藤田京弥の素顔に迫る10人の供述【小野俊郎が、山木一人が、青木大介が、実父が…】

2024 ブラックフライデー

証言8 「バスを釣ったときの嬉しそうな表情を見るのが親として最高の喜び」

藤田利之(ふじた・としゆき)
藤田京弥を含む3人の子を育てた父親。子供が小さいころはキャンプや釣り、虫捕りなどに家族で行くのが定番だった。写真は京弥さんが小学生くらいのころ、後ろに写っているのが父親の利之さん。

夏輝と京弥は昔から一緒に遊んでて仲が良かったですよ。夏輝はしっかり者、京弥は自由奔放な感じで、よくある長男次男といった感じですかね。彼らが小さいころはいろんなスポーツをやってましたけど、釣りが一番熱中してました。最初は海の堤防釣りやマス釣りから始まり、知り合いからルアーをたくさんもらってからはバス釣りにハマってました。

京弥が中学生のころから高滝湖のチャプターに出るようになりました。泊まりのときは車中泊して、自分が運転席、助手席に夏輝、後部座席に京弥が寝たりして。大人に混じっての大会だから当然けちょんけちょんにされるんだけど、逆に火が付いて、兄弟であーでもないこうでもないって研究しながらルアーを改造したりしてました。彼らと一緒に釣りをしたり、ボートを車に載せていろんなところに行くのはとても楽しかったですよ。

京弥は釣りがしつこかったですね。一緒に釣りをしてて、そのバスもう食わないよって言ってもずっと追いかけ回していろんなルアーを試してました。私が飽きて後ろで寝ちゃうくらい、ずっと同じバスを追いかけ回してましたね。いろんなバスを見ては、バスの個性まで見分けてるような感じでしたよ。それで最後にはバスを釣ったりして自慢げに見せてくるんです。

夏輝もそうですが、彼らが釣りをしてるときってすごくいい顔をしてるんですよね。たかが魚ですが、バスを釣るときには手が震えて感動して、満足そうで幸せそうな顔をするんですよ。それを見るのも幸せで、その顔が見たくて毎回釣りに連れて行ってました。反抗期とかはなかったです。夢中になるものがあって心から感動できるものがあれば、曲がった道にはいかないんだろうなと思ってます。あと、釣りのときは毎回お母さんが朝用と昼用のお弁当を作ってくれてたんで、感謝しなさいと伝えたいですね(笑)。

証言9 「試合になると完全に別人になる超完璧主義者」

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菱沼 豪(ひしぬま・たけし)
ルアーマガジンでは陸王などを担当する動画カメラマン。藤田京弥のJBトップ50シリーズや海外トーナメントに同行し、彼をもっともカメラ越しに見てきた人物。

初めて撮影したのは陸王に初登場した2019年の紀ノ川戦。見えバスがいたんだけど、ルアーを投げても全然逃げないから、手で捕まえていいですか? って言って、実際に水に入って捕まえたんです。もちろんスコアにはならないんだけど、バスを見たいっていう純粋な気持ちが強いんだろうね。そんなアングラー見たことなかったので、かなり衝撃的でした。

試合以外では普通の若者なんだけど、試合モードに入ると人が変わりますね。試合では「ひと言も話しかけないでほしい、物音も立てないでほしい」と頼まれます。そして、かなりこだわりが強いです。食べる物も決めてるし、水も同じブランドのものしか口につけない。泊まるホテルもめちゃくちゃ吟味して決めますしね。理想の宿を見つけるために長時間探したこともありました。自分の気にかかることは全て排除する完璧主義者であり、アスリート気質なんですよ。

あとは、海外でも彼は全く動じません。自分のペースを崩さないと言うか。試合が始まる前、名前を呼ばれるギリギリまでご飯食べてますからね。まわりにそんな選手いませんよ。また、記録という数字もかなり大事にしてます。陸王の歴代スコアとか、このレイクの総重量記録とか、レコードに名を残すことにも貪欲です。多分、何に関しても最強になりたいんでしょうね。

陸王、JBトップ50、本場アメリカでのトーナメント。極限の戦いの場を動画に収めてきたのが菱沼さんだ。

証言10 「彼はバス界の日本最高傑作、 否、バス釣り星から来た宇宙人」

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近藤圭一(こんどう・けいいち)
ルアーマガジンをメインに活動するバスフィッシング専門ライター。長年JBトーナメントに同行し、何人ものバスプロが戦う姿を取材してきた。

JBトップ50に上がった2018年、初戦の野村ダムで3日目に同船させてもらったときの話。3日目なのに1匹釣るごとに重さを計ってメモしていたのは驚きました。最終日は時間も短いし難しくなってるのに、「ハナからリミットメイクして入れ替えるつもり満々なんだ、なんてメンタル強いんだ」と思いましたね。

その年の第3戦目、七色ダム。彼のサイトフィッシングも衝撃的でした。彼は目で見えバスを追いながら、手では別のところを投げてブラインドで魚を狙ってるんです。だから効率が2倍なんですよ。その七色ダム戦の最終日、残り30分のところでゾーイで魚を掛けたんだけど、抜き上げたら魚が外れちゃった。でもその瞬間ロッドを手放して、ネットを滑り込まして魚をキャッチしたんですよ。こういうことやっちゃうんだって、もう何がなんだかわからなかったですね。今まで私が見てきた釣りの常識が通用しない男なんだって思いました。

2018年はトップ50の年間2位、2019年は年間優勝、2020年が無くて、2021年にまた優勝。2020年も開催されてたら年間取っていた可能性は高いし、2022年は全戦出てたら優勝していたはず。そうなってたら4年連続の年間優勝ですよ。こんな選手ほかにいませんから。彼は別の星から来た宇宙人なのかもしれません(笑)。


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