冬バスは両極端のルアーセレクト! 青木大介さんの神技&神ルアー利根川水系実釣

神技を駆使するバスプロといえばまず挙がるのが青木大介の名前だろう。今シーズンでのトーナメント活動の休止を発表したが、ひとたびフィールドに浮かべば鋭いセンスと状況判断の速さはあいかわらず。霞ヶ浦&利根川水系を舞台に冬のフィールド攻略のヒントを教わった。

●文:ルアーマガジン編集部

2024 シーバス特集

青木大介さんのプロフィール

青木大介(あおき・だいすけ)

ディスタイル主宰。JBトップ50はもちろん、陸王やバサーオルスタークラシックなど、あらゆるコンペティションを制してきた職業バスプロ。ここ数年はアメリカでのトーナメントを中心に活動してきたが、来季からは再び国内での活動が本格化予定。

冬でも「カレント」が鍵を握るケース

今回、青木大介に依頼したテーマは「冬」取材時期は11月上旬で、平野部ではまだ紅葉も色づいていないタイミングだったが、これからやってくる厳しいシーズンを想定しながら冬の釣りを展開してもらう。

取材時の水温は利根川でもカスミ水系でも15℃前後だった。「ひとけたに突入したら冬モード」と青木。リアクションか食わせか、両極のアプローチが求められる季節になっていく。

青木「利根川に行ってみましょうか。もしも流れがなかったら、すぐに北利根川へ戻ります」

常陸利根川のマリーナを出て、霞ヶ浦や北浦方面という選択肢もあったが、まずは利根川で「消波ブロック(テトラ)」を釣っていくことに。10月末に開催されたBasserオールスタークラシックの練習時には、消波ブロックエリアのクランキングパターンで1kg前後の魚がコンスタントに反応したという。

青木「ただ、本番はぜんぜんカレントが出なくてノーバイトでした。利根川のようなリバーフィールドでは、ハイシーズンでも真冬でも『流れ』の有無がいちばん重要だと思ってます」

まずはJR鹿島線の上流・右岸にある消波ブロックエリアに入る。到着するやいなや「釣れそう。めっちゃ流れてる」と青木。ウイニングクロー3.6inのリーダーレスダウンショットを撃っていく。とはいえ、消波ブロックの穴を撃っているのではない。沖側でブロックが途切れてブレイク状の壁になっているところに落としていった。

【A】消波ブロックはつい穴の奥を撃ちたくなるが、バスが高活性なときは外側をクルーズしていることもあるので、アウトサイドエッジをテンポよく釣っていく。
【B】冬にメタルバイブのリフト&フォールで撃つのもこっちがメイン。逆に活性が低いと思われるときや晴れた日中はヘビダンなどで穴の奥を撃っていく。

青木「これだけ流れていれば活性も高いはず。ブレイクを泳ぎ回っているバスに見つけてもらうイメージで撃ってます。カレントが止まって、しかもピーカン無風だったりすれば、穴の奥を撃っていくアプローチも試します」

真冬になっても基本的な考え方は同じ。ただし選ぶルアーが変わってくるという。

青木「今は5gのリーダーレスダウンショットでやってますが、冬だとこれは中途半端。『リアクションか食わせ』のどちらかにもっと寄せたほうがいい。メタルバイブをギラッと落として反応させるとか、もしくはダウンショットやスモラバでスローに釣っていきます」

その後も佐原エリア周辺の消波ブロックを探ったが、1時間もせずにカレントが消失。「早めに見切ったほうがいい」と判断してカスミ方面にUターンすることを決めた。

消波ブロックは「流れを避けてバスが隠れやすい冬の居場所」ではない、と青木は言う。そもそもカレントの強い箇所に設置されているストラクチャーだ。「流れはあるけれど巻いてゆるむから、いろんな生き物が集まりやすい。特に冬はそれが顕著。だからバスもエサを求めて寄ってくる」

