《遅い! ちゃんと巻け!》巻きの釣りの3大メソッドを木村建太さんが解説

日本の『巻き』に物申す!? ワーム的ではない、ハードプラグ然とした巻きモノスタイルを、アメリカで活躍中のキムケンこと木村建太さんが解説! 決して難しくない、3つの要点を抑えて、今年は巻きモノを得意な釣りに変えてしまおう!

●文:ルアーマガジン編集部

2024 シーバス特集

【メソッド1】ちゃんと巻け!

え!? 日本人の巻き…遅すぎ!?

動かないルアーが石ころと同じであるとすれば、逆説的には動くほどハードルアーは魅力的になるともいえる。もちろんルアーによって適したスピードは存在する。例えばアクションが破綻してしまっては元も子もないのだ。そのルアーがしっかりと、良いアクションで泳ぐスピード感を覚えることが重要だ。

秋と並んで巻きモノの釣りに注目が集まる春。そんな季節にぴったりな「巻く釣り」にまつわる3大要素を教えてもらおうと、クラシックを終えたばかりの木村建太さんに突撃した今回の取材。

開始早々、耳の痛い言葉が飛び出した。

木村「日本人って、巻くスピードが遅すぎるんすわ。もちろんそれが効く場面がないわけじゃないですけど、的はずれなことも多いですよ。ワームと同じように食わせよう食わせようと考えてる人が多すぎますね。基本は使うルアーがしっかりええアクションで泳ぐスピードで巻く。というか、スローに巻いてもいいことがあんまりないですからね。根掛かりが増えるし、ショートバイトも増える。結果バレにも繋がる。ワームに寄せていってもしょうがいないんすわ。食わせようとするよりも、むしろ逃がすことが大事。思わずバスが追っかけたくなるスピード感で使うんすわ」

ソフトルアーはその柔らかさと比重により、水の僅かな流れや小さなシェイクでもバスをひきつけることが出来る。しかし多くのハードルアーが、動かなければただの石ころにすぎない。

木村「スピナーベイトはともかくとして、クランクとかバイブはゆっくり巻いても釣れる気がしないすわ。むしろちゃんと巻け! って思ってますね」

ハードルアーは動いていないと石ころと同じ!

木村さんいわく、日本のバス釣りシーンでは釣りがワームに寄りすぎているという。つまりハードルアーであっても、ソフトベイトのようにゆっくりと泳がすことが一般的になってしまっているという訳だ。しかし僅かな水流やシェイクで生命感を演出できるソフト素材と違い、プラグは動きが弱まれば弱まるほど魅力を失ってしまう。究極的には、ただそこにある石ころと変わらなくなってしまう。

ゆっくり巻いてもいいルアーは「スピナーベイト」

スローな巻き物「スピナーベイト」木村さんが唯一、スローに使える巻き物であると考えているのがスピナーベイトだ。その形状はゆっくりと巻いても根掛かりしにくく、ブレードがルアーの移動スピードと関係なく、高速で絶え間なく回るからだ。

スローに巻かないメリット

そのルアーの魅力を十分に発揮することができる巻き物らしい、スピード感のある使い方のメリットとは。

  1. 障害物に強くコンタクト
  2. 衝撃でルアーが回避姿勢に
  3. 根掛かりも減らせる
  1. 深いバイトを生み出す
  2. ショートバイトにも悩まされにくく掛けた後もバレにくい

【巻きスピードの考え方】スピード=魅力=リアリティ×存在感

木村さんの考えるルアーのスピード感は、そのルアーのもつ魅力によって変化する。この魅力を計算式的に表すのなら、ルアーのリアリティさと存在感の関係から導き出されると言えるだろう。

ハードルアーの場合、小さいものほど速く、大きくなるほど遅くが基本。ソフトベイトは究極的には放置していてもバイトを生み出せる。ある意味巻きモノとは対極に位置するスローなルアーだ。

リアリティ

いかに生物的であるか。これは見た目だけでなく、佇まいや動きそのものを含む。ソフトベイトほどこの値が高いイメージ。

存在感

バスの執着心に繋がる要素でルアーの大小によるところが大きい。小さいベイトは数が多いので見逃せるが、大きいベイトは数が少ないのでより執着する。

ルアータイプリアリティ存在感巻きスピード
クランクベイト
ソフトベイト
ビッグベイト

【メソッド2】何かを使え!

バスが追い込んで捕食する様子をイメージ

まさしく3大要素的なトピックスとして、「ちゃんと巻け!」を教えてくれた木村さん。

ふたつめは、「何かを使え」とのことだが、これはどういった意味なのだろうか?

