プロアングラー、メーカー勤務、フィッシングガイドにショップ店員、そしてカメラマンなど、釣り業界を支えるそれぞれのエキスパートたち。そんな彼らの職業とは一体どんな仕事なのか? どんな人向いていて、収入は一体どれくらいなのか? 気になる事情を徹底調査! 今回はプロアングラーとしてだけでなく、誰もが認める大人気釣りYouTuberとして活躍している秦拓馬さんのお仕事に密着!
●文:ルアーマガジン編集部
秦拓馬さんのプロフィール
秦拓馬(はた・たくま)
最高峰トーナメントへの参戦経験や琵琶湖ガイドを経験した後、 誰もが認める『釣りYouTuber』となったプロアングラー。フリックシェイクのジグヘッドワッキーを世に広めるなど、大きなムーブメントの中心となることも多いインフルエンサーだ。
『釣り業界』という枠にとらわれず、釣りをとりまく時代の最先端ともいえる動画文化。なかでも無料で見られるYouTubeの存在感は大きく、今やあらゆるプロ、メーカー、そしてメディアがこれを活用している。そんな中で、最も上手に活用し、『釣りYouTuber』という称号がふさわしいアングラーといえば、秦拓馬さんだろう。
バスプロになった経緯を教えてください
かつてはトーナメントも有名になるための手段だった。
バス釣りは10才のときに淀川ではじめたのですが、負けず嫌いということもあり、15才くらいで淀川の大会に出るようになりました。大学に通いはじめる頃にはプロトーナメントに出るようになって、たしか在学中にはトップ50の参戦していたはずです。当時はトーナメントに出ることも有名になるための有効な手段だったんですよ。
ちなみにジャッカルのサポートを受けるようになったのもそのくらいで、もう20年くらいはお世話になっています。
そして2012年に重度のヘルニアになってしまったのをきっかけにトップ50は引退しました。自立歩行ができなくなると言われるほどの酷さではありましたが、奇跡的に手術が成功し、リハビリを続けることで再び釣りができるようになりました。
そのあとしばらくは琵琶湖でのフィッシングガイドを中心に、メディア取材に出たりしていました。これも当時は有名になるための最善策だと考えた上での活動でしたね。
ところが2016年に再びヘルニアが悪化して入院することになってしまいまして…。でもその入院期間中に動画編集なんかを覚えて、2017年に『秦拓馬 俺達。チャンネル』をスタートするに至ったんです。
本格的にYouTubeに取り組むようになった理由を教えてください
有名になるためにはとにかく「見られる」ことが大切だから。
実は2012年にヘルニアで入院したころから色々と考えるようになったんです。世間一般でYouTubeがじわじわと人気が出始めていまして、釣り界隈でも少し遅れて流行ってきたころ、2016年に「釣りよかでしょう」と仲良くなったんです。それでお互いの業界のことを教え合っていたころにまたヘルニアが悪化して、それでいよいよ本格的に「俺達。チャンネル」を始動することに決めました。
例えばそれまで出ていたメディアがMAX10万人に見てもらえていたのに対し、YouTubeなら50万人とかに見てもらえる可能性があるわけです。有名になるためには、とにかく誰かに見てもらうことが大切なんです。しかもYouTubeは無料だし、時代にあった親しみやすい存在になりやすかったんです。
仕事内容や1日の流れを教えてください
新幹線で全国を飛び回ってます。
1ヶ月間でいうと、2~3日くらいイベントがあって、20日はロケ。4日間くらいはオンラインサロンの日になって、あとは1~2日間メーカーとの打ち合わせとかですかね。だいたい夜には編集作業をやってます。昔はどこにいくのにも車が多かったんですが、最近は新幹線が増えました。事故のリスクも減らせるし、移動中にも編集作業を進められますからね。
動画の内容はどうやって決めていますか?
アジャストが大切! バス釣りみたいな感じです(笑)。
メーカー絡みの動画とかもありますが、俺達。主導の動画としては、そのシーズンにあった、旬のネタを扱うようにしています。この時期ならバス釣りだなとか、今は東京湾のシーバスが盛り上がっているな、とか。それから上がっている動画の再生回数もその時々に傾向があるので、今見られている動画も参考にして内容を決めたりもしています。
方向性は時代によって変化していて、かつてはハウツー動画がよく見られていましたが、最近では動画だけで完結する内容のほうが評判がよくなってきましたね。アンテナをはってそういった変化を捉えてその時々にあった動画を上げる。このアジャストさせる感じって、バス釣りみたいですよね(笑)。
何を目指していますか
世界で1番有名な釣り人って誰だと思います? 世界中の人が知っている「釣り人」になりたい。
世界中の誰に効いても、「釣り人といえば『秦拓馬』でしょ」と言ってもらえるようになりたいんです。だから釣りをする、釣果を出す、というのはゴールではないんですよ。言ってしまえば、それらを利用して有名になりたいわいけです、今現在はその最善策として釣りYouTuberをやっているわけです。
世界中にその名を知られるアングラーになりたい秦さんにとっては、2017年にオーストラリアで行われた国際試合への参戦が印象的だったという。その激闘の様子は、今なお世界各国で放映されているとか。
どんな人に向いていますか
目立ちたがり屋の釣り人とか?
同世代のバスプロはあんまりやっていませんが、みんな向いていると思うんですけどね(笑)。でも貪欲に1番になりたいという強い思いは必要だと思います。スキルは二の次というか、1番になりたければ色々な能力が身につくはずです。
それで自分のいる段階で1番になると、次のステップが見えてくるはずなんで、そこでも1番を目指し続けてほしいです。
仕事に対するプライドや矜持はありますか?
こだわりを持ちすぎてはダメ。
これも釣りと一緒だと思うのですが、柔軟であることが大切だと思っています。釣れないときは別のことを試す。こだわりを持ち過ぎてはダメです。世の中がその瞬間にもとめているものにアジャストしていくんです。
仕事のやりがいは何ですか?
数字でわかる結果ですね。
視聴回数とか視聴時間とか、目で見て数字が動くとヨッシャー! ってなりますね。それが狙って出た数字ならなおさらです。
今後の展望を教えてください!
あと10年は頑張るつもりですが……。
親しみやすい存在になりたいという理由もあってYouTubeをはじめたわけですが、40歳をすぎると年齢が足かせになってくる感じがするんですよね。
ありがたいことに先生とか神様とか呼んでもらえたりするのですが、見上げられる立場じゃなくて、肩を並べる存在でありたいと思っていたので。あと10年は頑張るつもりですが、時代とそぐわずに空回りする自分が見えてしまう気もしています。
でも今は息子も一緒に動画をやっていて、秦拓馬より有望な感じもありますから、彼が世界一有名な釣り人になる夢を引き継いでいくかもしれません(笑)。
秦さんの息子のダイキくんは俺達。チャンネルに登場するのはもちろん、自身が主役となっているチャンネルでも活躍中。今は親子のやり取りや子供ならではの視点が面白いが、いずれは秦さんを凌駕するようなエンターテイナーぶりを発揮してくれるのかもしれない。
収入について教えてください
バス釣りYouTuber秦拓馬をとりまく色々なところをひっくるめた年収で表すと、「バスボート10台分」とかですかね。
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