
日本の渓流でフライフィッシングを始めるための道具について長々と語ってきましたが、そろそろ終わりを迎えようとしています。今回、解説する用意すべき毛鉤編が終われば、あとは川に入る装備編を残すのみ。では、まずはビギナーが最初に用意すべきフライパターンを紹介しましょう。
●文:ルアマガプラス編集部(深谷真)
難しいことは考えない!まずは3つのフライ(毛鉤)を買って用意しよう!!
どういった風の吹き回しか、日本のフライフィッシングにおいて使用する毛鉤(フライ)は自分で巻いて用意するみたいな文化がありますが、コレ、別に既製品を買っちゃっても問題ありません。フライタイイングは非常に奥深く、ハマるとヤバイ!と思えるぐらい楽しいので、そっちのルートもあるのですが、まぁ、まずは毛鉤で魚を釣る。という部分から入ってみましょう。
因みに自分で巻くようになると、この3種類のボディやハックルカラー、フックなどの交換で多種多様な水生昆虫の種類をイミテーション(模倣することができます)。着せ替えればいいってことですね。
日本の渓流、とりあえずメインターゲットとなるヤマメ、アマゴ、イワナなどのマス類をドライフィッシングで釣ることを大前提に話をすると用意する毛鉤は3つ!
エルクヘアカディス。パラシュート。CDCダン。これだけ。フライにはフックサイズに応じて大きさが設定されており、こちらもリーダー・ティペットとのX表記と同じように、数字が大きくなるとサイズが小さくなると考えてください。#10と表記されているフライと#22と表記されているフライでは#22のほうが小さいです。フックサイズについては後ほど解説しますが、まずは#14前後のフライサイズをチョイスしてください。
エルクヘアカディス
概念的には水生昆虫の『カディス(トビケラ/カワゲラ)』系を模倣しているといわれているフライですが、ドライフライは背格好ではなく水面への干渉の仕方で分けることをお勧めします。色などの概念も後回し。どんな感じで水面で浮くか。が、重要で、このエルクヘアカディスはざっくりとした解説ですが、楕円で水面に干渉します。
この楕円型、筒形の干渉パターンに対して、渓流の魚たちはかなり興味津々。基本、渓流のドライフライフィッシングは、毛鉤を自然に流下させることに心血を注ぐのですが、このエルクへアカディスは多少、ラインに引っ張られて不自然な動きをしても魚が食いついてくれます。そのあたりの理屈はフライの形状にあると思われますが、とにかく流し方に『寛容』なので、初心者にまず使ってもらいたいドライフライです。
記者がフライフィッシングで1パターンしか使えないとなったら、間違いなくこのパターンを買うもしくは自分で巻きます。それぐらいの汎用性があります。カディスという水生昆虫が飛んでいなくても、夏場に主食となる甲虫類をこのエルクヘアカディスで代用することができますので一年通じて有効なのも魅力です。
エルクヘアカディス(タイヤー:高橋章)。マテリアルはフック:TMC103BL#13 推奨、ボディ(フライの胴体):スーパーファインダブ(各色/ブラック推奨)、ボディハックル(ボディに巻く毛):コックハックル各色(グリズリー推奨)、ウイング(毛鉤の羽の部分):エルクヘアブリーチ(鹿の毛)。
パラシュートフライ
インジケーターと呼ばれる目印が垂直に立っており、そこにフェザーを巻きつけた形状からパラシュートと呼称されるフライです。視認性を重要視しているフライパターンで、概念的には『メイフライ(カゲロウ)』系を模倣していると言われています。イワナやヤマメなどのトラウト類の春から初夏にかけての主食です。
このフライの水面への干渉は円(丸)。このフライに関しては、自然に流す技術、フライフィッシングにおいては『ナチュラルドリフト』と呼称される流し方が、エルクヘアカディスより求められるフライです。それってナニ?って言う技術的な解説は連載中にさせてもらいますが、流れに逆らったり、引っ張られたり不自然な動きをせずフライが流れていく技術をそう言うと覚えておいてください。
そこに注視する必要性があるフライパターンです。そのナチュラルドリフトを助けるために、カゲロウにある尻尾が毛で表現されていたりします。尻尾があると、自然に流れやすくする効果があったりします。この形状には尻尾がなかったり、フライのフックが普通と違ったりと、形はもちろんのことカラーにもバリエーションがあります。
汎用的な意味で、インジケーターはオレンジ、ピンク、イエローが視認性が高くお勧め。フライ自体のカラーはできれば暗色系をチョイスしてください(グレーやブラウン、ブラック)。キャストした際の投射性に優れているのも初心者向き。
パラシュート(タイヤー:高橋章) フック:TMC100BL/100-SP #14/103BL#13推奨(TMC)。 テール(フライの尻尾):ムース、ボディ:スーパーファインダブ各色、インジケーター(目印):ハイビズドライウイング/オレンジ(TMC)、ハックル(目印に巻き付けている毛):コックハックル各色。
C.D.C.ダン
