丸形両軸リールを使いやすくする「オフセットグリップ」でロッドをカスタム

トップウォータープラグの愛好家が使うルアーは個性的だ。それも「トップ」というジャンルなだけでなく、釣果を上げることとは真反対にあるような印象すら受けてしまう(もちろん印象と実態は異なるのだが)デザインだったりするのである。そしてそれは、ロッドやリールに関しても同様で、骨董品のような、そしてときにはファンシーグッズのような、そんな道具を使っている。彼らはなぜそれを選ぶのか? その歴史と魅力、そして利点を紐解いていこう。

●文:ルアーマガジン編集部

2024 シーバス特集

玉越和夫(たまこし・かずお)

日本のバス釣りの黎明期から活躍するアングラーであり、株式会社スミスの専務。当然現役バリバリで、トラディショナルなタックルはもちろん、最新のタックルも使いこなす。

オトコゴコロをくすぐるあのタックルの秘密

それしか選択肢がないそんな時代の名残

アブのアンバサダーに代表されるような丸形リールに、拳銃のようなグリップを持つ柔らかいロッド。

多くのアングラーが思い描く、トップウォータープラグ愛好家のタックルだが、ある意味時代に逆行しているともいえるそういったタックルをなぜ選ぶのか?

日本のバスフィッシングの黎明期から活躍するアングラー・株式会社スミスの玉越和夫さんにお話をお聞きした。

玉越「そういう『スタイル』だから、としか言いようのない部分もあります。アメリカからやって来た、あの頃のバスフィッシングへの憧れ。もちろん道具として心をくすぐるものもあります」

時計やカメラなど、古き良き時代の香りを今に残すアナログなモノの魅力は、何もリールに限った話ではないのだ。

玉越「歴史的な背景でいいますと、ヨーロッパで生まれたルアーフィッシングがアメリカにやってくると、シェイクスピアとかによってベイトリールが著しく進化していきました。ロッドもトリガー付きが出て、オフセットハンドルタイプも誕生しています。日本にやってきたバスフィッシングはそのアメリカのスタイルそのもので、丸型リールにオフセットグリップ、あとはクローズドフェイスリールくらいしか選択肢が無かったんですよ」

ところが、時代を経て実践的な道具としてタックルが大きな進化を遂げてなお、トラディショナルな『スタイル』を求めるアングラーはあとを絶たなかった。

かつて憧れたかっこいいバスフィッシング。その要素を構成していたのは、ストレートグリップにロープロファイルリールではなく、オフセットグリップと丸形リールだったのだ。

しかし勘違いしないでいただきたい。トラディショナルではあるものの、決して進化が止まっているわけではないし、ならではの機能や利点も兼ね備えているのである。

【CHECK】これをなんと呼ぶのか?

トップウォーター愛好家の使用しているロッドとしてすぐにイメージの湧くこういったロッド。玉越さんにお聞きしたところ、総称としては「オフセットグリップ」が正しいとのこと。ちなみに「チャンピオングリップ」は商品名、「ガングリップ」はグリップの形状の名称だ。

お気に入りのルアーをもっと上手に泳がせたくなったとき、それが入り口になる

オフセットグリップだからこその利点

手首を自然に使えるのもこのタイプのグリップの強み。補正をしなくても、正確なキャストをしっかりと決めることが可能だ。

玉越「まずひとつは、リールが丸形だということです。どうしても高さがあって、ストレートグリップだとクラッチボタンが遠くなってしまいますし、スプールも親指で抑えにくい。そこで、リールシートをオフセットさせてリール全体の位置を下げることで、クラッチを切ったりサミングしたりといった動作が快適にできるんです」

そのビジュアルや質感に憧れるアングラーも多い丸型リール。最新鋭のリールにはない問題点を抱えるからこそ、組み合わせるロッドには専用とも言える機構が備わっているのだ。

玉越「それから投げやすさです。ストレートグリップで投げる場合、手首の自然な向きは少し内側を向いてしまいますので、無意識のうちに補正を掛けてキャストすることになります。ですが、ガングリップ形状なら、グリップに設けられた曲がりのお陰でこの手首の向きが自然になって、より楽に投げられるわけなんです」

そんなトラディショナルなタックルだが、スミスからは最新の技術と理論にもとづき、スーパーストライクシリーズとして展開している。

玉越「こうしなくちゃいけないとかはありません。でもトップウォータープラグはロッドによって泳ぎが全く変わってきます。今使っているプラグを、もっと上手に泳がせてあげたくなったら、ぜひともスーパーストライクを使ってみてください」

リールシートがオフセットされることで、クラッチボタンへと指を自然に伸ばすことができる。

スーパーストライク マグネシウム・オフセット・グリップ シングルグリップ

その圧倒的軽さは革新的

スーパーストライクのグリップ、通称「ストライクグリップ」には、超軽量金属のマグネシウム合金が使用されているため、従来のグリップに比べると圧倒的に軽量。これは使用時の疲労感を軽減させる狙いがあるのと同時に、現代のより軽いブランクスやリールと組み合わせた際のバランスを取るという狙いもある。

また、新設計のバットフェルール装着機構は多彩な組み合わせを可能にするだけでなく、高負荷にも負けない強度にもつながっている。トラディショナルにして、最新鋭なのだ。なお、グリップタイプにはシングル以外にもストレートシングル、セミダブルの2種類をラインナップ。カラーはガンメタリック、グレー、マットブラックの3色だ。

スーパーストライクとチャンピオングリップの歴史

スーパーストライク(スーパーストライカー)はスミスが1978年にリリースした日本向けのバスロッドシリーズ。当初はフェザーウエイト社の「チャンピオングリップ」を使用していたものの、フェザーウエイト社が倒産したため、スミスが復刻させている。そしてこの「チャンピオングリップ」を進化させたものこそが『ストライクグリップ』なのだ。

かつてスミスから発売されていたチャンピオングリップが159gなのに対し、マグネシウム合金製のストライクグリップでは115g! 1oz以上も軽くなれば、使用感は相当変わるはずだ。

チャンピオングリップでは3本爪で支えていたブランクスは、ストライクグリップでは新設計のバットフェルール&コネクターを採用。ブランクスがフェルールの奥まで刺さることで強度も格段にアップした。

スーパーストライクシリーズ

トップウォーター用ロッドで24種類!

使用するルアーの重さやタイプ、フローターやボートなどのスタイルに応じた細分化されたラインナップは24種類にも及ぶ。全てのアイテムでストライクグリップとのセットを選ぶことも可能。組み合わせを選ぶ楽しさもあるのだ。

プラッガー

スミスの丸型リールはちょうどいいサイズ感

2011年に発売されたリール「プラッガー」が2021年に復刻。丸型リールらしい趣を持ちながらも、日本人の手に馴染むちょうどいいサイズ感なのが嬉しい。左右ハンドルにシルバーとレッドの2色をラインナップ。ぜひともスーパーストライクと組み合わせたい。

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!


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