
“房総のレジェンド”と称される川島勉さんが立ち上げたブランド「BETOBETO」。氏のこだわりを詰め込んだルアーやアパレルアイテムを世に送り出している。そんなBETOBETOから、新たなルアー「VERO120F」が発売された。ギルやフナのようなシェイプだが、そのアクションは唯一無二だという。この新たなルアーの秘密を川島さんにこっそり聞かせてもらった。
●文:ルアマガプラス編集部
ブルーギル 驚きの習性
【Profile】
川島勉(かわしま・つとむ)
房総リザーバーでは誰もが知るプロアングラーであり、稀代のルアービルダー。少年時代から房総半島のダム湖に通い詰め、独特の着眼点でフィールドを見つめ続けてきた。バスを釣るため培ってきた経験と知見の全てを注ぎ込み、生まれてきたのが「BETOBETO」からリリースされる個性豊かなルアーたちなのだ。
川島「水面で死んだフリするギルって見たことあります?」
川島さんのそんな一言から始まったインタビュー。瀕死ではなく死んだフリ? 一体どういうことなのだろう。
川島「正確に言うと、死んだフリっぽく見える〈水面で横向きになって動かなくなる状態〉のギルです。おそらくは動いたら食われるってわかってるから動かなかったり、横になって少しでも自分を大きく見せて食われないようにしてると思うんですよ」
それは知りませんでした。どうにか食われないよう、ギルも必死なんですね。
川島「バスに追われているギルって、近くにカバーがあればカバーの中に逃げ込むんです。でも近くにカバーがなかったり、何かの理由でカバーに入れないと、ギルもパニックになる。そうすると水面に横向きになって浮くんです。そして動かなくなる」
ギルがそんな行動をするとは驚きです。よくそんな習性をご存知ですね。
川島「25年以上前から研究してましたから 笑。まだボート屋さんの桟橋で釣りして良かった時代、背掛けにしたブルーギルでバスの反応を観察していたんです」
川島「横浮きで動かないギルをバスは水面まで見に来ます。食わずに見ているんですね。そこでちょっとラインを張って動かすと、ギルがまた急いで泳ぎだす。このときバスに食われるんです。今回はそれを演出できるルアーを作ってみました」
そう言って川島さんが見せてくれたBETOBETOの新作「VERO120F」がこちらだ。
VERO120F(BETOBETO)
【スペック】
- 全長:120mm
- 自重:48g
- タイプ:フローティング
- フック:#2フェザー(FRONT)/ #4(REAR)
- 価格:¥5,060
【適合タックル】
ベイトキャスティングタックル MH〜H
適合ライン:フロロ/ナイロン 14〜20lb 潜航深度:0.3m
“静”と“動” そのギャップがバスを騙す
ギルが動いたときにバスが口を使うんですね。
川島「そうなんです。この動き出すときのスピードが実は重要でして。VERO120Fでこだわったポイントのひとつです」
どのくらいの速さなんですか?
川島「ギルにとっての全速力ですね。横浮きでフリーズして、今にも食われそうという状況で、再び動いて逃げようとする。もちろんバスも反応するわけです。当然ながらギルは全力で逃げますよね、食われたくないから」
「ギルの全速力って結構速いんです。その速さを出せなきゃ騙せないバスもいます」
止まっていたけど、いきなりトップスピードで逃げ出すんですね。
川島「そうなんです。“静”だったのに、いきなり“動”になる。しかもギルにとっての全速力。文字通り、死力を尽くして逃げますから、かなりのスピードです。それでも、バスの方が大きく速いので、ギルは食われてしまうんですね」
川島「この“0”から“100”の切り替わり、“静”から“動”になるエスケープアクションが、VERO120Fで表現したかった、バスの騙し方なんです」
川島的 横浮きギル型ルアーのルーツ
「川島的ギル型ルアーの完成系のひとつがVERO120Fです。ずっと実現させたかったものが、ついに形になりました」
川島「最初はキャスティークのギル型ルアーで、横泳ぎのものを作ったんですよ。でもね、浮かなかった 笑。シンキングになっちゃったんだけど、当時はクリアだった亀山の“プール”(亀山湖 折木沢筋の最上流)で試したら、横向きのフォールで釣れちゃったんです」
25年前に、既に横向きのギル型ルアーで釣果をあげていたんですね。
「こんなふうに横向きのまま沈んでいきましたね、改造したキャスティークのギル型は 笑」
川島「その後、通常の浮き姿勢のギル型ルアーを作らせてもらって」
バスにガンたれるやつですね 笑。
川島「そうです 笑。あれは通常の浮き姿勢ですが、少し改造して横浮きで使ったら、デカいバスがルアーに寄ってきて。横浮きのパワーはすごいなと感じました。でもこれは、横浮きのまま波紋で誘うとか、巻くと横向きのまま泳いだりとか、そんな使い方でしたね。」
