釣りに「絶対釣れる」という理論は存在しない。だが「確実に釣れる確率を上げる理論」は存在する。井上友樹流「ショア青物理論」は、シンプルでわかりやすい。そして、確実に釣れる確率を上げることができる。
●文:ルアーマガジンソルト編集部
井上 友樹(いのうえ・ゆうき)
ジャンプライズ体表。ヒラスズキの世界記録保持者。ショアから狙うモンスターゲームを得意とするプロアングラー。また、ルアー開発者としての人気も高く、膨大な実釣データとコミットした、ルアー&タックル開発の姿勢が広く支持されている。
釣れる確率を上げるためにできること!
大別すると「ジギングゲーム」と「キャスティングゲーム」に分類される、ショアからの青物ゲーム。どちらの釣り方も等しく有効だが、今回は、よりゲーム性が高い「キャスティング」に絞り込んだ井上友樹理論を紹介。
ショア青物ゲームを大別すると「キャスティング」と「ジギング」の2タイプ
ショア×キャスティング×青物の条件がそろったとき、使用するルアーはトップウォータープラグか、シンキングペンシル。
井上「この2タイプのルアーが、自分の全ルアー戦略の90%を締めます。残り10%はレアケース対応の、細かい釣り方になります。まずはトップとシンペンの2タイプのルアーの使い分けを把握することが、釣果アップの近道」
どんな状況のときに、どのタイプのルアーを、どのように使えばいいのか? 膨大な実釣経験から導き出された井上友樹理論をマスターすれば、ナブラ撃ちのときに『なぜか自分だけが釣れない!』という悔しい思いをする機会も減少するはず。
井上「釣りに絶対はありません。が……今回自分がご紹介する理論は、自分の経験から導き出した、釣れる確率が高くなる考え方。絶対に釣れるという理論ではないけど、絶対に釣れる確率が上がる理論です。難しいことは、ひとつもありませんので、参考にしてみて下さい!」
トップウォータープラグとシンキングペンシルの使い分け
ボイルは青物ゲームにおいて千載一遇の大チャンス。だが同一のボイルを狙っているにも関わらず、隣のアングラーは連続ヒットが続き、自分はノーバイトという苦い経験をしたことがあるアングラーは、意外と多いと思われる。なぜ自分だけが釣れないのか?
井上「そんなとき、人は自分が投げているルアーに対して、半信半疑になって迷います。迷った挙句に、次の一手の判断が瞬時にできなくなります。ボイルのチャンスは一瞬。迷っている間にチャンスは去ってしまいます」
迷いを払拭するために大切なのは、状況にリンクした適切なルアーローテ術。状況を判断するには、海況を把握することが大切。だが、難しい知識は何も必要ない。
青物のショアキャスティングゲームで使用するルアーは主に2タイプ!
井上「海を見た感じ、そのままの判断で十分です」
具体的には、どのような情報をチェックするんですか?
井上「海面を眺めて生命感はあるか? つまりベイトの存在が確認できるか? 海鳥は飛んでいるか? ボイルはあるか? もしくは、生命感は全く感じられないか? そして、潮は濁っているか? 澄んでいるか? 光量は? ローライトなのか? ハイライトなのか? などですね」
すべて、視覚的な情報ですね。
井上「自分の場合は、基本的にはそれだけの情報があれば、ルアーローテーションの軸は完成します。つまり無駄な迷いでチャンスを逃す心配がありません。こうした状況のときにはこのタイプルアーを投げて、そのルアーがダメだったら、次はこのタイプルアーを試す。という自分の中の”流れ”があります」
自分の中に、実績のあるパターンを引き出しとして持っておくということですね。
井上「一瞬の判断が明暗を分ける青物ゲームでは、あらかじめ自分の中の”流れ”を構築しておくことは大切。自分の中の”流れ”を作るには”軸”になる考え方が必要。ここではその”軸”の考え方を紹介していきましょう」
[ヒラマサ10kgクラスまでを想定した井上友樹さんのメインタックル]
ケース1:海面に生命感がないとき
ボイルがない。ベイトが見えない。海鳥もいない。そもそも生命感がない。そんなときには居付きの青物を広範囲から誘い出すことで、ターゲットとの遭遇率を高めるのが効果的。
トップウォータープラグによる誘い出しメソッド!
