ナイロンラインは冬のバス釣りに強い!? その特性と可能性をフロロとPEと比較して解説

現代のバスフィッシングにおいては、大半のアングラーがフロロカーボンラインを使用しており、むしろ近年はタックルを問わず、PEラインの使用率もぐんぐん上昇している傾向にある。それではかつて主流だったナイロンラインはどうか? 根強い人気こそあるものの、その使用率は正直高くないだろう。しかしそこはバスフィッシング。状況に応じてあらゆるタックルを使い分けることで釣果をひねり出すこの釣りにおいては、適材適所でナイロンラインも活躍するはず! そこでここからは、その特性を踏まえた上で見えてくる、ナイロンラインの真価に迫りたい。

●文:ルアーマガジン編集部

2024 新製品情報

フロロ全盛の今、ナイロンライン復権の兆しは…?

人と魚とをつなぐ釣り糸。わずか数mmの太さで、数m、数10m先のターゲットとのやりとりをも可能にする。ラインは釣りが釣りである、最も重要な要素のひとつと言えるだろう。

ことバス釣りにおいていえば、使用されるラインは主に3種類あり、そのどれもがやはり細く、遠く離れた魚を捕らえる能力を同様に有している。これらの大きな違いとなるのが素材と構造で、ポリエチレン素材を用いた極細の繊維を編み込んで作られているのが『PEライン』。ポリアミドを使用した『ナイロンライン』やポリフッ化ビニデリンを使用した『フロロカーボンライン』はそれぞれの単一素材から形成されている。各タイプの特性は別途記載するが、その性質は一長一短であり、シチュエーションを考慮して最適な場面にて使い分けることは、釣りのしやすさはもちろん、釣果にも影響を与えかねない。

ところが近年、バス釣りにおけるナイロンラインの使用率はそう高くはあるまい。例えばルアーマガジンの読者人気投票企画「タックルオブ・ザ・イヤー」においても、ライン部門はフロロカーボンラインが受賞し続けているのは紛れもない事実だ。その一方、PEラインもフロロには及ばないものの、製品クオリティの向上やフィッシングスタイルの変化に伴い、近年では使用するアングラーが増えている。果たしてナイロンラインはもう時代遅れなのか? 実はそうではない。

ラインの性質は3種類がそれぞれ一長一短。普及しているフロロは重くて遠投しにくいし、PEは風に煽られれば使い勝手が悪い。逆にナイロンラインにも優れている部分は多々存在する。その最たる特性こそが、『比重の軽さ』や『適度な伸び』となるだろう。そしてこの特性は、冬の釣りにこそ役立つ場面があるのではないだろうかという点を掘り下げてみたい。

ルアマガprimeの動画撮影で行われた、水槽実験の結果をイラストで再現。ルアーがボトムにある際の、水中でのラインの様子を表している。水面近くを通り急激にボトムへと入るPEラインに対し、フロロは見ている間にもどんどんと沈んでいってしまい、ボトムを這うような状況に。一方、ナイロンラインは、高さこそPEに及ばないものの、水中で描くカーブはPEラインのそれ。

バス釣り用主要ライン3タイプの一般的な特性

項目ナイロンフロロPE
伸びよく伸びるあまり伸びないほぼ伸びない
比重普通高い低い
カラー様々なカラークリア系がメイン様々なカラー。ただしクリア系は不可
硬さ柔らかい硬いかなり柔らかい
扱いやすさ容易やや癖がある少し難しい
値段安価普通高価

冬の二大巨頭1「メタルバイブ」

ナイロンラインで使うと……?

  • フロロを上回る遠投性
  • 移動距離を抑えたリフト&フォールが可能
  • 高いクッション性でショートバイトやファイトも安心
  • 操作感や感度はそれほどでもない

意外!? メタルバイブとナイロンライン

以前ルアマガprimeでは、デュオ社の巨大水槽をお借りして、バス釣りに関する様々な実験を行っている。その際に行った内容のひとつに、メタルバイブのリフト&フォールを3タイプのラインで試してみる、というものがあった。制作サイドの予想としては、PEラインのみがこの釣りに合致しているのではないか…というものであった。

しかしいざ実験してみると、そこには驚愕の結果が待っていた。PEラインこそ予想通りではあったものの、伸びが少なくダイレクトにアクションが手元に伝わるフロロカーボンラインは、高くリフトすることができず、どんどん手前によってきてしまっていたのだ。一方のナイロンラインは、操作感度でフロロに劣るものの、そのリフト&フォールの挙動はPEラインと遜色ないものだったのだ。

右ページで紹介したラインの沈み角度とのことも含み、ラインタイプはメタルバイブをリフトさせる方向に影響を与えていることがわかった。真冬の厳しいシチュエーション下でメタルバイブを使う際は、PEライン並の立ち上がりをもちつつバイトを弾きにくいナイロンラインを使うのはかなり有効な戦術と言えるだろう。

PEラインのように水中の高い位置からメタルバイブをリフト&フォールできるナイロンライン。対するフロロはラインが沈んでしまうため、手前方向に引っ張ってしまい、移動距離が長くなってしまう。

冬の二大巨頭2「シャッド」

ナイロンラインで使うと…?

