
2008年から続くバス釣りオカッパリ対決企画『陸王』において、3度のチャンピオンに輝くミスター陸王・金森隆志さん。2023年、2024年に2年連続でロクマルを釣り上げるなど見せ場を作る中、2024年の決勝戦で突然の陸王休業宣言。しかし、わずか1年のブランクののち、2026年に陸王復帰が決まった。その真意はなんなのか。7月上旬に試合本番を控える中、本人にインタビューを行った。
●文:ルアマガプライム

PROFILE
金森隆志/かなもり・たかし
東日本の川村光大郎と比肩され、西日本のオカッパリシーンを牽引してきたカリスマ。陸王発足の2008年から出場を重ね、陸王タイトル3冠保持者。2023年と2024年のシーズンバトルでは2年連続でロクマルをキャッチしている。2024年決勝をもって、突然の陸王休業宣言。
「陸王に対する熱と想いが強すぎて一度身を引いた」その真意とは?
金森「2024年のチャンピオンカーニバルのときに、その年をもって陸王を一度離れますという話をさせてもらいました。そのときに理由を詳しく話さなかったこともあって、さまざまな憶測が飛び交った。
例えば、(同じく24年に陸王休業宣言をした)伊藤巧のように、『次世代の選手にバトンを渡したいのではないか』、あるいは、ときを同じくして自身が初めてバサーオールスタークラシックに出場した年でもあったから、『きっとカナモはオールスターに集中したいんじゃないか』とか。
人それぞれの受け止め方があったようなんだけど、どれも違います。正直、伊藤巧や(バサクラで後進のアングラーに席を譲って引退した)田辺さんのようなマインドは、今の俺にはない。ゼロです。渡すつもりはないし、渡したい相手がいるわけでもない。こういうものは渡されるより『奪う』ものでしょって思ってる側だから。
『カナモはオールスターに集中したいんじゃないの?』って思われたかもしれないけど、俺にとって陸王とオールスターは別物だし、オールスターに集中したいからといって身を引くほど俺の陸王に対する熱量は低くありません。今回の件は、むしろ俺の陸王に対する熱と想いが強すぎて一度身を引いたっていうことなんです」
東の陸王・川村光大郎、西の陸王・金森隆志。『陸王』は黎明期から戦い続けてきたこの二人の歴史と言っても過言ではない。
金森「どういうことかと言うと、その当時の陸王の『在り方』について自分の中でクエスチョンがついてしまった以上は、自分が好きで夢中になってやってきた陸王だけに、どうしても気持ちの整理がつかないというか、『この陸王は何か違うな』という違和感で一度身を引いた。
そのクエスチョンっていうのは、ルアマガさんは書きにくいかもしれないけど、包み隠さずに言うと、俺の中ではふたつ。ひとつは陸王が記事化されなくなったこと(編集部注:2025年より記事化再開)。陸王が多くの人の目に触れられない、それは違うだろうと。
もうひとつは、若くてすげえやつがもっと出てこいよっていう。ただ、その若い選手の陸王トーナメントの中での扱われ方や実力の伸ばし方っていうのが、何か少し違うんじゃないかと。
俺の中の理想の陸王から離れていっているように感じたので、一度身を引くことにした。陸王に対する自分の考えを声高に叫んだり、SNSに羅列したりするのも違うと思い、自分なりの折り合いのつけ方が陸王から一度身を引くという決断だったんです」
陸王2024シーズンバトル第1戦(金森隆志 vs 三原直之 in三川・八田原ダム)。この年の陸王は、ルアーマガジン本誌の記事では試合の全貌を公開せず、動画配信で初めて試合結果がわかるスタイルが採用された。
金森「そのあと、ルアマガ編集部と腹を割って会話を重ねていく中で、陸王はまだまだパワーアップしていく、陸王はこれからも進化を続けていくっていう未来や方向性が見えてきた。当然、俺のわがままを聞いてほしかったわけではなくて。
であれば、自分が好きで夢中になれる良い形の陸王っていうのがまた戻ってくることに期待を込めて、一度休んだ人間だけど、まだ戻ってくる場所があるのであればぜひ挑ませてくださいっていうことで、誠に勝手ながら帰って来させてもらいました。俺としては思っていたよりもだいぶ早く復帰することにはなったんだけどね(笑)」
盟友・川村光大郎、そして青木大介との約束。
金森「24年のチャンピオンカーニバルが終わったあと、一緒に競い合ってきた人たちには、賛同を求めるわけではなく礼儀として、今言ったような理由で身を引くということを伝えた。そのとき印象に残っているのは、やっぱり川村光大郎と青木大介の言葉だったなって今思う。
まず、光ちゃんは俺の考えに同調した。そして、『カナモがやめるなら、出る理由がないから俺もやめるよ』って。ちょっと待てと。『俺は同調してくれることを求めていないし、光ちゃんは光ちゃんのスタンスがあるだろうから、よく考えて答えを出して』って。
