メガバス伊東由樹CEO、ドイツ・IFデザインアワード4たび栄冠



デザイン界のオスカー賞と称される、ドイツ・ハノーバーで執り行われたIFデザインアワード。2021年、伊東由樹CEOは4度目の受賞を果たす。今回のトロフィーアイテムは、NEWデストロイヤー! 奇しくも2020年グッドデザインを受けた「オリデス」が、海を越え2冠を携えた!

【Profile】

伊東由樹(いとう・ゆき)

インディーズファクトリーとして伝説の名竿「アームズ」などでキャリアスタート。メガバスCEOにして、全プロダクトデザインに携わるデザイナーであり、極限の釣りを深掘りするプレイヤーだ。IFデザインアワードでは、トリプル受賞を飾った2018年より毎年高評価を受ける。

IFデザインアワードアイテム『デストロイヤー』シリーズ

カーボンロッドの常識を根底から変えた5Dグラファイトシステムを始め、ヘッドロッキングシステムやリコメンドゲームチャートなど新コンセプトを意欲的に詰め込んだシリーズ5代目。個性豊かな24モデルが揃う。2020年グッドデザイン賞受賞。

伊東由樹「ある意味、ニッポンのバスフィッシングそのものが評価されたのだと思っています」

グーグルやBMWなど、超巨大グローバル企業もエントリーするIFデザインアワード。純粋なデザインのみならず、その意匠に込められたフィロソフィーや社会貢献度なども厳格に精査されるデザインの祭典だ。

伊東「とにかくデザインに求められる要素が多いのがIFですね。テクノロジーひとつとっても、有用性はもちろん先進性なども問われる。そして、その分野においてどれだけ影響を及ぼすか、社会的役割も考証されるのです」

3年前、そのIFデザインアワードにおいて、デストロイヤーなど3アイテムのトリプル受賞を果たした伊東由樹。デストロイヤーといえば、従来のカーボンシートではなく、カーボンパネルという革新的なテクノロジーで生まれ変わったばかり。

伊東「やはりチャレンジなくしては、企業は停滞してしまいます。たとえばデストロイヤーのチャレンジが、ソルトウォーターロッドへ受け継がれたり。10ftを超えるロッドで、たとえば5Dグラファイトシステムを搭載するとなると、その恩恵は計り知れない」

そういった革新性だけでなく、ブランドの伝統や哲学も重要視されるという。

伊東「ブランドとしての歴史と、その未来がデザインに盛り込まれているかどうかも吟味されます。伝統と革新、その濃度が濃いほうがもちろん評価されるわけです」

ジャパングッドデザインでも、デザインの社会的な意義や環境における価値などが審査の対象になる。さらにIFデザインアワードでは…。

伊東「ブランドの作品として、エモーショナルであるかどうか。総合的にみて、情熱を感じられるかどうか。前版のデストロイヤーフェイズ4も、IFデザインアワードチャレンジ初年度に受賞している。デストロイヤーとしても2連続評価されたのも、嬉しい限りですね。一度受賞したカテゴリにおいては、やはり審査の目は厳しくなりますし、ハードルは高い。四半世紀の歴史を持つデストロイヤーは、たえず自己を破壊しゼロから創造してきたメガバス哲学の象徴。そのアイテムが、全く忖度のないヨーロッパの地で受け入れられたのは、デザイナー冥利につきますね」

デストロイヤーの誕生は1996年。こちらは現存する最古レベルの雑誌広告。そのセンスは色あせるものではない。初期からアメリカのトーナメンターから熱烈な支持を受け、使っているというウワサを聞きつけるたびにスポンサードして回っていた。

たとえば25年以上愛され続ける商品というのは、老舗の定番アイテムといったもの。だが、絶えず素材から全てを見直し、バスフィッシングの進化をリードしてきた。そのチャレンジによって、デストロイヤーという名は変わることなく、その性能はどのフェイズも常に先鋭と言われ続けている。一方で、名品と呼ばれるものは数あれど、長きに渡って名を変えることなく現状も評価を高め続けるモデルのなんと少ないことか。

伊東「ある意味、ニッポンのバスフィッシングそのものが評価されたのだと思っています。『バス釣り』の、その深みと、絶えざる発展。それがあったからこそ、今もデストロイヤーが輝いているのかなと」

害魚問題やリーマンショックなど、外的なネガティブダメージも企業として乗り越えてきた。30数年といっても、生やさしい道ではない。

伊東「タックルの使い手は時代によって変わっていきますからね。社長としては自己表現と組織としてのガバナンスのバランスも必須。市場を追わず、自らの釣りを追い求めたデストロイヤーだからこそ、サバイブできたのかもしれません」

市場と迎合しないというのは、伝統工芸や職人の世界ならありうるかもしれない。

伊東「敵は常に自分ですね。そのためのitoエンジニアリングだったり。それだけヒット商品を生みだした成功体験は強烈なんです。だからその成功体験を焼き直ししがち。僕も常にその誘惑にかられています。でも、常に挑んで、功績を破壊し、歴史と戦ってきた。そこもアワードで認められた気がします」

だが、その売り上げやテクノロジーだけで評されたわけではない。

伊東「もちろん、アート性が高くないと受賞できません。でも一般の目でみると、釣り竿って棒に丸い金属の輪がのっていて、載せる前提のリールがない状態で存在するわけです。美しくないパーツの集合体のような(笑)。でも、所有する喜び、使う喜び、魚とのコミュニケーション…その全てが含まれています。工具のような機能美と、使い手のエモーショナル。さらに芸術性を高めなくてはなりません。しかもクリス(クリス・ザルディン。B.A.S.S.トーナメンター)が試合で勝てるロッドじゃないといけないなんて!(笑)」

そんなメガバスの心血を注ぎ込んだプロダクトだからこそ、4年目もIFの礼賛を得たに違いない。



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