近年、冬になるとカワハギ釣りに出かけるバスアングラーが増えている。バスプロ界でもちょっとしたブームなんだとか!? 多くのバスアングラーを惹きつけるカワハギ釣りの魅力とは。今回、バスプロの江口俊介さん、藤田京弥さん、青木唯さんが参加するカワハギ釣り大会が開かれるという情報をキャッチ! その謎を解くため、ルアマガ編集部員が潜入捜査を行った!
皮剥(カワハギ)
フグ目カワハギ科に分類される魚。ウロコはなく丈夫な皮に覆われており、簡単に皮をむいて調理できることが名前の由来。口は非常に小さいが、中にはペンチのような頑丈な歯がある。この口でエサを削ぎ取るように食べるので、釣りではアタリを取りにくく、「エサ取り名人」の異名がある。身は歯ごたえのある白身で美味。冬に発達する肝臓(キモ)は「海のフォアグラ」と呼ばれる。
仕掛けとタックル
幹糸に3〜4本程度のハリスが枝分かれしているカワハギ用の仕掛けを用いる。エサはアサリの剥き身を使うのが定番だ。仕掛けの先端に25号〜30号(100g前後)のシンカーをつける。タックルは1.8m(6ft弱)前後の竿に小型のハイギアベイトリールがおすすめ。ラインはアタリが取りやすい0.6〜1.5号程度のPEラインが主流。
船釣りで1年中狙える人気魚種
カワハギが生息するのは岩礁帯が点在する砂地で、主に底でゴカイや貝類などを食べる肉食性の魚だ。投げ釣りや磯釣りでも狙えるが10〜50mくらいの水深を船釣りで狙うのが一般的。
カワハギ釣り水中イメージ
江口俊介がカワハギ釣りにハマる理由(ワケ)
【Profile】
江口俊介(えぐち・しゅんすけ)
JBトップ50で通算5勝を誇る実力派。海釣りなど多魚種の釣りに精通する誰もが認める釣り上手だ。エグダマやオサカナスイマーなどを手掛け、ルアー開発者としても定評がある。カワハギ釣り歴は8年。
エサ取り名人を本気食いさせるビシバシロッドアクション! 「カワハギ釣りはオレの中ではバス釣りのフロッグだね!」
江口「カワハギはホバリングしながらアタリを出さずに上手に仕掛けのエサだけ食べます。それをさせない誘い方が必要なんです。食わせのフィネスみたいな釣りでは太刀打ちできないことが多いんですよ」
――具体的には?
江口「重りが着底したらロッドを上下にバシバシ叩いて、アサリを激しく動かし続けます。カワハギがエサを見つけても簡単には食いつけない状況を作るわけです。その後、一瞬止めた時にムキになってエサを追っていたカワハギが針ごと一気に吸い込みます。これがカワハギをフッキングに持ち込める誘いです」
――その誘い方はバス釣りに通じる部分がある?
江口「フロッグのイメージかな。甘噛みではダメ。キレのあるアクションでバスの本気食いを誘発して丸飲みさせないといけないから」
ハリ交換で釣果の違いを実感できるカワハギ釣り
江口「カワハギ釣りには食わせ重視のハリや掛け重視のハリなどがあるのですが、僕は納得のいくハリス付きの替えバリを自作しています。ハリ交換がバス釣りでのルアーチェンジに相当する、と言っても過言ではない。エサの種類は変えられませんから(笑)」
――トーナメントでもフックには気を使っている?
江口「特に試合前のプラクティスではフックの形状を変えて色々試しますね。バス釣りでもカワハギ釣りでもミスを連発するときはハリを疑うべきですね。あとはロッドの硬さやタックルセッティングも大事。アワセのタイミングやタイムラグが変わってきますから」
ココがバス釣りに活きる!
バス釣り以上にアジャスト能力が求められる!
江口「カワハギ釣りは1日の中でもパターンがコロコロ変わる。バス釣りとは比較にならないほどですよ。基本的に砂地ではボトムを探るのですが、点在する岩場は縦ストラクチャーなのでバスと同じで魚が浮きやすくなります。
あとは、上のハリにだけ掛かる時は魚が浮き気味だったり、アサリの肝だけ食べられるときは低活性だったり、ボトムで外道ばかり釣れるときは仕掛けを浮かせたり…。本当に瞬間対応能力が問われますよね」
藤田京弥がカワハギ釣りにハマる理由(ワケ)
【Profile】
藤田京弥(ふじた・きょうや)
トップ50で2連続年間優勝という偉業を成し遂げた現役最強トーナメンター。ルアーマガジン本誌の人気企画である「陸王」でも2019年にタイトルを獲得している。カワハギ釣りは今回が3度目。
「運」ではない、経験とテクニックがものを言う釣り
藤田「元々、僕はそこに魚がいるのがわかっていて、それをどう釣るかを突き詰めるのが好きなんです。バス釣りもカワハギ釣りもそこに共通性を感じます。船長次第でみんな同じ場所で釣りをする。そこで、まわりは全く釣れていないのにひとりだけ釣りまくっている人がいる。そういう現象が起きる。隣同士で倍以上の釣果の差が出たりする。面白いですよね」
――やはり名人と呼ばれる人は違う?
