『バス釣り上達100のヒント』CH.3・前編「いつの時代でも柔軟に対応可能な思考を持とう!」【帰ってきた、シン・ネバギバ。】清水盛三、インタビュー連載!! 

毎回語り尽くしのネタ満載トークインタビュー・清水盛三「帰ってきたシン・ネバギバ。」。連載3回目前編は、今年も本場アメリカで開催されている世界最高峰トーナメント“バスマスター・エリートシリーズ”にて、活躍目覚ましい若きサムライ・藤田京弥選手についてだ!

●文:ルアーマガジン編集部(写真提供:MORIZO SHIMIZU)

2024 新製品情報

清水盛三 MORIZO SHIMIZU 
1970年5月29日生まれ。大阪府出身。’97JBスーパーバスクラシックウィナー、’00JBワールドU.S.チャレンジinレイク・ミード優勝を経て渡米。老舗トーナメント団体B.A.S.S.が主催するエリートシリーズやFLWなどに参戦。2018年をもって引退、17年間の米国競技生活にピリオドを打った後は日本国内の各メディアへの出演他、ご意見番として後輩の指導にあたる。バサー・オールスタークラッシック2022優勝。
オフィシャルサイト http://www.morizoshimizu.jp/
<スポンサー>
エバーグリーンインターナショナル、グローブライド、東レ・モノフィラメント、グレンフィールド、モーターガイド、マーキュリー、カラーズインターナショナル、ALL of FAN
<バスマスター通算成績>
●B.A.S.S.
’01ウェスタンオープンでデビュー。1シーズン目で、翌年からのツアー参戦権を獲得。公式戦出場151回、クラシック出場3回、2006年にエリート・ケンタッキーレイク戦優勝、入賞66回(優勝:1回、準優勝:2回、トップ10:9回、トップ20:21回、トップ30:34回)。獲得賞金77万1299ドル(約1億1724万円 *1ドル152円換算)。

最新鋭機器に“頼る”のではなく“使い”こなせ!!

初戦を優勝で飾った藤田京弥という怪物

――モリゾーさん、お疲れ様です!! まずは本テーマに入る前に…ワタクシが言わんとしていること、分かります、よね?

清水「ハイハイ、当然準備してましたヨ。今回の語りも長くなりそうやな~(笑)」

――ですね~。藤田京弥選手、エリート初戦のトレドベンド・リザーバー優勝について、です! 何卒、お手柔らかにお願いします。

清水「もう、そこは予定通りですワ」

――えっ? 予定通り?

清水「いや、僕の中では、という意味ね。実は2戦目のレイク・フォークも優勝するんじゃないかなと思ってたぐらいやから。可能性は十分あったんじゃないかと。尻上がり的にジワジワと順位を上げていって、最終的にはいいところにつけてきたしね(編注:藤田選手・第2戦17位フィニッシュ)。レイク・フォーク戦は巧君も面白い展開だった。初日ビッグウェイトトップやったし…日本人で2連勝を飾ってたら、って思うとドキドキしましたワ」

――現在、ハリスチェーン戦が終了して総合ランク11位…こうなると、毎試合、パソコンから目が離せない状況ですね。

清水「僕ね、開幕戦はライブで観てたんですよ。優勝するかも、と思ってたからね。で、その時映し出されていたシーンが、昔なら、選手がもうちょっと岸に寄った状態で普通に狙う魚やねんけど、そういった魚を沖目からライブスコープで狙うという状況やった。でね、その時の解説者がジェイソン・クリスティとリック・クランやったんですワ。片やオクラホマ最強選手と片やリビングレジェンドの組み合わせ。彼らが言うには、今までは、天候、水質、水温、加えて春ということで、スポーニングに絡んだ潮周りのアトラクターを読みながらバスにアプローチしていたと。でも現代の最先端バスフィッシングは、特にトーナメントはハンティングなんだと。鳥を見つけて銃で撃つ…見て撃つスタイルの釣りになっているとね」

――面白い例えですが、言い得て妙ですね~。

清水「でしょう。でもね、彼らはそのことを批判しているわけではなくて、これからはそういったスタイルがバスフィッシング・トーナメントの主流になるのだから、自分たちも学んでいかなければいけないって自戒すらしてたように思えたよ。友達で仲良しのアイク(編注:マイケル・アイコネリ)も最近の記事で書いてるけど、シーズンを感じ取りながら、春を感じながら、とか、夏やったら夏でサマーパターンを読み解きながら釣っていたトーナメントが懐かしいって。昔の釣りが恋しいと。ただやっぱり、今の現代フィッシングはこのスタイルなんだから、俺はそれを学なければならないって」

