バスフィッシングにおいてもっとも身近な外道、否、ゲストのブルーギル。好奇心旺盛な性格でどこか憎めないこの魚を、水中から観察するとどのようなことがわかってくるのか。水中写真家の佐々木浩之さんに話を聞いてみた。
●文:ルアマガプラス編集部
バスはギルをあまり食べていない?
水中写真家の佐々木さんから見て、ブルーギルという魚はバスと比べてどう違いますか?
「ブルーギルとブラックバスは似ている部分が多いです。小さいうちは群れていて、なんにでも興味を示す好奇心が強い魚。そして大きくなると単独行動が増えて警戒心が増えていく。成長における変化はブラックバスと一緒ですね。
ただ、ブルーギルは大きくなってもあまり沖めにはいません。基本的には岸寄り、浅場が好きな感じです。好奇心や攻撃性も、性格的にはバスと似ています。群れているギルに近づいたらバッていっせいに逃げるし、産卵期に撮影しようと近付くとつついたり噛んだりしてきて、けっこう痛いですよ。水中カメラのストロボを噛んだり、カメラを持っている手を噛んだり。バスは体が大きいんで、身体全体を使って追い払ったりしますが、ギルは口を使いますね」
バスはギルを食べている?
「バスがギルを食べているところは、自分はあまり見たことがないんですよね。食べないことはないと思うんですが、エサとしての優先順位は低いと思います。アユとかワカサギとか、細身の魚のほうが好きだと思いますよ。
ブルーギルは背びれとかが引っかかって食べにくいんじゃないでしょうか。むしろ、バスとギルは一緒にいることが多くて、あまり敵対してないですね」
それは、バスとギルとのサイズ差があっても?
「そうですね、30〜40cmのバスの群れに20cmくらいのギルがついていってるのもよく見ますし。ただ、バスのスポーニング時期に、産卵床に来たギルは追い払ったりはしますよ。そのときくらいしか、バスがギルを襲うのは見たことがないです。
でも、これだけギルのルアーで釣れているということは、僕の知らないところでギルを食べているのかもしれない。あとはギルじゃなくてただ単にでかいエサだと思ってギルルアーにバイトするのかもしれない。それは僕にはわからないですね」
全国で減りつつあるブルーギル。その原因は駆除か農薬か
「琵琶湖では、昔はブルーギルはたくさんいたのに、一気に数が減りましたよね。それは、駆除によるものだったり、個人的には産卵床がニゴイに食べられているというのもあると思っています。霞ヶ浦でもすごく減ったと思いますね。
タナゴなどを採るために網でガサガサをするんですが、昔はギルの子どもがたくさん獲れて、そのなかにタナゴが混じったりしていた。今は逆でタナゴのなかにギルが少し混じるかなぁって感じです。完全に立場が逆転しましたよ。
爆発的に増えたあとは数が落ちつくものですが、ここまで減るのは何か別の要因がありそうですよね。農薬の影響もあるかもしれません。ギルのエサとなる小さい甲殻類や水棲昆虫とかが減って、それによりギルも減っているのかも」
農薬で減るのは魚ではなく、そのエサ?
「農薬では直接的に魚はあまり死なないんですよ。稲を食べる甲殻類や昆虫などを殺す薬なので。安い中国産の水草を買ってくると、たまに農薬がついていることがある。
それを水槽に入れると、魚は問題ないのにエビやザリガニがいると一撃で死んでしまう。入れた瞬間、エビの動きがおかしくなって死んじゃいます。国産の水草は、それ専用に育てているので農薬はついていないんで大丈夫なんです。
農薬は、魚に直接影響を与えるんじゃなくて、魚が食べるエサに影響が出るんですよね。もしかすると、ギルが一番食べるエサが農薬によって減っているから、ギルが減っているということはあるかもしれません。
ブラックバスは他にも食べるエサがありますから、ギルほどは減っていないのかも。あとは鵜で親のギルが食べられたりしているのも減少に影響しているかもしれませんね」
【Profile】佐々木浩之(ささき・ひろゆき)
1973年生まれ。埼玉県在住。フリーで活躍する動物写真家で、淡水での水中写真を得意とする。現地で実際に生物を採集したり、生き物を飼うのも大好き。好きな釣りはバスフィッシングとハゼ釣り。
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