超激ムズはガセ!『釣り初心者』でも実は簡単な釣りが毛鉤釣り【フライフィッシングの教科書】

『趣味として釣りを始めてみたいんです、教えてください』と尋ねられたら釣り歴48年の記者ならこう答えます。『じゃあ、フライフィッシング始めますか?』。もしこのやり取りを聞いたベテラン釣り師はバカにするかもしれません。『フライフィッシングって難しい釣りなのに初心者に勧めるなんてオカシイ!』いえいえ、間違いなくこの釣り、ビギナーに優しい釣りなんです。順を追って説明しますが、どんな素敵な釣り、なのかまずは聞いてください。

●文:ルアマガプラス編集部(深谷真)

日本全国にある『川』が主戦場の釣り。どこでもできる!

海に囲まれた日本ですが、幸いなことに日本には山も多く川もたくさんあります。

まず、水系だけで109水系。その水系に単純にカウントしていっても30,000以上の河川が存在します。

川の魚族資源を管理する『漁協』をカウントしても800近くあることからも、たとえ海岸線にお住まいだとしても、いかに川の釣りが身近であるかはご理解いただけるかと思います。

木曽川水系。

一般的な渓流の規模。この規模の川なら、30分から1時間。キャストの練習をすれば釣りができます。

源流部の狭いエリアだってフライのテリトリー。最も狭い場所でも釣りを可能にする技法のひとつ(意外でしょ?)

木が被さっていると、フライフィッシングのラインってキャストするときに引っかかるのでは? 大丈夫ですよ。ちょっと練習すれば、無問題です。

少し開けた奥アルプスの渓流。

東北地方の里川。広い河川も釣りができる。

栃木県鬼怒川。これぐらいの規模の川を釣ろうと思うと、フライキャスティングを本格的に覚える必要があります。でも半日あれば、この規模でも魚を狙えるようになると思います!

フライフィッシングという釣りは、その中でも『渓流』と呼ばれる小規模河川での釣りがメインとなります。

各河川の上流や冷水域に生息することが多いヤマメ、アマゴ、イワナ、ニジマスなどのマス類が好んでターゲットとされますが、温暖な地域の河川にもフライフィッシングで狙いやすい、オイカワ、カワムツ、ウグイが生息しています。

渓流のメインターゲット。ヤマメ。(釣り人:和気さん)

こちらもヤマメ。(釣り人:高橋章さん) [写真タップで拡大]

ヤマメの親戚。西日本の太平洋岸沿いに多いアマゴ。朱点がある。 [写真タップで拡大]

山岳渓流、源流部に多いイワナ。こちらはヤマトイワナと呼ばれる種類の系統(提供:Flux) [写真タップで拡大]

模様は違いますがこちらもイワナ。ニッコウイワナと呼ばれる種類の系統。(提供:Flux) [写真タップで拡大]

管理釣り場などで釣れるニジマス。野生の個体は北海道などに生息。 [写真タップで拡大]

冬場、一般の渓流は禁猟(産卵時期の保護。秋から冬の期間が多い/北海道のぞく)になり、こういったニジマスが放流された釣り場でフライフィッシングを楽しめる。 [写真タップで拡大]

冷たい川の無い西に住んでいる? 大丈夫、カワムツくんはフライフィッシングでよく釣れます。 [写真タップで拡大]

カワムツより口が小さいのでテクニカルになりますが、オイカワだってフライで狙うと楽しい魚。 [写真タップで拡大]

道具さえ揃えれば、カジキだって狙うことができますが、そこへ向かう人ってのはフライフィッシングジャンキーにまで成長した人ですが、カジキ狙うならフライじゃなくてルアーやエサでどうぞ。と基本的にはアドバイスします。基本的には、フライフィッシングの利点は軽いものを遠くに飛ばすことができるという最大メリットを活かしたい釣り。ですので、それを活かせるフィールドが主戦場だと考えてください。

フライフィッシングは何が楽しいの?