「フナも扁平型のベイトだけど、自分の中ではやっぱりギルかな、たくさん観察してきましたから。まあ重要なのはバスからどう見えるか。答えはないです」
横浮きで動かない状態からの、エスケープアクションではなかったんですね。
川島「そうです。以降も、小型版のギル型ルアーで横浮きを作ってテストをしていました。あるとき河口湖でウィードのポケットで横浮きさせたら、デカいのが浮いてきて」
クリアな水域のバスも興味津々なんですね。
川島「こんな経験から、横浮きのギル型ルアーへのバスの反応が異常に高いことはわかっていたんですが、なかなか作る機会がなかった。けれど、BETOBETOを立ち上げて、自分の最も追求したかったところを形にできました」
川島「房総リザーバーを中心に、大きいバスからキーパーサイズまでしっかり釣れています。バスからの答えをもらっている自信作です」
「基本のアクションは、〈巻いて 止めて 浮かせて〉の繰り返しです。ロッドでアクションをつけるというより、リーリングで動かす感じですね」
釣るための要素が満載
3連ジョイントボディのVERO120F。滑らかな動きは、この魔法のジョイントから生み出される。ジョイントルアーというとキャスタビリティーが気になるところではあるが、そんな点も解決しているという。
川島「バスの反応を観察するためには、近付かなければならないんですが、いざ釣るとなったらバスから離れることが大切です」
バスが釣り人の存在を認識して警戒するんですね。
川島「バスがつつくけど食わない理由の一つに、距離があると思うんです。クリアな水系のフィールドでは、つつくけど食わないなんてことが非常に多くて。そんな状況ほどバスとの距離が重要になります。なのでVERO120Fには重心移動も搭載してキャストしやすくしています」
立体的な重心移動システムを内蔵。VERO120Fのキャスタビリティーと非常に滑らかな姿勢変化の仕組みはここに。
警戒させない距離から狙えるんですね。
川島「そうですね。あとバスに見切られないためのポイントとして、ライズの時間が長くならないことが重要ですね」
ライズの時間が長すぎるとダメなんですか。あまり意識したことがありませんでした。
川島「もちろん状況にもよりますが、ルアーを潜らせすぎて、浮上時間が長くなるとバスに見切られるんですよ」
バスの観察力ってすごいですね。
川島「ほんとにね、奴らはよく学習してる 笑。なのでVERO120Fはバスを騙しやすい表層から、できるだけ離れないようなバランスにしてあります。距離とラインの太さにもよりますが、普通に投げてグリグリ巻くと、30cmも潜りません」
川島「そして最も大きなポイントが、止めた状態から速巻きできること。先に話したように、死んだフリから全速力で逃げるわけですから、横浮きからの縦泳ぎをスムーズかつトップスピードでこなす必要があるんです」
川島「横浮きで動かなかったギルが、急にトップスピードで短距離ダッシュをするというイメージですね。長い距離を速く巻くと徐々に反転して水面に飛び出してしまうので、そのへんの感覚は使いながら確認してもらうのがいいかと思います。基本は姿勢を崩さない範囲での速巻きでOKです」
横浮き姿勢から、縦姿勢になるまでの泳ぎ出しも非常にスムーズ。滑らかな動きの変化に思わずバスも口を使うのかもしれない。
横浮きのルアーはいくつか思い浮かびますが、“0”から“100”のスピード変化が可能なものはこれまでなかったように思います。
川島「VERO120Fを初めて見るバスには衝撃的だと思いますよ」
『こんなスピードで泳ぐって、本物のギルだ!』とバスは感じるかもしれませんね。
飾りではないフェザーフック
川島「すべてのバスが完璧に騙されて、ボディを狙って本気食いしてくれたらいいんですが、そうはいかないこともありますよね。現代の魚って本当に賢いじゃないですか」
確かに。亀山のでかバスなんて、僕より賢いんじゃないかと思います。
川島「そんな賢くてルアーに対して半信半疑の魚って、ボディを食ってくれないんですよ」
「フェザーがないと、フックがないところを食ってしまうこともありますから、実は重要なパーツなんです」
川島「これまで観察してきた限り、疑り深いバスは、まずフェザーを食ってきます。なので、針のある部分を食わせるためにフェザーフックを採用しているんです。半信半疑の魚も、コイツで釣ってやろうと」
なるほど、意図した部分にバイトさせるためのフェザーフックなんですね。てっきりヒレかと思ってました。
「フェザーフックを前方下の空いているアイに付け替えると、最初から縦姿勢になってウエイクベイト的に水面を泳がせることもできるので、それも試してみてください」
川島「ヒレというニュアンスも…まあゼロではないです 笑。とはいえやっぱりフックアップ率を向上させるための機能の方が大きいですね」
最後に、このテールはなくてもいいというわけでは…ないんですよね?
