
夜焚きの船で沖へ出てイカの微細なアタリを捉えるゲーム性抜群のイカメタルゲーム。船の夜釣りで楽しむ釣りだ。メタルの名を冠する通り、金属製の「鉛スッテ」と呼ばれる道具を駆使して”ケンサキイカ”、”ヤリイカ”、”スルメイカ”などの沖の定番イカを狙っていく。「釣って楽しい、食べて美味しい」を体現する釣りだけに、性別問わずビギナーでもエントリーしやすい手軽さと、腕の差がはっきり出る中毒性が魅力だ。
●文:ルアマガプラス編集部(漆畑)
ターゲット
「イカ」メタルの名前の通り、ケンサキイカ、ヤリイカ、スルメイカが主なターゲットとなる。
地域によっては「マイカ」と呼ばれるイカもいるが、それは地域の漁獲量の多いイカを「マイカ」と呼んでいる背景がある。例えば、北海道ではスルメ=マイカ、福井ではケンサキイカ=マイカなのだ。つまりマイカというイカは存在しない。
一般的に旬と呼ばれる時期がそのまま釣期に結びつくため、ケンサキイカは5月〜9月頃、ヤリイカは1月〜3月頃がシーズンとなる。
スルメイカは少し毛色が代わり、ケンサキイカに混じって釣れることが多いが、麦の穂が色付く4月〜6月頃にかけて釣れる胴長が15㎝ほどのスルメイカを「ムギイカ」と呼び、非常に美味なためそれ単体を狙うこともある。
夜釣りってだけで堪らない非日常感。
外道は魚。特に糸を切ってくるサゴシ(サワラの幼魚)が湧いた時は注意が必要だ。また、群れが入るとイカのいる棚(泳層)まで仕掛けを落としている最中に食いついてきてしまうサバも厄介者。
そして極め付けは掛けたイカを巻き上げの最中に掻っ攫っていくエソ。魚が湧いたらお手上げ…ではなく、ちゃんと対策もあり、記事後半で語っていくので是非読んで欲しい。ちなみに、イカメタルで釣れるエソは信じ難いほどデカい(60㎝級)。
仕掛け図
イカメタルリグ。これが基本だ。
キャストする場合はスピニングタックルが使いやすい。
ロッド
イカメタルロッドは大体6.5ft前後。特殊な使用目的を想定したものを除いて、各メーカーから発売されているイカメタル用のロッドには、手(触腕)のあるイカの微細なアタリを捉える為に繊細な穂先が搭載されている。
ほとんどの場合、向こう合わせ(勝手に掛かる)がなく、アタリが手に伝わることのない釣りなだけに、イカがスッテに触れているかを目で見て察知することができるロッドが大前提である為、グラスソリッドもしくはメタル素材のティップ(穂先)のロッドを使用することとなる。
ちなみに、竿毎にイカのアタリが出る箇所が違うので(穂先の先端で見たり、曲がり切った穂先をウキ釣りの感覚で見たり)ロッドのコンセプトを下調べを行いよく理解した上で釣行に臨むとよい。
また、ロッドそのものの硬さが大きく分けて2種類ある。乗せ調子と呼ばれる7:3調子の竿と、更に先調子に寄る掛け調子と呼ばれるものだ。
掛け調子の方が竿の曲がりしろが少ない為、レスポンスよく誘いを入れたりスピーディに掛けに行く事ができるが、イカの乗りが悪い時やアタリそのものを把握できていない初心者の段階ではイカが感じる違和感を少なくして、より深く抱き込ませることができる乗せ調子の竿がおすすめだ。
”スピニング・ベイトとどちらにするか問題”もあるが、ひとまず一本持っておくとなればカウンターリールがつけられるベイトタックルで間違いない。
誘いやアワセのレスポンス等、よりこうしたい!と思うことが増えたら”掛け”も検討すると良い。
リール
前述した通り、イカメタルにおいて最も重要なことは”アタリをティップの動きを見て察知する”こと。すなわちロッドに重きをおいた釣りであるからして、リールに求めるスペックはそう高くないが、ベイトタックルにおいてはカウンター付きのリールがおすすめ。
乗船している釣り客全員で釣れたタナを共有するほどにイカメタルにおいてタナは重要な要素。そのため、自分が攻めている水深を常に把握しておく必要があるのだが、カウンターがあれば簡単に水深を見ることができ、糸の色(10m毎に色が変わるなど)に集中する必要がなくなるため疲労感も軽減される。何よりストレスがないので初めてのタックルはカウンター付きのベイトタックルにするとよい。