[朝&夕/ニゴり潮]
井上「魚に見せるように、トップウォータープラグをスローに規則正しくアクションさせます。広範囲から気付いてもらえるように丁寧に誘います。イメージはブルンブルン、ピョコン。ブルンブルン、ピョコン。基本はコレの繰り返し」
[日中]
井上「日の出から1時間経過したら日中です。一方、夕マヅメは日没の1時間前から。朝、夕の各1時間以外はすべて日中の認識です。日中の誘い出しは、テンポを上げて、リズムを崩して、変化球を交えながら水しぶきを入れます。イメージはピョコピョコピョコ、ジャバジャバ。ジャバピョコ、ジャバピョコピョコ。という具合に不規則に速く強くアクションさせます」
ケース2:海面に生命感があるとき
ナブラがある。ベイトの姿が確認できる。もしくは海鳥がいる。といた、目の前の海から生命の気配が感じられる、そんなときのルアーセレクト。
最初はトップウォータープラグの誘い出しメソッドから試す!
井上「最初のルアーセレクトは生命感がないとき同様、トップウォータープラグ。ですが、このケースは釣果の差が露骨に出ます。ルアーセレクトもよりセレクティブになります。ルアーサイズとルアーカラーを的確にマッチさせる必要があります」
※井上流カラーセレクトに関しては、別の記事で詳しく解説予定
[ベイトが大きい&広範囲散発型ボイル!]
井上「ボイルは確認できるけど、ボイルが広範囲に及び、狙い場所が定まらない。そんなときにはトップウォータープラグの方が狙いやすいです。こうした状況下ではピンでは狙えません。トップウォーターの誘い出しメソッドで広範囲を探ります。その際、重要なのが極力ベイトサイズとルアーサイズを合わせること。そこはかなり大切です」
[生命反応はあるがトップウォータープラグでは釣れないとき!]
井上「ベイトが小さい場合や広範囲で散発的に発生するボイルには、シキングペンシルのスキッピングの一択です」
シンキングペンシルを水面でアクションさせるということですか?
井上「そうですね、広範囲散発型ボイルには、ベイトが大きいケースとベイトが小さいケースがあります。ベイトが小さい場合はトップウォーターの誘い出しが効かないことが多いです。そんなときにはロッドを立てて、シンキングペンシルのスキッピングが効果的。ただし、この場合のルアーサイズは、1cm単位でマッチさせる必要があるので結構シビアです」
[ベイトボールを見つけた場合]
井上「ベイトボールを見つけた場合には、シンキングペンシルを用いた高精度の釣りで対応します。ベイトボールというのは、弱いベイトフィッシュがフィッシュイーターに追われてまとめられるケースが多い。つまりベイトが小さい。大きくて遊泳力があるベイトは、ボールにはなりにくい
なるほど。そういった場合のルアーセレクトは?
井上「このケースはシンキングペンシルを用いた高精度の釣りが必要となります。高精度というのは、ピンスポット狙いという意味でもあるし、レンジやルアーサイズ、カラーチョイスなどの全ての意味においての精度となります。釣り方自体はさほど難しくはありません」
具体的には、どうやってベイトボールを攻略するんですか?
井上「基本はベイトボールの中にシンキングペンシルをピンで入れて、ただ巻きします。このときに大切なのは高精度に入れることと、使用ルアーのサイズ&カラー。ベイトサイズはベイトボールによって違うので、探りながらなるべく正確にマッチさせます(※カラーは次頁参照)。それでも食わないときにはシンペンを沈めます。10秒ほど沈めると、フォール中にバイトがあるか、もしくは巻き始めたときにゴンッ! と来ることが多いです。ベイトボール&ボイルを発見したら、海面の約5倍の魚が下のレンジにいると思って下さい」
視覚では確認できない深場で、多くの青物がトップウォータールアーを見切っている
青物のトップウォーターゲームを展開していると、あと一歩でフッキング! という瞬間に魚が反転して帰ってしまうことはよくあること。
井上「ですが、この現象には真相があります。足場の高い位置から釣りをしているとわかるのですが、実は海面で今…見切った! と、わかるレベルの見切り方はごく一部。海面には見えない深いレンジで、かなり多くの青物がルアーを見切っています」
アングラーからは見えていない範囲で、実は色々なことが起こっているんですね。
井上「この現実を踏まえた上で、釣り方やルアーを変えた直後に、海面でも見えるレベルの見切りが増えたときにどう考えるか? 見切りが多いから、このルアーはダメだな、と考えるか? 見切られるレンジを深場から海面まで引き上げることに成功したから、フッキングまであと一歩、と考えるか? この違いは大きいです」
青物を狙っていて全く反応がないと、ネガティブな考え方に陥りやすいが、井上さんのように、実績を踏まえた上での幅広い引き出しを用意することで、取れなかった反応を引き出せる可能性が高まる。ぜひとも、釣行時の参考にしてほしい。
※本記事は”ルアーマガジンソルト”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。
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