
ソルトルアー初心者〜上級者まで幅広いファンがいる「タイラバ」。ヘッドと呼ばれる鉛やタングステン製のオモリに、ネクタイやブレードを組み合わせたリグを一定の速度で巻き上げてくるシンプルな釣り方が、オフショアビギナーにも分かりやすい。その一方で、釣り場の地形や潮流の速さに合わせて、ヘッド重量やリグの最適解を探していくゲーム性の高さがコアな人気の理由。今回はダイワ紅牙フィールドテスターの平田俊也さんが、初めて広島県廿日市沖に挑んだ様子をレポートする。プロが一体どのようにアジャストしていったか。きっとゲームの組み立て方の参考になるはずだ。
●文:ルアマガプラス編集部
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舞台は広島・廿日市市沖の瀬戸内エリア
今回取材でお世話になったのは、広島県廿日市市(はつかいちし)にある遊漁船「海神(わだつみ)」さん。タイラバはもちろん、ヒトツテンヤ、ライトジギング、ボートシーバスやティップランエギング等で人気の遊漁船だ。タイラバでは広島湾から南下し、はるか松山沖まで遠征することもしばしば。「ポイントまでの距離があるうえ、ラン&ガンすることも多いので、船足の速さを大事にしています」と船長の小川喬也さん。取材時も釣り場への移動はおおむね20ノット前後で疾走し、実釣時間をロスしないようにという心遣いが嬉しかった。
広島近海には大小様々の島が点在する。この起伏に富んだ地形が複雑な潮流を生み、中国・四国エリア屈指のタイラバフィールドを形成している(GooleMapより)。

鹿児島・錦江湾のスゴ腕がアウェイの瀬戸内エリアに初挑戦
今回のアングラーはダイワ紅牙のフィールドテスターを務める平田俊也さん。鹿児島で自身も遊漁船「Jumbo」を駆る船長でもある。ホームの錦江湾ではタイラバのみならず、ジギングやティップランエギング、バチコンアジングと幅広い釣りを熟知し、多彩なオフショアゲームを楽しませてくれる船長としてよく知られている。

タイラバの基本的な釣り方と鹿児島・錦江湾でのセオリー
まずは平田さんにホームでのタイラバの基本的な釣り方をうかがってみた。
「錦江湾はボトムが砂地で広いフラットなエリアが多いので、船はドテラ流し(エンジンを停止して、船を風や潮流に乗せて横向きに流す方法。広範囲を探るのに適している)で、砂地を延々と流すことが多いです。タイラバはラインに少しテンションをかけながら、払い出す潮に乗せて沈め、着底したら巻き上げます。リトリーブは等速巻きが基本ですが、潮の速さやマダイの活性に合わせて、遅くしたり、速くしたりしてスピードに変化をつけるのも有効ですね」
ヘッドやネクタイはどんなものが主流でしょうか。
「錦江湾は平均水深が117mで湾奥部の最大水深は237m。比較的浅い湾口部でも平均水深は80m前後あります。そのため使用するヘッドは「ベイラバーフリーβ」、「ブレイドブレーカー玉神」、「カレントブレイカートリニティβヘッド」の200gや250gからスタートとすることが多いです。タングステンも実績がありますが、現在は鉛の方を中心に使っています。ヘッドカラーは赤系やオレンジ系が人気ですね。ネクタイはハイアピールなものが有効で、シルエットも波動も強烈な「パデシャ極厚」や異なる2つの波動を発生する「ツインカーリーR」等がおすすめです」。



ベイトとスピニングを使い分ける
平田さんが持ち込んだロッドは、ベイト用の「紅牙EX 64MHB-SMT」とスピニング用の「紅牙EX C69MHS-SMT」の2本。それぞれの使い分けとメリットを平田さんに聞いた。
「ベイトとスピニング、どちらをメインで使うかとよく聞かれるのですが、適材適所なので両方使うと答えています。ベイトは巻き速度を一定に保ちやすいですし、大ダイとのやり取りやディープタイラバのような高負荷な釣りにはやはり安心感があります。またスマホと連動して巻き上げ速度や落下速度、ライン放出量等を数値で把握できる「紅牙IC 150-C」の登場でレンジ把握やヒットの再現性を高められることも大きなメリットですね。
スピニングの方は、やはりキャストしやすいのが大きいですね。今回のように事前情報が少ない釣り場で、広範囲をサーチしやすいと思います。また巻き上げ速度に変化をつけやすいのも強みかな。ロッドはどちらもSMT(スーパーメタルトップ)を採用していて、目感度と掛かりの良さを重視しています」