スピニングタックルはキャストを前提に使用することが多いのだが、これまた0.6号を200m巻ける糸巻き量さえあればスペックや番手なども特に気にしなくて良いので、他の釣りで使用しているスピニングリールを併用してももちろんOKだ。
ひとつ付け加えるとするならば、使用するスッテの重さが20号を超えてくるようなエリアではスピニングの巻き上げは非常に重たくなるため、4000番クラスのノーマルギアなど巻き上げトルクの強いものが快適に使用できるだろう。
レバーブレーキリールを使ったテクニックも存在する。
ライン、リーダー
ラインはPEラインの8本撚りで0.5〜0.6号がおすすめ。イカのアタリは非常に小さいため、糸がフケるとさらにアタリが分かりにくくなってしまう。極力水切りの良い細い糸を使うのが鉄則だが、事前情報で船長から「サバが多い」などと聞いた際には太めの0.6号を使用してオマツリする前に釣り上げられるように準備したい。
糸の長さは複数本タックルを持てる場合は200mでOKだが、竿一本で挑む時は高切れ対策で300mは巻いておきたい。
リーダーは感度が良く伸びが少ない、かつハリのあるフロロカーボンラインかエステルラインの3号を1.5mほどつけておけばOK。まれに市販の仕掛け(リグ)で幹糸が4号のものがあるのだが、それに合わせてリーダーも…と4号以上をリーダーにしてしまうとロッドによっては極小のガイドを使用しているものもありガイドの糸通りが悪くなってしまうこともある。
イカメタルで狙うイカでどれだけ大きいサイズを掛けたとしても3号を切られることはまずないし、リーダー結束部分のガイド絡みのストレスも加味して3号のリーダーがおすすめだ。
イカメタルゲームの解説
スッテというのは伝統的なイカを釣るための釣具で、元をたどると漁具だと言われている。従来のイカ釣りはスッテを複数個幹糸につけ、”サビキ”に近い形でイカを狙うのだが、このスッテそのものにオモリをつけスッテ単体でも釣りができるようにしたものが「鉛スッテ」である。
鉛スッテ単体で釣りをする場合を”ひとつスッテ”と呼び、これがイカメタルの源流の釣り方。今は鉛スッテの上にドロッパーと呼ばれるスッテやエギをつけ、2段(3段の仕掛けもある)でイカを誘う仕掛けが一般的である。
鉛スッテ
乗船するエリア、船によって使用するスッテの重さが異なる。10号〜30号程度がメーカーからラインナップされているが、”全部必要”なことはないので安心してほしい。筆者がよく行く福井県敦賀のエリアでは20号、25号をメインで使用し、どうしても潮が早い時は30号の出番、といった具合。10号、15号はほとんど使用しない。
ちなみに、タナが浅くなってきたら鉛スッテも一段階軽くして釣りができるようになるので、早潮用の30号は2〜3本持っておけば安心だ。まずは、乗船する船の船長にスッテの重さを聞くところから道具選びをスタートしよう。
さて、鉛スッテ、とは言うものの素材がタングステンのものも存在している。例え素材が鉛でなくても”鉛スッテ”なのであしからず。イカメタルはシンプルなイカサビキの釣りからルアーゲームとしてゲーム性高く進化したものであり、シルエット、比重、バランス、カラーなどなど多種多様なものが存在する。
なので筆者もお気に入りのスッテはあれど、どのスッテが釣れます!などと一概には言えないのだが、道具選びの参考にして欲しいのはスッテの”重心”を見ることだ。
鉛スッテとドロッパーでダブル!一番気持ちの良い瞬間。
まず、スッテの重心がセンターにあり、竿を煽ってアクションした際にスッテが横を向きヒラヒラとフォール(落ちる)するようなもの。誘いあげのアピールもそこそこに、フォールアクションでイカを誘うコンセプトは釣れそうなイメージが湧きやすいし、実際使用しても安定してよく釣れる。
初めてイカメタルに行く方や、鉛スッテの本数を少なく絞っていきたい方はひとまずセンター重心を揃えていくことをおすすめする。ただ、他にも重心がラインアイ側にあるフロント重心のものや、カンナ(針)側に重心のあるリア重心のものも存在している。
重心で使い分ける鉛スッテ
