釣り場でも、家庭でも素早く簡単に魚を美味しくするスペシャルなアイテム発売されます。3分、いや1分の手間で魚が◯倍美味しくなる!? 正式名称は『家庭用魚仕立てノズル』、考案者の津本さんは『とんがり帽』と呼ぶ道具にご注目あれ! ついに4月20日に発売です。
津本式は魚の保存力を格段に高めることで、食材としての幅を拡げた画期的技術
津本式といえば、近年、釣り人や魚を取り扱う界隈でホットワードとして注目されている魚の仕立て方。特に、死んだ魚にも「魚の血抜き」ができるという画期的な技術で、津本さんが考案した方法で血抜きをしていくと、鮮魚の保存力が格段に上がることから、魚という食材の可能性が大きく広がりました。
【Profile】
津本光弘(つもと・みつひろ)
革命的な魚の仕立て方、究極の血抜き・津本式を開発、現在も研究を重ねる魚仕立て師。宮崎県の魚卸「長谷川水産」勤務。ホースを使った水の灌流と圧迫で死んだ魚でさえ精度の高い血抜きを行い、鮮魚状態を通常の仕立てよりも長くすることで、魚という食材の保存力と可能性を拡げた。命あるものをより美味しくいただくをテーマに、その血抜きを効率よく活かす『津本式』を作り出した。その技術をYouTubeで余すことなく公開し、啓蒙に努める。
鮮魚状態での魚の保存力が上がることで、魚が持つ本来のおいしさを時間的段階を追って高めたり引き出したりする調理の余白が生まれました。魚の熟成術などもそのひとつです。
プロの効率、プロの仕事から家庭で気軽に扱える技術となるようにサポートしたのが、今回のアイテム
津本さんは、魚仕立て師として日々活躍されているわけですが、仕事としての効率を求め、プロ用の道具、方法を採用しています。津本式の根幹となる『究極・血抜き』という技術は、蛇口にゴムホースを接続し、その水流を使って魚に血抜きを行う技法です。
水産の現場では、ローコストでスピーディに処理ができる画期的な技法ではあるのですが、一般家庭や釣りの現場では、ホースと水道設備が準備できない場合が多く、仮に準備できたとしても水場の規模によっては、やりにくい場合がありました。
そこで、津本さんが思案したのは、そういった設備がなくともコンパクトに現場や台所をなるべく汚さず血抜きができるアイテム、つまり今回紹介する『家庭用魚仕立てノズル』です。
4月20日より津本式.com、一般釣具店、ルアマガオンラインストアからの一般販売がスタートします。
特徴は、ペットボトルに装着して血抜きができることです。本家のホース血抜きのように大型の魚を仕立てるには技術が要りますし、ややこの家庭用仕立てノズルでは力不足ですが、アジやサンマ、サバ、40cm以下クラスの鮮魚であれば、十分な血抜きが可能です。
ペットボトルに装着できることから、釣り場などに現場にも携帯しやすく、カバンやタックルボックスに潜ませておくことができます。
なぜ、◯倍美味しくなる! と言えるのか。
最大10倍魚が美味しくなります! と、本気で言いたいところですが(10倍は盛りすぎ? 9倍ならちょっとした理屈があります)、より美味しくするためには津本式の理解と、調理の分野としての熟成などの技術の理解が必要ですので、その理屈についてはここでは深くは語りません。
ノズルを使用することで、鮮魚の血抜きが行われ、血由来の生臭さがかなり消えます。これがひとつめの美味しくなる理由のひとつ。そして、冒頭にもご説明したように血液は魚の鮮度を大きく下げる要因になりますので、処理により魚の鮮度保持がより簡単になります。
ここからは少しだけ理屈っぽく。魚は生体エネルギー(ATPという物質)が、死後よりイノシン酸と呼ばれる旨味成分に変化することで美味しさが増していきます。半日から数日でその旨味成分がぐんと増し、その旨味成分は時間が経つと身に馴染んでいきます(身質の変化により)。
新鮮でコリコリの状態では増した旨味が身に馴染みにくいので、さっぱりとした食味になりますが、少し時間が経つと、その旨味が感じやすくなるのですね。
ノズルなどで津本式を施すと、鮮度が伸びます。いままでは、イノシン酸が魚に馴染んでくるタイミングになると魚に残っていた血が悪さをして生臭くなったりして美味しくなくなってしまっていたのですが(だから鮮度の良い魚が美味しい! とされている部分があります)、魚の身に魚が持つ本来の旨味が馴染むタイミングになっても、血の影響を受けにくく、逆に馴染んできた旨味成分が影響力を増すのであります。
津本さんは、『津本式の血抜きをして、5日目くらいに狙ってまずは食べてみて!』と話される理由がここにあります。
さて、ここまでは今までのちょっとした血抜き処理でも到達できた領域。しかし、魚にはさらなる美味しさの進化タイミングがあったのであります!
