ビッグベイトからスモールプラグまで、現在バスをはじめ、ソルトやトラウトでも各社から数多くリリースされている「ジョイントルアー」。そんなジョイントルアーを「カスタム」することにによっての新世界を切り拓いてきたのが日本のバスフィッシングシーンのレジェンド・今江克隆さんである。今回は同氏のジョイントルアーに関する提言をご紹介しよう。
【Profile】
今江克隆(いまえ・かつたか)
日本の5大タイトルをすべて制覇(JBアングラー・オブ・ザ・イヤー3回、JBジャパンスーパーバスクラシック2回、JB トップ50チャンピオン2回、Basser オールスタークラシック2回、JBエリート5)。JB最高峰カテゴリーにおいて最多勝利回数を誇るレジェンドにして、エポックメーキングなアイテムを生み出し続けるタックルメーカー・イマカツ代表。日本のプロトーナメント史は、氏の歩みとともにあると言っても過言ではない。
ジョイントとダートの関係
ルアー作りに携わる立場で考えたとき、ジョイントという構造自体が持つメリットとしてまず挙げられるのは、ダート性能を高められること。アクション時の入力に対して、ジョイントであれば頭がオートマチックに左右どちらかを向いてくれ、次のロッドワークで逆方向へのベクトルが働くことでダートが演出しやすくなる。
いわゆるS字系のビッグベイト(=リップレスモデル)はダートがバイトトリガーとなるケースが多く、それを自在にコントロールできるという点においてジョイントの搭載は理に適っているというわけだ。
ロッドワークに強弱を付ければダート幅を調整でき、スライディングが得意なペンシルベイトと同様に右へ右へ(あるいは左へ左へ)とルアーを送り込むことが可能。岩盤のエグレやオーバーハングの下へと、誘導できるのである。
ただしそれはハードテールかつ2関節までのルアーに限定される。3関節以上になると、ボディの自由さが逆に足枷となって水を逃がしにくくなるため(スライドしにくくなるため)、一方向にしかルアーが飛ばなくなってしまうのだ。
多関節ならではのメリット
そしてもうひとつは動きに対して、ハードベイトでありながらソフトベイトなみの柔軟性を持たせられる点。こちらは3関節以上のメリットと言えよう。ジョイントによる駆動が、ウォブリングとは明らかに異なる、軟らかにくねるボディアクションを生む。それは巻いたときだけでなく、止めているときもしかり。
いわゆるデッドスティッキングで放置していても、ちょっとした水の動きに呼応して自発的にボディをくねらすのは非ジョイントベイトにはできない芸当だ。
これらのメリットから、ビッグベイトとジョイントはとても相性が良いのもうなずける。サイズがデカくて単一ボディとなると、ダートに要する力はジャークベイトの比ではないし、ただ巻きでのアクションも、ともすれば大味なだけで魅力的ではない。
また、関節から生じるクラック音やジョイント部の金属パーツ接触音も見逃せない。とくに後者はバズベイトのスクイーク音と同様で使い込んだ個体ほど「コキュコキュ♪」と釣れるサウンドを奏でるようになると感じる(ただしあまりに使い込み過ぎると音質が変わり、釣れなくなってしまう)。
ジョイントはサイズを問わない
ジョイントと聞くと、いまのアングラーはすぐにビッグベイトを思い浮かべるだろう。しかし我々オッサン世代にしてみれば、ジョイントラパラを筆頭とするジョイントミノーが想起されるに違いない。ジョイントは、何も大きなルアーの専売特許ではないのだ。
イマカツでは、9cmの『スーパーキラービル』にもジョイント構造を採用している。このルアーはカテゴリー分けするならスモールロングビルミノーに属するが、本来そのタイプでは難しいダートを、ジョイントと、もうひとつの関節ともいうべきエラストマーテール(しかもやや硬めで、動きに影響しない小さなテールにデザイン)の搭載で可能にした。
スピニングタックルによる、わずかな入力でもキレのあるイレギュラーダートを生むのはそのためだ。もちろん、ただ巻きにおいても通常のシャッドとは一線を画すピッチがありながらもタイトでやわらかなウィグリングを生み、ステイ時にはジョイント部後方が自発的に揺らぐことでバスをバイトへと誘う。
ただしルアーのサイズが小さくなればなるほど、ジョイントを組み込むため、そして全体のバランスを調整するため、開発において手間がかかるのは言うまでもない。
関節の数に関するジョイント各論
自発的な動きに関して追記しておくと、関節は多くなるほどまるでワームのような、アングラー側が任意に演出できないナチュラルなアクションを期待できる。その最たる例こそ、スネークテールを装着した『ジャバロンハード』である。
その名のとおりソフトマテリアルのジャバロンをハードマテリアルに転化したモデルであるが、ワームにはない絶対的優位性がこのルアーには備わっている。言うまでもなくそれはデッドスティッキング時の自発アクションだ。いくらやわらかかろうが、放置したワームはその場で本来の形状をとどめているのみ。
しかし多関節であればかすかな水流に反応してボディとテールがゆっくりとくねり、唯一無二ともいうべき生命感をまとう。しかも一般的なワームにはまず不可能な、フローティングもしくはサスペンディングの状態でだ。
イマカツのラインナップにあるアンドロイドにせよギルロイドにせよ『レプリケーター』にせよ、ことリップレスタイプのジョイントルアーにおいては完璧なるサスペンド状態に設定することが潜在能力を引き出すひとつの重要なカギを握っていることを覚えておいてほしい。そしてその仕様を作り出すためには、アングラー側の細かな調整が不可欠だ。
イマカツ的ジョイント総論
サスペンドチューンは、それこそルアーチューンの出発点というべき工夫であるが、たとえばダート時の挙動を変えるため関節部分を削って稼働域を広げたり、逆に輪ゴムで止めて動かなくするなど、アングラーの創意を加えやすいのもジョイントベイトの魅力だと思う。
私のルアー作りの原点たる『インスパイアカスタムルアーズ』のブランド名にもあるように、もっと釣るために、もっと使いやすくするために、自分なりにルアーをカスタムすることもバスフィッシングの楽しさのひとつであるはず。
だから最近、イマカツのジョイントベイトはジョイントシャフトを取り外しのできるネジ式にし、複数のラインアイを設けたり、リップを着脱式にしたり、異なるタイプのテールを同梱するなど使い手がチューンしやすいパッケージで製品化している。
今の時代、ハイプレッシャーな週末のメジャーレイクで周りと同じ既製品そのままのルアーでは、バスに学習され、見切られてしまう。自分なりの味付けをしたルアーこそ結果に繋がるケースは、今後当たり前のように増えていくだろう。
「いじってなんぼ」。これもまたジョイントの真理なのである。
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ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!