三原直之さんがWEB上で開催しているオンラインサロン『三原屋』がルアマガ誌面に登場! 独自の釣り哲学と多彩な技術を持ち、特にバスのフィーディング研究には業界トップクラスの知見を持つ三原さんが、ルアマガ誌面で貴重な講義を行ってくれました。記念すべき第1回は『プリスポーン攻略』がテーマです。
●文:ルアーマガジン編集部
「ライブソナーはこれからも使いません」宣言
こんにちは、三原直之です。今回から不定期だと思いますがルアーマガジン誌面版の『三原屋』が始まりました。普段はサロン会員向けに様々な秘密にしておきたいことなどをしゃべっていますが、誌面版ではできるだけ多くの人に、実際に役立つ情報を供給できたらいいなと思っています。
僕のバスフィッシングスタイルの前提ですが、現在トーナメントを中心に席捲しているライブソナーは使用していません。おそらくこれからも使用しないと思います。その理由はいくつかあるのですが、ひとつはバスフィッシングには個性が大切だと考えているからです。50人の選手が集まったトップトーナメントで勝てるかとなると、多くの選手と同じ横並びの装備と技術を揃えるよりも、僕のサイトフィッシングのように得意なもの、人より有利なものを大切にするべきだという考えを持っているから。
実際問題、自分のバスフィッシングの優先順位としては、ライブソナーよりも霞水系のマディウォーターを攻略するほうが先なんです。ライブで見えている魚は僕には見えませんが、ライブ以外のところで魚を見つけられることは絶対にあると考えています。また、ライブソナーでは55cm以上の魚は釣れづらいと聞いていますので、55cm以上の魚を狙っている僕からすればそれでいいのかなとも思います。
ですので三原屋サロンで話す内容も、すべてライブソナーなしが前提となっています。全方位戦略でなく、得意なものを伸ばしていく三原スタイルとして、バスフィッシングのさらなる楽しみ方や上達の仕方をお伝えできたらなと思っています。
今回のロケ地【東条湖】
第1回三原屋の取材場所は、三原さんのホームでもある東条湖。本湖と川筋に分かれており、土、岩盤、赤土、インレット、バックウォーターなど規模は小さいながらリザーバーのすべての要素を兼ね備えた教科書的なフィールド。三原さんはレンタルボート店ビッグバイトスタッフでもある。
項目 | 情報 |
---|---|
協力 | 東条湖ビッグバイト |
所在地 | 〒673-1301 兵庫県加東市黒谷25 |
電話番号 | 0795-47-0072 |
Webサイト | http://www.tojokobigbite.jp/ |
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東条湖プリスポーン実録ドキュメント
紙一重のプリスポーン期ロケ
3月上旬の東条湖、ビッグバイトのスタッフに聞くと前日の釣果は0だったそうだ。気温は少し高くなってきてはいたが、水中はまだ冬の色が濃い予感がする。東条湖で釣りをするのは久しぶりだという三原さんは、本湖のワンドを少しチェックすると、本命としている3つめのベンドである鷲の巣窟周辺からしっかりと岸際を観察していった。
三原「差してきてますね」
鷲の巣窟の岩の切れ目に1尾、その上の第1インレット周辺にも数尾、そして上流のワンドの岩盤に数尾のバスを目視することができた。サイズはいずれも50cm前後。サイトフィッシングをもっとも得意とする三原さんのロケ、正直ラッキーと記者は思った。しかし現実はそう簡単ではなかった。最初は旬なルアーからアプローチを仕掛けてもらったが、バスは一切の注意をルアーに払うことはなく、ただ単純に嫌がり深みに消えていった。
三原「食い気はゼロ、リアクションもゼロ。あれどうやったら食うんでしょう」
時間の経過とともに見えるバスは減っていき、初日はバイトのきっかけすら得ることがなかった。
翌日、レンタルボート客が多かったこともあり、見えバスの数は極端に減っていた。三原さんは少ない見えバスに完璧なアプローチで仕掛けるが、バスはルアーを見ることさえ嫌がっていた。潮回りの関係なのか、とにかく食欲がなく他者への興味も失っている状態だった。
三原「これはやっかいですね。正直いってヤバいです……」
三原さんも得意のサイトで打開できず完全に行き詰まっていた。これもプリスポーンバスの一面である。
答えはハドルファットフライエラストマーの三原さん流ミドスト
ミドストでもやってみますか
どうしても釣れない見えバス。そこで三原さんが手にしたのはミドストタックルだった
三原「ミドストでもやってみますか。釣れるとは限りませんが」
