ライトゲームマスターとして活躍するアングラー、渡邉長士さんによる隔月連載。今回は、アジングのポテンシャルが高く、注目度の高いフィールド、東北での実釣がテーマだ。果たして、どのような展開が待ち受けていたのか…?
●写真/文:渡邉 長士
マルチに活躍するライトゲームエキスパート
渡邉 長士(わたなべ・たけし)
千葉県房総半島外房エリアの出身・在住で、幼少期から海釣りに親しむ。10代でルアーによるアジ釣りを始めた房総アジングのパイオニアだ。旬の獲物を追ってサオを振るマルチアングラーでもあり、近年はサーフアジングやオオニベにも傾倒する。DAIWAフィールドテスター。
アジングフィールドとしてのポテンシャルが高い東北地方
ルアマガ+をご覧になっている皆さま、こんにちは。渡邉長士(わたなべたけし)です。
私は地元となる千葉県の海でルアーフィッシングをすることが多く、手軽でライトな釣りから磯からの大型回遊魚まで幅広い釣りを楽しんでいますが、中でもマアジのルアーフィッシングの「アジング」が最も得意分野です。
地元の房総半島は、関東エリアの中では最もアジングの人気、実績が高いエリア。私の自宅からも、車で30分圏内に有望なポイントがいくつもあります。
そんな恵まれた場所に住んではいますが、テレビや雑誌などのロケでは遠征も多く、プライベートでも積極的に遠征しています。これまでに日本各地でアジングの経験を積んできましたが、近年特に注目をしているのが東北エリア。
以前、釣り番組のシーバスロケで秋田県を訪れた際、現地の方に「アジも釣れるよ」と聞いていたため、2014年の秋に、1人で秋田空港に飛びました。
ポイントもまったくわからない状態でしたが、普通の護岸からドピーカンの日中にメタルジグでアジが爆釣したりと、一瞬で東北のポテンシャルの高さに魅了されました。
そして、魅力を感じたのはアジの魚影だけではなく、アジングの将来性も強く感じました。当時は土日を含む3日間釣り場を回りましたが、アジ狙いの釣り人は多いもののアジンガーはゼロ。釣具店の方にも話を聞きに行くと、ライトゲームで人気が高いのがメバルで、「アジを狙う人はまずいない」とのことでした。
ちなみに、昨年その釣具店にご挨拶に行ったときに、当時は「千葉からわざわざアジをルアーで釣りに来る変わったヤツ」と思っていたそうですが、今ではその方もアジングを楽しんでいるようです。
THEフィッシングとルアーマガジンソルトの実釣で山形へ!
そんな東北アジングですが、実はつい先日も釣り番組THEフィッシングのロケとルアーマガジンソルトの取材で山形県に行ってきました。
ルアーマガジンソルトの記事用に、酒田周辺でのアジングをして、その翌日からのTHEフィッシングでは酒田港から船で1時間15分ほどの離島、飛島に渡りアジングをする計画…だったのですが、今回は色々とトラブルが起こったのです…。
まず、ルアーマガジンソルトの取材は、正午に酒田周辺でライターさんと待ち合わせだったため、前日夜に自宅を出発し、山形県の沿岸を下見しながら北上。途中のエリアでは、マヅメでは釣れそうなものの昼間だと難しそうだったため、予定通り酒田周辺でスタートすることに。
まずは、温排水の流れるポイントへ向かいます。ここは岸から30mほどのところで、強い流れが岸と平行に流れているポイント。確実にアジのいる場所です。まずは9.5gのキャロからスタート。ちなみに、タックルは以下の通りです。
【キャロ用タックル例】
- ロッド:月下美人 AIR AGS AJING A710L/M-T
- リール:エアリティLT2500S-XH
- ライン:UVF月下美人デュラセンサー+Si2 0.4号
- リーダー:月下美人フロロリーダー 4、8lb
- ジグヘッド:月下美人アジングジグヘッドTG 1g#10
シンカー下のハリス部分が80cmほどとり、ジグヘッドは月下美人アジングジグヘッドTG 1gに月下美人アジングビーム2inをセット。流れの沖側にキャストし、8秒ほど沈めてから流れの中に入れていきます。
リグが流れの中に入ったらリトリーブを止め、流れに乗せてドリフトさせると20cm弱のアジが難なくヒット。昼間に普通にアジングで釣れることにも驚きですが、温排水の流れるような好ポイントに他に人がいないのも驚き。投げサビキや投げ釣りの方がいることもありますが、関東であれば絶対にこんなにガラガラになることはありません。