で、光ちゃんも悩み抜いて、後日俺に連絡をくれた。『ふたりで抜けたら陸王は終わってしまう。カナモは外から見守っていてほしい。僕は選手として陸王に出続けて、内側からこれからの陸王を見届ける。納得がいかないことがあれば内側から声を出していく。僕は内側から、カナモは外側から、お互いこれからの陸王を見ていこう』。
それが、悩み抜いた末に川村光大郎が出した決断であり、陸王への愛だったと思う」
陸王にとってもうひとりの欠かせない存在、川村光大郎。川村さんもまた、変わりゆく陸王について悩んでいた。
金森「そして、青木大介。俺と青木のふたりだけで話したときだったんだけど、『これ、カナモがやめたら光大郎さんもやめるんじゃない? 終わるじゃん、陸王』って。
そしてすぐに『じゃあ俺、終わらせないためにちゃんと(陸王を)やっとくよ』って青木は言ってくれた。『だってこんなの、全員抜けたら終わりじゃん』って。『だってカナモ、帰ってくるんでしょ?』って。
俺は『今後の陸王が良くなれば俺は帰ってくるけど、良くならなかったら俺はここで一線を引くよ』って言ったら『じゃあ終わらせないために俺はここに残っとくわ』ってあいつはすぐに言ったから。
だから、この2人の言葉っていうのも俺の中では大きかったかな。『この2人が陸王に残るんだったら大丈夫。俺は安心して一回外に出よう』って」
青木大介、伊藤巧らもまた、陸王を長年牽引してきた存在だ。写真は陸王2024第4戦 in群馬三沼。
金森「俺だけじゃなくてさ、みんなそれぞれ陸王に対して愛情が深かったり、取り組みの真剣さがあったり、本当にいろんな人たちのスタイル、考え、思い、行動で作り上げられてきたものだから。だから、改めてそういう会話をしていく中で、陸王って良いものであり続けてほしいと思ったし、結果的には1年だけの休憩になっちゃったけど、また戻れる喜びも当然ある。
俺が陸王に戻る理由は、その舞台に素晴らしいアングラーたちがいて、彼らとまた真剣勝負ができるっていうことだけ。それを楽しみにしているから。陸王を通して自分にできる、何かおもしろいことを全力でやりたいなと思っています」
2026年の陸王はシーズンバトルを1戦増やして全5戦+決勝戦で開催。さらに、陸王人気が高まる中国フィールドで川村光大郎さんと伊藤巧さんのエキシビションマッチ(特別戦)も開催する。また、川村さんの対戦相手は陸王チャレンジ2025チャンピオンの新谷健斗さんに決定。
金森「ただね、これも言っておきたいんだけど、ルアーマガジンは何も悪くないし、当然、ルアーマガジンのスタッフはいろいろな事情がある中で、一生懸命考えてやってきたことだから。
当然、選手もスタッフも全員が陸王に対して真剣だから。『これが陸王だ』とか、『こうしたほうがもっと良くなる』っていうところのディスカッションだから。それを経て2026年の陸王が開幕する。そういう意味でもパワーアップの年になったらいいよね。
俺の人生の原点は陸王。本当に。陸王や陸王で出会った仲間たちがあって今の自分があるのは間違いない。まわりの環境やまわりの人たちによって自分の未来って変わっていくから。そう考えたときに、自分のバス釣り人生の分岐点は陸王です。素晴らしい仲間でありライバルに出会えた。そこに尽きる。
それまでの俺は単純にバス釣りをして楽しいとか、でかいのを釣ってどうだとか、そういうレベル。それが陸王と出会ったことによって周囲の環境と自分を置く位置が変わった。それによってより刺激的なこと、自分に足りないこと、自分の長所とかいろんなものが見えてきてブラッシュアップできた。
俺にとって陸王は最高の場所だったし、これからもそうあってほしい。今はそのつもりはないけど、先々、俺たちからその場所をぶん取ってくる若者の登場を期待している。
そこをぶん取れた人は、俺たちが経験したのと同じように陸王が最高のステージとなり、それまでの自分のバス釣り人生が一変する。自分の周囲が変わる。自分が立つ場所が変わる。立つ場所が変われば見える景色も変わる。若く才能溢れる人にがんばってチャレンジしてもらいたいです」
2024年チャンピオンカーニバルの集合写真。ちなみに試合初日の夜は皆で食事をして陸王談義に花が咲いた。ベテランから若手へ、陸王精神は受け継がれていく。※左から金森隆志さん、梶原智寛さん、藤田京弥さん、青木大介さん。
陸王2026シーズンバトル第3戦として、金森隆志さんと木村建太さんの試合を開催。記事や動画に先駆けて、『陸王LIVE』でその模様を最速配信する。※陸王LIVEは画像・テキストコンテンツです。
陸王2026第3戦の模様は7月13〜14日に『陸王LIVE』で最速配信!
金森隆志さんの復帰戦となる陸王シーズンバトル第3戦は7月13〜14日にルアマガプライムの『陸王LIVE』で最速配信! 相手は2021年以来の参戦となるストロングフィッシャーマン・木村建太さんだ。
※陸王LIVE配信後、ルアーマガジン本誌で記事化、ルアマガプライムでの動画配信も予定しています。
※陸王LIVEはルアマガプライムのプレミアムプラン限定コンテンツです。
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