なぜルアーにホログラム?『知っているようで知らないホログラム』〜前編〜

まざまなルアーにごく普通に貼られている「ホログラム」。キラキラ、ピカピカと艶かしく七色に輝き、人工物であるにもかかわらずベイトフィッシュの皮膚の質感を見事に再現。ときにはそれ以上に艶めかしい光を放ち、魚はもちろんアングラーたちをも魅了する。実はそんなホログラム、大半が商品パッケージなどの“紙用”として開発されたものだというが…

●文&写真:滝徹也

2024 チニング特集

解説はGOOD BAIT山田晋さん!

山田晋(やまだ・しん)

「釣り道具は釣り場で楽しみながら作る」がモットーの超現場型ルアーデザイナー。20年近くにわたり、トラウトからシーバス、マグロ、ミノーからメタルジグに至るまで幅広くルアー製造に携わってきた。その経験を活かし、既成概念にとらわれない新しいコンセプトのルアー創りをライフワークとして2021年に「GOOD BAIT」というブランドを立ち上げた。北海道から沖縄、そして海外と、ショア、オフショア問わず各地のフィールドで魚と向き合いながらのモノづくりを楽しんでいる。

“ルアー専用”ホログラム開発のキッカケ

商品パッケージなど、ホログラムは我々の身のまわりにあふれている。それほど身近な存在だ。

いまや、ごく普通にルアーに貼られているホログラム。もはや当たり前すぎて、あまり意識したことがない人も多いのではないだろうか。実はその多くは、もとは“紙用”として開発されたものであるという。

紙用というと、代表的なのは化粧品や洗剤、お菓子などといった製品のパッケージだ。もちろん釣り具のパッケージにもホログラムは使われているし、シールやカード類、お金(紙幣)にもホログラムは使われている。それほど我々の身のまわりにはホログラムで溢れている。

そんなにも身近なホログラムであるから、種類はそれこそ膨大。分厚い見本帳があり、そのなかにはルアーに貼ればあたかもベイトフィッシュの鱗模様のように見えたり、いかにも釣れそうな光り方をするものだったりと、本来の目的ではないものの魚を釣るための道具としても優れたデザインのものも多い。そのため、接着する糊などを改良して、水中で使われるルアーに使用しているというのである。

もちろん、最初からルアー用として開発されたものや、釣り具メーカーが独自で開発したルアー専用ホログラムも存在する。だが、そういったものは少ないうえにとくにメーカーオリジナル品は他のメーカーは使うことができないという側面があるため、むしろ種類の多い紙用ホログラムを使う方法が一般的なのだ。我々が使っているルアーに当たり前のように貼られているホログラムには、そんな裏事情があったのである。

さてそんな折、新進気鋭ルアーメーカー「GOOD BAIT」の代表でありルアーデザイナーとして活躍する山田晋さんのもとに、日本屈指のホログラム製造販売メーカーのひとつである村田金箔さんから、あるオファーがあった。それは、誰でもどのメーカーでも購入して使える“ルアー専用”のホログラムを一緒にイチから作りませんか? というものだった。

さてそんな折、新進気鋭ルアーメーカー「GOOD BAIT」の代表でありルアーデザイナーとして活躍する山田晋さんのもとに、日本屈指のホログラム製造販売メーカーのひとつである村田金箔さんから、あるオファーがあった。それは、誰でもどのメーカーでも購入して使える“ルアー専用”のホログラムを一緒にイチから作りませんか? というものだった。

そこで今回から短期集中連載として数回にわたり、GOOD BAIT・山田さんに同行。ルアーには欠かせないホログラムの開発現場に密着した。「なんだ、ただのホログラムの話?」と侮るなかれ。このホログラムにまつわる話が、アナタの釣果を大きく左右する可能性があるとしたら…?

そもそもホログラムってどんなもの?

