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【TULALAじゃない話】オガケン大学・第1章『サカナのゴハンの探しかた』~第4回~“クリア・濁り・夜、感覚の使い分け”

『オガケン大学』開校——。幼少期に米国で釣りを始め、大学での水産研究を通し学んだ豊富な知識や2回に渡る365日連続釣行など、人並外れた知識と経験を持つ小川健太郎さんが、「釣り」を魚の生態から解き明かす。今回は第1章『サカナのゴハンの探しかた』~第4回~“クリア・濁り・夜、感覚の使い分け”。

●文:小川健太郎 ●イラスト:大和なでしこ ●写真:ルアマガプラス編集部

小川健太郎(おがわ・けんたろう)

TULALAという釣り人ひとりひとりの思い描く特殊な竿を作るインディーズなメーカーをやってます。個人では昔ルアーマガジンをはじめ、多くの釣り、車やアウトドア、音楽、新聞からタウン誌などで連載を何本もやっていたライター/アングラーでしたが、大型のトラックに追突されて腰を痛めてバッサリ引退し、イラストやデザインなどの仕事に転向。以来10年以上連載を控えていましたが、webなら締め切りがない、という甘言に釣られてちょこっと書いてみることに。よろしくお願い申し上げます。

前回のおさらい

(教授、水槽の前に立ち、何かスイッチを探している)

生徒「先生……何をしてるんですか?」

教授「電気を消すスイッチを探しています」

バスくん「は?」

教授「今日の授業に必要なんです。ありました」

(パチン、と教室の電気が消える。薄暗くなる)

生徒「うわっ、暗い!」

教授「バスくん、今、見えていますか?」

バスくん「…見えな…いや、うっすらと見えるような見えないような…でも最初は全然わからなかったっ
すね。だんだん慣れてきた感じ」

教授「その『慣れてきた』の部分が、今日のテーマです」

教授「前回は、反射と学習の話をしました。今日は、水の状態や明るさによって魚の感覚の使い方がどう変わるか——つまり、状況で戦略が変わるという話です」

光の変化に、魚は弱い

教授「人間が暗い映画館に入ったとき、最初は何も見えないですよね」

生徒「見えないですね。でも数分で慣れてきて……」

教授「そうです。人間はわりとすぐ順応する。では魚は?」

マスくん「渓流育ちなもので……朝、光が差してきたときなど、最初はまぶしくてしばらく動けない感じがします」

バスくん「オレも、急に明るくなるとちょっと混乱するっすね。逆も然りで、急に暗くなっても」

教授「魚の目は、光量の変化に順応するのに人間よりかなり時間がかかる。明るさへの順応を『明順応』、暗さへの順応を『暗順応』と言いますが、この順応の遅さが、マズメ時の釣れやすさの理由のひとつになっている」

これが「順応のタイムラグ」だ。光量が変化しているあいだ、魚の目はその変化についていけない。その「隙」の時間帯に、魚は視覚で見切る能力が落ち、釣りやすくなる。

生徒「なるほど! だから夜明けや夕暮れが釣れるのか……」

バスくん「そう言われれば、その時間帯ってなんか体が勝手に動くし、急いでる感じになるんですよね。しかもルアーへの判断が雑になってる気がする(小声)」

教授「正直な証言をありがとう」

朝マズメの仕組み

教授「では朝マズメを詳しく見てみましょう。何がトリガーになっていると思いますか?」

生徒「日光、ですか?」

教授「正解。光量の変化がまず植物プランクトンを動かします」

夜が明けて光量が増すと、植物プランクトンが光合成を始め、光の当たりやすい水面近くへと浮上する。これにつられて動物プランクトンが動き、エビや小魚もそれを追って無防備に動き始める。食物連鎖の底辺から、連鎖的に「ざわめき」が起きるのだ。

食物連鎖の底辺から動き出す朝マズメ。エビや小魚などのベイトになりやすい生物も活発になる。

教授「つまりマズメというのは、光量変化がプランクトンを動かし、それがエビや小魚を動かし、最終的に大型の捕食魚の捕食スイッチが入る——という連鎖反応なんです」

マスくん「渓流では、夜明けにカゲロウが羽化して水面が賑やかになりますよね。あれも光量変化がトリガーですよね、きっと」

バスくん「朝って忙しいんすよ、ホントに。あちこちで小魚が動いて、オレらも焦って……だから判断が
雑になる(再び小声)」

教授「ありがとう、バスくん。とても参考になります」

クリアウォーターでは「視覚が王様」

教授「さて、状況別の話に入りましょう。まずクリアウォーター、水が澄んでいる状況です。バスくん、釣り人を相手にした場合、あなたが得意な環境は?」

バスくん「クリアっすね。遠くまで見えるんで気持ちいい。……ただ丸見えで恥ずかしいんすけど」

生徒「恥ずかしい?」

バスくん「こっちもバレバレじゃないっすか。上からも見えるし、横からも見えるし。見切るのは得意になりますよ、当然」

水中に沈んだ木が見えるようなクリアウォーター。

教授「そう。クリアウォーターの日中は視覚が主役です。魚はルアーをじっくり観察できる。だから……

生徒「だからスレやすいってことか」

教授「カラーの選択、形のリアルさ、動きの自然さ——すべてが問われる状況です」

クリアウォーターで重要になるのが、魚の「目線」だ。バスは下からエサを見上げて食うことが多い。釣り人が岸から見ている角度と、水中から見上げる角度では、ルアーの見え方が全く違う。店頭で「派手だな」と感じるカラーも、水中で下から見上げると腹の白に溶け込んでナチュラルに見える場合がある。

