『生エサ感覚の禁じ手 』とのキャッチコピーの下に昨年登場するや、瞬く間に全国で必釣ワームとして知られるようになった『MMZ』(読み:エム・エム・ズィー)。現在はひとくちサイズの『チビ』と標準サイズの『ナミ』がラインナップするが、今度は特大サイズの『デカ』が登場! 昨季このプロト作を軸に圧倒的スコアで優勝を果たした山岡計文さんが、その特徴から使い方まで徹底解説!
【Profile】
山岡計文(やまおか・かずふみ)
国内最高峰JBトップ50で2度の優勝(12早明浦ダム、21七色ダム)を始め、紀伊半島ローカル戦では無数の勝利を飾り圧倒的な強さを誇るリザーバーマスター。クリアウォーター戦のみならず、17エリート5霞ヶ浦優勝など、全方向に死角はない。
MMZ デカ(O.S.Pinc)
【スペック】
- 長さ:伸ばすと13inクラス
- 重さ:12.5g前後
- 入数:3
- カラー:8
- 価格:891円(税込)
- 発売年月:2022年3月上旬
O.S.P最大の13in級が日本全国で効く理由とは!?
山岡「元々、MMZのチビとナミは、僕のホームグラウンドでサンプルの段階から魚の反応が非常に良くて、もっともっとでかいのがあったら面白いだろうなと」
この3月に登場することになった約13in(=cm)もの全長を持つ変形ストレートワームが『MMZデカ』(O.S.P)。
昨秋、そのプロト作を手に、発売前ながら早くも国内メジャートーナメントを制したのが山岡計文さんだ。開発の経緯を訊くと、冒頭のように語り始めた。
山岡さんのホームと言えば、紀伊半島のほぼ中央に位置するでかバスの聖地、奈良県・池原&七色ダム。彼の地では古くから奥の手として使われてきたのが、10inを超える細く長い『ロングワーム』であることは知る人ぞ知る。
しかし、なぜ、池原&七色ではロングワームが効果的なのか。素朴な疑問が湧いた。
山岡「池原&七色に限らず、西日本全域のフィールド、特に『リザーバーでよく効く』イメージがありますね。『ウナギ』をイミテートしているという説もありますし、僕は実際にでかバスがウナギを追っているシーンに度々遭遇したこともあります。それと…」
含みを持たせた後、山岡さんは驚きの発言。
山岡「ロングワームって『ヤマミミズ(通称)』なのかなと。学名は『シーボルトミミズ』と呼ぶらしいんですが…これが、バスが好む大きな要素なのではないのかなと」
西日本の山間部に生息する全長30cmにも迫るミミズの一種。人間の小指ほどの太さを持ち、青紫の体色が特徴的だ。東日本では馴染みが薄い生物だが、西日本ではそう珍しい訳ではない。では、なぜリザーバーで効果的だと山岡さんは踏んでいるのか?