(1)釣りをする環境が美しい

フライフィッシングは何が楽しいのか。この釣りの最大の特徴は『この釣りを取り巻く環境を全て楽しさに変えられる』点です。

まず、主戦場となる渓流は美しいです。川に立って釣りをするだけで癒されます。四季を感じられます。自然のサイクルもかなり近く感じられる釣りでもあります。

こちらは東北の渓流。(提供:ハジメさん)

奥アルプスの渓流。(提供:Flux)

釣りというのは、基本釣れなければ面白くありません。

『まぁ、今日は魚が釣れなかったけど、釣りができただけで楽しかった』と、釣果が無かった時にうそぶく&言い訳することが釣り師はありますが、内心は『魚が釣れなかった!!悔しい!!』って7割から8割くらいは本音が脳に渦巻いています。

釣りってそういうモノなんですが、フライフィッシングは、他の釣りと比べてもあくせくすることもあまりなく、良い環境で釣りに没頭したり、川でちょっとコーヒーを沸かしてみたり、美しい景色や動植物を撮影してみたりと複合的に楽しむ要素が多い釣りでもあります。

仮に釣れなくても『魚が釣れなかった!!悔しい!!』という本音が割と薄らぎます(ないとは言いません。筆者はどうしても釣りたい派閥なので悔しい思いが強いですが、それでも他の釣りよりもマシなのがフライフィッシングです)。

ただ、安心してください。ルアーを含めた擬似絵釣りの中では、魚が比較的簡単に釣れる釣りでもあります。

(2)視覚で釣りを楽しめる『ドライフライ』というタイプの毛鉤がこの釣りのメイン

フライフィッシングは臨機応変にさまざまな釣り方ができるのですが、日本の河川域のこの釣りのメインストリームは『ドライフライ』という種類の毛鉤を使ってする釣りです。

水面に浮く毛鉤をドライフライと言います。(タイヤー:高橋章さん) 

水面に浮いていても、上のインジケーター(目印)のおかげで視認しやすいドライフライのパターン(種類)のひとつ『パラシュート』(タイヤー:高橋章さん)

フライフィッシングのエサ(擬似絵)は、動物の毛を使って作った軽い毛鉤(けばり)を使う釣りなのですが、ドライフライというのは水面で浮くという機能を持たせた毛鉤を指します。魚は釣り人によって水面に浮かされたドライフライに食いつくわけですので、その瞬間が人には見えるわけです。

釣りには浮きを使った古来からの手法がありますが、あれがわかりやすい釣りなのは魚が食いついた魚信が視覚的に見えるからです。同様に、ドライフライは浮いている毛鉤に魚が直接食いつくわけですから、とってもわかりやすくて爽快です。初心者にもこの釣りをおすすめできるのは、フライフィッシングにドライフライという釣り方のカテゴリがあるからなんです。

(3)道具がなんかオシャレ

釣りと聞くと野暮ったいイメージもあるかもしれません。でもこの釣りの発祥はイギリス。道具はクラシカルでシンプル。素材は進化してはいますが、50年前とたいして最新のタックルの性能はかわりません。1度満足できるタックルを揃えるとなるとイニシャルコストはややお高いですが、あらゆるジャンルの釣りのなかで、基本的にかなりコストのかからない釣りでもあります。ただし、長く続けるということが前提のコスト感だと思って下さい。

クラシカルでオシャ。それがフライフィッシングの道具たち。シンプルなので、デザインで選んでいい。性能?50年たいして変わってません。

安く釣りを始められますか?