ルアーローテーション

テトラ狙いはウイニングクロー

今回はウイニングクローの5gリーダーレスダウンショットでテトラを釣ったが、「冬はもっとリアクションか食わせに寄せたルアーがいい。リーダーレスを使うならシンカー10gぐらいでストン! と」。

ウイニングクロー 3.6in【ディスタイル】

「リアクションなら」Dα-メタルバイブレーション【ディスタイル】

ディスタイルの新作メタルバイブ。多様なフィールドで使えるオーソドックスなアクションで、フォール時はスライドを抑制して真下にストンと落としやすい。1/4~1/2ozの3ウエイトをラインナップ。

青木「どうしても根掛かりが多発するルアーなので、価格設定にもこだわりました」

「食わせなら」D.Sカマー2.5in/3.5in【ディスタイル】

青木のダウンショットといえば長年レッグワームを愛用してきたが、さらにに弱い波動がほしいときのために開発したのがこのアイテム。穴のあいているカーリーテールの内側に切れ込みを入れるとさらに弱くなり、ライトキャロなどでも姿勢が安定する。フックはDASオフセットの#4と#1を使用。

晩秋のシャロー攻略

続いてやってきたのは北利根川。霞ヶ浦本湖からの流れ出しにあたるエリアだ。川といっても利根川とは違い、干満や水門操作による強いカレントが発生しにくい。どちらかといえば水が安定している水域であり、その「安定感」こそが北利根川の長所だという。

浅い霞水系のなかでは水深がある北利根川。バンク付近に2m以上のブレイクが寄っていたりもして、冬でも比較的釣果が安定している。下流にある常陸利根川も同様の条件を備えた良エリアだったが、近年はパワーダウン。

青木「たとえば冷たい大雨が降っても、その水は霞ヶ浦を経由して入ってくるのでダメージがやわらぐ。北利根川が一気に濁ったり冷えたり、ということが起こりづらいんです。だから1年を通じて魚影が濃いのだと思います」

ここで、リグっていたウイニングクロー3.6inのウエイトを3.5gに変更。アシやブッシュ、ベジテーションを撃ったあと、一気にボトムへ落とすのではなく、表層から徐々に誘い下げていく。ただしここで問題が。4~5mを超える北東の風が吹きつけ、ねらいたい南岸のアシ際を激しく揺さぶっていた。

青木「釣りづらい…。風で活性が上がってプラスに働くことももちろんあるんですけど、同時にローライトになっちゃうと、魚がモノから離れてウロウロしがちになる。こんなふうに撃って釣るなら、もっと穏やかなほうがいいですね」

と言いながら、風裏に逃げることはせずに、ボートポジションを工夫しながら丁寧なアプローチを継続。すると10時34分、潮来大橋上流の右岸バンクで明快なバイトが出て800g級がヒット。その5分後にも立て続けにウイニングクローがひったくられた。どちらもフックが口の奥にガッチリ掛かっていて、バイトの深さがうかがえた。

北利根川のアシで食ってきた800gのナイスフィッシュ。張り出しの外側にある「小さなくぼみ」を撃ち、誘いながら落としていくと中層でバイトが出た。「こういう反応なら毎回ボトムまで落とさなくてもよさそう」。

青木「わりと上のほうで食ってきましたね。活性は高いと思う。ただし、2尾ともアシの張り出しの『外側』なんですよ。インサイドの浅いほうにはいなくて、深いほうでバイトが集中した。冬に近づけば近づくほど、限られたポジションでしか食わなくなっていくのがこの季節の傾向です」

最初のバイトから約5分後、同じストレッチで2尾めをキャッチ。「ここはアシの外側がわりと深くなっている場所なんですよ」。

ディスタイルを立ち上げる以前、青木はテキサスリグなどでウルトラバイブスピードクローを多用していた。「あっちはもっとアクションが強くてフォールだけで食わせるタイプ。かつてはよく釣れたけど、最近の厳しいフィールド状況では落としても誘っても釣れるタイプが必要。そのために作ったのがウイニングクローです」。

神ワームに化ける「青木漬け」!?