フロント重心のものは大きくスライドするアクションをするようになり、フォールを入れるとスッテが逆さまになりカンナの針先が下を向きやすいため、フォールを入れてイカがスッテを抱くとそのまま針がかりしやすい特性がある。逆にリア重心のスッテは竿を煽ってもスライドアクションはしづらく、フォールを入れてもスッテが横に向く事がほとんどない。
つまり、フロント重心のスッテはアピール度が高く、リア重心のスッテはアピール度が弱いのだ。その日のイカのコンディションや有効なアクションによって、戦略的にスッテを使い分ける事が釣果アップのコツである。
上から、タングステン素材、フロント重心、リア重心、センター重心で並んでいる。タングステン素材はかなりシルエットを小さくできるが、非常に高価でもある。
ドロッパー
鉛スッテの上にエダスを介して取り付けるスッテやエギのことを指す。大体全長が60mmから80mm程度のものが各社からランナップされており、エギは1.5号から2号前後が潮を受けすぎず使いやすい。
ドロッパーはシルエットの大きさや、仕掛けを止めた時にどのような姿勢を取るかなどイカメタルのゲーム性を高める重要な役割を担っている。鉛スッテとは全く違うアクションをするため、単純に針が増えるだけではなくイカの活性を予想する材料としても大きな意味を持っている。
ドロッパー各種。一番上が昔ながらのスッテ形、一番下はエギ型だ。真ん中の2つはイカメタルの釣りが誕生してから生まれた、いわば「純粋なドロッパー」である。種類がとにかく多い。
ドロッパーの使いわけとしては、スッテ型はロッドアクションに敏感に反応するためアクションが強く、エギ型に近いほどアクションは落ち着いてくるものとして認識して良い。つまり、タナに入ればすぐアタるような活性の良い時はスッテ型、ジッとステイしてイカの触りを待たなければならない時は姿勢の安定するエギ型が有利となるのだが、持っていないと困ることが多いのはエギ型だ。
活性が高い時はどんなドロッパーでも反応は得られるためである。とりあえず”エギ型は必須”である。
他にもドロッパー専用として開発されたアイテムも多数あるが、浮いたり沈んだりサスペンドしたり、太かったり細かったり、長さも色々とラインナップされており選んでいて非常に楽しいものであるが、同時に悩ましいのも事実。難しいうちは釣具店に釣行するエリアで調子の良いドロッパーを聞いてみるとよい。
カラーについて
カラーに関しても非常に多くのラインナップがされていてこれがまた悩ましいのだが、イカメタルが生まれる以前より漁師含め支持されているカラーがある。赤白と赤緑だ。
赤緑はシルエットがはっきり出ると言われており、逆に赤白のシルエットはぼんやり見えているとされている。ただ、イカは視力が非常に良いとされており、実際にどう見えているかは不明。とはいえ赤白でアタリが小さい時に赤緑に変えてみると強いアタリがでたり、赤緑でアタリがない時に赤白が連発する…という事は多々あるので、カラーに効果があるのは事実。
まずは、赤白、赤緑はマストで持っておき、持論を交えて好きなカラーを選んでいってほしい。ちなみに筆者が好きな(良い思いをした)カラーは紫、ブルー、赤黄だ。水深が深い時に紫、ブルー、浅い時に赤黄。是非試してみて欲しい。
仕掛け(リグ)
ドロッパーを使用するイカメタルリグは鉛スッテの上(50㎝〜90㎝ほど)にエダスが3㎝〜20㎝ほど伸びてドロッパーが取り付けられているものを指す。
リーダーと同様に張りのあるフロロカーボンかエステル素材で幹糸は4号程度、エダスが3号程度が一般的だ。エダスの位置を自由に変えられるものや、回転ビーズを介してエダスを出す仕掛けも市販されている。
仕掛けに関してはエダスが短いものと長いものを両方持っておくと様々な状況に対応ができる。注意が必要なのは鉛スッテとドロッパーが離れている仕掛けを使用しつつ、短い竿を使用している場合だ。鉛スッテとドロッパーの距離が長ければ長いほどイカの取り込みが大変になるので注意してほしい。
ちなみに、ひとつスッテはスナップを介して鉛スッテを直結して完了!簡単だ。
エダスが長いものと短いものがそれぞれ販売されていることが多い。
釣り方
イカメタルはタナの釣りである。どのレンジ(泳層)をタナとして狙うか、どの水深にイカがいるかを探ることから釣りが始まる。ひとまず、集魚灯が点灯する前の明るい時間は海底から1m程度底を切ったタナを狙うところからスタートだ。