中華系のEC、Amazonなどが発展してきたこともあり、『使えそうな道具なら全セット数万円で揃えられる』のは事実。そもそも、いまだに古い竹竿に価値があるような釣りの世界観で、何十年も釣り道具の劇的な性能向上が見られない類の釣りです。

ですが、はっきりいいます。本当に頭の悪い言い方で申し訳ないのですが、フライフィッシングは『映え』ることが粋な釣りです。

釣り人の釣果写真といえば、釣り人+魚。で、魚が主人公であることが多いのですが、このフライフィッシングという釣り。魚が主役なのは変わりませんが、基本、魚+道具。を記念写真として撮る事が多い釣りなのです。

魚と道具を愛でる釣り。でもあります。渓流釣りをやられる方はカメラや写真が趣味な人が多い。(釣り人:高橋章さん)

最低限機能する道具で釣りを楽しむ選択肢もなくはないのですが、一生楽しめる釣りのジャンルですので、趣味としてフライフィッシングを楽しんでみたいという方は、最初にブランド品という『名前』にお金を出すことをお勧めします。

イメージとしては、傘なんて500円でも買えるビニール傘も、10000円の高級傘も雨を遮る機能はたいして変わりませんが、オシャレなのはどっちか。と言われると後者のことが多いですよね。ただ、後者の方が高く買ったというコトもあり、結果モノ持ちがよかったりするわけです。

とはいえ、入門者の幅を狭くするのも得策ではないので、ルアマガでは最低限の機能を持っているタックルから、一生使える道具までていねいに紹介していくつもりではあります。

季節的にはいつが楽しい釣りなんですか?

3月から6月が最盛期。7月から9月までは源流部などの上流部で涼める釣り。10月以降は河川は禁漁期間に入りますが、代わりにニジマスなどを放流した管理釣り場などが楽しい季節。ということで1月2月は多少人間の方が寒くて参ってしまいますが、年中無休で楽しめるジャンルです。

難しそうなイメージですけど、なぜ初心者向けといえるのですか?

はい。エサ釣りは、エサがミミズや蛆虫なんかを使うこともあり、ちょっと二の足を踏む人も多いことでしょう。

フライフィッシングは毛鉤を使いますので虫嫌いでもOK。少しハマると自分で作る行為『タイイング』が楽しくなります。が、基本、ネットや釣り具屋で毛鉤は簡単に購入できます。

毛鉤。浮くタイプ。沈むタイプ。いろいろありますが、当面は浮くタイプの毛鉤の釣りが主力になります。

ルアー釣りは確かに簡単そうに見えますが、実はビギナーに用意されるスピニングリールとロッドの組み合わせ、釣れるキャストに至るまでに時間がかかります。

フライフィッシングって、釣りにおいて重要な技術、『キャスティング』が実はビギナーにとっては簡単な釣りなんです。

長いラインをぶんぶん振り回して、スペースもいりそうで難しそう….と思いますよね。慣れるとこの釣り、別にぶんぶん振り回さなくても釣りになってしまいます。最初、覚える時に感覚を掴めば誰にでも釣りが成立するキャストを覚えれます。

「フライフィッシングってキャスティングがものすごく難しいんじゃないの?」

釣りのベテランですらそう口にするかと思いますが、いろんな釣りを体験した記者から言わせれば、もっともビギナーに教えやすい部類に入るのがフライキャスティングです。フライキャスティングって実は、直感的にできてしまうので、釣り入門者は比較的短時間で釣りができるくらいのキャスティング技術を習得しやすいんです。その方法論については、連載内で解説します。

ちょっとエキスパートの方々が、難しく言いすぎているんですよね。フライキャスティングの原理を言語化することはかなり難しいのですが、反面、感覚的に覚えることができるので小難しい理屈はいらないのであります。

なので構えなくて大丈夫!フライフィッシングはビギナー向けの釣り!パートナーとのんびりやっていきましょう!

簡単だけど、奥深く、日本という自然豊かな国で末長く楽しんでいける『釣り』です。まずは、構えずにこの釣りの道具を揃えてみてください。奮発するもよし。安く揃えるもよし。どちらもていねいに解説していく予定です。連載を予定しておりますが、過去に書いたフライフィッシングの記事を読みつつ、スタンバイしておいてください。

※本記事は”ルアマガプラス”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。