ディスタイルで開発中のソフトベイト用フォーミュラ。 [写真タップで拡大]

ねっとりと絡みつくスキャンダルなテイストだ。発売時期などは未定とのこと。 [写真タップで拡大]

神ルアーよりも「美しいルアー」を

北利根川でサクッと2連発したあとは一気に北上。霞ヶ浦本湖を縦断して、東浦の奥にある山王川のインレットへ駆け込んだ。ボートで釣りができるのはせいぜい2~300m程度で、なんの変哲もない小河川なのだが、常にビッグフィッシュが出入りしていることで知られる場所。ただしいずれも天才だらけで食わせるのは至難の技、というのが定説になっている。ここで青木が取り出したのはPEラインを巻いたパワーフィネスのタックル。Dジグカバー3.3gにD2ホッグのコンビネーションだ。

青木「ベイトフィネスでもいいんですよ、手返しよく撃っていけるから。ただし繊細に操作したいときはスピニングが有利」

そう言って撃ち始めたが、すぐに違和感を覚えた様子でアプローチを中断。ハサミを取り出して、スモラバのラバーをトリミングしはじめた。

青木「ここのサカナは美しいスモラバしか食わない。ムダなラバーがあると見切られる」

ハサミを取り出してスモラバをちょきちょき。その意図は? [写真タップで拡大]

「美しいスモラバ」しか食わないんですよ。 [写真タップで拡大]

青木自身は普段、「神ルアー」といった非科学的なフレーズをほとんど使わないタイプのアングラーである。だがその一方で「美しい・美しくない」というバロメーターでルアーを判断することはあるらしい。静かに船を進めながら、細い枝が水中に伸びたウッドカバーを撃つ。

HIT!

誘いながらレンジを下げていくと、ほどなくして「コンッ」と生命感が伝わってきた。落ち着いてカバーの外に誘導してハンドランディング。推定1,200g、東浦らしい体格のナイスフィッシュだった。

青木「ちょうど陽が出てきたのがよかったですね。外側をウロウロされると食わせにくいので、シェードを求めてカバーに寄ってくれたほうがありがたい」

それにしても、いったいどのようにスモラバのラバーをカットすれば「美しいルアー」の条件を満たせるのか? われわれ凡人には理解しづらいところだが、最終的なジャッジを下すのはサカナである。ブラックバスと美意識を共有できる稀有な才能こそが「神」の領域、なのかもしれない。

青木大介さんにとっての「神ルアー」とは!?

本当に信頼できるものしか投げないから、おおげさに言えばボックスに入っているすべてが『神ルアー』ですよ。日本とアメリカでも違うし、状況によっても変わっていく。

ただし、場所や時代を問わずに釣れ続けているものもありますね。その代表格がゲーリーワーム。なかでも4inヤマセンコー、3inファットヤマセンコー、5inスリムヤマセンコーはバランスが『神』だと思う。レッグワームは言うまでもないです。

5inスリムヤマセンコー【ゲーリーヤマモト】

3inファットヤマセンコー【ゲーリーヤマモト】

4inヤマセンコー【ゲーリーヤマモト】

レッグワーム2.5in【ゲーリーヤマモト】

レッグワームが釣れる秘訣は「コンパクトなのに強い」こと。青木さんの強さの源泉である速いフィネスには不可欠なアイテムだったD.Sカマーのテールはレッグワームより弱め。穴の内側をカットするとさらに微弱にできる。

D.Sカマーのテールはレッグワームより弱め。穴の内側をカットするとさらに微弱にできる。

created by Rinker
ゲーリーインターナショナル(Gary

他にも……

ゲーリーヤマモトの「ジャンボバズ」をベースに、九州在住のアマチュアアングラーが改造したもの。一般的なペラよりも回転時の接触箇所が広く、独特かつ派手な金属音を発する。アメリカ転戦時にもかなり活躍してくれた。

Dα-スピナーベイト改

霞ヶ浦水系で釣りをしている最中、オリジナルのDスパイカーではバイトが浅かったためシルエットの小さなDα-スピナーベイトにブレードを移植。アクションが「神」かどうかよりも、フィールドの様子を敏感に察知して微調整を加えていくのが青木さんのやり方だ。

