4万円台のベイトリールでバス釣り日本一になれる! 日本最強の男、小森嗣彦さんかく語りき

日本最強を決めるトーナメントともなれば、参戦する多くのアングラーがリールのサポートを受けている。リールのサポートを受けないと日本一にはなれないのか? 答えはNO。少なくとも今年、小森嗣彦さんがそれを証明してくれた。ハードな全国トレイルに連日長時間に及ぶ釣行、そして強力なライバル。あらゆる障害を超え、頂点に立つ男のリール理論を聞いた。今回は4万円台のベイトリール編。

●文:ルアーマガジン編集部

2024 秋エギング特集

小森さんが勝つためのベイトリールに求める条件

  • 軽さ
  • スプールの径やシャフト

アルデバラン BFS(シマノ)

スプール系の小ささがネックになったネコリグ専用(?) 機

小森「スプール系29mmの22アルデバランですが、ベイトフィネスタックルとして普通に投げやすいです。これを2台持ってます。シマノのリールはシャフトが分離していないので、単に軽いものをピッチングするだけならばスティーズAIR KTF(DAIWA)なんかが良かったわけですが、試合ではピッチングもするし普通にキャストもするとわりきってこれを選びました。ただコレを使っていて手前に走られることでミスをしてしまったんです。いくらギア比が高くとも、スプール系が33mmのものに比べれば巻取り量が相当量少なかったのが原因でした。そのことに気づいて以来、ネコリグを投げるくらいにしか使わなくなってしまいまして、最終的には先日のバサーオルスタークラシックでも登板していません」

ジリオン SV TW(DAIWA)

3台購入済み! スティーズの売れ行きが心配になるほどの優良モデル

小森「スプール系は34mmとDAIWAの中でもかなりスプール系の大きいモデルになります。スプール系が小さいがゆえに起こるミスを減らしたいならスプール系を大きくするしかない! と思って買って、アルデバランから替えたのがジリオンです。スプール系の大きさとシャフトレスによる立ち上がりの良さのバランスが絶妙に成り立っていますね。値段や軽さなどの性能、ギア比とスプール系、サードパーティへの対応、見た目の良さと、全てにおいて優れた100点のリールだと思います」

小森さんのワーミングでは、ベイトフィネス的な使い方がメインとなるのでスプールに巻くラインは40m程度。デフォルトのスプールでは深溝過ぎたため、ZPIが出していた『NRC001 Mスプール』を小森さんは採用している。ちなみにリール本体とMスプールをあわせても値段店頭価格は5万円をきるとのこと。

レボ LTX-BF8(アブガルシア)

絶対的な軽さは武器だが欠点あり

小森「メインで使用しようと思って3台買ったジリオンSV TWですが、少し思うところがあって、自分がそれまで使っていたリールに立ち返ってみたんです。それでBF8も改めて使ってみました。このリールはあらゆるベイトリールの中でもトップクラスに軽いですよね。使い勝手もいいしシンプルでチューニングも効きくのは素晴らしい。ただ剛性感の低さが欠点。それによってキャストが安定しなくなったりしちゃうんです。それからブレーキ設定もピーキーすぎたりとかの問題もありました。いずれにしても長年使っていたためガタが来てしまっていたので、僕の持っているBF8は全部ダメになりました」

レボ LT/LTX BFC930PRO(ZPI)

一世を風靡したカスタムリールの最高峰

小森「じゃあメインリールは何になったのかと言うと、930プロ(レボLTXやレボLTのZPIチューン)に戻っちゃったんです。投げやすさはやっぱりコイツが随一ですね。当時のZPIをもってしてあれ以上のリールは作れないと言わしめた名機です。ベースのリールはLTの方が少し重いけど頑丈でLTXはその逆。カスタムすることでその性能を限りなく100点にできるリールでした」

メタニウム シャローエディション(シマノ)

重めのものを投げられるならコレで

小森「シマノの最新機種はどうなのだろう? と思って、22モデルのこれも試してみました。軽いものを投げるときは若干浮いてしまいますが、例えばモコリークロー3.5gテキサスをやる分には何の問題もなかったです。これは良かったですね。フィーリングを確かめてすぐ売ってしまうつもりでしたが、手放せなくなりました(笑)」

巻きの釣りなら新進気鋭リールが優秀だった!