さらに寝かせると、遊離アミノ酸類の旨味が身に影響しはじめる!
ここから先は、津本式で処理した魚といえど、そこに到達するには少しだけ専門的知識が要りますが、魚がさらなる進化、美味しくなる可能性のひとつとしてお話します。
今までは、血の影響を受けてこの次のステージに到達するには職人の技術が必要だったのですが、その敷居をかなり下げてくれたのが津本式なのです。
先ほど、魚が持つ生体エネルギーがイノシン酸という旨味に変わって増えていくと申し上げましたが、この旨味は割と早めの段階で徐々に量そのものは減っていきます。この減少量を優位に抑える効果が津本式の血抜きにはあるのですが、そのイノシン酸がまだしっかりと残っているタイミングで、今度は魚に別の変化がおこってくるのです。
まず、5日を越えて(魚の種類によってタイミングは異なります)、1週間を越えるあたりから、今度は魚の身を構成するタンパク質が遊離アミノ酸類(グルタミン酸などに代表される旨味)の旨味に変化してきます。簡単に言うと、牛肉や豚肉などが持つ、旨味、うま味調味料、昆布などの主な旨味成分です。
そう、グルタミン酸などの旨味成分が増えていきます。これによりイノシン酸という魚の旨味とグルタミン酸などの旨味成分が複合的に絡み合い、旨味のパンチが増し増しになるのであります。ちなみに、イノシン酸1:グルタミン酸1の割合になると舌に感じる旨味は7~9倍になるのだとか!
そのタイミングを見つければ旨さ9倍! なんて魚も出てくるロマン砲なのでございます(ここまでくると、味の好みはわかれるかもしれません、今まで知っている魚の味ではありませんので)。
考えてみると昆布締め(グルタミン酸などの旨味添加)なんかも、ある意味そういった状態を強制的に調理で再現しているんですね。沖縄などで、鮮魚の刺身にうま味調味料をふりかけるなんて文化も、理屈にかなってますよね。新鮮なコリコリな身質を好む九州などで、甘い醤油が刺身などに使われるのはそういった部分に起因するのかもしれません。
ということで、いままで、鮮魚ではそういった状態を調理や調味以外では出現させづらかったわけですが、津本式による魚の保存力向上で、食材としての可能性がまさに広がったわけですね。天然の旨味のは、また味わ深いものなのであります。
『とんがり帽』は、そんな魚の可能性という扉を手軽に開けてくれます。
上記の話は、魚の寝かせを超えて『魚の熟成』に関わる分野ですので、津本式の深い理解や、知識がないと安全面は保証できません(ハードルはグンと下がりましたが)。
ですが、少し寝かせて(5日程度)魚のおいしさが馴染んだころにいただく刺身や、焼き魚は9倍とはいかなくとも感動を誘う食味に変わります。自宅設備でも5日程度、少し頑張れば7日程度は鮮度保持が可能ですので、津本式の血抜きの技法の手軽さと、効果を体感してみてください。
※保存温度が高かったり、脱気がうまくいっていなかったり、血抜き処理がうまくいっていない場合は、ヒスタミン中毒などの可能性がありますので注意してください。最低限の知識が必要になります。
そこに興味を覚えてくだされば、より深い知識を得て、魚という食材を探求してみてください。
今回発売するノズルは、そんな津本式の威力を知っていただくきっかけになるはずです。