――リック・クランもバスボートに大型モニターを搭載しているみたいですしね。

清水「トーナメント・アングラーはルールの中で勝たなければならないから、時代時代で最高の道具を使わなければならない。当たり前の話やけど、勝つことに1番のプライオリティがあるからね。勝つことが全て。ツアープロたちは賞金がかかってるし、そもそも弱かったらスポンサーもついてこない。だから、今使えるモノ、あるモノ全てを駆使して戦う。それは釣りに限らず、レースでもそうやしゴルフでもそう。各選手が最高のパフォーマンスをもって“勝ち”と獲りにいく。そう考えると、やっぱりハイテク技術を使って試合を展開せなアカンのちゃうかなと。だからこそ、トーナメントは観ていて面白いんじゃないかな。競う選手はメッチャ、プレッシャーやけどね(笑)」

――元エリートアングラーとして重いお言葉です。

2022年JBTOP50遠賀川戦にて優勝した時の藤田選手。この時彼はすでに、世界を見据えた戦い方を展開していた。

デジタルネイティブの申し子的な存在

清水「ちょっと前に開催されたオープン戦のサンティクーパーでは、ジャックハンマーを投げてる選手が大勢いて、見た目にもアクティブやったし実際観ていて個人的にも面白かった。それに比べて、トレドベンドのオフショアの釣りはスタイル的に地味なのも相まって、湖上でアクティブに動いたりしないから映像的にはどうかな、って思うところも正直あった。魚探見てピッて投げてるだけやし(笑)。ただ、これは僕の個人的な意見やけど、ライブスコープの使用を頭ごなしに批判否定するのは、気持ちは分かるけどちょっと違うかな、とも思う。ツアープロとして、日米合わせて30年近くやってきた僕からすると、もし、今も現役で出ていたとしたら、余裕で使うと思うし、使いこなすのに努力を惜しまないと思う。ちなみに、僕もガーミン製のセットを1台持ってますよ。ツアープロを引退してるから箱にしまったままやけど(笑)」

――今やスマホも生活機器の一部、そんな感じですからねぇ…。

清水「そう、感覚は一緒。だから、観てるとやっぱりデジタルネイティブの人たちが強いよね。生まれたときからスマホがある世代。コレ、俯瞰すると、上位の選手のほぼ全員が20代のヤング世代やから。でも、面白いことに、ゴルフ業界も然りやねん。昔は、曲がるクラブで如何に飛ばせるか…そして、いかに精度の高い球を打てるか、といったレベルで勝負してたけど、今のゴルフクラブの進化と進歩はすごくて、ホンマにまっすぐ飛んでいく。だから、筋力さえ鍛えれば、もう真っ直ぐ飛距離が出る。もちろん、インパクトがずれると曲がっていったりするから、コンマ何ミリのプロレベルでの精密さは必要やけど。でね、今トップクラスでは、ローリー・マキロイ選手や松山英樹選手達の30代前半の選手が活躍しているけれども、メインで活躍しているのは、そのクラブで育った子たちがメイン。女子も男子も、大体20代半ばやね。だから、バスの世界とそっくりやな、と」

――なるほど。まさに一緒ですね。

清水「京弥くんが28歳でしょ、ソコから下も含めてデジタルネイティブの20代の選手がライブスコープを使いこなして活躍してる。で、それにフィットしようと30代世代が讃えながら学んでる。この構図、女子プロゴルファーのトーナメントの構図とほぼ同じ。しかも、30代の選手らが若手を讃えながら自分たちもフィットしようと学んでる姿も一緒。ゴルフ業界でも、昔はこうやってたよ、とか懐かしむベテランさんがいて、ホンマ、釣りもゴルフも一緒やなと」

――ゴルフでいうと、クラブの進化によってスイングのスタイルも変わってきました?

清水「変わったね。昔ほど試行錯誤しなくても、ある程度の技術でまっすぐに飛ばせるクラブで最初からプレイしてる子たちは、おじさん世代とスイングが全然違うんですよ。ココも面白い。あ、もちろん、上手いおじさん達も大勢いるよ(笑)。でも釣りもそうでしょ。スタイルが違うやん。ジグヘッドにシャッドシェイプのワームを付けて、ってのがメインになってるからね。やっぱり、結局は競技なんやろうなと思う。釣りもゴルフも。それでいうと、マラソンもそう。一時、一世を風靡したナイキのベイパーフライっていうシューズが投入された時に、いち早くそれを使いこなした人たちが世界記録をバンバン出したりして優勝してたでしょ。まさにそれと一緒。だから、競技の世界において、技術の革命や機器の革新といったエポックメイクな出来事が起きたときに、いかにいち早く導入して自分のモノとして受け入れられるか。それができた選手がいわゆる“ゲームチェンジャー”になる。ココがキモなんじゃないかと」

