
DAIWAフィールドテスターの渡邉長士さんの連載企画「今日もいいチョーシ」。今回紹介してくれるのは、産卵に絡む難しいアジの攻略方法!いわれると納得の釣りだが、ちゃんと釣るには案外難しい…?
●文と写真:渡邉長士
意外と苦戦?春のアジの産卵
こんにちは。ダイワフィールドテスターの渡邉長士(たけし)です。いつも「今日もいいチョーシ」を読んでいただきありがとうございます。
この原稿は春めいてきた3月末に書いているのですが、今、世間は野球が盛り上がっています。
MLBが東京で開幕し、大谷選手はエキシビジョンのジャイアンツ戦と公式戦の共にホームランを打つなどの大活躍。期待されている中で結果を出すのだから本当に凄いです。
また、春に盛り上がる野球といえば春の甲子園もあります。今回は全員が島出身という壱岐高校が初出場し、壱岐島は大きな盛り上がりを見せたようです。壱岐にはアジングで何度も訪れたことがあり、現地に何人もの友人ができた大好きな島なので今回の初出場は嬉しかったです。
そして我が千葉県の千葉黎明高等学校も初出場。なんと釣り好きの甥っ子がここの野球部。まだ新2年生ということもあり残念ながらベンチ入りはできませんでしたが、スタンドで応援する姿をテレビで見ることができました。
夏の大会に向けて頑張れ!元高校球児のオジサンも応援してるぞ!
さて、だいぶ前置きが長くなってしまいましたが、今回のテーマは「春のアジング」です。
春は冬の低水温から徐々に水温が上がり、アオリイカ、シーバス、青物などと、様々なターゲットがハイシーズンになる時期。
アジにとっても春はベストシーズンといえる時期で、私の地元の房総半島では4月頃にはアジの適水温となる17℃以上になり活性も上がってきます。
関東ではアジの釣期の最盛期は古くから初夏ごろといわれており、春はまさにハイシーズンに向けて釣果が上向きとなる時期です。
そのため、春のアジングは簡単に釣れることもあるのですが、意外な落とし穴もある季節でもあります。
その落とし穴というのが“産卵”なんです。
春はマダイやアオリイカ、淡水魚ではブラックバスなどの様々な生物の産卵期となりますが、アジもその中のひとつ。
といっても、南北に長い日本列島ではアジの産卵は九州などの西日本では1~5月、関東では5~7月、東北では7月頃が最盛期といわれています。
多くの魚が産卵中や産卵直後の“ポストスポーン”といわれる時期は産卵に集中したり体力の低下などで食欲が落ちることが多く、産卵後の“アフタースポーン”もまだ体力が回復しきっていない難しい時期になりますが、アジも基本的には同じだと考えていいでしょう。
一方で産卵前の“プリスポーン”は体力をつけるために荒食いしたり、産卵場となる浅場へ移動する“乗っ込み”が始まり、ショアから大型のマダイが狙えるなど爆発的な釣果が出ることもあります。
前回の『【読んだらスグ!】「尺メバルは簡単に釣れる」プロがコッソリ明かす3つの条件とは?』ではメバルのプリスポーンの話を書きましたが、まさに産卵前は色んな魚が爆釣できるチャンスなんです。
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関東であれば前述のようにアジの産卵は5~7月が最盛期のため、プリスポーンはおおむね4~5月頃となり、だからこの時期は良く釣れるというワケです。
しかし、春の産卵期には突然ルアーに反応しなくなることがあります。
アジの群れが見えている場合でもルアーは無視され、バイトさせることが難しいタイミングが発生するのも春の特徴。
その理由は、「大きくなった卵巣や精巣が胃を圧迫して食欲が下がる」という説もありますが、本当の理由は物理的な胃の圧迫だけでなく、ホルモンが関係しているのかもしれません。