木村「ブラックバスの泳ぐスピードって、基本的にベイトフィッシュよりも遅いんです。だからバスは『何か』を使って捕食していると思っていい。その『何か』とは、ボトムだったり、壁だったり、水面の場合もあるし、水の濁りを使うこともあります」

要するに、そういった『何か』に対してベイトフィッシュを追い込むことで、遊泳スピードの遅さを補っているというわけだ。

木村「何かを使って捕食行動をとるとなると、ルアーへのバイトもバスにとって追い込める場所で行われるほうが自然なわけですよ。つまりそういった場所から離れていくルアーは、バスにとって追いかけられないベイトとみなされて諦められてしまう。だからその場所に適したルアーを、適切なスピードで、その『何か』を利用して巻くことが重要なんです」

バスはベイトフィッシュよりも泳ぐのが遅い

ベイトフィッシュを追いかけ、捕食しているバスではあるが、じつはそのスピードは意外と速くないのだという。そこで捕食の成功率アップのため、バスはボトムや壁などを使ってベイトを追い込んでいる。これがいわゆるフィーディングスポットや食わせどころと呼ばれる場所であり、そこでの捕食を狙っているバスは、ルアーが離れていくと諦めてしまうのだ。

水の濁りの境目や水面など、地形的でないものもバスは捕食で利用する。もちろん釣りの際にも利用できる。

【メソッド3】状況を掴め!

巻きの3大要素の3つ目は「状況を掴め!」だ。

木村「今回の実釣の流れのまんますね。朝イチは透明度の高い水質を活かしてリアルシルエットのマグドラフトを選択。ダムサイトの壁を利用して釣りました。反応がなくなってからは、巻きの釣りに適した場所として、風が吹かなくても濁っている赤土バンクへと移動。イヴォークを中心に投げ込みました。でもショア側は反応が悪かったので、ディープエリアに移動し、そっちではハゼドンシャッドのミノストで、ボトムを利用した横の釣りを試しましたがそれもダメ。結局、ダムサイトに戻ってマグドラフトを使うとバスが釣れたわけです」

風が吹かず、クリアなままの水質のフィールドにおいて、ダムサイトという巨大な壁を利用してスイムベイトを食わせる。この釣りがこの日の状況にマッチしていたということだ。

木村「その後、風が吹いたタイミングでウインディサイドのシャローフラットへ移動すると、バイブレーションでも釣れたわけです」

積極的に移動して状況に合わせたルアーを選んでいく。

巻きの釣りにあった場所をこちから探しにいくイメージで、使う巻きモノの性質を把握していれば場所に対する未練も残りにくく、見切りもつけやすい。前の2つの要素を身に着けていれば、状況を掴むのは決して難しくはないだろう。

キムケンさんの「状況判断」

ダムサイト

朝一はダムサイトの壁沿いからスタートした木村さん。ベイトを追い込める壁かつ縦ストラクチャーとして期待したところ、見事に連発!

マグドラフト6in(メガバス)

速く巻けるスイムベイトの金字塔! ベイトフィッシュライクなシルエットを活かした巻きモノとして、水質がクリアなダムサイトで使用。ファストムービング系のスピード感で使えるスイムベイトで、ブリブリさせながらバスの目線の上を通す。アメリカのトーナメンターなら誰もが持っているド定番。木村さんはアイにスプリットリングを介すことでより頭を振らせるチューニングをしている。

イヴォークフラット プロト(デプス)

溺愛クランクのフラットサイドバージョンも開発中!

アタリのバルサクランクの持つ性能をインジェクションプラグで限りなく再現した傑作にして、木村さんの溺愛するクランクベイトがイヴォークシリーズだ。現在開発中のフラットサイドモデルは、水温一桁台の低水温期にも活躍する抑えめのアクションが特徴。シリーズ共通の固定重心だが、設計の妙によりフラットサイドクランクの弱点であるキャスタビリティの悪さを克服している。

赤土バンク

ダムサイトが沈黙すると、赤土バンクへと移動。風がなくても濁りが発生しているエリアで、巻きの釣りが成立できるのでは? というのが狙い。

ロングA改(ボーマー)

名作をサーフェス仕様に改造済み!

頑丈なボディに高い浮力で知られる名作ジャークベイト・ロングAのボーン素材モデルの塗装を落とし、フックも軽いものに乾燥したサーフェスチューン。赤土バンクにて、表層への反応を見るためにウエイクミノー的にストレートリトリーブで使用した。

塗装を落としフックを変えるだけでは飽き足らず、ラインの結束にはループノットを採用する徹底的な軽量化をはかっている。

ディープエリア

赤土バンクに反応が無いため、水深の深いエリアへと移動。ハンプなどの地形変化を利用する横の釣りを展開。

ハゼドンシャッド 4.2in(メガバス)+フットボールヘッド(リューギ)

ダムサイト

ディープも不発で再びダムサイトへ。再び反応があり、木村さんは試合ならココをメインにすると宣言。この日の正解と言えそうだ。

マグドラフトフリースタイル

レンジを落としたスイムベイティングに。

ダムサイトに入りなおしたあと、4尾目をキャッチしたのがこちら。スイムベイト構造のないマグドラフトで、自作のジグヘッドを組み合わせて使用した。マグドラフト6inよりも深いレンジを同じスピードで引くために、より重いウエイトセッティングになっている。

ウィンディサイドのシャローフラット

日が傾きかけた頃、この日はじめての風が吹き出した。そのチャンスを有効に活かすべく、木村さんは風の当たるシャローフラットへと移動。開発中のイヴォークバイブを使用し、見事に取材を締めくくる魚をキャッチした! 状況に応じて動き、ルアーも変えていくことが巻きモノの釣りで重要なのだ。

イヴォークバイブ(プロト)

完成間近!? 本質を突くハイスピードバイブレーション!