川島「そうですね。テールがないと、動きがちょっと変わってしまうので、投げるときは付けてほしいです。ただ、エラストマー素材なので保管には注意ですね。面倒かもしれませんが、ワームと一緒にすると溶けちゃうので。万が一そうなってしまっても、スペアテールも販売する予定なので、そこはご心配なく」
僕は気を付けていてもやってしまうので、スペアテールはありがたいです。
「テールやヒレも、理想の動きを出すために微調整を繰り返しました。時間がかかった分、誰でも効果的なアクションが出せるように仕上げています」
川島「VERO120Fは、魚が近くにいれば、カバー際で使ってもオープンで使っても面白い反応が得られるルアーです。バスに見せたらびっくりすると思うので、ぜひ全国のフィールドで試してみてください!」
カラーラインナップ
VERO120Fはギル系のカラーを中心に、ナチュラル系からシルエットを強調するカラーまで全6色展開となっている。(各カラーの解説はBETOBETO公式instagramより引用)
BETOBETO ORANGE PEARL
BETOBETOルアーのカラーの中でのアイコン的存在がBETOBETOオレンジパール。
ゴーストパールに透過性マグマホログラムを加えたベースに、ブラッドオレンジからオレンジへとグラデーションで変化するカラーを背中にあしらいました。遠目からでも把握しやすいので、アングラーの意思通りの操作を把握するのに最適です。
BEN SHAD
BETOBETOルアーのカラーラインナップでも屈指の人気カラーがBENシャッド。
パールベースのシャッド系カラーでフィールドや状況を選ばない汎用性の高さを誇る定番中の定番カラーで、川島勉のお気に入りとしてタックルボックスの一軍ラインナップから外れる事のないマストカラー。水色を問わず各地からの釣果報告が多い人気カラーです。
MABUNA
日本の湖沼エリアではおなじみのギンブナ(マブナ)をモチーフにしたマブナカラー。
反射を適度に抑えた柔らかい塗りのシルバーは水色を問わずに馴染む地味系カラーの代表格。バスやシーバスはもちろん、淡水から海水まで様々な状況と魚種に対応します。
POND GILL
ため池などの少しにごり気味の水色にマッチするポンドギル。
イエローパールベースに特有の縞模様をあしらった、これぞブルーギルという配色。すこし濁りのある水色でお試しいただきたい実績カラーです。
GHOST SHAD
クリアウォーターをメインに想定したゴースト(透過性)系のシャッドカラー。
水に馴染みながらもボヤッとした膨張色は強すぎない存在感を演出します。
ヘッド部にバイトマーカーとしてピンクをあしらいました。
BOSSGILL
晴天時の水面付近でもシルエットがハッキリでるダーク系カラー。
フィールドで見かける巨大化して真っ黒になったボスキャラ的なブルーギルをイメージして設定しました。逆光や空が白む曇天下、濁りの中でも魚からの視認性に優れており、いわゆる強いカラーとして押さえておきたい一色です。
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