このプレッシャーの低さ、競争率の低さも東北アジングの大きな魅力なんです。ちなみにキャロやフロートリグのような分離リグ系ではキャスト時のハリス絡みがおきやすいですが、ジグヘッドを重めにすることでトラブルは大きく減ります。
アジングビームの2inであれば1~1.5g、アジングビームバチコンカスタム3インチなど空気抵抗の大きなソフトルアーであれば1.5~2g程度にするのがオススメ。
その後は周辺のポイントを数カ所チェックするも、数日前の大雨と田んぼの代掻きの濁りが強く、エサでも釣れてない状況。そこで夕マヅメは別のポイントに行ってみることに。
絶対的信頼度を誇るアジングビーム
山形北部の広大なサーフにはヘッドランドが何本も突き出ており、その周辺はアジの付き場となり、マヅメ時には連続ヒットとなることが多く、ここも酒田周辺で好きなポイントのひとつ。
時刻は午後6時過ぎ。太陽が正面の日本海に沈もうとしています。サンセットが見られるのも日本海側ならでは。普段は太平洋側で釣りをすることが多いのでこれも新鮮です。
この日は横風が強かったため、まずは飛距離が出せてリグをコントロールしやすいキャロからスタート。風で膨らんだラインをゆっくり巻き取る感じで中層をウインドドリフトさせると1投目からヒット。サイズは20cm強と先ほどの温排水よりも大きめです。
ルアーは先ほどと同じアジングビーム。キャロもジグ単もアジングビームを使うことが多いのですが、その理由はとにかく使い勝手が良いため。ボディーにあるリブは潮をつかみ、適度な抵抗感を生み出します。それが操作感と浮遊感を生み出し、軽いジグ単でも使いやすく、よく釣れます。
重めのジグヘッドと合わせるとややマイルドになりますがキレのあるアクションも出せ、ただ巻きやフォールではテール先端のわずかな膨らみが絶妙にアクションしてバイトを誘います。このアジングビームは最も信頼しているソフトルアーであり、これまでに最もアジをキャッチしているソフトルアーです。
仮に1種類しかソフトルアーを選べないとなれば、間違いなくアジングビームを選びますし、ぶっちゃけ他のソフトルアーがなくてもそんなに困りません。私にとってはそれほどのアイテムなんです。
もはや定番ルアーのため目新しさには欠けるかもしれませんが、実力が衰えているわけではなく、むしろエビ粉をコア部分に集中的に配合するリニューアルをしたことで匂いと味でも強烈にアピールすることができ、より釣れるソフトルアーになりました。
ラッシュ時に強い、月下美人 デュアルビーム
さて、話を当日に戻すと、その後はやはりラッシュとなり、キャロだけでなくジグ単でも1キャスト1ヒット状態が続きます。ジグ単タックルは以下の通りです。
【ジグ単用タックル】
ロッド:月下美人EX 66L-S 凛(RIN)
リール:エアリティLT2000S-H
ライン:UVF月下美人デュラセンサー+Si2 0.15号
リーダー:月下美人フロロリーダー 3lb
スナップ:月下美人 ナインスナップF
ジグヘッド:月下美人アジングジグヘッドTG 1g #12
ラッシュになるとアジングビーム以外によく使うソフトルアーがあります。それが「月下美人デュアルビーム」。デュアルビームの特徴はボディー中心部はハード素材、外側はソフト素材のため、張りのあるボディーとソフトテールを兼備しているため鋭いダートをできますが、リトリーブやシェイキングではテールが艶めかしくアクションします。
キレのあるアクションとナチュラルアクションの2通りの使い方ができるので、その日の状況を探るためのパイロットルアーとして使うのもアリです。
というのがデュアルビームの基本的な使い方ですが、私が使うもう1つのシチュエーションがマヅメのラッシュの時。フックの通る中心部はハード素材のため、月下美人の中で最もズレにくく(渡邉調べ)、バイトやファイトでズラされにくくなっています。
ということは、手返しも良くなり、短い時合でも数が伸ばせるというワケです。つまり、アジングビームとデュアルビームがあれば、ほぼカバーできてしまうんですよね。
トラブル続きの東北遠征後半戦…。しかし、結果的には大成功!?