山岡「リザーバーに限定する訳ではないですが、岸から水中へ落ちて谷を流れ…という環境が揃っていると思うんです。同時にウナギも生息する環境ですし。それと、フロリダ種のバスが生息するフィールドでより効果的なイメージがあります。細く長い物に対して、本能的に異常な執着心を持っているような…」
だとすれば、『MMZデカ』の威力は、西日本リザーバー限定ではない。ナチュラルレイクやリバーでも、はたまた東日本でももちろん効果的だと考えていい。
その全長に怯む必要はない。『MMZデカ』は日本全国どこでも通用するロングワーム。そう考えていいだろう。
激タフ戦で圧倒的スコア! 山岡×MMZデカの強力タッグ
山岡さんが昨秋、『MMZデカ』(O.S.P)のプロト作を軸に、国内最高峰JBトップ50七色ダム戦を圧倒的なスコアで制したことは記憶に新しい。
3日間トータルのウェイトは実に17346g! 次点に5kg以上もの大差を広げたウイニングスコアは、おそらく過去に例がない。そればかりか、およそ20年を超えるJB最高峰戦の七色ダム戦史上において最重量ウェイト記録を塗り替えることにも成功している。偉大なる記録と共に『MMZデカ』は世にその名を知られることになったのだった。
山岡「その時点で『MMZデカ』を持っていたのは、トップ50選手でOSPサポートメンバーの3人のみ(山岡計文、小林明人、鈴木隆之)。けど、使っていたのはおそらく僕だけだった」
JBNBCルールでは本部が認可するFeco登録認定済みの商品のみ、試合での使用が認められる。ファーストインパクトが奏功したのか。いや、他に使う選手がいなかったから勝てたというほど、国内最高峰戦は甘くない。
すべては山岡さんだけの読みと技による一閃。MMZデカのルアーパワーと共に、劇的な結果を導いたことは明らかだ。
山岡「前々日の直前プラ(*ルール上、試合前日は湖への立ち入り禁止)の段階で、何をやってもあまりにも釣れず…。ただ、秋にも関わらず暖かい日が続いていて、シャローに上がるでかい魚が増えていたことには気付いていたんです。この魚を釣らないと、勝負にならないなと」
勝利への筋書きは見えていた。ただし、その手立てが見付からない。
山岡「考え得る全ての釣りをやり切った。しかし、これといった決め手に欠ける…。ただ、ノーシンカーにしろネコリグにしろ、ワッキー掛けのワームが見切られてしまうことだけはわかっていた」
ネガティブな要素は排除。バスが見切る理由は「ハリの存在」。如何にして違和感を消すかが課題となった。
山岡「ふと足下を見ると『MMZデカ』。そうだ、コレのi字引きだけまだやっていないなと。いや、そんなのやる人もいないだろうし」
セットするフックはマスバリ、タリズマン♯1/0(リューギ)を選択。
山岡「オフセットフックでは曲がり方が不自然になる。そういえば、関東の人はMMZのナミやチビを縫い刺しにしてたなと」
頭部から5cmほど後ろ、カーブの内側からハリ先を抜く。表層i字引きの後方から追尾するバスから、ハリの存在を消せるセッティングだ。
キャスト、着水、そしてスローにただ巻き。
山岡「追ってくる! 止めてフォールすると、食い方が異常! まるでエサを食っているかのようでした」
M字状に変形した10inを超えるロングワームは、i字引きで水の抵抗を受け、M字から直線状になろうとする力が働く。そして、巻きを止めるや、元のM字へと戻っていく。その変幻自在のアクションにバスは抗うことはできなかった。
本戦では、大型のバスだけにターゲットを絞り、MMZのナミを先行。「反応がなければチビ、それでもダメならデカ」のローテーションで、大型ほどデカの反応が良かったのだという。
かくして山岡さんは3日間を終始リードしたままのポール・トゥ・ウィン。見事、大記録と共に、トップ50通算2勝目を飾ったのだった。
太さ、長さの絶妙設計が自発的アクションを誘発
山岡「バス釣りの神様が『そろそろ勝てよ』と僕に教えてくれたんですよ、きっと(笑)」
紀伊半島のローカル戦では圧倒的な強さを見せてきた山岡さんだが、最高峰戦では常に上位に食い込むもなぜか頂点の座からは見放されてきた。
それまで2019年の準優勝を最高位に、実に4度のシングル入賞。記念すべきホームグラウンドでの優勝のために、MMZデカの開発は進められてきたかのような展開だった。
