今江克隆「ルアーのエラに穴開けたら?」で誕生。メガバス『IXI フューリアス』は設定深度以下には絶対潜らない

高い意匠性のみならず、アッと驚く構造と仕掛けでアングラーを魅了し続けるメガバスアイテム。2023年にリリースが予定されているNEWアイテムをロッドとルアーからひとつずつピックアップしてご紹介。今回は『IXI フューリアス』について今江克隆さんに語ってもらった。

●文:ルアーマガジン編集部

2024 シーバス特集

アイ・バイ・アイ フューリアス IXI FURIOUS 0.5/1.5

0.5(ゼロポイントファイブ)

項目スペック
全長64mm
重さ1/4oz
タイプフローティング
最大深度50cm

1.5(ワンポイントファイブ)

項目スペック
全長64mm
重さ1/4oz
タイプフローティング
最大深度1.5m

フューリアスと今江克隆「バーチャルリップはギミックではない。新たなイノベーションである」

それはギミックかそれともイノベーションか

ルアーの進化には、劇的な効果を発揮する工夫と、スパイスのような工夫の2種類がある。劇的な効果を発するものが革新的アイデア=イノベーションと呼ばれ、後者はギミックと呼ばれる。

ギミックという英単語は直訳すれば「仕掛け」という意味だが、裏には「策略」や「宣伝のためのからくり」という意味が含まれる。このIXIフューリアスの頭に空いた穴は、一見ギミックに見えるかもしれない。

前頭部の穴から覗くとエラまでが貫通しているのがわかる。前頭面にかかる水圧をボディ内を通して下部に排出するというコロンブスの卵的発想は、これまでのルアーの常識を大きく覆した。

そう想起させるのは昔に存在したトラブルシューター(リップ付け根に空いた穴から水が入って尻から抜け、その水流によって超音波を発する、というのが売り文句)やリトルアンダーテイカー(NASAの分析から生まれた、というキャッチコピーでデビューしたホイッスルのような構造を持つクランク)というB級アメルアーの存在が記憶の片隅に残っているからだろう。今江少年はその性能を信じて一生懸命投げていたものだ。

だが、その穴あきルアーはギミックだった苦い記憶と同時に、強いインパクトを与えたのも事実。4年もの間試行錯誤し、やればやるほどゲキアサに似てしまうという迷宮に入り込み、完全に行き詰まっていたフューリアスを打開するための苦肉の奇策として、「エラに穴でも開けてみたら?」という冗談ともとれる助言を伊東氏にしてみたのは、少年時代の穴あきルアーの強い記憶と、伊東氏の代表作であるPOPXのダクト構造がシンクロしたからかもしれない。

そもそもIXIシャッドTYPE-2フューリアスに求めた性能は、どれだけ早く巻いても水深50cm以内の激浅深度をキープし、まっすぐ激飛びし、ボトムに当たっても直進軌道をキープするという、シャロー特化型速巻きシャッドだった。これまで散々トライしてきて、ゲキアサシャッドでやり尽くしたと思ったジャンルだったから、挑戦するには元々無理があったのかもしれない。自分と伊東氏が組んで普通のものを出しても意味がないという壁も厚く、それを突破するには何か一歩大きな革新が必要だった。

数カ月後。久しぶりにメガバスから届いた箱を開け、本当に頭に穴が空いていることを確認すると、これにはどんなギミックがあるのかと想像しながら早速リザーバーでテストをしてみた。

バーチャルリップを初搭載したフューリアスは22年末に今江の手元に届いた。箱の中には伊東由樹氏からの熱い解説手記も同封されていた。

「この人やっぱりすげーわ」率直にそう思った。

同封されていた伊東氏からの激アツな手紙に書かれていた「バーチャルリップ」という思想は、そのルアーが持っていた驚くべき性能と同じく、まさしく自分が求めていた「革新」だった。ボディに穴を開け水を通すという構造をただのギミックではなく、使える機能として昇華させてきたのには正直驚いた。この人は造形アーティストではなく、ルアービルダーとしての能力も突出したものがあると改めて感じた。

バーチャルリップは瓢箪から駒だったが、これぞまさしくイノベーションだ。イノベーションのきっかけとなるヒントを与えるのが、現場に多く出て肌でたくさんのバスを知っている自分の仕事。ヒントを得て、それを機能というカタチに仕上げるのがビルダーであり、機能を革新的なイノベーションにまで高める力のある人こそが本当のルアービルダーと呼ばれる。その点に置いてアーティスティックな作家性を発揮しながらも、ルアービルダーとしての特殊能力を維持し続けている伊東氏の力量はさすがというほかない。

バーチャルリップの効果

今江自ら可視化したバーチャルリップの効果。通常、リップが水を掴んでルアーが前傾姿勢になると、前頭部(おでこ)面にも水を受けるため第2のリップとしての役割を果たすことになる。そのためリップが水を噛めば噛むほど、第2リップも抵抗を増やしてますます潜ろうとする。

通常のルアーはリップで水を受けるが、IXIフューリアスは前頭部からエラにかけて空いた穴もリップの機能を持っている。

しかしフューリアスのバーチャルリップは水圧の掛かる前頭部に穴を開け、エラ下からフローする構造を持っていることから、前頭部にかかる水圧をエラから出る水流による減圧で相殺できる仕組み。そのためスピードを上げても減圧も上がるため、前傾は進行せず一定レンジを水平に引くことが可能になる。

一定レンジで引き続けるためのインテイク。

今江克隆さんのプロフィール

今江克隆(いまえ・かつたか)

日本の5大タイトルをすべて制覇(JBアングラー・オブ・ザ・イヤー3回、JBジャパンスーパーバスクラシック2回、JB トップ50チャンピオン2回、Basser オールスタークラシック2回、JBエリート5)。

JB最高峰カテゴリーにおいて最多勝利回数を誇るレジェンドにして、エポックメーキングなアイテムを生み出し続けるタックルメーカー・イマカツ代表。日本のプロトーナメント史は、氏の歩みとともにあると言っても過言ではない。

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!


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