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釣り人は本当に環境の破壊者なのか『サクラマスのラストワルツ』を観て思ったこと【10月9日公開】

今の水辺を取り巻く環境について、イワナという題材から切り込んで話題になった『ミルクの中のイワナ』。その監督を務めた坂本麻人さんが、2026年10月9日、次作『サクラマスのラストワルツ』を公開する。両作品ともぜひ釣り人に見ていただきたい作品。釣り人として環境に何ができるか? そんな自身の芯を構築するのにきっと役立つはずだ。

●文:ルアマガプラス編集部(深谷真)⚫︎写真提供:事務局

前作『ミルクの中のイワナ』そして新作『サクラマスのラストワルツ』

イワナって、実はまだ多くが謎に包まれた魚だって知っていましたか?

源流域にひっそりと暮らすその生態は、長年研究が続けられている今でも解明されていない部分が少なくありません。そんなイワナを軸に、「種を守るとはどういうことか」「地域社会と自然はどう向き合うべきなのか」を、研究者や漁業関係者、釣り人など立場の異なる人々の証言を通して描いたドキュメンタリーがあります。それが『ミルクの中のイワナ』です。その作品の監督が坂本麻人さん。

坂本 麻人(さかもとあさと)大阪生まれ、東京在住。ドキュメンタリー作家・映画監督。ドキュメンタリー映画『ミルクの中のイワナ』(2024)を監督。これまでに死生観をテーマとした映像作品や美術展『END展』では、クリエイティブディレクターを務めるほか、2021年より岩手県・遠野にてスタートした民俗文化をめぐるツアー「遠野巡灯篭木」のプロデューサーとして活動。また、代表理事を務める一般社団法人Whole Universeでは、科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)の研究領域「人と情報のエコシステム(HITE)」のメディア戦略に携わるなど、自然科学・人文科学などの分野を横断したサイエンスコミュニケーションをテーマに活動している。

坂本監督は、自然を単純な善悪で語りません。魚を見つめることで川を見つめ、人の営みを見つめ、私たちが自然とどう付き合ってきたのかを静かに問いかけてきました。『ミルクの中のイワナ』は、そんな作品でした。

その坂本監督が次に向き合った魚が、サクラマスです。10月公開予定の『サクラマスのラストワルツ』は、川で生まれ、海へ下り、大きく育って再び生まれ故郷の川へ帰ってくるサクラマスを通して、再び「魚の物語」でありながら、それだけでは終わらない世界を映し出そうとしています。

今回は公開に先立ち、先行視聴させていただきましたので、ネタバレにならない範囲でご紹介したいと思います。

作品のテーマとなるサクラマスは、ヤマメの降海型。海で大きく育つことで高い繁殖力を獲得し、再び故郷の川へ戻って命をつないでいく、日本を代表する在来魚です。

その力強い生き様から見えてくるのは、「自然が本来持っている力」と、それを私たちはどう受け止め、これからの自然環境とどう共存していくべきなのかという問いです。

作品には17人の識者が登場します。研究者、漁業関係者、行政、地域で川と向き合う人々。それぞれ立場は違いますが、誰もがサクラマスを取り巻く環境を見据え、自らの言葉で語っています。

主人公はサクラマスですが、この作品が伝えようとしているのはサクラマスだけの話ではありません。野生の魚や自然というものは、私たちが思っている以上に強く、たくましく、本来は高い回復力を持っています。その力を人間社会がどう生かし、どう共存していくのか。それこそが、この作品の根底に流れているテーマだと感じました。

これまで私たちは、効率や利便性を優先し、サクラマスが本来持っている力を発揮できる環境を変え続けてきました。しかし、その利便性は本当に今も必要なのでしょうか。環境も社会も大きく変わった今だからこそ、一度立ち止まり、自然との付き合い方を見つめ直す時期に来ている。そんなメッセージが静かに伝わってきます。

この作品を見ていると、現在の釣り人が置かれている立場とも重なって見えてきます。

自然環境の劣化が進むなか、釣り人は外来魚問題への加担を指摘されたり、マナーの問題から地域社会との軋轢を生んだり、ときには「環境の破壊者」という目で見られることさえあります。

しかし、この映画は「自然環境を見守るもの」の存在がいかに重要かを教えてくれます。

釣り人も、その「見守るもの」で本来はあるべきです。

魚を釣って楽しむだけではなく、その変化に気付き、未来へつないでいく。次の世代にも釣りができる環境を残すために、自分たちに何ができるのか。本作品は、その問いを私たちに投げかけてきます。

美しい映像とともに力強く生きるサクラマスの姿には、きっと誰もが圧倒されるでしょう。

これはサクラマスを知るためだけの映画ではありません。自然とどう向き合うべきか、そして釣り人はその中でどんな立場にあるべきなのかを考えさせてくれる作品です。

まっすぐに自然と向き合い、その価値を社会へ伝えられる釣り人でありたい。見終えたあと、そんなことを考えさせられる一本でした。

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