そこから、集魚灯が効いてくると徐々にタナが上がり始め、水深10mでもイカが釣れるようになってくる。日によって調子の良いレンジが異なるため、周りの方がどの層で釣れているかなど船長からアナウンスがあれば参考にすると良い。
どのタナが正解かと悩む「タナ迷子」になることもしばしばあるが、このタナ!と決めたら前後20mほどを5m刻みで重点的に狙うと良い。それでも釣れなければ…オマツリに注意して底を狙うと釣果が安定しやすい。
タナ迷子は本当に辛い。
集魚灯をつけて行う夜焚きの釣り。ライトがつくとテンションが上がる。
”アワセ”について
イカメタルの釣り方は簡単に表現すると”誘って待って掛ける”である。誘いといっても、狙うタナを決めたらリールを巻かずに竿だけで誘うので、ジギングのワンピッチジャークなどのテクニックも必要ない。
仕掛けを真っ直ぐ下ろして狙いのタナに到着したら竿を上に煽って仕掛けを持ち上げ、竿を下げながらフォールを入れて、アタリが見やすいよう水面と垂直の位置で止めて穂先に出るアタリを待つ一連の動作が基本だ。
前述した通り、初めてイカメタルに挑戦する人にとって最難関は”掛ける”事である。そもそもアタリをアタリと判断することが難しい。竿先がモゾモゾと波の揺れと関係なく動いたり、わずかに竿先が曲がったり戻ったり、「違和感」がアタリな事が多いのだ。
手に伝わるアタリも全体の2割あればかなり多い方で、そのくらい穂先に頼る。まずは、「アタリらしきもの」があったら竿を鋭くピシッと上へ煽ってアワせてみると良い。掛かればイカのアタリがどんなものか理解できるし、掛からなくてもそれが誘いになる。まずは果敢に掛けにいってみよう。
ちなみに、いいアタリが出ても掛からないのが普通の釣りだ。くそ〜!とハンドルを巻いてしまわずにアタリが出たタナでそのままもう一度誘いを入れてみよう。針に触れていなければしつこく触ってくることが多く、3回、4回アワセそびれてもチャンスタイムは継続する。個人的に、アワセそびれてから再度誘いを入れて止めた直後の2秒間が最も掛けやすいタイミングだ。
穂先に色がついたところをとにかく注視だ。そして怪しければ前部アワセよう。
”誘い”について
誘いの基本は仕掛けを上に持ち上げて、パッと糸のテンションを抜いてフォールアクションを出す事。まずはこれがしっかりとできるようにならなければいけない。
経験が浅い時にやりがちなのは、水深60mを超える場所を狙いながら穂先だけでフワフワと誘うことなのだが、糸がどれだけ細くとも深い水深だと多少の糸ふけはどうしても出ているので、これでは仕掛けは動いていない。
深場を狙う時ほど、竿を構えている位置から手の上がる限界の位置まで持ち上げ”しっかりと”仕掛けを動かして誘ってあげることが最も重要だ。
しっかりと仕掛けを動かすイメージができたら、持ち上げた仕掛けをじわっとゆっくり落としてみたり、チョンチョンと小刻みに持ち上げてみたり色々してみると良い。強く動かした方が良いのかなど傾向が出てくるはずだ。
88m。深い。集魚灯が効いてくるまでは底を狙うので、そんな時は特に大きくアクションする癖をつけよう。
深堀り
深堀その①:エダスの長さ
リグ選びで重要なのはドロッパーを取り付けるエダスの長さだ。ひとつ悪い例をあげると、アクションを強く出したい狙いがあるのに20㎝エダスの仕掛けを使ったとする。
エダスと幹糸の接続部分を視点にして、上下に動かすと計40㎝の”遊び”があるわけなので竿先でチョンチョンと誘った程度ではエダスが動くだけでドロッパーは動いていない事が多い。これでは、狙っていた「アクションを強く出す」事ができない。
では、3㎝エダスの仕掛けを使ったらどうだろうか?遊びは6㎝、竿を少しでも動かせばドロッパーもキビキビと動いてくれるようになる。逆に、イカの活性が低くドロッパーを動かしたくない時は長いエダスが有効になってくる訳だ。
このように、仕掛けに関してはしっかりと理解しておくと狙いのアクションが出せるようになる。じっと長くステイするパターンの時に周りに釣り負けているのは、単純にエダスが短く船の揺れに引っ張られているからかもしれないぞ!