  • フロロで投げるよりもキャスタビリティが向上
  • サスペンドセッティングが決まりやすい
  • 真冬のショートバイトも弾きにくい!

ナイロンのクッション性はもうひとつの定番とも好相性!

冬のハードルアーの2大巨頭といえば、メタルバイブとシャッド。実はシャッドに関してもナイロンラインが持つ特性は利点になると考えられる。

ひとつは、ショートバイトを弾きにくい、柔らかさという特性。シャッドをサビくにせよ、高速巻きでリアクションバイトを誘うにせよ、スローなコンディションのバスの弱い吸い込みにもナイロンラインはしっかりと追従してくれるはずだ。

そしてもうひとつは、ナイロンラインの比重の低さ。特に冬のシャッドはスローなバスを相手にする都合上、サスペンドセッティングを重視する傾向にある。その際、自然と沈んでいてしまうフロロの場合、いくら調整しても沈むラインに引っ張られやすく、イメージ通りの挙動を出せない可能性があるのだ。PEラインの場合も、リーダーにフロロを使用している場合は同様のことが懸念される。

さらにフロロと比べたときに比重が軽いことは、固定重心モデルまで存在する小さく軽い「シャッド」を投げる際の、大きなアドバンテージとなるのである。

プラグの中ではもっとも軽い部類に入るシャッドも、ナイロンラインで使用すればキャスタビリティが向上! また、フロロに比べて低い比重は水馴染みがよく、シャッドのジャストサスペンドセッティングにも影響を与えにくい。

ナイロンラインの特性

「伸び」伸びることはメリットにもデメリットにもなる

ほか2種類に比べてもかなり伸びる部類。ウィードを切りながらの釣りではこの特性が足を引っ張ることとなる。また、振動伝達が吸収されるため、感度はあまりよくない。一方、瞬間的な力に対しても伸びてくれることは大きなメリットとなり、キャスティング時の負荷や、バイト時にクッションの役割を果たす。

「比重」ちょうどいいナイロンの比重

ナイロンラインの比重は一般的に1.14程度とされている。これは水よりも若干高い比重であり、PEラインのようには水面に浮かばず、フロロのようには沈んでいかない。ルアーに対して与える影響の少ないラインであるともいえるだろう。キャスト時にも抵抗になりにくく、また風に煽られにくいため、投げやすさの点においても優れている。

「カラー」シチュエーションに応じたカラーを選びやすい

フロロは屈折率が最も水に近く、水中で見えなくなりやすい点を活かしたクリア系が揃う。PEはその性質上クリアカラーがほぼ不可能なため、透け感の無いカラーで展開されている。ナイロンラインは透明感のあるものからマットなカラーまで選択肢が非常に多く、視認性、背景への溶け込みやすさなどの目的にあったものを選びやすい。

「硬さ」バランスの取れた硬さ

フロロのような強い巻きぐせが付きにくいため、キャストやルアー操作の邪魔になりにくい。また、PEラインよりもしっかりとしているので、不必要にラインがスプールから放出されにくく、枝などにも絡みにくい。ナイロンラインは張りと腰のバランスが最も優れているラインタイプだといえるだろう。

「扱いやすさ」癖が無いので気苦労も少ない

ナイロンラインの持つ透明感はバスに違和感を与えにくく、またノットとの相性も良いため、結び方にはさほど気を使う必要はない。適度な張りでスプール馴染みがよいのもありがたい。ただし、ほかのラインに比べて吸水性がよく痛むのが早いことが多いため、交換頻度は最も高くなるだろう。

「値段」メートル単価が最も安価

フロロやPEラインに比べて1mあたりの単価は最も安価になりやすいのもナイロンラインの魅力。積極的に交換することで、優れた初期性能を維持できるはず。

冬のナイロンは結局…?

比重の低さや伸びの良さが「メタルバイブ」や「シャッド」の釣りの武器になる!

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

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