鴨のお尻の毛、Cul De Canardをウイングに使ったパターン。もともと、ヨーロッパあたりで活用されれいたアヒルやカモのお尻のあたりの毛(ちょっと脂ぶくみ)が、めちゃくちゃフライと相性がいいと日本人が注目、そこから特有の魔改造的創作が始まり30年ほど前から爆発的に普及。
いまでは、世界中のフライパターンになくてはならないマテリアル(フライの素材)となっていますが、この素材の特徴は水面への干渉の仕方にあると思います。ついでに浮力が本当に高い。このCDCの水面への干渉の仕方は、まさに水面への羽虫のソレ。水面への干渉は点に近い。
魚に見切られにくく、まさに必殺のフライのひとつですが、1尾釣ってしまうと、ウイングのCDCが空気を保てず浮力が出なくなりますのでクリーナーやティッシュなどで汚れや水分をしっかりとって再利用する必要があります。継戦能力がないフライともいえます。ここが弱点。
C.D.C.ダン(タイヤー:高橋章)、人慣れしてきた魚にも大概戦っていけるパターン。
以上。この3つがあれば、日本の渓流のドライフライフィッシングの8割は釣りができてしまうでしょう。フライフィッシングにはマッチザハッチ(飛んでいる、今、羽化している虫にフライを合わせる)という奥深い楽しみ方があるのですが、そこに至る前に魚を釣り上げる基礎基本がこの3パターンに凝縮されています。今回は買う事をススメていますが、自分で毛鉤を巻くことを始めるにもこの3パターンから覚えていくといいでしょう。
フックのサイズについて
フックサイズには「レディッチスケール」という英国発祥の基準があります。数字が大きいほど小さくなり、#1より大きいサイズは「/0(アウト)」表記に切り替わります。各社で若干の差異はありますが、ゲープ幅(針先と軸の間隔)がおおよその基準です。
| サイズ | ゲープ幅(目安mm) | 主な用途・フライタイプ | 推奨ティペット |
|---|---|---|---|
| #2/0 | 約16 | 大型ストリーマー・サーモンフライ | 0X |
| #1/0 | 約14 | 大型ストリーマー | 0X |
| #2 | 約12 | ストリーマー・大型ウェットフライ | 0X〜1X |
| #4 | 約10 | ストリーマー・ウーリーバガー | 1X〜2X |
| #6 | 約8 | ストリーマー・大型ニンフ | 2X |
| #8 | 約7 | ウーリーバガー・ニンフ・大型ドライ | 2X〜3X |
| #10 | 約6 | ニンフ・ドライフライ(大) | 3X |
| #12 | 約5 | エルクヘアカディス・アダムス(標準) | 3X〜4X |
| #14 | 約4 | ドライフライ(標準)・ニンフ | 4X〜5X |
| #16 | 約3.5 | ドライフライ(小)・エマージャー | 5X |
| #18 | 約3 | 小型ドライ・ミッジ | 5X〜6X |
| #20 | 約2.5 | ミッジ・小型イマージャー | 6X〜7X |
| #22 | 約2 | ミッジ(極小) | 7X |
| #24 | 約1.8 | ミッジラーバ・極小ドライ | 7X〜8X |
| #26 | 約1.5 | 超小型ミッジ | 8X |
| #28 | 約1.2 | 超極小パターン | 9X |
で、用意すべきフライサイズ(フックサイズ)は、ずばり#14。これでOK。まずは何も考えず、上に挙げた3つのパターンの#14(前後)というサイズを用意して1シーズン使いこなしてみてください。3つのフライとこのサイズのフライを使ってみて、どうにもならない状況が出てくると思います。
が、8割!この3つのフライとサイズで、魚は釣れます。
残り2割のせめぎ合いは、中級者以上になってから考えればいいです。ただ、この#14でフライが視認できないって初心者の方はもう少し大きなフライを用意しましょう。#10でもかまいません。とにかく目で追えるというのが大前提です。
どこで入手するの?
エルクヘアカディスやパラシュートフライはAmazonなどで比較的簡単に購入できますが、CDCダン系はプロショップなどに出向いて手に入れるかヤフオク、メルカリなどの個人タイヤーから手に入れるのが手早いでしょう。羽の色はどうするの?とか細かいことはあるかもですが、とりあえず『視認性が良い』が大前提です。検索ワードは、『エルクへカディス #14』『パラシュートフライ #14』『CDCダン #14』これで、販売サイトやフリーマーケットを探してみてください。お店に行った時も、これを買えと言われたと伝えれば案内してくれるはずです。
おすすめはフライのプロショップで選んで購入。こちらは都内山手線駅至近で唯一に近いフライ専門店『ハーミット』にて撮影。
因みに毛鉤を最初から自分は巻くのだ! って意気込みの方、一通り道具の解説が終わったらタイイングについても解説しますが、材料を揃えるのにあたってイニシャルコストが安いのはCDCダン。あとのふたつはコックハックルという素材さえ手に入れて終えばランニングコストが安く巻けるフライなので、巻くのにしたって最初に覚えるのはこの3つになると思います。
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