深堀その②:オモリグについて
オモリグはイカメタルから派生したリグで昨今大型のイカを狙えるとして人気なリグだが、理解していないと逆に釣れなくなることもしばしば。仕掛けはオモリ(針なし)の下にハリス3号程度を1m〜1.5mほど伸ばし、エギ(1.8号〜2.5号)を取り付けた”吹き流し”型。
1.5mもハリスが伸びているのだから、イカメタルリグと同じ誘い方ではアタリが出ない。オモリとエギの間の長いハリスを常に張り続けてアクションさせることがコツであるため、誘い方も上から下に落とすのではなく、下から上へ誘いあげる必要がある。
アクションは”竿を持ち上げて落とす”イカメタルリグの誘い方は仕掛けが弛むので基本的にはせず、狙いのタナの10m下からワンピッチでしゃくり糸ふけを出さない位置でピタッと止める。
糸ふけを取るためにリールの糸巻き量は多い方が良いので、スピニングタックルが使いやすい。オモリグはハリスが長い分エギの動きに違和感がなく、大きなエギを使えるので掛かるイカが大型になりやすいのが特徴だ。オモリグを使うタイミングとしては、潮が早い時とイカメタルリグでどうしてもアタリが出ない時。ハリスを弛ませない事だけ意識してチャレンジしてみてほしい。
ちなみにオモリグはイカが本気で抱きやすいのでアタリは明確に出る。ギュッと腕ごと引っ張られることもあるので、体感したら病みつきになるぞ。
深堀その③:魚が多い時
魚が多いと格段に釣りが難しくなる。そもそも、集魚灯に魚が集まってきているのは餌となる生き物が光に集まるからなのだ。そして、イカは魚にとって「食べられる側」にあたる。
魚の活性が異様に高い時はイカは怖がってテンションが低いのだ。釣りにおいても、スッテを魚が噛んでくることも多いのだが、最もストレスに感じるのは掛けたイカを魚が横取りしたり真っ二つにしてくること。犯人はサゴシにエソにフグに…魚種をあげたら結構いる。
さて、魚対策は掛けたイカを持っていかれないための対策と、スッテを噛まれないようにする対策の2つを解説してみる。
まず、魚に噛まれにくくする方法はかなり単純だ。鉛スッテもドロッパーもキラキラさせないこと。反射が多ければ多いほどどうしても噛んでくる。また、アクションが強い鉛スッテを使わないことでも対策ができる。そして、掛けたイカを魚に取られないようにする方法もシンプルだ。掛けてからゆっくり巻いてくること。
バラすのが怖くてどうしても早く巻き上げたくなるのだが、早ければ早いほど魚にアピールしてしまい、結果巻き上げ途中で魚の引きに変わり、釣り上げた頃には半分になったイカを見ることとなる。魚が多くなければ手返しを重視して早く巻き上げれば良いのだが、状況を見て冷静に対処しよう。
鉛スッテを噛んできた良型のマフグ。その日のイカ半分事件の犯人はコイツ。
持っておきたい装備
ライフジャケット
乗船時には必ず着用しなければならないライフジャケット。これは法律で定められているので、船釣り入門者であればまず手に入れたいアイテムだ。無料で貸し出してくれる遊漁船もあるので、予約時に確認してみるといい。
落水時に浮力体が膨らみ、浮き輪のような形でサポートしてくれる膨張式とスポンジのような浮力体が入ったベストを着用する固定式がある。どちらにしても国土交通省の安全基準を満たした桜マーク付きのものを購入すること。グレードは全ての航行区域に対応しているTypeAを選べば間違いない。
ちなみに、オフショアルアーゲームでは体の動きを邪魔しない膨張式がおすすめである。膨張式には肩に掛けるタイプと腰に巻くタイプがあるが、デザインも含めて気に入ったものを選ぼう。
フックシャープナー