いずれにしても「アジがいるのに食わない」という状況は産卵期におこりがちな現象で、近年では「産卵期のアジは難しい」とメディアなどで言われることも増えてきました。
ちなみに、初めて「産卵期のアジは釣れない」と聞いた時には「そんなワケない!」と思っていた時代もありました。
その理由は、地元の房総だとアジの魚影が特別濃いわけではないため、港内に群れが見えることがほとんどなく、「見えるのに釣れない」という状況にはならないため。
「釣れる、釣れない」を左右するのは「群れがいるか」どうか、という要素が大半だと考えていたのと、実際に房総では産卵期でも群れがいれば釣れていたからです。
しかし、その考えが変わったのが20年ほど前の九州遠征のときでした。
漁港に隣接するボトムが砂地で水深3mほどのワンドにアジの群れが溜まっていたのですが、いくら攻めても無反応。
結局、3gのメタルジグのリアクションでなんとか数匹釣れた程度で、その時に初めて「産卵期が釣れないというのはこれか!」という体験をしました。
近年では東京湾のバチコンにもよく行きますが、産卵期には魚探にアジの群れが映っているものの、突然釣果が落ちることもあります。
このような経験を重ね、今ではポストスポーンのタイミングは難しいこともあるという認識に変わりました。
では、そんな時の攻略法はないの?となると思いますが、実はわりと簡単な方法もあるので今回はそんな“渡邉流の産卵期攻略法”を紹介します。
ポイントは「リアクション」!ちゃんとできてる?
まず、よくあるシチュエーションが、日中の港内にアジの群れがいるのに食わないという状況。その様な時はゆっくりと群れが移動したりはするものの、動きに活気がなくほとんどのアジがニュートラルな状態になっています。
多くの方はヤル気のないアジの鼻先にゆっくりルアーをアプローチするためにアンダー1gの軽いジグ単で何とか口を使わせようとするはずです。
確かに、スローなアプローチでバイトするアジも中にはいるかもしれませんし、それで食う時は比較的簡単な状況ですが、残念ながら産卵期のアジはそう簡単には食わないんですね~。
そんな時の攻略法が「リアクション」です。
まあ、中級者以上のアジンガーなら「でしょうね。」という冷めた反応が返ってきそうですが、リアクションといってもただピョンピョンと動かせばいいというものではありません。この釣り方も意外と奥深い釣りなんです。
まず、リグはジグ単を使いますが、使うジグヘッドのウエイトは1.5~2g程度にします。
その理由はフォール中にルアーを見せすぎないようにするため。
軽いリグでリアクションバイトを出そうとしても、アクション後のフォールはスローになってしまうため、そこでアジが見切ることがあるんです。
アクションの合間にストンと素早いフォールを入れることでアジに見切る間を作らせないようにします。
ちなみに、私の場合は重くてもヘッドの体積が小さくて口内に吸い込みやすいタングステン製の「月下美人アジングジグヘッドTG」をよく使っています。
重めのジグヘッドを使うことで扱いが簡単なのもメリット。
風があると軽いリグをデッドスローで浮遊感のあるアクションを出すのは難易度が高いですが、重いジグヘッドなら操作も簡単です。
これが最初に「わりと簡単な方法」と言った理由になります。
使うワームはストレート系が基本ですが、ワームの形状によっても動きのキレが変わってきます。なかでも汎用性が高いのは「月下美人 アジングビーム」。よりキレを出したい時は「月下美人 ピンビーム」、すこし動きをマイルドにしたい場合は「月下美人ブレーキンビーム」をよく使っています。
セオリー外⁉ 群れを直撃するけど釣り続けるには?
