バス釣りの歴史を動かした『初代ライブX』誕生秘話! 伊東由樹さんロングインタビュー【ライブXがグッドデザイン賞2022受賞】

国内屈指の歴史を持つルアーメーカー『メガバス』のCEO・伊東由樹さんが23回目のグッドデザイン賞を受賞した。受賞アイテムは蘇った伝説『ライブX』。優れた初代モデルから脈々と続く系譜と、グッドデザイン賞に込められた想いを伊東さんに語っていただいた。今回はライブX初代について。

●文:ルアーマガジン編集部

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まさにエポックメイキング!歴史を動かした『初代』

オリジナルの『ライブX』は、1991年に登場したメガバスの第2弾となるインジェクションプラグだ。

伊東「ポップXやワンテンのように、ライブXシリーズもまた日本のバスフィッシングに大きな影響を与え続けてきたと言えるでしょうね。なかでも初代のライブXは日本に大きなターニングポイントもたらしたと考えています」

日本においてライブXのようなロングビルミノーといったジャンルが浸透したのは、1980年代にラリーニクソンが琵琶湖で披露したスプーンビルミノー(レーベル)のポンプリトリーブがきっかけだったのは多くのアングラーが知ることだろう。

伊東「ただ、スプーンビルミノーはそういった使い方でしか紹介されなかったとも言えます。ライブXは、巻くか止めるかだけだった世界に、ルアーを多彩にコントロールすることで魚からの反応を引き出すことの可能性をもたらしました。幅広い巻きスピードに対応し、ハードボトムや消波ブロックにガンガンぶつけるように動かすことでも魚に反応させる。それからサスペンドの釣りのはしりでもあると思います。ライブXにはフローティングではない、超スローシンキングの通称『プラス』モデルもラインナップしていました」

当時一般的であったナイロンラインと組み合わさることでもたらされる『サスペンド』状態。スローな魚の鼻先をかすめる釣りは、まだ『サスペンド』という概念すらない時代に誕生していたのだ。一方、そのデザイン面においても新しかったことがある。

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伊東「スプーンビルミノーのように細長くもなく、ベイトXやZクランクとも違う。ベイトフィッシュライクなデザインでボトムを攻略することを目指してもいましたね」

その根底には、常に現場へと立ち続けていた伊東さんの身近にいた餌生物の姿があった。

伊東「子供の頃から見慣れていた魚はハエ(オイカワ)でしたし、ライブXを手掛けていた頃に一番通った霞ヶ浦水系でよく見かけたベイトもオイカワやワタカなどの魚でした。日常的に見てきたバスの餌となる魚をモチーフにしたんです。この形状だと、フラッシング効果も高かったですしね」

操作性の高さやデザインなど、ライブXが世の中に与えた影響は決して小さくはなかったはずだ。

伊東「あのとき、ライブXがあったからこそ今の日本のバスフィッシングにたどり着けているのかなとも思っています。ライブXが生まれなかったら、今もクランクベイトの釣りしかなかったと思えるし、後に続く派生モデルたちがもたらしたターニングポイントもきっと訪れなかったでしょうね」

R、L、M、S歴史に干渉する兄弟たち

「ライブX」に端を発し、日本製のロングビルミノーが数を増やしていく。もちろんメガバスも新たなライブXを生み出そうとしていた。

伊東「オリジナルの潜航深度は2.4m。ですがもっと深く、水深4m付近のレンジをミノーフォルムで攻めてみたかった。そうして生まれたのがライブXのリバイアサンだったんです」

LIVE-X リバイアサン【メガバス】

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ところが当時、伊東さんは病魔と戦っていた。神経系の病気であり、手先を思ったように動かせない日々が続いたのだ。

伊東「震える手に無理やり言うことを聞かせて彫ったので、今にしてみるとウロコ模様もガタガタだったりします。でもそれに屈することなく精緻なデザインに仕上げ、ディープXからさらに発展させた新たな多目的重心移動システムを搭載させ、ルアー作りの核心にかなり近づけたと思うんです。それでつけたのが、終末に浮上する海獣の名だったわけです。その後、アメリカにリハビリを兼ねて渡っていましたが、帰国後に様々な衝動に突き動かされて作ったのがリベンジでした。これはリバイアサンとはまた違って、むしろオリジナルのライブXに近いものとして作っています。例えば4m以上潜っていたものを2.4m程度に変えていますし、アクションもドリルロールと呼ばれるほどのハイピッチロールアクションとなっています」

LIVE-X リベンジ【メガバス】

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その実力はアメリカでも遺憾なく発揮され、彼の地でも高く評価されるルアーとなった。しかし何よりも、伊東さんは国内における評価が嬉しかったのだという。リベンジは、多くのルアー開発者にとっての教材となり、言わばロングビルミノーのベンチマークになったのだ。キャスタビリティに潜行性能、アクションのレスポンスやキレ、操作性…。あらゆる要素に優れていたリベンジは同タイプのルアーの手本となり、日本のルアー開発の大きな礎となったのだ。

伊東「その後はサイズ感の展開を考えるようになりました。ちょうど名前の頭文字もラージのL、レギュラーのRが揃っていたので、次はミディアムサイズだなと(笑)。そこでMから始まる言葉を探して、俊敏な動きが連想される山猫のマーゲイにたどり着いたんです」

LIVE-X マーゲイ【メガバス】

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コンパクトシルエットながらトリッキーアクションでミドルレンジにおける多彩な動きでバスを誘えるマーゲイ。そのサイズ感はため池ブームも相まって、全国のフィールドで活躍した。

伊東「さらに小さなスモルトも作りましたね。これは日本初のスモールマウス戦となったバスオブジャパンの桧原湖戦の秘密兵器として開発したんですよ」

その小さなダイビングミノーの活躍は当時の雑誌『タックルボックス』でもとりあげられ、それまではワームで狙っていた魚を小さなハードベイトで狙う『ベビープラッギング』のはしりとなっていった。またその流れは後にシャッドラップ(ラパラ)のブームと合流し、現代に続く「シャッド」文化へと繋がっていくのだ。

LIVE-X スモルト【メガバス】

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前回のインタビュー

伊東由樹さんのプロフィール

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伊東由樹(いとう・ゆき)

メガバスCEO。伝説のロッド『アームズ』をはじめ、バスフィッシング界の歴史に幾度も名を残す正真正銘のレジェンド。35年という、国内を代表するルアーメーカーを経営する手腕はもちろん、アングラーとしての腕前も超A級。

グッドデザイン賞とは

製品や建築、ソフトウェアやシステム、サービスなど、形の有無に関わらず優れたデザイン性(理想や目的)を持つものごとをデザインと捉え、その質を評価・顕彰する日本デザイン振興会による活動。国内最高峰の工業デザイン賞として広く認知されており、製品の素晴らしさのバロメーターであると同時に、企業やデザイナーのたゆまない努力の証としても知られている。

LIVE-X(ライブX)【メガバス】

ボディ内部にはLBO IIのみを配置。アクション軸上に位置し、なおかつ唯一の重心となることで、リップが受けた水圧を最速でアクションへと変換。抜群の泳ぎだしに貢献する。

【スペック】

  • 全長:74mm
  • 重さ:3/8oz
  • タイプ:スローフローティング
  • 価格:2,134円(税込)

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!


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