メガバス次世代『ライブX』が目指していくものとは? 伊東由樹さんロングインタビュー【ライブXがグッドデザイン賞2022受賞】

国内屈指の歴史を持つルアーメーカー『メガバス』のCEO・伊東由樹さんが23回目のグッドデザイン賞を受賞した。受賞アイテムは蘇った伝説『ライブX』。優れた初代モデルから脈々と続く系譜と、グッドデザイン賞に込められた想いを伊東さんに語っていただいた。今回は今後のライブX、モデルIIについて。

●文:ルアーマガジン編集部

2024 新製品情報

釣り具を釣り具のままで終わらせない。バス釣りの『求道』が肯定の歴史を紡ぐ

新たなライブXに迫る!

伊東「実は今回グッドデザイン賞を受賞したライブX、『モデル I』なんです。つまり『モデル II』がこの後に控えています。といっても、潜行レンジが違ったり、サイズ感が違ったりというバリエーションモデルではありません。モデル IIが目指しているのはより濃密なハードマテリアルへのコンタクト。モデル Iはものにコンタクトした時に素早く回避してくれるのですが、モデル IIは食いつくように泳いでいく。ベイトフィッシュやそれを狙うバスが付きやすいゴロタや消波ブロックの隙間にひとつひとつ入って直撃していける…。今まではソフトベイトで撃っていった穴を、横方向の巻きで探っていけるようになるわけです」

新製品展開はもちろんそれだけではない。特にコンセプトアルバムにも掲載されており、全国のアングラーが心待ちにしているモデルがいよいよ完成に近づいているというのだ。

伊東「例えばLBO IIを2つ搭載したジョイントベイト『ゴーラム』はただ釣れるだけでなく、目で見て面白いという要素も持たせるように開発を進めています。同じスイムベイト系では、マグドラフトシリーズの『アユトゥイッチャー』と『ハスレイバー』も来年の春には発売できると思います。それからダークスリーパーシリーズの最新作『スリーパークロー』もほぼ完成しています。今江(克隆)さんさんと進めているアイバイアイ『フューリアス』はさらに発展して、2タイプで現在開発が進んでいますね」

まさに目白多し。しかしもちろん、まだどこにも公表されていない、開発中の製品も控えている。続報に期待したい。

ゴーラム【メガバス】

マグドラフト アユトゥイッチャー【メガバス】

マグドラフト ハスレイバー【メガバス】

スリーパークロー【メガバス】

グッドデザイン賞に挑み続ける意味

35年の歴史を刻むメガバス。伊東由樹さんのグッドデザイン賞の受賞は、Vフラットやアームズから脈々と続くそのプロダクトデザイニングの歩みを可視化しているともいえるかもしれない。

伊東「釣りの道具って、魚が釣れたもの勝ちみたいなところがあるじゃないですか。魚はモノを言わないし、釣れたらその結果が1番、みたいな。技術や意匠性やデザイン性がなくても、とにかく釣れればいい。そういう風に処理されてきたのが、一般的な釣り具の世界なんです。では第三者の目を通じて、釣りを知らない人から見たときにどういうものなのか? それを知りたいというのもあります」

しかしグッドデザイン賞に挑み続けるその根底には、バスフィッシングの置かれる立場を憂いた伊東さんの想いも含まれていた。

伊東「2000年頃からですかね。ブラックバスのリリース禁止に端を発して、バスフィッシングが社会的に認められにくい風潮になっていました。ですが、バスフィッシングほど、高度なアプローチを要する釣りは他に無く、使用する道具も究極の釣り道具だと思うんです。それくらい、バスフィッシングの道具を作ることは、『魚を知ること』に近いんです。そうした理念や概念は誇れるものだということを世の中に示したいという思いがありますよね」

心血を注ぎ釣り具を制作する人間としての矜持。それを社会に示す場として選んだのが『グッドデザイン賞』だったのだ。

伊東「今は日本デザイン振興会がやっていますが、当時は通商産業省が主催する、工業分野における意匠性や技術を正当に評価する公の場でした。追求してきたテクノロジーやデザインスキルを、社会に対して正当に評価していただくことで、魚そのものを深く探究してきた自分たちの行為が胸を張れる尊い行為であると示したかったんです。医療機器や自動車、スポーツ用品など、先進的なデザイン性や技術力を正当に評価できる目からみても、バスフィッシングの道具が優れたものであると認めてもらえる。そこに意義がありますよね。そしてそこには誇りを持ってほしいです。私達の遊びは決してグレーなものではないことの証でもあります」

バスフィッシングへの『求道』。その行為が社会的に認められることはすなわち、世の中の発展に寄与していく可能性すら秘めている。

伊東「自動車レースがそうなんですよね。SDGsや環境保護といった観点だけで論ずるのであれば、あれだけガソリンを焚いてF1でガンガン走って何になるんだって思う人もいるかもしれません。ですが心血を注いで開発し、命をかけて走った人たちがいたからこそ、世界のモータリゼーションや自動車工業の発展に繋がった。だからこそ今、電気なのか水素なのか、よりよい技術の開拓へと進むことができているんです」

釣りをごく一部の人間の趣味に終始させるのではなく、日本の誇るべく文化として、社会へと問いかけ続ける。そして得られる称号は獲得し続ける限り、先人たちの歩みを、そして我々の遊びを肯定し続けてくれることだろう。

前回のインタビュー

伊東由樹さんのプロフィール

伊東由樹(いとう・ゆき)

メガバスCEO。伝説のロッド『アームズ』をはじめ、バスフィッシング界の歴史に幾度も名を残す正真正銘のレジェンド。35年という、国内を代表するルアーメーカーを経営する手腕はもちろん、アングラーとしての腕前も超A級。

グッドデザイン賞とは

製品や建築、ソフトウェアやシステム、サービスなど、形の有無に関わらず優れたデザイン性(理想や目的)を持つものごとをデザインと捉え、その質を評価・顕彰する日本デザイン振興会による活動。国内最高峰の工業デザイン賞として広く認知されており、製品の素晴らしさのバロメーターであると同時に、企業やデザイナーのたゆまない努力の証としても知られている。

LIVE-X(ライブX)【メガバス】

ボディ内部にはLBO IIのみを配置。アクション軸上に位置し、なおかつ唯一の重心となることで、リップが受けた水圧を最速でアクションへと変換。抜群の泳ぎだしに貢献する。

【スペック】

  • 全長:74mm
  • 重さ:3/8oz
  • タイプ:スローフローティング
  • 価格:2,134円(税込)

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!