そんな感じで初日の取材は爆釣で終わり、翌日は鶴岡市の漁港でブツ撮りや撮り残したものを撮影し、正午頃にはお仕事は終了。
ということで、近くのラーメン屋さんを検索すると、「琴平荘」というお店がヒットしたため何気なく行ってみると、そこには大行列が。調べてみると山形を代表する大人気店とのこと。仕事も片付き、時間もあったため、多少待ってでも食べてみましょうか。と、番号カードをもらうと101番目。
2時間以上の待ち時間の末、運ばれてきたのは昔ながらの醤油ラーメン。自家製麺にトビウオの出汁が香るスープは素朴ながら奥深かい。替え玉をしてスープも完飲してしまいました。ラーメンが美味しいのも東北の魅力ですね。
さて、その後は庄内空港にTHEフィッシングのスタッフと共演者の“みっぴ”こと秋丸美帆さんを迎えに行き、酒田のホテルにチェックイン。夕マヅメはアジング大好きなカメラマンと2人でプライベート釣行に繰り出し、ヘッドランドでまた爆釣を堪能。
翌日は酒田港から飛島に向かいましたが、その船内で最初のトラブルが発覚。事前に宿に送っていたスタッフのライジャケが届いていないらしい。届いている荷物と一緒に配送センターに持ち込んでいたため、こんなことはないはずですが、スタッフのライジャケがなければロケができません。
もしかしたら同じ船に乗っているかもしれないため、下船後に調べてみても該当の荷物はなく、業者に確認してもわからず行方不明とのこと。車には予備のライジャケがありますが、ここはすでに飛島。そして船は1日1便のため、今日中に荷物が届くことはありません。
途方に暮れていると、フェリー乗り場の目の前にレンタル釣り具があることがわかり、そこでライジャケをレンタルすることができたため、何とかロケをおこなえるようになりました。
今回の飛島ロケはアジングがメインターゲットの完全アジング回。事前に聞いていた話では飛島はアジの魚影が濃く、日中でもバンバン釣れるため、初場所となる自分でも心配はないとのことでしたが…。
3カ所ある漁港すべてを見て回ってもアジの姿はゼロ。もちろん、釣りをしてもアジはまったく釣れず、島民の方に聞いても「アジはまだ入ってきてないよ」とのこと。
これはかなりヤバい。
ただ、港内にある海藻帯を攻めるとメバルは日中でも爆釣。最大はみっぴが釣った27cmで、20cmクラスが入れ食いでした。といっても今回はアジング回なので、アジがいないのはマズイ。
そこで、テレビ局のプロデューサー、スポンサーのダイワなどに状況を説明し、内容を急遽アジ&メバルのライトソルトゲームに変更。飛島での予定を1日切り上げ、その分を酒田でアジングをすることにしました。
酒田に戻ればアジは釣れたも同然で、温排水のデイゲームとマヅメの爆釣をみっぴと堪能し、なんとかロケを終えることができました。
今回は撮影に必要な荷物が届かず、アジもまったくいないというトラブル続きでしたが、終わってみるとメバルもアジも爆釣と、アジだけよりももっと楽しい番組になったかもしれません。今、原稿を書いている時点ではまだ編集中でオンエアの日も聞いていませんが、恐らく6月放送になるはずです。実は裏ではこんなバタバタ劇だった東北ライトゲームをぜひチェックして下さい!
ちなみに、行方不明の荷物はというと、同じ時期に別のロケが仙台であり、配送業者のミスでそちらに送ってしまったとロケ後に判明しました。
また、悪いことがあった後には良いことがあるようで、山形から帰った翌日のエギング取材では自己記録更新となる2920gをエメラルダスピーク3.5号でキャッチできました。
※本記事は”ルアーマガジンソルト”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。