サイトフィッシングを諦め、ミドルレンジのミドストで差していないバスをブラインドで狙いにいく。しかしサイトほどダイレクトにアプローチできるわけではないため、差す前のバスが溜まりそうなエリア、というぼんやりしたスポットをハドルファットフライエラストマー2.8の1.8gジグヘッドでピラピラと見えないレンジを泳がせる。
その瞬間は唐突に来た。ビデオカメラマンがトイレのために上陸した刹那、鷲の巣窟に根本の一部が見えているレイダウンの沖側水深3m程度を泳がせていたルアーがクンと重くなった。
「枝に掛かったかな」と少しラインを張って聞いてみると、確かな重量物がゆっくりと持ち上がった。バスだ。三原さんはスイープにフックを刺し込み、バスの顔を水面方向に向けた。違和感に気付いたバスは一気に反転し目の前のレイダウンに戻ろうとする。
逆転ハンドルテクニックでラインを出すことができないため、3lbラインの限界ギリギリの張力で、ロッドを水中に突っ込み、バスの突進にかろうじて耐えた。潜れないと悟ったバスは一気に浮上し、岩盤前でジャンプ。それをロッド捌きでかわした三原さんは再びカバーへの突進を止める。
ついにボート際に姿を見せたバスは目の前でもう1度ジャンプをすると、3度水中への突進を試みたが、すでにロッドをのすほどの力は残っていなかった。最後のエラ洗いの瞬間を狙ってほとんど空中でバスをネットに収めた。
三原「……」
諸事情で過去最遅の日程でのロケ、様々な有言無言のプレッシャーを記者からも受けていた三原さん。どんな困難な状況でも、見栄えのいいバスを釣らねばならないというバスプロという職業。バスをネットに入れた瞬間、三原さんも、記者も、様々な思いが駆け巡り、完全に放心状態となっていた。
三原「ハハハ、釣れましたね……」
当初は釣れれば1発取材成功クラスの派手な見えバスに翻弄されたが、最後には地味なミドストという三原さんには意外な武器で、ブリブリのプリスポーンバスを仕留めた。
教科書どおりのアウトサイドベントの垂直岩盤にて
東条湖では有名なS字カーブにある垂直岩盤、通称「鷲の巣窟」。ここに1本のレイダウンが沈んでおり、そのレイダウンをかすめるように通したミドストに確かな重量が乗った。七色ダム戦用に巻き変えた3lbラインで、レイダウンに突っ込もうとするビッグバスの進撃を耐え凌いだ。2度のジャンプを交わしてネットインした直後の三原さんの表情は、喜びを超えた脱力だった。
三原「ミドストってイメージ湧かない人もいるかと思いますが、スイムベイトやアラバマを超弱くしたもの、と考えれば理解しやすいと思います。ステルススイマーはシャッドテールでロールするけど、それを3inぐらいに小さくして、シェイクでロールさせているようなものです。小さなシャッドテールではロールするパワーがないからシェイクで無理やりロールさせているんですね。大きなルアーを嫌がるタイミングでの小さなスイムベイト、それがHFFE(ハドルファットフライエラストマー)のミドストなんです」
わかってしまえば連続キャッチ!
同じスポットに時間を変えて入り直すと、レイダウン上を通過するHFFEにつられてバスが浮いてきた。しばらくミドストをチェイスしていたが、ボートの手前で、三原さんの目の前で何のためらいもなく吸い込んだ(このバスは無事にビデオに収まりました)。
ハドルファットフライ エラストマー 2.8in(イマカツ)
三原さんのミドスト講座
ミドストの軌跡
ミドストのイメージは、任意の層にまで落としてから水平リトリーブというイメージが強いと思うが、ミハラのミドストは違う。キャストしてそのままカーブフォールさせながらシェイクし、ルアーが前進しにくい角度になったらようやくラインを巻き取りはじめる。
距離はあまり投げず、着水直後からリールは巻かずにシェイクしながらカーブフォールで落としていく。最下点近くになるとルアーが進まなくなるので、その手前で巻き始めて水平に泳がせるイメージ。水平に泳がせる長さは短くてもいい。ロールしながらの自然なカーブフォールが1番大事な部分だ。
ミハラ流シェイクテク
細かくシェイクしようとすると腕に力が入ってしまう。それを避けるため、ミハラはグリップエンドをパンパンと肘に当てることで、手首に力の入らないシェイキングを実現している。これはジグストなどベイトタックルでも応用できるそうだ。
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『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報
ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!
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