教授「よく『お腹が白い魚』を見ますよね。あの白は、空に向けた保護色なんです。下から見ると水面の光と同化する。だから下から食わせるルアーの白は、案外ナチュラルカラーに相当する」

背中側は緑色のバスもお腹は白い。

生徒「えっ、白って目立つカラーじゃないんですか?」

教授「目線次第です。釣り人から見ると目立つ。でも真下から見上げると——」

マスくん「水面がキラキラしていて、白はそこに溶け込みますよね。私も下から見るとそう感じます。背中が黒ければ下からの水面反射で見えるけど」

教授「それはファントムミラージュというヤツだね。また今度説明します」

マッディウォーターでは「音と波動が主役」

教授「次は濁った水。バスくん、濁った池はどうですか?」

バスくん「不安っすね、正直。見えないから。でもだからこそ音と振動に頼るっていうか……ルアーの水
押しとか、音とかがすごく気になる」

教授「そうです。マッディウォーターでは光が急速に吸収される。視覚で使える情報が極端に減る。その代わり、側線——音と波動——の比重が一気に上がります」

このため濁り水での定番ルアーが変わってくる。ラトル(内部の玉が音を出す仕組み)入りのルアー、ブレードが回転して強い光と振動を出すスピナーベイト——これらは「音と波で呼ぶ」ための設計だ。

強い振動と光を生み出すスピナーベイトは、マッディーウォーターで有効的。

教授「カラーについても、濁りの中では視認性の高いチャートや蛍光オレンジが有効とよく言われますが——これはルアーが見えるか見えないかのギリギリのラインを狙っているわけです。完全に見えなければ本来なら視覚への訴求はゼロ。でも他の色よりも反射の力が強いから、ほんの少しでも見えたときに印象を残せる」

マスくん「里川の濁った水では、音と振動とキラッとした光で先に気づいて、近づいて初めてうっすら見える感じです。渓流育ちの私にとって、動き回るのを躊躇しちゃう、少し怖い環境ですね」

バスくん「オレはわりと平気っすけど、確かに濁りがきついと食い方が雑になる気がする。見えないから確認できなくて、反射行動でパクっていってしまう感じ」

生徒「つまり濁りの中では反射行動が起きやすい?」

教授「そういうことも言えます。視覚での確認ができない分、判断が大雑把になる」

夜釣りでは「全体像と音」

教授「では夜はどうか。暗くなればなるほど、視覚は機能しにくくなる」

バスくん「夜は……音と波動で存在に気づいて、あとは輪郭というか、全体像で判断してる感じっすね」

教授「暗闇では、光を反射するキラキラした派手なカラーは逆効果になることがある」

生徒「え、なんで?」

教授「キラキラした反射光は、暗い水中では不自然な恐怖信号として機能してしまう場合がある。傷ついた魚が出す危険信号に近い光を発してしまうんです。だから夜間はむしろ——」

マスくん「白、ですよね。パールホワイト系」

教授「そうですね。暗い環境では、水面近くに残るわずかな光を受けてぼんやり全体像として浮かび上がる白がまず有効といえます。近づいて初めて効く黒いシルエットではなく、ぼんやりと光を滲ませる白が、距離があってもまずは捕食しやすい信号になるといえますね。夕方は特に。」

ぼんやりとした全体像を浮かばせられるホワイト系は、夜釣りで捕食しやすい信号になるという。

バスくん「あー、夜に白いルアー見つけやすいのそういうことか。自分でも理由はよくわかってなかったっす」

生徒「じゃあ夜に金ピカ銀ピカのルアーを投げるのは……」

教授「ダメとは言えないけど、状況によっては逆効果になる可能性があります。白と黒の話も含めてまた今度説明しますね」

状況ごとの感覚優先順位をまとめる

(教授、黒板に図を描く)

状況クリア日中マッディ夜・薄暗い
視覚★★★
音・波動★★★★★★★★
匂い★★★★★
カラー重視形・リアルさ音・波動重視波動重視 全体像重視
おすすめ小魚カラーラトル・ブレードパールホワイト系

教授「大物狙いは別として、これを頭に入れておくだけで、『今日は何を投げるべきか』の考え方がかなり変わってきます」

生徒「今まで感覚でやってたことに、ちゃんと理由があったんですね」

バスくん「まあ……釣り人がこれを全員知ったら、オレらが困るんですけどね」

マスくん「でも知っていただいたほうが、変なルアーを投げられるよりはマシな気も……」

バスくん「……それはそう(小声)」

今日のまとめ(黒板)

第4回のポイント
・魚の目は光量変化への順応が人間より遅い(明順応・暗順応のタイムラグ)
・マズメが釣れる理由は2つ:
①プランクトンから始まる食物連鎖のざわめき
②魚の視覚が追いつかない「隙」
・クリアウォーター日中 → 視覚が主役。カラー・形・リアルさが問われる
・マッディウォーター → 音・波動が主役。ラトル・ブレード系が有効
・夜・薄暗い → 全体像+音。パールホワイト系が機能しやすい
・白は「派手なカラー」ではなく、下から見るとナチュラル、夜はシルエット伝達色として機能する

教授「次回は少し朝マズメを深掘りします。光量変化の話、プランクトンの話、そして朝に効くカラーの理由——また違う色が出てきますよ」

生徒「楽しみです」

バスくん「……朝の話はなんか自分のことを解説されてる感じで複雑なんすが」

マスくん「でも面白いですよね、自分の行動に理由があるって知るのは」系」

バスくん「まあ……そうっすね(渋々)」

次回・第5回:「朝マズメの正体を暴く」へ続く

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