フィールドのタフ化が叫ばれ、フィネス隆盛の昨今。手駒は日々確実にマイクロ化が進みつつある中で、時代に逆らうかのように己の道を突き進む者がここにいる。その名は、小林知寛。国内最高峰トーナメントにおいて常に上位に名を連ね続ける猛者だ。そのボートデッキには、トップウォータータックルが常に並んでいる。
●文:ルアマガプラス編集部
【Profile】
小林知寛(こばやし・ともひろ)
まずは広く速く、そして遅く狭く。
サイズ & 速度ダウン 中堅が先発をカバー
件の霞ヶ浦戦では魚の居場所を探す要素が強かったシャワーブローズだが無論、主軸として登板した試合もある。2011旭川ダム戦では、3日間を通してデッキには1タックルのみ。決勝最終日こそ不運に見舞われたが、予選では次点を大きく引き離し圧倒的な首位に立っていたことは今なお語られる。
「最終日もチャンスがなかったわけじゃない。当時は現在のウェイト制ではなく、得点制だったので、どんなに小さくても1尾釣れば優勝だったんですけどね、ハハハ…(苦笑)」
2015年以前のトップ50は、各日の順位及びウェイトによる得点の合算で順位が決定。現在のように“より重量が重い選手が勝ち”という、世界基準とも言える単純明快なウエイト制ではなかったのが悔やまれる。結果は7位に。
仮にウエイト制だったとしたら、順位に変動はあったのか。改めて振り返ると、優勝選手に300gほど及ばなかったが準優勝のスコアだったことを付け加えておきたい。25cmキーパー1尾の大切さを痛感させた試合だったのか…と思いきや、それは愚問だった。
「そもそも、俺はデカいのしか狙っていない。だからこそ、トップウォーターを使っているんで」
2014年、2度目の優勝レースに名乗りを上げたのが第2戦北浦戦だった。北浦戦と名打つものの、事実上の霞ヶ浦水系戦で、小林選手が狙いを定めたのは霞ヶ浦東岸のアシ。昨季大逆転優勝の礎ともなったのが、この試合の戦い方だった。
先発シャワーブローズで反応を見た後に、中堅ワンズバグへ。『止めない』『膨張色』といった決まり事はそのままに、サイズとスピードをダウンすることでさらなる魚を仕留めに行った。さらには“もうひとつの手駒”を加え、果敢に挑んでいったのだった。
トップウォーターのTPO
最高峰戦で戦う小林選手が長年を経て得た濃密な経験則をここで披露。意外な事実も明らかになる。
Time《時間》
「朝や夕方より、11時から15時」
「夏は朝にベイトが動いてトップで釣れることもありますが、春?秋で平均して釣れるのは昼。夕方って意外と良くない。釣れるのは本当に暗くなってからが多いですね」
Place《場所》
「エサを追い上げやすいシャローが鉄板」
「ボイルがあれば進行方向を予測して投げるのが手堅いですが、基本はシャロー。追い上げる壁である水面からボトムの距離が近ければ、よりバスから発見されやすいものです」
Occasion《場面》
「魚の居場所は自分で探すもの」
「ボイル以外は、魚を探すために存在するのがトップウォーターという存在。季節的に有望な場所でまずは投げて探す。まずは釣ろうとしなくていい。反応を得たら次へと繋ぐ」
「1ポップは釣れる気がしない。連続トゥイッチで動かし続ける」
時に深場では止めることもあるが、小林的操作系トップの基本は連続アクション。「ポッピングですか? 見える魚に試すとわかりますけど、逃げることが多いですね。海で多用されるのは深場からコールアップするためなんですよ」シャローがメインのバス戦略では不要だという。
ワンズバグ(エバーグリーンインターナショナル)
SPEC
●全長:6.8cm ●重量:9.8g ●タイプ:Floating ●フックサイズ:#6 ●カラー:全30色 ●価格:1650円(税別)
自在なアクションを演出できるポッパー界の超ロングセラー作
国産ポッパーの代名詞的存在として知られる稀代の名作。移動距離の少ないターンアクションを見せると共に、スピット・バブル・ポップを自在に演出可能。小ぶりながらも優れたボディデザインは高い正確性を伴って存分な飛距離を確保。タングステン・ブラス・スチール・グラスの4種のハイブリッドラトルサウンドが広範囲から魚を集める。
●カラーローテーション
膨張系を絶対的主軸に、エビか小魚かで選択
小林選手が最も多用するカラーはモリゾーピンク。「膨張系です。使い込み過ぎてほぼ白ですけど(笑)」年間を通じてデッキに並ぶため日焼けは不可避。「バグはエビを意識している時。時に小魚偏食の時はキラキラ系各色の出番もあります」
●フェザー
シャワーブローズと同様に『トレブルマジックフェザー』を標準装備。小ぶりなボディでも斜め浮き姿勢で存在感を発揮して、水面に出切らない魚のバイトを促す要素にも。
●カップ
シャープなエッジを持つ独自デザインのカップ。前方へのスピット、ボディへと孕むバブル、そしてサウンドのいずれも自在に生み出すことが可能に。
御三家に次ぐサブトップ陣
ダイナモバズ3/8oz(HMKL)
ウイニングルアーとして数々の実績を持つバズベイト。「シャワーブローズとのセット使い。まず探すためのトップです」膨張色の白で広く探り、シルエットがはっきり出る黒でしっかりと食わせに繋いでいく。
ビッグバド(ヘドン) ドリラータイフーン(ヒヨコブランド) バルサ50 ダンプティクリンカー(スポーツザウルス)
ジョイントフカベイト(ノリーズ) スクラッチ(レイドジャパン)
レゼルブ(ディスタイル)
ギズモ(エバーグリーンインターナショナル)
PEスピニングで使う虫系トップ2選。「オープンでレゼルブ、カバー内や吊るしでギズモ」スモールマウス戦以外はほぼベイトタックルオンリーの小林選手だが、今年はこの2ルアー用にスピニングタックルを常備している。
ノールックバグ(ベイトブレス)
17七色ダムのウイニングルアーともなった吊るしの切り札。リアルな造形と細やかなパーツの波動で水面アピール。ボディ縫い刺しでトレブルフック装着が小林スタイルだ。
コンバットペンシル ジャスティーン115(エバーグリーンインターナショナル)
●使用タックル
スモールマウス戦では95mmのジャスティーン、ラージマウスには115が小林流。「魚を探した後、ペンシルの動きでしか反応しない時」に多用するモデルだ。
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