グラビアス(ジーニアスプロジェクト)

小森「この2つのリール、とても似ていてどちらもZPIのゼロスZP IIIスプールを入れることができます。巻きモノを使うリールとしてはどちらとも必要十分ですね。グラビアスに関してはレベルワインダーのロングノーズ化だったり、パテント取得済みのマグネットブレーキだったりと、色々なチューニングが入っていますので、その差は少しあります。お金があるならシマノのDC搭載リールがおすすめですが、遜色なく使えますよ」

欠点の見当たらないいいリールでした!

軽さとスプール設計が何よりも重要!

大前提としてベイトに求める要素は軽さ。軽い振りでルアーを送り込むことができ、キャスト回数を増やすことにもつながります。そこで見ていくと、かなりのリールが候補から消えていきます。200gを超えるものはだいたい消える。例えばシマノのDCリールは重い。そもそもDCの汎用性の高さは必要ないですしね。

それからスプールの設計も大切です。例えばスプール径が大きいほど巻取り量が増えるので回収やファイトには有利ですが、小さいほど立ち上がりが良いので軽いものは投げやすい。それからスプールとシャフトが一体化していると、シャフトの分で重みを感じますので、DAIWAのように独立しているものが理想。シマノのリールはシャフトのせいでピッチングで投げるのは少し難しいですね。

左巻きのワーミングに使うリールを1年間使ってみての総評は、軽いもののピッチングも普通のキャストもするならアルデバラン。スプールは要交換ですがバランスが最も優れていたのはジリオン。何でも使えて1番良かったのはレボLT/LTX 930プロといった具合です。

よくシマノとDAIWAどっちがいいかって質問がありますが、フィーリングの違いなだけなのであれは好きなほうで良いと思います。例えばジリオンは本当によくできていて、これだけのリールをこの価格で買えてしまうとスティーズ売れなくなっちゃうんじゃないかな? って心配になるくらいです(笑)。シマノが好きなら、それがメタニウムになるわけです。

右巻きに関しては、1番興味があったのがグラビアス(ジーニアスプロジェクト)とアルカンセ(ZPI)。日本に素晴らしい2つのリールメーカーがすでにあるなかで、彼らがやろうとしたことにどんな意味があるのかを知りたかった。差が明確にあるのであればそもそも挑戦しないはずですよ。

僕の場合、右巻きはすべて巻きモノ用となりますが、これまで使っていたメーカーの右巻きリールはあまりしっくりこなく、巻きモノをやらなくなった次期がありました(笑)。それくらい良し悪しの出るものに関して、アルカンセやグラビアスはどうなのかと思って試したわけです。でも結果はすごく投げやすかった。値段もそんなに高くないし、欠点を探すほうが難しかったですね。

小森嗣彦さんのプロフィール

小森嗣彦(こもり・つぐひこ)

兵庫県出身千葉県在住。野球で培った『フィジカル』、生物調査で身につけた『知識』、生まれ持った強靭な『メンタル』の三本槍で、JBトップ50を前人未到の4度制覇を成し遂げた、文字通り日本最強の男。説明するまでもなく、あらゆるフィールド、あらゆる釣りに高次元で対応。座右の銘は『長いものには抗え』。

小森さんの2022年JBトップ50戦績

2021年のトップ50ではわずか1ポイント差で年間優勝を逃した小森さん。2022年は2回お立ち台へと上がり、厳しい試合でも堅実にポイントを稼ぐことに成功。試合巧者らしく着実に勝負を進めていき、2012年以来となる4度目の年間優勝を果たした。

戦数名称順位
第1戦ゲーリーインターナショナルCUP(遠賀川)25位
第2戦東レソラロームCUP(弥栄ダム)2位
第3戦エバーグリーンCUP(北浦)14位
第4戦SDGマリンCUP(霞ヶ浦)5位
第5戦がまかつCUP(桧原湖)22位

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!


※本記事は”ルアーマガジン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。