青木大介さんの「神技」遍歴

バスプロとしての青木の経歴をたどると、時代ごとに最先端の技を開拓し、まだ誰もやっていない釣り方をいちはやく実践してきたことがわかる。

写真提供:JB NBC

青木「そもそもJBワールドシリーズ(当時のトップカテゴリ)に昇格したころはまったく成績が出なかったんですよ。勝てるようになったのは『速いフィネス』を発見してから。ライトリグは丁寧にじっくりやるもので、遅くて効率の悪い釣りだとみんなが思っていた時代に『テンポよくやっても釣れるじゃん』と気づいたのが大きかった」

いまや常識となっている「吊るし」のテクニックや、サイトフィッシングにおける多彩なギミック、i字系ワームや沈む虫の活用法など、青木が過酷なトーナメントシーンを生きのびるために磨き上げてきた「神技」は数知れず。なかには実戦でハマりすぎたがゆえに詳しく語らなかったワザもあるという。

青木「2004年の三瀬谷ダム戦で初日トップになったとき、実はスワンプクローラーのネコリグのスイミングで釣ってたんですが、当時は黙ってました(笑)。ぜんぜん食わない見えバスがたくさんいて、浮いているから、ためしに距離を取って巻き物ぐらいのスピードで泳がせたら簡単に食ったんです。ほかにも、スモラバのi字引きはいろんな場所で釣れましたね。今もやってる人は少ないし効くんじゃないかな?」

トルキーストレート4.8in【ディスタイル】

ネコリグのスイミング(ミドスト)はワールドシリーズ時代からひそかに活用していたワザだった。トルキーストレートはロッドワークを加えずに巻くだけでもブルブルとバイブレーションを起こす設計だ。

D-ジグ カバー3.3g+D2ホッグ【ディスタイル】

パワーフィネスで繊細にシェイクするときは、微振動を出しやすいトレーラーにD2ホッグまたはディトレーターを多用。「D1はどちらかといえばキックアクションが得意。水のクリアなところではヴィローラスリムなどのリアル系も使います」。

もうひとつのテーマ「コスパ」についても聞いてみた

青木「20代前半のころの僕の写真を見ると、めちゃくちゃ痩せてますよね。とにかくカネがなくて、まともに飯を食ってなかった。河口湖に有名な『ふるや』というお惣菜屋さんがあるんですが、そこのコロッケばっか食ってましたね」

いちばんの問題はトーナメントに掛かる費用。若くしてトップカテゴリに昇格したのはよかったが、練習量に比例してお金が消える。

青木「試合のときも高速道路なんか使いません。下道でいちばん遠くまで行ったのは兵庫県の東条湖かな(河口湖から約500km)。意外に丸1日あれば行けるんですよ。車中泊して、朝昼は食わずに、夜はカップラーメン2個。河辺裕和さんに『飯行く?』って聞かれたら『ハイっ!』と食い気味に答えてました(笑)。ラインの巻き換えも最小限にして、サンラインの300m巻きの『ベーシックFC』にはお世話になりました」

コスパを極限まで追求すると……?

青木「当時の収入は河口湖のレンタルボート『湖波』でのアルバイト代のみ。知人から紹介してもらった空き家に無料で住んでいた。くみ取り式の便所で、湯沸かし器がないから蛇口からお湯が出ないんですよ。お風呂は水を溜めてから毎回沸かすスタイル。もちろんエアコンなんてついてないから、冬はたいへんでした。電気毛布をかぶって眠るんですけど、どうしても顔がむき出しになるので、寒すぎて呼吸ができなくなって夜中に起きちゃうんですよねー。そんな家に、超でかいネズミと一緒に住んでました」

そのことを祖母に話すと泣かれてしまった…というのも、今では思い出になっている。

今年になってキャンピングカーを入手した青木さん。車での寝泊まりが当たり前だった若手時代から20年近くを経て、別のかたちで再び車中泊をすることに。

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

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