カタクチイワシの群れを意識した釣り
船が走ること約40分、最初のポイントに到着した。小川船長によると、カタクチイワシの群れにマダイが着いているという。水深は55〜60mで魚探にはカタクチと思しき群れがはっきりと映っている。平田さんはまず「紅牙 ブレードブレーカー玉神」120gからスタートするも1投で45gにチェンジ。聞くと「ラインが真下に入ってしまい、重すぎました」とのこと。そう、タイラバではラインを斜めに出して行く必要があるので、角度が重要になってくる。
「水中に伸びるラインの角度が40°〜60°くらいの範囲、できれば45°〜50°くらいをキープできるのが理想です。角度が浅すぎるとラインが長く出てボトムが取りにくくなるし、アワセも利きづらい。逆に深すぎるとアピールできる距離が短くなるので、追わせて食わせるタイラバには不利です。もちろん、潮流の速さと水深は1日のうちに何度も変化するので、その時々に合ったものを使います。ある意味、手返しの良さが大事になるので、さっき1投ですぐ交換したのもそういう理由です」
45gの「紅牙 ブレードブレーカー玉神」に交換してから程なくして、待望のアタリが到来。初場所、初アタリで海面に上がってきた魚影は……まさかのキビレ!これには小川船長もびっくり。「100匹に1匹混じるかどうかですよ」とのこと。本命ではないが、ある意味ラッキーな1匹に平田さんは興奮気味だった。
「船長から、イワシの群れの上にマダイが着くと聞いたので、ボトムから少し上のレンジを意識していましたが……まさかのキビレ! 鹿児島ではイワシの群れの下にマダイが着くんですが、逆は初めてで興味深いです。潮流を避けて固まっているイワシを上から襲うんでしょうか。次は赤いのを釣りますよ!」


午後の潮変わりのタイミングで、見事アジャスト成功
午前中はキビレの後に小型のマダイを1匹キャッチした平田さん。初場所の初マダイに顔がほころんだが、コレジャナイ感は拭えない。アタリのない時間が過ぎ、気がつくと時計は正午をとうに回っていた。慣れ親しんだ錦江湾と同じドテラ流しだが、どこかボタンを掛け違えているように思ったのか、平田さんは小川船長にこのエリアの潮の速さについて質問する。そして何かヒントを得たのか、すぐに使っていたタイラバをチューニングし始めた。

「潮の流れが僕の予想よりもはるかに速い。2ノットくらいでカッ飛んでる。等速巻きしていましたが、潮流を加味するときっと速過ぎでしたね。しかも水深50〜60mなので、重いヘッドだとレンジキープしにくい。正解は軽めのヘッドでスロー巻きかな、と」。
平田さんは「紅牙 ブレードブレーカー玉神」45gのブレードを外し、代わりにやり過ぎカーリーをカットしたカーリーネクタイを写真のようにチューブで装着。フックユニットには、ネクタイ同士の干渉を防ぐためネクタイは装着せず、本体に固定ネクタイ、フックは遊動というスタイルでチューンナップを施した。これでイワシらしいシルエットがより強調されるだろう。リトリーブもこれまでより明らかにスローに。時々ストップして潮に乗せて流していることもあった。やや潮上から落とせるように、少しキャストするように変えた数投目、ボトム付近で根魚っぽいアタリを感じて巻き上げ、少し上で止めた瞬間に強烈なアタリが!直後に「紅牙EX C69MHS-SMT」がぶち曲がる、これはきっとでかい!
潮流の抵抗も考慮するとかなりの重さのはずだが、平田さんは落ち着いた表情でやり取りしている。さすがは百戦錬磨といったところだ。無事にネットインしたのは立派なマダイ。広島・瀬戸内というアウェイの地にアジャストできた瞬間だった。


上のマダイをキャッチして確信を深めた平田さん。気分転換で……と「紅牙 ブレードブレーカー玉神」45gをPHピンクコットンキャンディからPH紅牙レッドにカラーチェンジ。
「完全にカタクチイワシを食ってるので、「紅牙 ブレードブレーカー玉神」のシルエットが今の状況にマッチしているんだと思います。さっき使っていたのは白とピンクがベースになったカラーだったので、よりシルエットを強調できる赤系に変えました。本当は真っ黒があるといいんですが、今ないので(笑)。鹿児島では黒もけっこう実績があるんですよ。それにカラーチェンジすることで釣り人の気分転換にもなりますし。比較的シンプルな釣りなので、時々気分を変えるのも大事だと思っています」
その言葉を具現化するかのように、鋭いアタリ!またまた50cmUPのマダイを捕獲。シルエットを強調する狙いが完全にハマり、また再現できたことでアジャスト完了と言っていいだろう。

今回のアウェイ釣行は大成功!しかし平田さんのチャレンジ企画はまだまだ続きそうなお話も……。
「小川船長のアドバイスもあって、なんとか釣ることができました。自分にとっても貴重な経験を積めたと思います。本当にありがとうございました。……それでまだ詳しい話を聞いてないんですが、この企画は継続だそうで、僕は次どこに行くんですかね?(笑)、まぁ挑戦するのは好きですし、皆さんにも楽しんでいただけるよう頑張りますので、楽しみに待っててくださいね」。
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