『ラパラ解体新書』の著者が明かす、ジョイントラパラの隠しコマンド【ジョイント多事争論】



ジョイントに一家言ある各界の賢人たちに、エピソード、理論、テクニックなど、ジョイントにまつわるあれこれを聞いてみた金言集。9つのエピソードを読み終わると、ジョイントルアーの全体像が見えてくれるかもしれない。今回はそんなジョイントルアーの原点とも呼べる、ラパラのジョイントルアーについて、誰よりも詳しい福原 毅さんのお話を紹介しよう。

【Profile】

福原 毅(ふくはら・たけし)

東京都目黒区生まれのフォトグラファー。『ラパラ解体新書』(イーハトーヴ出版)の著者であり、日本を代表するラパラ通のひとり。現在もラパラをメインで使用。ラパラ使いで知られる故・楠ノ瀬直樹氏との交流も深かった。

そもそもラパラはトローリング用だった

数多あるジョイントルアーの出自を辿っていくと、ほとんどの場合、その源流にはジョイントラパラがあるに違いない。そのジョイントラパラは、現在も世界中に愛用者がいて、今日もきっと誰かが魚を釣り上げている。もちろん日本にもこれを愛して止まない人がいる。福原毅さんはそのひとりだ。

福原「僕がラパラを使うのは”好きだから”という理由もあるけれど、それ以上に”釣れるから”なんですよ。今回はジョイントのお話ということですが、ジョイントラパラもフローティングとカウントダウンの2種類がありますね」

ラパラJ9(上)とラパラCDJ7(下):日本においては、ジョイントルアーの原点ともいえる存在。ワイヤによる1点での連結構造によって、写真のようにへの字に曲がった姿勢が可能になっている。ボディを貫通するワイヤ構造はヒートンより堅牢で、世界の巨大魚を相手にしても簡単には壊れない。

今回、福原さんはその極めて実戦的な使い方を教えてくれるのだが、その前にベースとなる知識を頭に入れておこう。

福原「ラパラって、そもそもトローリング用に作られたルアーなんですね。創業者のラウリ・ラパラさんが木の枝みたいな釣り竿に糸を結んで、ボートを漕いでラパラを引っ張ったのが最初なんです。だから、ラパラのミノーも、ジョイントラパラも、昔からあるモデルはキャスティングのことはほとんど考えずに作られています」

これは意外に知られていない事実だ。昔はラパラを買うと、箱の中に外国語の説明書が入っていたのだが、それにもトローリングの方法しか書かれてなかったという。だから、基本的な使い方はいわゆるステディーリトリーブ。一定速度で巻く方法だ。これはジョイントも一緒で、フローティングのジョイントラパラは水面下30cmほどのレンジを泳いでくる。そしてカウントダウンのジョイントは、恐らく1.5~2mくらいのレンジを泳いでくるらしい。しかしそれとは別に、ラパラならではの特殊な使い方がある。

福原「フローティングのジョイントはゆっくり巻くと水面にモコモコと引き波を立ててくるんですね。これは、いわば虫系の動きです。ハネモノではアピールが強すぎる…そんな状況に効果的です」

ステディーリトリーブした場合、フローティングのジョイントは、ノーマルのフローティングよりもレンジが浅い。だからトップウォーターに近い使い方ができるのだ。ではカウントダウンはどうか?

福原「ジョイントラパラのジョイント部は一点だけで接続している。だから、左右だけではなくて、上下にもくねるんだよね。つまり横から見てへの字に曲がることもある。そこでカウントダウンのジョイントを沈ませて、ボトム近くでちょんちょん動かしてみる。すると、テールが上になったり、頭が上になったり、まるでストレートワームのような動きを出せるんです」

このテクニックは、特に北海道ではイトウを釣るために有効とされているようだ。実は前述したフローティングのデッドスロー引きも、頭とテールを下に向けたへの字の姿勢をとる。これがまた、魚よりも虫を思わせるらしい。

福原「ミノーをボトムでシェイクして釣るなんて、あんまり聞かないでしょ? ジョイントラパラって異端児だよね。ある意味」

ラパラ解体新書

福原さんと、故・楠ノ瀬直樹さんの共著で、1999年にイーハトーヴ出版より発行された伝説の名著。詳細なラパラの歴史、各ルアーの特長やエピソードなど、非常に読み応えのある1冊。現在では絶版となっているのが残念だ。



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