みなさんもご存じのように、ホログラムはペラペラのシート状のフィルム。非常に薄いものであるのに、様々な模様が描かれギラギラピカピカと光り、ときに立体的に見えたり、角度を変えて見るといろんな色に見えたりする。実に不思議な物体だ。そんなホログラムはそもそもどんなものなのか? 「GOOD BAIT」山田さんに、分かりやすくざっくりと解説してもらおう。

山田「ホログラムは、透明なフィルムに銀色のアルミニウムを蒸着したものです。そのアルミ蒸着層の表面に柄となる薄いエンボス層があります。そのエンボス層に非常に細かい凹凸をつけ、そのつけ方の違いによって、多彩な模様や色合いが光の反射によって表現されます」

ホログラムは、基本的にはフィルム、アルミ蒸着層に加え、最上層のトップコートと接着のための糊の層と4層構造となっている。アルミ蒸着層は水蒸気に触れるとすぐに腐食してしまうのでクリアのトップコートが施されている。

山田「アルミの蒸着層上のエンボスをどう加飾するか。そこがホログラムメーカーや職人さんの腕の見せどころなんです」

なぜルアーにホログラムを貼るの?

クリアカラーやマット塗装カラーなど、ホログラムが貼られていないルアーでももちろん魚は釣れる。ではなぜ、多くのルアーにホログラムは貼られているのだろう?

ホログラムをルアーに貼るのはなぜだろう? ウッドのルアーであれば、木の模様のままでも魚は釣れる。プラスチック製のプラグには無塗装透明なクリアカラーが存在し、ご存じのように状況によっては非常によく釣れる。パールカラーやチャート、フルグローといった全塗装されたルアーもあり、そういったカラーも非常によく釣れる。金属製のスプーンはそのままで十分にピカピカして、その動きと相まってアピール度は抜群である。このように書くと、ルアーにホログラムなんて貼らなくてもいいんじゃない? なんてことになりそうだが、それでもルアーには実際はわざわざホログラムが貼られているものも多い。

そうなると、なぜルアーにホログラムを貼るのだろう? ホログラムが必要なのだろうか…? という疑問が湧いてくる。それを判断する要素としては、様々な角度から見ていく必要がある、と山田さんは言う。

山田「ルアーにホログラムが必要なのか、そうではないか。それは、釣りをしているアングラーが一番感じていることだと思います。今日はイワシがベイトだ、トビウオがベイトだというときに、チャートやフルグローといったカラーのルアーを登場させることはほぼないでしょう。ホログラムなどキラキラしているものを貼ったカラーのルアーのほうがよりベイトフィッシュライクなので、そちらをセレクトする人が大半なのではないでしょうか」

そのルアーが釣れると信じて投げ続けられるかどうか、千載一遇のチャンスに自信を持ってキャストできるかどうか……という、要は“気持ち”の問題なのだが、だからこそルアーにホログラムを貼る必要があるのだ。ただ、もちろんキラキラピカピカとよく光を反射するルアーのほうがよく釣れるときもあれば、前述のようにそうでないときもある。これも、アングラーが一番分かっていることだろう。

山田「ホログラムが必要なもうひとつの理由は、ルアーが“反射”という現象を得られるかどうか、ということです。ありとあらゆるすべての物質において、光の反射という現象は起きています。たとえば、海面、船のデッキの上、リールの表面、人間の皮膚、衣類の表面……といった具合です。ただ、反射率や反射の仕方がどうかといえば、それぞれで異なります」

人間の皮膚よりは、ルアーのホログラムのほうがよく光を反射してピカピカしている。我々が目で“物”を認識できているのは、その物体が光を発している、もしくは“反射”しているからだ。光のない真っ暗闇で何も見えないのは、物質が光を発さず、反射もないからなのは言うまでもない。

山田「要は、ある特定の部分だけを意識して注視する状況ではなく、無意識で何気なく周りを見ている状況においては、キラリと光ったりピカピカ光を反射している物のほうが目にとまりやすく、その存在を見つけやすいはずです。それはきっと魚でも同じことで、そういった“視覚的認識効果”というものを得やすいという意味で、ホログラムのような光を反射する物が必要となり、これが非常に重要な役割を果たします。かなり昔の話をすれば、スプーンを湖に落としてしまい、それに魚が食いついてきたという話はあまりにも有名で、これがルアーの原型になったということはみなさんもご存じでしょう。もちろんそれは動きの効果もあるでしょうが、スプーンが反射したピカピカした光に魚が興味を示した、ということも大きかったに違いありません」

