【バス釣り業界ついに動く!?】水中ゴミ問題解決に向けて『生分解性ルアー』導入へ。国内産業の発展も視野に

私たち釣り人が水中に残したルアーは水中プラスチックごみとして海底や湖底に回収しきれないほど沈んでおり、社会問題化する可能性を常に孕んでいる。2030年までにトーナメントでの生分解性ルアーの完全導入を目指す日本バスプロ協会会長の山下茂氏に、釣り人や釣り業界が置かれている現状と課題、そして未来への取り組みについて伺った。

●文:ルアマガプラス編集部

山下茂
JB日本バスプロ協会/NBC日本バスクラブ 会長認定NPO法人 日本釣り環境保全連盟 代表理事(一財)生分解性プラスチック振興協会会長

増え続ける水中ルアーごみを環境省が問題視

私たちが普段釣りで使っているルアーは、根掛かりして回収不能になれば、水中ごみになる。そのような水中のルアーを回収するためにはダイバーによる本格的な海底・湖底清掃が必要であり、コストもかかるし全てのルアーごみを回収することは不可能だ。私たち釣り人や業界がこのことに無頓着で何のアクションも起こさなければ、この残置ルアー問題が社会問題化したり、私たちが愛するルアーフィッシングが海洋プラスチック問題の一因として槍玉に挙げられたりする恐れがあるのだ。

去る2023年11月、JB日本バスプロ協会創立40周年式典で、山下茂会長が、この年を「生分解性ルアー元年」としてその研究と普及を推進することを発表した。

ここで私たちが認識しておきたいのは、これはJB/ NBC独自の取り組みなのではなく、環境省の事業として行われる点だ。

事業の正式名称は「海水・淡水中での生分解性を有するバイオマス複合プラスチック性ルアーの開発・普及促進事業」とあり、総事業費1億1963万円が投じられ、工業製品の大手である株式会社GSIクレオスや樹脂素材の製造販売を行なう株式会社グランツといった企業を中心に事業が進められており、すでに待ったなしの状況なのだ。

山下「レジ袋有料化やプラスチック製品の代替が世の中で進んでいますが、環境保全の波は釣り業界
にも押し寄せています。我々が環境保全の取り組みを一歩でも先に進めておかないと、いつルアー釣りが禁止になるかわからない。そういう危機感をもっています」

生分解性プラスチックとは?

使用後に自然界に存在する微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解されるプラスチックのこと。生分解性と安全性の認証を得ている「Mater-Bi(マタビー)」などのバイオマス含有原料に籾殻などを混合して、ルアー製造に適した素材が開発されている。

メーカーの生分解性 ルアー開発をサポート

現在、NPO法人日本釣り環境保全連盟が運営する「SDGsまなび館」には、生分解性ルアーを研究・製造する工場が併設され、開発や製造についてのノウハウをもった人員も配置されている。

SDGsまなび館(山梨県富士河口湖町) [写真タップで拡大]

生分解性ルアー製造機 [写真タップで拡大]

山下「生分解性ルアーを作りたいメーカーはここにきてノウハウを学ぶことができるし、ここの工場を使って製造もできる。自社工場をもつメーカーであれば、素材さえあれば自社製造もできます。個人事業主であっても開発から製造販売までサポートいたします。すでに新しい生分解性ルアーの金型が完成して、生産に入るメーカーさんも出てきている。現在、国内メーカーのルアー製造のほとんどは海外輸入に頼っています。生分解性ルアーを国内製造することで産業の国内回帰、国内産業の発展にも繋げたいと考えています。トーナメントは2030年までに生分解性ルアー(バイオマス含有ルアー)に完全移行することを目指しています。トーナメントで使用できるルアーにはFeco+(フェコプラス)の認定が必要になります。まだあと5年間の移行期間がある。メーカーさんには1年で20%ずつバイオマス含有ルアーを取り入れていってほしいのです。釣具店さんも20%ずつ棚のルアーをそのような商品に入れ替えていってほしい」

JBが開発したバイオマス含有ハードプラグ「モデルⅠ」。マタビーと籾殻が7:3の割合で配合された素材を使用している。今後は各ルアーメーカーが積極的に開発を行ない、強度や耐久性、アクション性能を追求していくことが期待されている。

山下「JBからはすでにモデルⅠというバイオマス含有ルアーを販売しています。ただし、JBからルアーを出すのは始めだけ。これからはメーカーさんが積極的に研究開発してより釣れる性能や品質の生分解性ルアーを生み出していってほしい。そしてなにより、釣り人の皆さんがこれまで以上に環境意識を高く持ち、生分解性ルアーを選んで使っていただく必要があります。JB/ NBCはこれまで40年間、トーナメントを運営しながら同時にごみ拾い活動を続け、2001年からスタートした湖底清掃はすでに100回を超えていますが、水辺環境の改善には至っておりません。自然環境に悪影響を及ぼしてしまっていることを大変反省しております。今回、メーカーと釣り人の皆さんに大きな負担を強いていることは重々承知しておりますが、皆さんの協力が必要なのです。よろしくお願いいたします」

【目的】
生分解性ルアーで環境汚染を防ぐ
ルアー製造業の国内回帰
釣り人と子ども達の未来を守る

【実現目標】
2030年までに生分解性ルアーを
トーナメントに完全導入
Feco+の新たな認定マークの導入

【実現に向けた取り組み】
・生分解性ルアー開発・製造の研修
・レンタル工場の貸し出し
・販売ルートの相談と提案
・開業資金や金型製造費の少額融資(新規参入業者に限る)
・スタートアップトーナメント(参加無料)の開催

※バイオマス含有ルアー製造の参画が決まっているメーカー(2024年11月20日時点)
ケイテック/ベイトブレス/イージー・ラボ/O.N.プラニング/GENKI/Z Factory

バイオマス含有ルアーには新たにFeco PLUSマークを認定予定

STARTUP TOURNAMENTを開催!

2025年6月29日(日)/7月27日(日)
会場:河口湖大池公園(山梨県)

参加料は無料! 誰でも楽しめるバイオマス含有ルアーの釣り大会を開催! 岸釣りでもボートでもOK。魚種問わず1番重い魚を釣り上げた方にはなんと50万円分のJCB商品券をプレゼント。特別賞として、大きさ問わず釣り上げた魚1匹ごとに1000円分のJCB商品券がもらえるぞ。※Feco+製品のみ使用可能。


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