
今年の横浜釣りフェスでお披露目された伝説的なメカニックデザイナー・大河原邦男さんデザインのルアー「シロ(仮)」。会場では、デザインイラストや擬人化だけでなく、立体サンプルも展示されており、その存在感で来場者を魅了した。今回はルアプリ番外編(?)として、「シロ(仮)」を作成してくれた会社「T-REX」の田畑さんに、イラストを元に立体化するというプロセスや苦労をお聞きした。
●文:ルアマガプラス編集部
そもそも「T-REX」とは?
T-REXは台東区にある会社で、3D-CADを用いたデザイン・設計を得意とするホビー開発に携わる会社。特にガンダムシリーズやマクロスシリーズなど、ロボットものの立体化に定評がある。
それでは「シロ(仮)」を例に、イラストから立体化するプロセスを紹介していただこう。
田畑さん
田畑「今回、大河原さんが描かれているのは斜めからのイラスト(俯瞰図)、それから真横、正面、真上から描かれた『三面図』です。」
この三面図を元に三次元的に想像し、3D-CADで立体物としての図面を引いていく。同じ場所を複数の角度から見ることで、線同士のつながりが見えてくるのだ。
田畑「大まかなベースを作って、そこに三面図をもとにした線を繋げていきます。その際、頭部分、しっぽ部分、といった具合に、ある程度パーツ毎にモデリング作業を進めていきます」
この作業の中で、イラストと図面の整合性をとる必要が出てくるという。
田畑「例えば、俯瞰図だとテールの断面は真円っぽい印象を受けると思いますが、三面図にあわせると楕円にならないと違和感があったりするわけです。そのため、いったん三面図を元にモデリングして、そのあと俯瞰図に近づく様に調整することが多いですね」
ちなみに普段の仕事では三面図無しでモデリングすることもあるそうだ。
田畑「その場合、俯瞰図から見えない部分を想像してモデリングするのですが、三面図が無い方が必ずしも大変かというとそうでもないです。俯瞰図と三面図が乖離してしまっていると、それはそれで大変なので(笑)」
門外漢からすると、全くイメージが付かない作業だが、どのくらいの作業時間を要するのだろうか。
田畑「ものにもよりますが、このルアーに関しては付きっ切りでやってだいたい3日間くらいかかりましたね。プラス2日間で、金色の方も作りました」
ルアマガプラスでは初公開となるシロの兄弟機⁉
今回は実際のルアーではないため内部にウエイトを配置する必要はないもののアイが入っていたり、塗装を考慮した分割構造が設けられていたりする。
普段の作業でも、型からの抜きやすさを考慮した分割は考えているそうだ。
田畑「あんまりやりすぎるとどんどんパーツが細かくなってしまうので、ほどほどにというのが大切なんですけどね」
そしてそれを3Dプリンターで出力。ルアプリプロデューサーのキムラ氏が塗装し、ショー会場でお披露目された「シロ(仮)」が出来上がったのだ。
辻褄を合わせる
ロボットであろうがルアーであろうが、その構成に曲線は多く含まれている。単に直線をつなぎ合わせるよりも難しいのは明白だが、どのように線を引いているのだろうか。
田畑「フリーハンドです。歪まないようにしつつ、全体の流れを見つつ、立体にした時に整合性が取れるように調整しつつ…。経験も必要だとは思います」
界隈では、T-REXといえばアニメに登場するロボの立体化に定評がある。そこにはどんな秘密があるのだろうか。
田畑「そうですね。元のイラストを活かす、とかでしょうか。今回の大河原さんのイラストなんかもそうなんですが、手書きによる歪んだラインがかっこよさであり気持ちよさであり、味になるので、それを意識して活かすようにしています。もちろん全部イラストの通りにすると立体として繋がらなくなってしまうので、ここのカッコイイ歪みを活かして、こっち側で辻褄を合わせよう、とかするわけです(笑)」
今回のルアーに限らず、T-REXはこれまでにも様々な立体に挑み、評価を得てきたわけだから、辻褄を合わせるノウハウこそ、T-REXの武器なのかもしれない。
ルアーとホビーの違い
田畑「今回のルアーのデザインは、色塗りを意識したパーツ構成になっています。これは中身をくりぬいていない(浮力のスペースがない)からこそできる分割でした。塗装をとるか、内部構造をとるか、という選択肢があったわけです。あとホビーの場合、変形機構のために内側の自由度が高くないことも多いですね」
逆に言えば、ルアーの外側には複雑なパーツがないため、内側に大きな空洞を設けることができるわけだ。
田畑「モックを塗装して展示する、と聞いていたので、今回は塗りやすさを優先してモデリングした次第です」
一方で一般的なルアーの場合、外側の要素(ディティール)が少ない分、色塗りだけで立体感を出すなど、独自の技術が発展してきたともいえそうだ。
また素材に求められる要素が違うのも興味深い。ルアーであればバルサ材などの天然素材、発泡ウレタン、ABSなどが主流。強度や加工性はもちろんだが、ルアーとしての機能を追求して浮力の確保が考えられた選択肢だ。
「ホビーでもABSが使われることが多いほか、PPやPS、POMなどが使われます。ただ求められている尺度が違っていて、おもちゃとして綺麗なものができるか、であったり、いかに安全であるかといった要素が求められるので、それによって使い分けられている感じです。ちなみに今回のシロは3Dプリンターで出力しているのでアクリル系素材でできていますね」
浮力の確保は、ほかの部分にも影響を及ぼしている。
「貼り合わせの精度が高いですよね。ルアーって内側に水がはいることはまずないんだろうとおもいます。逆にお風呂用の玩具は水抜き穴があるくらい(笑)。空気で浮力を確保しないで、浮力体を詰めて浮かぶようにしたりするわけです」
ここまで違うホビーとルアー。
これまでは交わらなかった両者がルアプリを通して、また新しい何かを生み出してくれるのかもしれない。
ルアプリオリジナルルアーの立体版がこの後も登場する⁉
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