【涸沼の秋シーバス後半戦】 イナッコを好んで食べるランカーハントは『マッチ・ザ・ベイト』と『レンジ攻略』がカギを握る!【ヒヤマンの茨城涸沼1年釣記】

関東唯一の汽水湖であり、東京湾に次ぐシーバスフィールドとして名高い「涸沼(ひぬま)」。特に秋のイナッコパターンは有名で、毎年多くのアングラーがランカーシーバスを追い求めチャレンジしに訪れる。しかし、決してイージーではなく、地元の名手も手を焼くほど癖の強いフィールドであるのが涸沼。そんな涸沼に20年以上通い、エキスパートとしてコンスタントに釣果を出し続けるのが「涸沼のヒヤマン」こと檜山敏崇さん。今回は、前回紹介した9月頃の解説に引き続き、メインベイトとなるイナッコパターンをベースとした、終盤戦の分析と攻略法を紹介してもらった。

●写真/文:檜山敏崇

涸沼シーバスから茨城サーフまで! 茨城のランカーハンター・ヒヤマン!

檜山敏崇(ひやま・としたか)
茨城シーバスの聖地・涸沼をホームとするDAIWAフィールドテスター。「涸沼=ヒヤマン」と呼ばれるほどの涸沼水系エキスパートであり、これまでに数多の涸沼ランカーをキャッチしてきた凄腕。大型ルアーからワームまで、幅広いルアーを使いこなし、難攻不落とされるボイル攻略も得意とする。茨城サーフのフラットフィッシュのエキスパートとしての顔も持つ。

檜山さんの涸沼シーバス攻略「要点まとめ」

攻略項目涸沼攻略情報
季節10月中旬以降
ベイトイナッコ(10〜15cm前後)
有効アクション「S字スラローム」と「引き波」
ルアー例「モアザン モンスターウェイク156F」
「モアザン クロスウェイク140F-SSR」
「モアザン レイジーファシャッドJ170.5F」
「モアザン レイジーファシャッドJ156F」
「モアザン レイジーファシャッドJ138F」
「モアザン レイジーファシャッド120SS」
ロッド「モアザンブランジーノEX AGS 97ML/M」「モアザンブランジーノEX AGS 98M/MH」
リール「モアザンLBD2510-PE」
※製品はすべてDAIWA

檜山さんの過去の記事はコチラ

ランカーに期待が高まる産卵前の荒喰いのタイミング

檜山「涸沼水系のシーバスもいよいよハイシーズン終盤戦に突入。産卵前の秋の荒喰いの時期ですね」

冬に産卵を控えたシーバス(マルスズキ)は、水温が下がり始める秋頃から、より活発に餌を追うようになる。

檜山「地域差こそあれど、これは全国共通です。重低音を響かせるランカーシーバスの捕食音も頻繁に聞こえようになってくると、いよいよだなと感じますね。涸沼のシーバスも昼夜問わず餌を追う姿が多く見られ、陽が沈む頃に集結した大量のイナッコにボイルし、あちこちで捕食音が鳴り響いています。

目の前で繰り広られる荒々しいボイルに、私も含めシーバスアングラーはきっと夢中になることでしょう。長きに渡り私も毎年この光景を見続けていますが、毎度毎度夢中になりすぎて時間を忘れロッドを振り続けてしまいます」

――檜山さんも日々、シーバスを追いかけていることと思いますが、10月の涸沼の状況はいかがですか?

檜山「10月も中旬頃には、秋らしくなり河川も本湖も全体的にシーバスの個体数は多くなりつつあります。例年通りベイト量も多く、それに比例してシーバスも多く入ってきているようです。エリアによりベイト量の偏りは感じられますが、一般的なベイト量の度を超えている涸沼。

数千、数万といるイナッコの群れからルアーに反応させるのはなかなかの至難の業です。ボイルしてるけど釣れないと言われるまさにクセのあるフィールドです。東京湾をメインフィールドにしている知り合いも言っていましたが、ここまでの量は湾奥河川でもないとのことです」

メインとなるベイトは 15cm前後のイナッコ! このサイズ感を意識したルアー選択が重要だ

イナッコとはボラの幼魚のことで、涸沼の晩秋ランカー攻略にはこのベイトの存在が欠かせない。

檜山「ルアーもメインベイトとなるイナッコのサイズに合わる必要があります。前述したように、涸沼にはイナッコが大量に存在します。イナッコのサイズも現時点(10月中旬頃)では10cm~15cmとバラツキはありますが、大きめの15cm前後のイナッコの群れには比較的大型のシーバスが付く傾向にあるようです」

シーバスにとって、一度の捕食で効率的に栄養を蓄えなければならない時期でもあるため、捕食しているベイトのサイズも重要になってくる。

檜山「ルアーに引っかかってくるイナッコのサイズはランカー狙いにおいては重要な要素だと思っています。たとえば、大きめのベイトがいる状況で小さいバイブレーションが活躍することもありますが、元気のある小型が先にバイトしてくることも多いので、一発大型狙いではベイトサイズにあったルアーを選ぶようにしています」

イナッコとはボラの幼魚のことで、10〜30cmほどの個体のことを指す。涸沼を代表するベイトフィッシュのひとつ。

攻略レンジを見誤るな

前回の記事でも触れているが、全体的に水深の浅い涸沼は、ルアーをトレースするレンジがかなり重要な要素になってくるようだ。

檜山「私が今まで釣り上げて来た80cmを超えるランカーシーバスは、涸沼においては水面~水面直下でのヒット率が極めて高い印象です。中層狙いのルアーでもヒットはありますが、ボイルしている音はデカくても掛かったのはボイル音と違うサイズだった事が多々ありました。

ベイト大量の中、大型個体が多くボイルしている状況では攻めるレンジによっては多少のサイズ分けは出来ると思います。デカいボイルが頻発している時、ヒットに持ち込めないのでレンジを入れようとイナッコの下の層を意識して中層を引くと、釣れる確率はグンとあがりますが…ボイルの周りにいるフッコクラスのヒット率も上がるようです」

――サイズを意識して狙い分けることは可能ですか?