藤田「カワハギのプロに共通することは『まわりが全然釣れていないときに釣る』ということです。逆にまわりも釣れている時は、釣れ方はまわりと同じくらいのペース。明らかに技術の差です」
カワハギ釣りはエサだけどルアーフィッシング! エサ釣りでも「誘い」=「アクション」が必要!
――ルアーフィッシングとエサ釣りでは大きな違いがあると思うのですが…。
藤田「僕も初めは、エサ釣りに『誘い』は不必要だと考えていました。エサにアクションを加えることに意味があるのかと。でも、カワハギ釣りにもたくさんのパターンがあって、エサを動かしている時にしか食ってこないことがあることがわかりました。釣れない時に、エサを小さくしたりハリを変えたりしましたが、それよりも優先順位が高いのが『誘い方』=『ロッドアクション』であることがだんだんわかってきました。エサだけどルアー釣りの要素があると思います」
ココがバス釣りに活きる!
ヘビダンやフットボールジグの釣りの練習にも!
この日は魚が低活性だったため、エサを激しく上下させ過ぎるとバイトを得にくく、小刻みにシェイクしているアングラーがバイトを量産していた。
藤田「仕掛けの形状的には超重いヘビーダウンショットリグですよね(笑)。あるいはフットボールジグをボトムでトントン叩く釣りに似ている。カワハギ釣りが上手くなればそういう釣りも上手くなると思います。カワハギが海中でどういうアクションに反応しているのかライブスコープで見てみたいですね」
青木 唯がカワハギ釣りにハマる理由(ワケ)
【Profile】
青木 唯(あおき・ゆい)
JBトップ50に昇格した昨年、いきなり年間ランキング4位に入った期待の若手。ライブスコープサイトを得意とし、11月の弥栄ダム戦では初優勝を果たした。この取材日の2週間ほど前にカワハギ釣りを初体験。今回が2回目。
カワハギもスモールマウスもゼロテンションで食わせる
青木「エサ釣りであるカワハギ釣りでも、アクションの違いで明らかに釣果の差が出ることに驚きました。前回釣れた方法が今回は通用しない。その日の状況にアジャストさせる力が求められるのはバス釣りと同じかそれ以上。前回は仕掛けを動かさない時間を長くしてよく釣れたのですが、今回はそれではダメでした。ボトムで小刻みに仕掛けを動かし続けていた人のほうが釣れていました」
――他にバス釣りとの共通点は?
青木「スモールマウスの釣りに似ていると思いました。シェイクしたりバウンドさせたりしても、結局カワハギが食ってくるタイミングはラインテンションを張らず緩めずのとき。スモールマウスも一定で動かし続けているか、止めているときにだいたい食ってきます」
エサを激しく動かす「逃すアクション」はバス釣りに通じる
青木「『カワハギの特性』を理解していることと『誘い方』が重要なんだと思います。仕掛けのアサリを上下に動かして誘う釣りは、サイトで見つけたバスを釣るのに似ているかもしれません。サイトでは、バスの進行方向にルアーを投げても、それがそのまま食われることはなかなかない。トゥイッチなど『逃すアクション』で捕食スイッチを入れます。カワハギも同じなのかも。『食われるものは逃げる』。それが自然界の掟であり、リアルなんだと思います」
ココがバス釣りに活きる!
トーナメンターの皆様はメンタル強化にぜひ(笑)。
青木「カワハギ釣りは正直、バス釣りよりもメンタルの強さが必要ですよ。同じ船、同じ場所、同じエサで、しかもすぐ隣ではっきり釣果の差が見えてしまうので。バス釣りの試合は基本、1人の釣りに集中できますから。隣でボコボコに釣られて自分が釣れなかったら、もうメンタル崩壊ですね(笑)。でも、それだけカワハギ釣りは腕の差が釣果に直結する競技性が高い釣りであり、魅力なのだと思います」
『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報
ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!
- 1
- 2