さらに、ルアーを作る立場からもホログラムという存在は重要だ、と山田さんは言う。

山田「たとえばウッドのハンドメイドルアーを作るビルダーが、もちろん木の素材を活かした塗装をすることはもちろんあります。一方でアルミ箔などを貼るのは、反射という現象を得ることによって、“そのほうがきっと魚が釣れるだろう”という思いに起因します。つまり、ユーザーに釣ってほしいんです。そういったことを考えると、魚を釣るための“モノ”を作るという観点からは、ホログラム=光を反射するものを貼ることができるかどうかということは、もの凄く重大なことなんです。選択肢や視野が大きく広がります。ハンドメイドの世界でよく用いられるアルミ箔と違って、ホログラムはアルミ蒸着層表面のエンボス層への凹凸の付け方の違いだけでいろんな色に光るものを簡単に作ることができます。我々はそれを選ぶだけで、いろんな表情の製品を作ることができるんです。これは、モノづくりの観点からすれば、凄く有益なことです。自身が釣りたいという気持ちと、ユーザーに釣ってもらいたいという気持ちのバランスにおいては、ホログラム=光を反射するものをルアーに纏わせるということは、凄く先進的なことだと思います」

ルアーの鱗模様再現に使用されるアルミ箔とホログラム、どう違う?

アルミ箔の上にホログラムが貼られたハンドメイドルアー。アルミ箔とホログラムは、元は同じ物質。だが、光の反射の仕方はまったく違う

ルアーに光の反射をもたらし、かつベイトフィッシュの鱗模様を再現する際に用いられる手法として代表的な素材に、ホログラムとアルミ箔、そしてシェルシートがある。シェルシートは言うまでもなく、貝。天然素材だ。

では、人工素材のホログラムとアルミ箔は、いったい何が違うのだろう? 前述のように、ホログラムは非常に薄い透明なフィルムにアルミニウムを蒸着したもの。アルミ箔は、いうまでもなくアルミニウム。つまり、元は同じものである。

山田「原理的に言うと、ホログラムとアルミ箔は同じ物質からできているので、同じアルミニウムということで反射の構造は基本的には同じであると考えられます。ただ、ホログラムもアルミ箔も、表面への凹凸のつけ方によって反射率が変わります。ハンドメイドルアーの世界では、ヤスリの模様をアルミ箔に転写することによって鱗模様を再現する手法がよく用いられますが、これも実はホログラムを作る方法と原理は同じです。つまり、アルミ箔も細かい凹凸をつけることによって、フラットで何も凹凸がないアルミ箔よりも反射率が高くなる可能性があるかもしれませんし、もしかしたら逆の場合もあるかもしれません。要は、シェルシートを含め、どの手法もより魚を釣りたい、より釣ってもらいたい、より釣獲性能を上げたい、という思いでやっていることなんです」

では、どれがいいか、どの手法がもっとも釣れるか、となれば……それは“魚のみぞ知る”である。

山田「実際、ピカピカ光をよく反射するルアーと、反射しにくいカラーのルアーとでは、どちらがいいとか悪いとかではなく、魚の反応が違ったことは多々経験していました。そこで、実際にルアーに貼られている代表的なホログラムがどれぐらい光を反射しているのか、研究施設の機械を使って計測して、数値として見てみたんです」

さらに山田さんは、その研究所での計測で、前代未聞の、もしかしたらルアー塗装における“パンドラの箱”を開けてしまうかもしれないような、ちょっと衝撃的なことも行った。

…驚きの計測結果は、後編で。

このようにして、これまでにない、まったく新しいコンセントの“ルアー専用ホログラム”の開発が、いよいよ始まったのである

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※本記事は”ルアーマガジンソルト”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。