――そうなると、バスフィッシング・トーナメントっていうのは単なるゲームではなく、やはりスポーツ競技になりますね。

清水「トーナメントはね。間違いなくゲームの域をはるかに超えたところまで進化したと思う。冒頭でも話をしたけど、ツアープロはそこで賞金を獲らなあかん。年間ランキングとか上位に入ったり、試合に勝てばスポンサーも付く。試合の枠で戦ってる以上は成績を出してナンボの世界。そのためには、今使えるモノは全て使いこなさなければならないという…それはもう「have to~」の世界やからね。ハフトゥーですわ。直訳すると「しなければならない」という。もちろん、それを一生懸命楽しく…今まで通りのイチツールとして使うのであれば、 全然楽しくプラスαの釣りができるというお話でございます」

――あくまでも、一般の方々が楽しむために使うという…

清水「そう。ファン・ゴルフ、ファン・フィッシング、ファン・ランニングの話になるとまた変わってくるよね。僕なんか、ゴルフをずっと昔からやってるけど、昔からのクラブから最新鋭のクラブまで使ってたりするんですワ、好きやから。でも、結局スコアは一緒(笑)。でも僕自身、楽しいから別にそれでエエんですよ。普通に十分楽しめる。釣りも、ライブスコープが使えないと他人に負けてまうワ、ってなるけども、でも、別に今まで通り天候や地形や水質、水温などでバスの動きを読んで釣りして楽しいでしょ? そこはもう、あくまでもアマチュアとツアープロとの差というか。違いがあるのを分かってほしい。『ライブスコープは釣りじゃないで』と、安易に批判するのは簡単やけど」

――そうですね。時代の流れと技術革新の大きな分岐点が、まさに今な気がしています。

清水「京弥くんの試合じゃない釣りの映像とか観てても、ライブスコープを使っての釣りが本人的にメチャ楽しいって感じてるのがヒシヒシと伝わってくる。あの世代にとってはアレはアレで、使って楽しい釣り道具の一部やねん。テレビゲームの延長上的な。魚を見つけて、ソコにルアーをピンポイントで入れて、誘って食わせる。その一連の動作が実際はブラインドやけどサイトフィッシングみたいな。魚を画面で見て狙って釣る、というね」

――それでいうと、まずはピンスポットで入れていくキャスト技術が必要ですね。

清水「そうですよ!! 京弥くんも、できるようになるまでには当然果てしない努力をしてるからね。真冬の河口湖でスポットを見つけて、バスの目の前に入れられるように魚探を見ながらひたすらシューティング練習とかしてるからね。人知れず。僕らが昔やってたように魚探をかけて…真冬に南湖の下物とかで永久に釣りもしないで、来たるべき試合のために浮いていたのと一緒。昔はそれが戦略のメインやった。今は、そこがより精密かつ正確。そういえば、他の選手が『京弥はピンスポットスナイパーや』ってライブで言ってたワ。ホンマ、バスの目の前にルアーを入れることができるって。デンジャラスって言われてたからね(笑)。でも、それは本当にすごいこと。米国発祥のゲームフィッシングで、そこまで日本人がフィーチャーされるってのは快挙やし、単純に嬉しく思いますよ」

2012年のトレドベンドでの一戦。BASSマスター・エリート・レギュラーシリーズにて。この時のモリゾー選手のメインパターンはベイマウス周辺でのディープクランキングだった。

齢28歳にしてトーナメント・アングラーとして完成

――ちょっと試合の話に戻りますが、モリゾーさんは藤田京弥という人物に対して、どんなイメージを持たれていますか?

清水「以前、DAIWAの『ザ・フィッシング』という民放番組で京弥くんのオープン戦参戦の模様を2週連続でやってて。で、その時ふと感じたんですワ。この子は絶対に上まで昇り詰めるやろうなって。チェサピーク・ベイっていう、ロコでも難しいタイダルフィールドでも上位フィニッシュした。その試合を見た時に、魚を見つける技術もそうやし、場所の見切り方、次の場所に入るタイミングなど、トライする気持ちがすごく強いなって。なんて言うんかな、僕からすると、チャレンジングスピリッツが強いって言うんかな。で、今回の話になるワケよ。そういうのを見てて、彼は年間チャンピオンを取る可能性があるってあらためて思ったね。みんながまだ全然注目してへんノーマークの時からDAIWAのスタッフさんに言ってましたからね。『あの子、AOY獲る素質持ってるからマークやで』って」