釣り方ですが、まずはアジの群れを探すのがオススメ。
足元の護岸際にできるシェードや漁港の隅には群れが溜まりやすいので要チェックです。
群れを発見できたら、もったいぶらずに最も群れの密度が高いところを最初から狙います。
群れの少し先にキャストし、足元の群れを狙う時はプレッシャーをかけないようにルアーが着水する直前にフェザーリングで着水音を小さくし、群れよりも下にフォールさせます。
そうしたら、ルアーの移動距離は30~50cmほどになるようにロッドで2~3回シャクリ、ルアーを上昇させていき1セットのアクションで50~120cmほど上昇させるイメージです。
あれ?30~50cm×2~3回なら60~150cmじゃないの?と思うかもしれませんが、この解説は後ほど。
アクション後はフリーフォールでストンと落とすのがこの釣りのキモ。これは前述の通りフォールでアジに見切られないようにするためです。
フォールの幅はアジの群れがボトム近ければ群れの下、幅広いレンジにいるならフォール幅を少し短くして上昇させていくのも効果的です。
先ほどのアクション1セットの移動距離の違いですが、アクションの合間にわずかなフォールを入れるためです。
ピュンと跳ね上がったルアーはあるところで一瞬ですが水中で止まり、そこからフォールへと転じます。
直後のわずかにフォールしたところで次のアクションを入力する感じです。
すると、速度がゼロになる前後やアクション後のロングフォール中にアジがひったくっていくパターンが多いです。
または、アクションを入力しようとした時にフッキングすることもよくあります。
この釣り方で群れの中心を狙うのはアジの数が多いからですが、仮に1%のアジしか反応しなくても100匹いれば1匹、1万匹いれば100匹近く反応してくれるアジがいるということになるんです。
通常、アジの群れを攻める時は群れの外側から狙うことで群れ全体にプレッシャーをかけずに数を伸ばすことができますが、ポストスポーンでニュートラルなアジを日中に狙う時は群れの密度が濃いところを攻めることがヒット率を上げるコツです。
でもそれだと「群れ全体にプレッシャーがかかってすぐ釣れなくなるじゃん」と思った方。
その通り!
なので、足元の護岸際に帯状に群れがいるなどの広範囲にわたって群れがいる場合は1投ごとに少しずつ移動して同じアジに続けてルアーを見せないようにします。
もし一カ所しか群れがいない場合はキャストの間隔をあけて連続でキャストをしないように心がけます。
ただ待っているのが退屈なら歩いて群れを探したり、キャストする角度を変えてブラインドで沖を攻めるのもいいでしょう。
とにかくプレッシャーがかかりやすい釣り方なので、自分の影を水中に落とさないように注意するなど、なるべくプレッシャーをかけないようにするということが大事です。
タックル
最後になりますが、今回解説したリアクションの釣り方で使っているタックルを紹介します。
●ロッド 月下美人EX 57UL-T 燕(EN)
●リール エアリティ ST SF2000SS-H
●ライン UVF月下美人デュラセンサー+Si2 0.15号
●リーダー 月下美人フロロリーダー 3lb
●スナップ 月下美人 ナインスナップ F or 月下美人 エイトスナップ F
●ジグヘッド 月下美人アジングジグヘッドTG 1.5~2g
●ソフトルアー 月下美人アジングビーム ピンビーム ブレーキンビームなど
ロッドの「月下美人EX 57UL-T 燕(EN)」は5.7ftの短めのレングスにチューブラーティップなので操作性がとても高く、指揮者のタクトのように軽快な操作ができて感度も高いため今回紹介したような攻めの釣りにも最適。
リールはエアリティのSTSF2000SS-Hを使っていますが、この3月にはルビアスにもSF、ST、STSFシリーズが追加されるためそちらもオススメです。
ラインは普段からPEを使っていますが、0.15号の細さであれば風と潮の影響を受けにくく、特に重めのジグヘッドと合わせることでデメリットがほとんど出ず、感度や操作感の向上や強度のメリットだけを享受できるのでオススメです。
今回は産卵期のデイアジングという超タフな状況の攻略法を解説しましたが、この方法は産卵期以外のタフな状況にももちろん有効です。
この釣法をマスターしておけば足元の見えアジだけでなく、ブラインドで沖の群れを狙えばナイトよりも難易度が高いことが多いデイアジングでもバイトを引き出すことができるようになります。
ぜひデイアジングやタフな状況での戦略の1つとして導入してみてはどうでしょうか。
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