ウインディサイドのシャローフラットで使用。木村さんはクランクベイトでは食わせどころを絞りにくい広いエリアでバイブレーションを活用する。日本に多い頭が下に向くタイプではなく、伝統的なウエイトバランスを採用。速く巻いてこそ真価を発揮する設計にこだわって鋭意制作中だ。

おなか側にウエイトが偏重。顎下側にウエイトが固まる日本のバイブレーションとは異なる設計なのがわかる。

【巻きモノの選び方】使い込むというキムケンさんスタイル

順序は逆になってしまうが、最後に木村さんの選ぶ巻きモノ用ルアーの選び方を紹介しよう。

木村「クランクベイトとかバイブレーションとか、各ジャンルごとに1番信用できるものを選んで使い込んだらいいと思いますよ。例えば自分の場合、クランクベイトはイヴォークしか使ってない。もちろんそれはアメリカのトーナメントに出る上で、初めてのフィールドで釣りをする際にこっちのほうが食うかな? とかやってるヒマがないってのはありますけどね。でもそこのローテーションをするくらいなら場所を変えたり、ルアーのジャンルそのものを変えたほうが効果が大きいことも多いし、手っ取り早い」

つまり『状況を掴め』にもつながってくるわけだ。

イヴォークはいくつも使うクランクベイトのなかの1つでしかなく、木村さんにとってのクランクベイトと限りなくイコールになる。その使い込みが、新たな扉を開くのだ。

木村「そうやって各ジャンルで信用できるものを使い込めば、そいつの得手不得手もわかってくる。クランクだとこれ以上浅いところを攻められないからスピナーベイトを使おうとなるわけです。自分にとって心地よい使用感で1番いい動きが出る、これが好きだといえるルアーを見つければいい。そして自信をもってブレずに使い込む。そうして使い方を覚えれば、飛び道具的なルアーの威力をもっと理解できるし、投げるまでもなく釣れるようになりますよ」

いわく、今の日本のフィールドは、みんながみんな飛び道具的なルアーを投げていたり、ワーム的な釣りばかりをしてしまっているのだという。対極的とも呼べる今回木村さんが教えてくれた釣りは今だからこそ、その威力を発揮してくれることだろう。

キムケン流ブレーデッドジグとスピナーベイトの使い分け

巻きの釣りではクランクベイトを多く使用する木村さん。その突き詰めたスタイルだからこそ見えてくる、クランクベイトではない2種類のルアーの使い分けをチェックしてみよう。

ブレーデッドジグ

  • 浮かせるパワーが強い
  • 見つけさせるスピードが早い
  • ゆっくりは使えない

スピナーベイト

  • 引っ掛からない
  • カバーや魚にこちらから寄せられる
  • ゆっくり巻いて使える

キムケンさんのタックル

写真左から順番にご紹介。

マグドラフト用

項目タックル
ロッド70XHプロトロッド(ウルフダウン)
リールゼノンビースト9-L(アブガルシア)+アブワークスDFLノブ(アブガルシア)
ラインオルトロスFC 20lb(エックスブレイド)

ハゼドンシャッド4.2inミノスト用

項目タックル
ロッド70MHプロトロッド(ウルフダウン)
リールゼノンLTX-L(アブガルシア)+アブワークス DFLノブ(アブガルシア)※スプールはゼノンMG7のものに換装
ラインオルトロスFC 14lb(エックスブレイド)

巻きモノ全般用

項目タックル
ロッドプロトグラスロッド(ウルフダウン)
リールゼノンMGX-L USモデル+アブワークスDFLノブ(アブガルシア)
ラインオルトロスFC 14lb(エックスブレイド)

イヴォークバイブ用

項目タックル
ロッド70MHプロトロッド(ウルフダウン)
リールゼノンビースト9-L左(アブガルシア)+アブワークスDFLノブ(アブガルシア)
ラインオルトロスFC 16lb(エックスブレイド)

キムケンさんのプロフィール

木村建太(きむら・けんた)

幼い頃に琵琶湖で初バスを釣って以来、バスフィッシングにのめり込み、琵琶湖でその腕を磨いたプロアングラー。バスアングラーの憧れでもあるアメリカを目指した努力が結実し、今やバスマスタークラシックにも出場。名実ともに日本を代表するバスプロのひとりに数えられる。

いわゆる「ストロングな釣り」を得意としているが、その引き出しは多く、論理建てたバスフィッシングを展開する。1982年京都生まれ。

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

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