【サクラマスの不思議な生態】海で成長した巨大ヤマメだけど……?



ヤマメもサクラマスもおんなじ魚です!

全国のほとんどの渓流が禁漁中。トラウトアングラーの多くが釣具のメンテナンスや海など他ジャンルの釣りを楽しんでいることと思うが、地域によって自然河川でトラウトが狙えるフィールドは結構あるのをご存知だろうか。そのひとつが大本流のサクラマス釣りである。どんな釣りかと言われれば、結構奥が深いのだが、ここではまずターゲットとなるサクラマスの生態について紹介していこう。

基本的には河川残留型(陸封型)がヤマメ、降海型がサクラマスに分けられるが、実は簡単には説明できないほど生態が複雑なのが、このヤマメという魚。地域による降海時期や、成熟する年数が違うのもそのよい例だろう。

たとえば、北海道のヤマメの場合、生後約1年半で降海型は海へと下る。そして約1年を海で過ごし、2歳半の春に生まれた川へと遡上してくる。そして約3歳となる秋に産卵し、その一生を終える。

これに対して東京都・多摩川の場合、降海型は生後約1年で海へ下る。海にいる期間は約半年間。近海を回遊しながら成長し、わずか1歳半の春に多摩川へと戻って約2歳となる秋に産卵。北海道の集団よりも短い生涯となる。

サクラマスの生態は北海道と関東でも全然違う

北海道と関東で約1年間の成熟期間の差があるサクラマス。それだけでなく、海に降りる個体の割合も大きく異る「ひとくくりにし難い」魚でもある。もう少し紹介してみたい。

北海道のヤマメは約75%が降海してサクラマスとなる。残りの25%はヤマメとして川に残る。この25%はほぼ確実にオス。サクラマスとなった50%がメス、残りのサクラマスの25%がオスだ。

東京都・多摩川の場合、降海してサクラマスとなる魚は5%にも満たない。残りのすべての魚(約95%)はみな河川残留型であるヤマメとなる。サクラマスにもヤマメにもオス・メスが混在するという、北海道との大きな違いがある。不思議であり、なぜかは分からない。東日本の南北の差でこの生態の違いである。

こちらはヤマメ

こちらは渓流域で釣り上げたヤマメ。地域や生息環境によって育ち方が様々だが、尺サイズ(30.303cm)を大物の基準にするアングラーが多い。

こちらはサクラマス

90mmのミノーにヒットした個体。サイズの大きなものだと70cmを超えてくる。


銀鱗を体に纏う清流の女王

降海型であるサクラマスは銀毛する。銀毛とは写真のように鱗が銀色に変化すること。

降海型であるサクラマスは銀毛するのが特徴だが、海ではなく本流で成長するヤマメにも銀毛し大型化する、いわゆる本流ヤマメやモドリヤマメといった魚たちがいる。湖沼型のサクラマスもいる。実に多様な生活史をヤマメという魚は持っているのである。

またサクラマスとなった魚は1回の産卵で死ぬが、ヤマメは複数回産卵しているものもいるようだ。ヤマメには謎が多い。そして面白い。

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