2月に入り今年も関東のシーバスアングラーの心を弾ませるあの季節がやってきた。そう、東京湾を中心に起こる春のシーバスの「定番」パターンといえる『バチ抜け』。早いところでは年末からスタートし、関東以外の地方ではもっと遅くにも訪れることもある。このバチ抜けパターンの変遷を20年以上見続けてきたのが、シーバスプロアングラーである小沼正弥さん。今回は小沼さんにバチ抜け攻略の秘話、そして2023年度にバチ抜け予想、おすすめルアーなどを盛りだくさんにて語っていただきました。
●文:ルアマガプラス編集部
バチ抜けシーバス歴は20年以上!フィッシングショーでも大人気のシーバスプロ・オヌマン!
小沼正弥(おぬま・まさや)
シーバス釣りが生業の職業釣り師。豊富な経験や実績にあぐらをかかず、日々、自身の釣りを研鑽。持ち駒の多さはシーバスアングラー随一で、取材ではどんな状況でも高確率で獲物を仕留める仕事人だ。DAIWAフィールドテスター。ルアーメーカー「PickUp(ピックアップ)」代表。
「釣れるルアー」が増え「釣れるシーバス」も増えたバチ抜けパターン
日本のシーバスシーンが活性化した2000年代前半、当時の東京湾はシーバスフィッシングシーンの「最先端」であり、数多くのルアーが生まれていた。その頃から第一線で職業釣り師として活躍していた小沼さんは、バチ抜けパターンの変遷をどのように感じていたのだろうか。
小沼「『釣れるルアーが増えた』これに尽きますね。ちょうど20年前位からバチ抜けパターンに対応したルアー各社からリリースされ始めたタイミング、当時よく釣れるルアーとして人気だったのが、ワンダー(ラッキークラフト)やにょろにょろ(ジャクソン)、エリア10(ガイア)。特ににょろにょろは革命的なぐらい釣れましたね。
あとカウントダウンF13(ラパラ)のリップを折ったもの、パーチカラーがバチ抜けにはよく釣れました」
小沼「ルアーが軽量なものが多かったのと、バチを喰っているシーバスは吸い込みが弱いということも分かり始めて、グラスソリッドのティップを採用したロッドが出たり、DAIWAさんだとカーボンソリッドのものも当時出ていたと思いますよ。ラインもPEが普及し始めたタイミング、けれども当時は5lbくらいの細いフロロ直結が一番釣れていましたね」
――おそらく当時に比べて関東であれば釣り禁止のエリアも増えていると思うのですが、20年前と今でどちらのほうが釣れていますか?
小沼「今のほうが釣れてると思いますね。バチ抜けルアーってシャローランナーよりもレンジがシビアで、潜行が1cm変わるだけで釣果が変わってくる。でもそのレンジを的確に狙えるルアーが増えましたよね。手前みそですけど、去年僕がプロデュースしたヒソカも風が吹いたときに使うとベストレンジに入るように設定してありますし。初心者でも『ゆっくり巻くだけ』で釣れるバチ抜け用ルアーが普通にある」
小沼「あとはバチ抜けのポイントが解明されたことも大きい。バチが抜ける場所やタイミングも予想がつくようになりましたからね。まさか千葉が12月のクリスマス頃からバチ抜けが始まるとは思いもしませんでしたよ(笑)。ローカルアングラーの方々も積極的に開拓してくれたおかげもあって、さらに色んなことが分かるようになりましたね」
――釣れるルアーに、適したタックル、ポイントやタイミングが解明されたからこそ初心者にも釣りやすい時期としてフォーカスされるようになったんですね。
小沼「でも釣り人が増えたことによって釣り禁止エリアが増えたのも事実。釣りたい気持ちはよく分かるけど、マナーはしっかり守って釣りはしていきたいですよね」
2023年のバチ抜けは例年以上に「セレクティブ」!?
今回当記事でインタビュー取材をしたのは1月末。小沼さんはこの取材の数日前にも、他媒体にてバチ抜け実釣取材をしていたとのこと。2023年はどんなバチ抜けシーズンになりそうなのかを予想してもらいました。
小沼「今年の状況としてはポイントが遠くなっているイメージ。他媒体の実釣取材時もかなり遠投してショートバイトをやっと乗せる感じでした。もちろんシーズン初期というのもあるんだけど、例年以上に飛距離は求められましたね。季節が進めばポイントもだいぶ手前によってくると思うんだけど」
――遠投してかつバイトが小さいとは…タックルバランスもかなり気を遣う必要がありそうですね。
小沼「それに加えて『ルアーカラー』の差も激しいですよ。ベリーカラーはもちろん背面のカラーでも差がでてくるかも。冬は水がクリアになるから水中の反射も反映されやすいし」
――だいぶシビアな状況ですね…。
小沼「もともとバチ抜けは四季を通じたパターンの中でも、特に色の差が出るし、あそこに投げたら釣れるというよりかは『これを投げとけば釣れる』という感じ。特に東京湾の運河周りとかは明るいから見えているんでしょうね、あとハリは小さいほうが釣れます。それこそ先日の取材で行ったとある河川では、クロスカウンター125Fのアデル不夜城カラーのみしかアタらないし釣れなかったんですよ」
小沼「個人的に思うのは水もクリアな時期だからこそ、色の差は如実に出る。だからエリアトラウトみたく毎年新色が必要だし、エリアによってアタリカラーも違ってくると思うんですよ。工業地帯が近ければ冬でもステイン気味だし、バチ以外にもベイトがいるエリアではアタリカラーも変わってきます。
うまい人はアプローチでカバーできるかもしれないけど、初心者やバチ抜けが苦手な人は『カラー』に頼るべきだと思いますよ」
バチ抜けルアーこそ「カラー」を揃えるべし!
小沼「先述したようにカラーパターンを豊富に持っておく必要はありますね。揃えるならまずチャート系、派手なカラーはシーバスも見つけやすいです」
小沼「ただ最初は釣れるんですが、スレやすいカラーでもあります。なので逆に地味なカラーも持っておきたいですね」
小沼「気づかれにくく釣れるまでに時間はかかりますがスレにくいし、クリアカラーはバチが抜けてないときにも釣れる可能がありますから。同じルアーでも所有するカラーは極端なものにしておけば状況の変化にも対応できますよ」
メジャーポイント以外でもバチは抜ける!
小沼「今でこそ、関東エリアではバチ抜けのメジャースポットが多くありますが、やはりバチが抜ける潮回りはアングラーも多くなってしまいます。なので自分で釣り場を見つけておくことも大事ですね。
――見つけるポイントは?
小沼「ひとつは『ハゼ釣りポイント』に行くことですね。ハゼが生息するような地形はバチも抜けやすく、特に岸際に葦などの植物があるとなお良いですね」
小沼「もうひとつは、これは最近分かったことなんですが、昼間サギなどの『水鳥が浅場に立って地面を突いているエリア』は怪しいですね。鳥もバチが抜けることを分かっていて、昼間砂を掘り返すようにバチを探して捕食してるんですよ。その光景が見れるポイントは大チャンスだと思ってください!」