――まさに、一流の選手は一流を、です。

清水「まあ、一流でもないけど、映像を見たら分かる。僕自身、苦労してたフィールドでもあったしね。トレドベンドの試合もそう。ていうか、みんな、なんでいとも簡単にライブスコープを操れるねんと思ってて(笑)。スポーニングに入る随分手前のエリアにも、あんなにいっぱいバスがいるんだな、っていうね。上位選手は9mのところに浮いている魚を釣ってたわけやん。でね、京弥くんがすごかったのは、軒並みウエイトを落としてる最終日でも釣ってたところ。僕の見立てでは、多分、絶対シャローやねん。タフ化していても、シャローに動いてるんだなと。9mにいたバスたちが、6mとかに移動してんちゃうの、と。彼、序盤釣れてなかったでしょ。そしたら、やっぱりちょっとだけ岸際に寄って魚探掛けに行ってるもんね」

――そうですね。その後エリア移動からのラッシュです。

清水「そこからデカいのバンバンバンって釣ってるからね。もうね、完成されてんのよ。トーナメント・アングラーとして。さっきも言ったけど、トライ精神が強いから、コレがあかんかったら次、みたいな、自分の引き出しを最大限出し尽くせるタイプ。プラクティスに釣れていたとか関係なく、一つのコトに執着しない。固定観念が技術を一番阻害するっていつも僕が言ってるでしょ? 彼はその固定観念をなくす術をすでに習得してる。というか、元々ないのかもしれないね」

――柔軟に対応できるという。

清水「だから優勝したのも必然やね。勝つべくして勝ってる。6ポンドのビハインド差があっても、もう勝つことしか狙ってないから今さら関係ないというね。僕が優勝したケンタッキーの時もそうやったし、ガンターズビルの時も勝とうと思ってたから、最終日、単日でトップポイントを叩き出せた。一昨年のオールスターでもそう。実体験してきているから、今の彼の心情がよく分かる。すごく、勝ちに執着している。ていうか、勝ちを狙うのは当然やけどね。だから、もうちょっと頑張ってほしいな、と」

2012年トレドベンド戦でのウェイイン・ステージにて国歌斉唱のサリュート。かつてのモリゾー選手の左にはディーン・ロハス、右にはデニー・ブラウワー、そしてゼル・ローランド。いずれも往年の一流プレイヤー達。現在、新しい武器を駆使することで日本人選手の活躍の場が広がったことは確かな事実だ。

――彼がこれから直面する壁があるとすれば、どんなところになりますか?

清水「それは、ライブスコープが効かないであろうエリアを多く持つフィールドでの試合展開ですね。フロリダとか、攻略が難しい場所にこそでかバスがバンバン入ってくるからね。そこをいかにしのぐか。そこをクリアしたらもう超絶強くなるんじゃないかな。今年は可能性があると思うよ」

――ひょっとして、今年のオープン戦に出ていたのも…?

清水「おそらく、オキチョビ戦とかはフロリダに慣れようと思っての作戦。その辺も全部計算の上だよね。それはもちろん、年間チャンピオンを獲得するために自分がしなければならないことの一つっていう。大谷翔平選手のマンダラチャートとかやってても不思議じゃない(笑)。その時々での目的やゴールが明確に分かっているからこそできる動きだよね。そういうことを踏まえると、彼は昨年のシャンプレイン、今回のトレドベンドで2勝して、日本人であることの優位性をヒシヒシと感じてるんじゃないのかな」

――というと?

清水「クリアウォーターでライブスコープを使って、アメリカ人よりも勝てる可能性があるという事実。コレ、もう可能性じゃなくて勝ってるからね、京弥くんが。ココって、唯一、日本がアメリカに勝ってる部分じゃないかなぁ。ライブスコープという武器があるおかげで魚を見つけられてるやん。アメリカは広いから、まずその魚を見つけることすら難しい。日本の場合は湖が小さくて、クリアウォーターやしドン深やからさ、そういう浮いている魚はたくさんいるからね。それを画面に映して釣ることが可能やから、この国は。向こうに行って、大きなフィールドを…なんていうかな、マクロな目で見て探していって、ほんでミクロで見つけるっていう、僕がいつも昔からやってたことを応用してやれば、魚を見つけることは可能やと思ってるから、是非とも頑張ってほしいね!!」

*清水盛三連載【帰ってきた、シン・ネバギバ。】『バス釣り上達100のヒント』CH3・後編は、今だからこそやってほしいド定番アクションの秘密を解説。乞うご期待!!


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