山岡「元々は、僕と同じくトップ50メンバーで、O.S.Pソフトベイトデザイナーでもある小林明人さんがナミとチビを開発。O.S.Pのストレートワームはそれまで最長で9in(ドライブクローラー)で、『もっと大きなサイズ』が欲しいなと。大型を僕が要望したのは今回で2回目なんですよ」
世を沸かせた、あの巨大ホッグ系『ドライブビーバーマグナム』も実は山岡さんが開発。
山岡「僕が求めているのは『コレ投げたら、ロクマルが釣れちゃうかもね』っていう夢があるワームです」
大型ワームの潜在能力を知る、百戦錬磨の山岡さんならではの作品たちだ。今後、既存O.S.Pワームでさらなる大型化を果たすモデルもあるのか。期待したいところだ。
山岡「ボディの曲がり方は小林さんがMMZで突き詰めたベストの設定角度のまま、長さと太さを指定。両者のスイートスポットを煮詰めていきました」
細過ぎれば、止めた時に縮みのパワーが弱まる。太過ぎれば動きは少なく、その自重でキャスト時などにちぎれやすい。アクションのと使いやすさの絶妙なバランスを求め開発は進んでいった。
山岡さんはある時、こんなことを語ったことがあることを思い出した。
山岡「リザーバーの釣りって、概念がフライフィッシングに近い。如何に本物に近付けていくか。そこが大事」
MMZデカはヤマミミズを忠実にイミテートしたのか。いや、それだけではない。
山岡「ルアー自体の自発的な動きって、バスは学習しづらいものだと思うんです。この曲がり方が生み出す動きって、その時その場次第で非常に不規則になる。さらに、MMZはどのサイズもパッケージの中でグチャッと入っていて、1本ずつ微妙に曲がり方が異なってくる。そういうのも含めて、バスが学習しづらいワームがMMZなんです」
人間が意図的に生み出す動きではない。ワーム自体が勝手に出す動き。MMZがなぜ釣れるのか。最大の理由が、そこにある。
MMZチビ・ナミ・デカ3サイズを使いこなせ
先にも解説した通り、山岡さんのウイニングパターンはi字引きからのフォール。ハリの存在を隠して、ワーム自体が生み出す動きがバスの目を欺いた。
山岡「ワッキーセッティングがダメという訳ではありません」
試合時はおよそ50人の国内最高峰選手に叩かれ続けた現場のため、タフさを極めただけに過ぎない。またジンクリアな七色ダムの水色は、バスの警戒心を非常に引き上げやすいという要素もあった。
山岡「簡単に使い分けるなら、リグの重さとレンジでの使い分けがわかりやすいですね」
山岡さんによるMMZデカ用『主なリグ/シンカーの重さ/水深』
- ノーシンカーリグ/——/1〜1.5m
- ネコリグ/1.5〜7g/7〜8m
- フリーリグ/3.5〜5g/〜15m
山岡「存分な自重があるのでノーシンカーで使いやすいことはもちろんですが、特に注目して欲しいのがフリーリグです」
シンカーとワームが離れ、文字通り常にワームがフリーな状態となるのがこのリグ。
山岡「シンカーが着底した後、ワームはノーシンカー状態。シンカーとワームの間にはおそらく30〜50cmのラインを介しています。MMZはフォールで直線状、シンカー着底からワーム着底、そしてその後の間に元のM字状態へと戻ろうとします。その動きに緩急があって、より釣れるリグになります」
ネコリグでも着底後の自発的な動きでターゲットを誘い出してくれるはずだ。
最後に、山岡さん流のMMZ3サイズの使い分けを訊いてみた。
山岡「基準となるのは中間サイズの『ナミ』。日本のどんなフィールドでも釣れるサイズ感ですね。より小さなベイトを捕食していたり、タフなフィールドなら『チビ』の出番」
チビとナミは、山岡さんの場合「試合でキーパーを獲る」ための武器だという。それでは、最大サイズの『デカ』はどうか。
山岡「特大クラスの魚を狙って釣りたい時に使いますね。これじゃないと反応しない魚もいる。試合ではナミとチビでキーパーを揃えて、デカでキッカーを獲って入れ替え。そんなイメージです」
MMZは3サイズを使い分けることで、さらに戦力が増強されていく。
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