エギもそうだが、イカを釣るためのカンナという針は取り外しが効かない上に非常に鋭いので逆に鈍るのも早い。指で触ってみて刺さりが悪く感じたらシャープナーで研いであげよう。スティックタイプがおすすめ。
触れれば掛かるくらいにしておかないと、元々難しいフッキングがさらに難しくなる。
トロ箱
イカを鮮度よく持ち帰るためのトレーのようなもの。イカは魚以上に水を吸いやすいので氷水はご法度だ。ジップロックに入れてもいいが、ジップロックの中でイカ墨が弾けると袋の中のイカ全てが黒くなる。トレーに並べておくと適度に冷やしてくれるほか、イカ墨対策にもなるので美味しくもち帰る為に非常におすすめ。使う場合はクーラーボックスのサイズを測ってから購入すると良い。
沖漬けのタレ
イカを生きたままタレに漬け込むと、イカが海水を吸い込む要領でタレを吸い込みイカの内側と外側両面からタレに漬け込むことができる。残酷なようだが、ものすごく美味しいのでイカメタルに行った際は是非やってみてほしい。タッパーなどにタレを入れ、水を吐かせた生きたイカを入れるだけなのだが、必ず頭(エンペラ側)からタレに入れよう。焦ってゲソからタレに入れるとタレを噴射されて全身タレまみれだ。
偏光サングラス
偏光サングラスは水面のギラツキ(太陽光の反射)を抑え、視界を確保してくれるアイテム。イカメタルにおいては夜釣りではあるものの、集魚灯の灯により穂先が見えづらくなったり目に負担を感じることもある為、ナイトグラスというタイプの偏光レンズを着用すること事でそれらを軽減できる。
レインウェア
海上では急な天候不良に見舞われることもあるため、レインウェアを準備しておくと安心だ。雨だけでなく波飛沫から体が濡れることを防いでくれる。また、イカが噴射した墨からも衣類を守ってくれるぞ。イカメタルは夜釣りであるため、急な冷え込みも考えられる。防寒対策としても必須だろう。ちなみに購入してすぐに防水スプレーでコーティングしておくことで撥水効果を長持ちさせることができるので試してみて欲しい。
デッキシューズ
特に濡れた船上は非常に滑りやすく、陸上で使うような運動靴やサンダルでは転倒の危険が大いにある。船釣り用のデッキシューズやデッキサンダル、長靴を用意しておこう。
フィッシュグリップ
イカメタルの外道として、サゴシ(サワラの幼魚)が釣れることがある。サゴシは歯が非常に鋭く、素手で触れると怪我の危険があるためフィッシュグリップで掴むようにしたい。
プライヤー
フィッシュグリップ同様、外道の魚が釣れた際に必要となる。フィッシュグリップで掴んでからスッテを外す事で魚に直接触れる事なく針を外すことができる。また、ラインカッター機能がついたものは何時でも使う機会があるためどの釣りにも必ず持って行きたいアイテム。
ハサミ
魚釣りにおける神器の1つがハサミである。ラインを切る時、パッケージを開ける時、さらには魚の血抜きをする時等、使い方は多岐にわたる。携帯に便利な小型のものから、魚の絞めまでこなす大型のものまで多様なハサミが存在するので、用途に合わせて何種類か持っておくと便利かもしれない。
まとめ
性別問わず手軽に楽しめる釣りなだけに、「大人の夜遊び」の愛称をつけられ親しまれるイカメタル。釣れるイカはどれも美味しく、食卓も賑わうことも間違いなし!
夜の海にのんびり浮かびながら非日常を愉しむ…でも素敵だが、腕の差が出る釣りなだけにとにかく白熱するのもイカメタルの魅力!ハマれば”沼る”ことうけあいだ。釣期も長いので、気になった方は是非ともチャレンジしてみてほしい。
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