檜山「ランカーサイズがボイルしている状況では素直に水面~水面直下を意識するとサイズアップが図れるかもしれません。風が強ければベイトは沈むし、闇夜の静寂ならベイトは浮き気味になります。その時の状況に合わせた棚取りはとても重要です。

また11月に入り終盤を迎える頃には水温もグンと下がるとイナッコもボトムベッタリになります。イナッコのレンジに合わせボトムも意識した釣りが出来るよう、これからの時期はその時の状況で表層、中層、ボトムと3つのコースを引けるルアーをボックスに用意しておくと良いと思います」

――ちなみに、ランカーシーバスを狙って釣ることは可能ですか?

檜山「シーバスを狙うにあたり、釣れてくるシーバスのサイズは正直選べません…ですが、ポイント選択や使うルアーによっては多少なりとも大型個体に近付けると私は感じています」

ルアーへの反応がいいのは新月の潮回り

涸沼本湖に限らず魚釣りにおいては時合いは重要な要素だ。

檜山「朝夕のマズメ時、流れの効き始めや潮の止まりかけ等、魚が捕食行動を開始する時合いは多々ありますが、流れの緩い涸沼では潮周りはとても重要です。秋のハイシーズンの涸沼水系でよく釣れるタイミングはズバリ『陽が沈む頃に満潮を迎え、大潮~中潮の下げ潮が効いている時間帯』です。

その中でもルアーに反応が良いのは新月の潮周り。満月と新月ではボイルの頻度にかなりの差があります。もちろん明るい月夜でも釣れますが、満月、無風、静寂などは難しいと感じています。月夜ではベイトが大量にいてもボイルも極端に少なく中層からボトムを探りなんとかヒットに持ち込むような釣りになってしまいます。ボイルの頻度も圧倒的に新月の闇夜の方が多いですね」

群れる80クラスと孤高な90オーバー

檜山さんが過去にキャッチした90cmオーバーのシーバス。尾びれは隠れているが、体の太さがサイズを物語る。

檜山「私の今までの経験を踏まえた話になりますが、80cmクラスのランカーシーバスと90cmを超える個体とでは少し釣れるタイミングに差があると感じています。ただ、あくまでも個人的見解という大前提で、このことについて少々かいつまんで説明させてもらいます。」

――10cmの体長差で性質が異なるということですか?

檜山「はい。サイズごとにまとまっているイメージがあります。前述したようにベイト量の多い涸沼ではイナッコにボイルする沢山のシーバスを見ることができますが、イナッコ付きシーバスを釣って来た中で感じることは、基本的にある程度の群れで行動しているということ。

さらに、同じサイズで固まっているようで50~70cmクラス、70~80cm後半クラスがボーダーライン。ボイルの音から判断してもアベレージ60cmの群れに70クラス、もしくは80cm半ばまでは混ざるイメージです。運に左右されますが、稀に90~92cmクラスが釣れたこともあります。ただし、90cm半ばが掛かったことはかなり少なく、大体はアベレージが揃う感じです」

――それ以上のサイズになるとどうですか?

檜山「94cm~103cmまでは計7本をキャッチしていて、その時のことを思い出すと9割はピンポイントで仕留めていました。このことから、70cmクラスの群れの中には80cm後半まではいても90cmを超える個体は少ないのではないかと思っています。

90cm前半に関してはこれまでそれなりに釣ってきましたが、何本釣り上げたかは記憶にありません。ただ、大型個体95~103cmの計5本のヒットシーンは今でも鮮明に覚えています。このサイズになると、ここ数年は釣ることが困難になってきていますね」

――サイズをかなり細かく分けて分析されていますね。ちなみに、超大型個体はどんなタイミングで釣れることが多いですか?

檜山「派手にボイルしているタイミングで釣り上げた訳ではなく、すべての魚が静かなタイミングでの釣果でした。ボイルもとくになく、流れも緩い状況。普通なら場所移動してしまうタイミングで、なんならそのポイントは最初から選択肢に入っていませんでした。

このことから超大型個体は餌を摂るタイミングが、他のサイズの魚と少し違うのではないかと思っていまして…。過去にはそのようなタイミングに的を絞って釣行を重ね、バラしてしまった超大型個体が何匹もいます」

――釣り上げた経験がないと、なかなかそのような分析には至りませんね。檜山さん、さすがです。

檜山「私の持論ですが、90を超える大型個体を狙うならば、一か八かの掛けが必要になってくると思います。『ボッコ! ボッコ!』と捕食音を響かせているシーバスの中から大型を狙うよりも、ボイルも少なく人の姿が無い(人が入っていない)タイミングで、静かに潜む超大型個体を狙う。

かなりストイックな釣りになってしまいますが、そんなランカー・一発狙いというのも、夢があって面白いかもしれません。10年前と比べると90cmオーバー自体、数が減ったと感じている涸沼において確率はかなり低くなってはしまいますがね…(笑)」