海洋マイクロプラスチック問題が解決するかもしれない、釣り具業界の素材革命『NeCycle(ニューサイクル)』が凄い!



マイクロプラスチックは世界中で問題となっています。と、こうかくと規模が大きすぎて身近に感じない人もいるかも知れませんが、実は関連する内容としては、水中に残される釣り具も問題となっているんです。これは多くの場合、自然に分解されない『プラスチック素材』が原因となって発生している問題です。もちろん、釣り具業界でも過去に何度も自然に還る素材で製品開発は行われているのですが、今現在の市場を見れば、そういった取り組みがあまりうまく行っていないことは想像に難く有りません。ところがそんな現状に待ったをかける、画期的な素材が開発されたみたいなんです!

その名も『NeCycle(ニューサイクル)』!

NECプラットフォームズ株式会社が取り扱う高機能バイオ素材。

それが『NeCycle(ニューサイクル)』。

石油資源の枯渇やマイクロプラスチック問題など、従来のプラスチックを取り巻く問題は多く存在します。

そこでNECグループは2000年代初期から独自のバイオプラスチック開発を進めていたそうです。

2022年より実用化が進められていく『NeCycle』はまさしくその集大成。

石油を使用することなく、植物資源を主体として生み出すことが可能であり、またその全てが自然環境中で分解されていくのです。

しかも素材としての特性は限りなく従来のプラスチックに近しいとくれば、それはまさしく夢の素材!

まずはその原料に関して掘り下げていきましょう。

植物由来のセルロースをベースに製造

一般的なプラスチックに使われることが多い石油資源は化石燃料とも呼ばれており、その現存量は年々減っていく一方だと言われています。また、化石燃料とは太古の植物が由来となっているため、使用すると固定化されていた二酸化炭素が現代の地球に蘇ることとなり、例えば地球温暖化の一因となってしまうのです。

ところが、『NeCycle』の原料となっているのは現存する非食用の植物資源。

ほとんど利用されていない木材や稲わら、海藻といった植物を使用するのです。

植物を構成する主成分となる「セルロース」を樹脂化し、安全な添加成分を配合、化学変性させることで『NeCycle』は生み出されています。

また光合成によって二酸化炭素をとりこみ成長する植物を利用することはすなわち、炭素資源を再生可能なものとして扱えることも意味しているのです。

つまり、石油資源を使用すること無く、現在未利用の資源を活用でき、なおかつカーボンニュートラルにも繋がるわけなんです。

素材としての品質にも優れる!

いくら環境に配慮した素材であっても、使用した製品の質が悪くなってしまっては元も子もありません。

ですが『NeCycle』は、この点においても高い水準でクリア!

強度や加工性など、一般的なプラスチック素材にかなり近い特性を持ち合わせているのです。

そのため、例えば従来のプラスチック素材を使って製品を製造している会社であっても、機材を改めたり、製品の設計を変えることなく、『NeCycle』に切り替えることが出来てしまう可能性が高いんです。

中でも質感には特に優れており、日本でも馴染み深い『漆』の美しさを再現するに至っています。

すでに募集期間は終了していますが、クラウドファンディングでは『漆』調のNeCycle製スマホケースが大盛況だったようです!



地球に優しい『環境調和性』

化石資源由来であるプラスチック素材は、その全てがリサイクルされれば環境への影響は少ないと言えますが実情はそう甘くもなく、自然環境へと流出し、いわゆる「マイクロプラスチック」などの問題のを引き起こしています。

これらの問題の要因は、従来素材の場合、自然環境下でいつまでもプラスチック素材として残り続けることにあります。

ですが『NeCycle』ならその心配はありません。

先にも説明している通り、使用している素材の約50%が植物資源の天然高分子(セルロース)であり、残りの半分も調色や耐傷性を調整するための安全な成分を使用しています。

これが何を意味するのかというと、『自然環境中で長期的に分解する』ということなんです。

NECプラットフォームズが行った試験によれば、人工海水を用いた深海に近い模擬環境(水温約2℃/pH8程度)下において、1mm前後に顆粒状に粉砕した『NeCycle』が約1年後にはほぼ分解されることが予測されています。

日本バイオプラスチック協会の定める生分解性プラスチックの定義が「3カ月で6割以上が分解」ですのでそれに比べるとかなり時間はかかりますが、『NeCycle』を用いた4×10×80mm程度の一般整形部材であれば、4~5年で分解されると推測されているのです!

もちろん、リサイクル性も忘れてはいけません。

繰り返し成形時の劣化が小さいのも『NeCycle』の特徴。

製造工程から発生する端材の再利用はもちろん、製品となったあとの『NeCycle』を解体・分別したものを使用しても、外観不良や著しい物性劣化がないんです。

つまり、素材として繰り返し使用可能なうえに、万が一、自然界に流出してしまっても分解されることで環境汚染にはなりにくいのです。

釣り具との相性は?

それでは『NeCycle』を釣り具に使うとなるとどうなのでしょうか?

冒頭にも記しました通り、釣り具における環境汚染が問題になっている昨今、使用される素材が環境に優しく、万が一水中に残っても分解されるのであれば少しは心穏やかに釣りができますよね。

しかも素材特性が従来素材に近い『NeCycle』であれば、これまでの釣り具と変わらない感覚で釣りができる道具が制作できるかもしれません。

また、これまでにあった釣り具の生分解性素材のものとは違い、分解されるまでの時間が長期間になることで、通常使用の範疇では製品の使用感が変化しないことも予想できます。

1回使って半年後にボックスを見たらボロボロ……なんて心配も無いわけです。

釣り業界に大きな動き!?

実はそんな『NeCycle』が、2022年中に一部釣り具の素材として使われることが決まっているとか!

釣りという楽しい趣味を堂々と続けていくためにも、『NeCycle』の今後の動向に注目したいですね!

JB日本バスプロ協会会長であり、一般社団法人全日本釣り団体協議会代表理事でもある山下茂氏も釣り具業界におけるSDGs問題を深く考えている1人。

かつて日本のバスフィッシングシーンに環境負荷の小さなワーム素材(Feco制度)を浸透させたように、プラグの素材においても環境負荷を考慮する方向を目指しているという。そのための拠点として、富士河口湖町の大石エリアに『生分解性ルアー研究所』の設立も予定だとか!こちらも今後の動きに注目です!

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