藤田京弥の素顔に迫る10人の供述【小野俊郎が、山木一人が、青木大介が、実父が…】

令和の怪物、藤田京弥。なぜ彼だけが勝ち続けられるのか。その強さの秘密はなんなのか。ライバル、スポンサー、カメラマン、肉親…、彼をよく知る人物10人の証言から、藤田京弥という変異体の実像に迫る。

●文:ルアマガプラス編集部

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証言1 「藤田京弥がバスプロを次のレベルへ押し上げた」

小野俊郎(おの・としろう)
ジャッカルの代表を勤める傍、トーナメントの第一線で戦い続けてきたプロフェッショナル。藤田京弥の才能を身近で感じてきた人物のひとり。

彼の成績を見ても、日本人最強であることは間違いない。次元が違いますよ。これまでも強い選手はいましたけど、質が違いますね。彼の登場で、今後は彼の記録が目標になってくるわけで、常識を塗り替えたとも言える。彼はバスプロのレベルを次のステップへと押し上げたんです。

同じトーナメンターとして、そしてサポートをする企業として彼を見てて思うのは、釣りを覚えていく過程が僕らと全く違うということ。僕らはフィールドごとのシーズナルパターンがあって、そこにルアーをどう当てはめていくかっていう釣りがベースにある。でも、彼はまず目で見えるバスをどう釣るか、そこを徹底的に突き詰めていったことがベースにある。これってとても至極当然なことだし、合理的。結局その瞬間瞬間で魚が求めているものを入れていくことが釣りなんだから。シーズナルパターンって、バスからしたらどうでもいいことだからね。目の前のバスを釣るときに、余計な先入観がないっていうのかな。目で見てこういう反応をするから、水中でも同じようなことが起こっているっていう逆説的な考え方もするしね。

でも、我々の世代の話もちゃんと取り入れるんです。人のワザを盗もうとかそういう嫌味はなくて、邪念が無くて純粋に釣りのことをもっと知りたいって感じ。そういうところは柔軟だし、真摯だよね。負けず嫌いだし、成長するためにも貪欲だし、妥協しないのが藤田京弥です。

親と子ほど年は離れているが、トーナメントではライバルであり、スポンサーシップを結ぶ関係でもある。

証言2 「30代、40代、彼がどういう 大人になっていくかに興味がある」

山木一人(やまき・かずと)
芦ノ湖でレンタルボート屋を経営する、同湖の顔役的存在。バス釣り界の先輩として、適度な距離感を保ちつつ藤田京弥の成長を見守ってきた。

彼は昔からセンスがいいですよね。プラで良かったパターンを試合中に捨てて新しいパターンに切り替えられる。これってかなり勇気がいるし、自分に自信がないとできないことですから。かなりクレバーに、恐ろしいくらい冷静に釣りを分析してますよ。その対応能力の広さが彼の強さのひとつだと思います。

プロ戦に出始めたころに、バスプロとしてどうあるべきか相談されて、自分を安売りしすぎないようにとは答えました。たとえばちょっとした小物だけのモニターの契約は絶対するなとか。しっかり資金に繋がる契約をしなさいとね。若いうちはいろいろスポンサーを付けたい気持ちが強いと思うんですが、小さい契約でその先の可能性を潰して欲しくないんです。そして彼が成績を伸ばし始めたころ、そろそろ自分を商品として売り出していかなければいけないというときに、いろいろなスポンサーから声がかかるなかでDAIWAとジャッカルが付いたらおもしろいんじゃない? って後押ししたんです。もちろん最後は自分の判断で決めてましたけどね。

やっぱり今風の子なので、あまり喋りができないっていうのかな。だから、僕がいろんな大人たちと引き合わせて、いろんな話をさせるようにしました。あとは自分なりの個性を持ちなさいとか、未来のビジョンを明確に持ちなさいとか、文章を書けるようになりなさいとかね。自分から釣りに関してどうこうしなさいとかは一切無いですよ。これからはひとりの男としてどういう大人になっていくか、そこが気になりますね。