕のメインフィールドである大江川と五三川は「川」と名が付くものの基本的に流れがなく、デカくて細長い野池のようなイメージです。
とはいえ、水門の開閉によって急に流れが発生したり、逆流して増水したりするのですが、アフタースポーンを意識する6月は流れが出たタイミングで、その影響を受けにくいワンドや流れのヨレを狙うことがキーになってきます。
線と点のスローな誘いをこなすプロップベイト
多用するトップウォータールアーは2つあって、そのひとつが『ビハドウ110』です。
このダブルスイッシャーは、巻き続けるルアーのなかでは最弱な部類になりますが、前後逆に動く小さなペラが高速回転して金属音を発生するので、魚をしっかり呼んでくれて、食わせにも特化しているのが強味。ゆっくりと線で引くことも点で誘うこともできるため、バズベイトのような速い動きのルアーに反応するものの食い切れないスローなバスを高確率でキャッチできます。
使い方は、ベイトフィッシュが絡んでいる岬やシャローフラット、護岸際などで、ペラがギリギリ動くくらいのデッドスローリトリーブ。あるいは、護岸+αやカバー際などここぞという一級スポットをトゥイッチ&ポーズでスローに探っていきます。
風などで水面がざわついたり、バスが表層まで出切らないと感じたら、ウエイトシールで少し重さをプラスして超スローシンキングにチューン。水面直下のシェイク巻きで移動距離を抑えながら誘うのも有効ですよ。
ビハドウ110(ノリーズ)
ただ巻き系のトップウォーターでは最弱の部類。しかし、ボディに対して小さめのペラが前後逆に回転し、V字の波動とシルエットでしっかりバスを呼んでくれる。強すぎないアピール力を備えた食わせ系ルアー。フロントをフェザーフックに換えることで前に掛かるようになり、バレにくくなります。
使用タックル
●ロッド:ロードランナーストラクチャーNXS STN650M(ノリーズ)
●リール:15アルデバランHG(シマノ)
●ライン:シーガー フロロマイスター12lb(クレハ)
水面が荒れ気味ならば特殊系羽根モノの出番
そしてもうひとつのトップウォーターは、『ウォッシャークローラーフカフカ』です。この羽根モノを、もちろんデッドスローリトリーブでも使いますが、基本的にはシェイク巻き。ガチャガチャと音を立てながら、バスの威嚇本能に訴えるイメージで誘うのです。
ビハドウ110は比較的浅いエリアで食わせ的に使うのに対し、こちらはアピールが強めなのでフローティングストラクチャーや水深のある護岸などが出番。雨や多少の風でもルアーパワーでバスを引っ張ることができます。これらふたつを、狙うエリアや天候によって使い分けることが重要になってきます。
タックルですが、オカッパリでは1本だけ持って釣り歩きたいのでハードベイトとワームの釣りのどちらもこなせるロードランナーLTT680MHやSTN650Mを使用することが多くなりますね。
1年で最もトップウォーターに出やすい季節ですので、皆さんもぜひトライしてみてください。
ウォッシャークローラーフカフカ(ノリーズ)
デッドスローリトリーブでは大きなブレードが左右に揺れ、縦波動が起きて虫っぽい。速巻き&シェイク巻きではブレードとボディが当たってガチャガチャと音を立てながら威嚇に訴えて誘うという、2通りの使い方ができます。
使用タックル
●ロッド:ロードランナーLTT 680MH(ノリーズ)
●リール:バンタムMGL(シマノ)
●ライン:シーガー フロロマイスター14lb(クレハ)
田辺の総括
やっぱりトップをよく使いこなしているね
ーー中川さん、プロフィール見たら、「得意な釣りはトップウォーター」と書いてありました……。杞憂でしたね。
田辺「うん、非常によく使いこなしていることがわかる文章だったね。ビハドウはこういうゆっくり引きが基本なんだけど、意外にみんな知らないんだよね。ダブルプロップはジョボジョボやるのが普通だろう、って思う人がほとんどなんだよ。アレはi字引きで使うっていうのを中川もわかっていて、さらにピンポイントでチョポチョポと……このルアーは両方できるんですよっていう、本当に教科書的な解答だったね」
ーー五三川なんか護岸が多いので、かなり効きそうです。さて、ウォッシャークローラーフカフカはちょっと変化を加える感じでした。
田辺「ウォッシャークローラーフカフカはさすがによく使い込んでいるよ。普通のウォッシャークローラーもそうなんだけど、トゥイッチやシェイクをしながら巻くっていう、あれがキーなんだよ。ちょっとシェイクしながらリズムをうまく合わせたほうが綺麗に泳ぐんだよな。クローラーだから、右、左、右、左……って動く。そこにロッドワークでちょいちょいとリズムを合わせていく。すると、普通にただ巻きした時にたまに起こる、水をガブって噛んでストップしたりするのが避けられるんだ」
ーーなるほど、ちょっとした小技で使いやすくなるんですね。
田辺「クローラー系って、ゆっくり、ペタペタ巻いている時はただ巻きでもいいんだけど、ガシャガシャって水面をバズベイトのように巻いてくる状態を作り出すにはあの操作が必要なんだ。それが書かれていたから、やり込んでいるんだな、と。この使い方は、それなりにやり込まないと気付かないからね。
俺なんか最近はスローで使うよりも、もうバズベイトみたいに引いちゃうほうが断然多い。そっちのほうがスイッチが入って食ってくる感じがするんだ。まあ、その使い方のロッドワークまで入っていたのはとってもよかったし、一番得点が高い答えだったよね」
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