ルアマガは、ルアーマガジン、ルアーマガジンソルト、ルアマガプラスなどの雑誌やWebを母体としたメディア。そして、さまざまな釣りにまつわるイベントやモノを形にする物販事業なども近年は展開しています。
釣り具に関しては、ルアマガならではの知見を活かしたアイデアを形にするため、各メーカーのコラボなどを軸にオリジナル商品を展開してきました。オリジナルのコラボロッド群などもルアマガというブランドの取り組みの一つです。
そして、ルアーの開発にも取り組んでいます。ギル型のプラグ『キックス』、そして今回紹介する『マゼルスピン』と呼ばれる万能ルアーもそのひとつ。ルアーに関してはオリジナリティを全面に出しつつ開発をすすめています。
では、開発中ルアーのひとつ、マゼルスピンをご紹介します。
開発コンセプトは『海で使えるスピナーベイト』
開発のスタートは2018年秋。スピナーベイトとよばれるバス用のワイヤーベイトがすこぶる好きなこともあり、海でスピナベを使いたいと考えていました。
しかし、ご存知のように、スピナーベイトは構造的に遠投性能が必要となるソルトシーンでは、キャスタビリティに難があります。そして、ワイヤーをフレームとした構造は海の大型魚に対して強度的に不足しています。めっちゃ反応がいいし釣れるのにスピナーベイトはあまり海で使われないのはこういう理由だったりします。
そこで、釣り好きの友人と形状を試行錯誤していたときに出てきたのが、いわゆるスオッシュ形状。この形状ならば、スピナーベイトの持つ『面』でのアピール力を活かしつつブレードの振動による集魚効果なども付加できると考えて試作をお願いしました。
奇をてらったわけではなく、スピンテールジグなどのブレードバイトをいかにフックセットさせるかという部分も意識した形状になっています。サンプルはウェイトをボディに成形していませんのでのっぺらっとしていますが、バイブレーションとしての動きも出せ、なおかつスピンテール系のブレードの集魚力に頼る機能、スピナーベイトの強いアピール力とフッキング性能などを内包した混ぜ混ぜ構造になったことから、「混ぜる」スピンテール系、開発コード『マゼルスピン』としてテストが始まりました。
実はルアマガのアイテム開発部門は潤沢な開発資金があるわけではありません。インジェクション系のルアーは製造コストがかかるため、今回のようなメタルブレード系のルアーのほうが小回りよく開発することが可能だったのもよかったかもしれません。
ファーストサンプルを見せた某メーカーのデザイナーさんは、「あ、バスやってる人はよく理解できる形状だけど、ソルトの人にはどうかな?」とか、ほかにも「攻めてますね、でもソルトの人に受け入れられるためにはシェイプをもう少し細身にしたほうが受け入れられるかも」、はたまた「面白いんでウチでやります?」なんて反応はあったのですが、開発はスローな感じですすんでいきました。
ブレード系はフィッシュイーター全般に効く
テストとして最初に持ち込んだのは、ブラックバスのいる野池。時期は晩秋。同行したスタッフはワームのネコリグなどで攻めていますが反応が薄いなか、さくっと1尾、ブラックバスを連れてきてくれました。ブレードはコロラドタイプに換装し、ウエイトを成型していないので大型のガン玉もお腹のあたりに接着剤。フックはテールにトレブルを1本。
ウエイトの調整などが未完ではありますが、釣れる泳ぎにはなっています。ブレード上側についていますので、レンジコントロールもしやすいです。イメージとしては中層以下でのコントロールがしやすいルアーといったところでしょうか。ブレードの種類やサイズ、巻く速度で表層側も引っ張ってこれるので、結構便利だなと感じました。
ちゃんとボディもブレードの振動をひろってバイブレーションしていて、メタルバイブ的な機能も内包しています。リフト&フォールで誘えるアクションにもなっています。早巻きはもちろん、スローリトリーブも可能です。ここまでは狙っていませんでしたが万能系汎用ルアーという目的に近い働きはしています。
なら、海でも使えるかと持ち込んで、釣れたのがなぜかメバルの良型。写真が酷いのでわかりにくいかもですが尺はないですが27cmくらいのメバル。ウエイトは14gのグレネードシンカー(バリバス)を吊り下げています。ブレードは同じくコロラド。色は無垢のシルバーです(笑)。
この吊り下げタイプのウエイトは、テストで適当につけたものだったのですが、簡易の重心移動機能を搭載したことで、飛距離アップに大幅に機能したのと、ボトム着底時にルアー自体がヒラを打ったり、根がかりを回避するための情報を提供してくれたことから重宝しました。
ターゲットの本命と考えていたシーバスでテスト
とりあえず、フィッシュイーター系にそれなりに好反応なのがわかったので、ルアーの本命的ターゲットのひとつ、シーバスに使うために東京湾陸っぱりへ。一発、フックセットしてファイトしたのですがフックアウト。ロッドが硬かったのもあったかもしれませんが、これはバラシを考えるとトレブルフックよりシングルかチラシばりがいいと感じて、換装後、ボートシーバスへ。バラしてるのでなんともいえませんが、この日の編集部内でアタリがあったのはこの一発だけでした(笑)ブレード系は偉大。
そして後日。津本式でおなじみの津本光弘さんたちと東京湾のボートシーバスに。昼間は「うーん、今日はバイブレーション系は反応悪いかもよ?」なんてアドバイスもあったのですが、コノシロが湧いてるのなら、チャンスあるかもと、投げ続け、昼の部は一番釣れました! ブレード系は偉大(2回目)。
一旦、開発は頓挫。そして再始動
2019年末から本格化しはじめたコロナ禍の影響もあり、某メーカーでの開発を視野にすすめられていたマゼルスピン開発計画も一旦は頓挫したのですが、せっかく釣れるルアーなのになぁと言う思いもあり、2021年に開発を再始動。小ロットで開発に協力してくれるメーカーさんの後押しもあり、現在鋭意テスト中です。
で。先日、千葉県の野池で、テストのリスタート。4尾の良型バスをヒットさせてファイトさせたのですが、タックルバランスをミスって全てバラシ……。フックのセッティングなのか、硬すぎたロッド(打ち物用のを使ってました)のせいなのかはわかりませんが、原因を追求中! 同行スタッフにバレてるところを何度も目撃される悲しさ……。でも、ちゃんと魚を誘って食わせる能力があることはわかってもらえました。
あとはルアーそのものの安定性と機能性を向上させるためにウエイトをボディに整形、カラーの調整をしていく流れになりそうです。
ということで、今後も逐次ご報告していきます。使い勝手のよい万能ブレード系ルアーとしてお披露目できる日がくればと考えておりますので、ぜひご注目ください