ルアマガプライム

【ガタつきや剛性はどうなるの⁉】最軽量の座奪還を目指した「振り切った設計」の超次元スピニングリールの秘密【独占インタビュー】

【ガタつきや剛性はどうなるの⁉】最軽量の座奪還を目指した「振り切った設計」の超次元スピニングリールの秘密【独占インタビュー】

その存在が発表されて以来、連日話題を呼んでいるアブガルシアのスピニングリール『ゼノンCX』。しかしながら、取りざたされているのは決してポジティブな内容だけではない。尖りに尖ったそのスペックの意図と、多くのユーザーが抱いている疑問に対して、アブガルシアのリール担当・トニー石川氏から直接話を聞くことに成功した。

●文:ルアマガプラス編集部

目指したのは『軽さ』の頂

2021年に鳴り物入りで登場したアブガルシアのフラッグシップスピニングリール『ゼノン』。

それは剛性感を落とすことなく究極の軽さを実現した、まさしくアブガルシアのハイエンドスピニングと呼ぶにふさわしいリールだった。

トニー石川氏

トニー「ゼノン2500で自重148g。これは当時の同サイズスピニングリールのなかでは、他社さんの物を含めて最軽量だったと思います」。

名機・カーディナル33から得たヒントを元に左右非対称デザインの採用やコンパクト化を図り、強度を落とすことなく、極限の軽さにたどり着いていたのだった。

トニー「現状、最軽量は2500番で135gだと思いますが、世界中で軽量化のアイデアが出てきたため、もう一度最軽量スピニングリールの座を狙おうと判断しました」

しかしわずかずつの軽量化戦争では面白くない。社内ではそうした意見が出たという。

トニー「やるならば徹底的に。-5gくらいまでなら、ゼノンをベースに軽くすることは難しくなかったんです。でもせっかくなら完全に振り切ったらどうかって。それで作ったのが『ゼノンCX』。いわばゼノンのレーシングモデルなわけです」

ゼノン2500番とゼノンCX2500番

つまり、スピニングリールのゼノンがモデルチェンジしたわけではないのだ。

トニー「ゼノンはゼノンでこの後も進化していく予定ですし、CXは飽くまでもレーシングモデルであり、ゼノンの派生機の1つという位置付けとなります」。

ゼノンを誰もが扱いやすいファミリーカーだとすれば、『ゼノンCX』はいわばスーパーカーなのだ。

トニー「素材を含め徹底的に軽さを追求したため、値段も上がってしまいましたが、それにふさわしい軽さは追求できました。2500番で118g。どこよりも軽く仕上げることができました。これを超えるのは難しいんじゃないかな?」

他社も真似したくなる⁉『ゼノンCX』の軽さの秘密

ゼノンの時点でその設計思想は軽さを追求する上ではそれまでとは違う次元に達している印象があったが、CXはどのようにして大幅な軽量化を実現したのか。

トニー「一番大きいのはローターとハンドルアームの素材変更ですね。ゼノンのローターはC6カーボン、ハンドルアームはカーボン+アルミでしたが、その両方をFCC(フォージドコンプレスドカーボン)に変更しました。これは長さの異なるカーボン繊維を金型内で加熱圧縮して成形した炭素繊維強化複合素材。これにより、ローターはC6製と比べて約16%も軽量化に成功。ハンドルアームも約45%軽くすることができました」

ゼノンを象徴する左右非対称デザインも極致へと至る。

トニー「ゼノンCXは左巻き専用としています。一般的にスピニングリールはハンドルを左右に付け替えることが可能ですが、その機構をオミット。つまり、付け替えるために必要だった構造分を丸ごとカットして、軽量化につなげることができました。弊社の調べでは、世の中のスピニングリールユーザーの80%が左巻きであるという結果が出ておりまして、その結果を経て決断した設計です。右ハンドルユーザーの皆様には申し訳ありませんが」

ゼノン(左)と比べてボディ本体が小型化したゼノンCX(右)

しかしこの究極の軽さのためなら、右巻き派も左巻きに転向する価値があるというものだ。

トニー「他にも軽量化への工夫は随所にあります。例えばスプール。タービン形状にすることで、断面形状の厚みを減らしつつも、立体構造なので強度を保ちつつ軽くすることができています」

トニー「ハンドルノブには3Dプリント造形を採用しています。EVAに近い触り心地ながらも、3Dプリントだからこそできる強度を残しつつの中空構造による軽量化を実現しています。ちなみに従来のハンドルノブを同梱しているので、お好みで交換してもらうことも可能です」。

トニー「さらにはベイルアームのオートリターン機構もオミットしました。だからゼノンはハンドルを回してもベールは返りません。手動で戻す必要がありますが…多くのユーザーさんにとってこの機構は不使用だったと考えています。なお、固定はマグネットによる方式に変更してあります。オートリターン機構がなくなったことに驚かれる方も多いかもしれませんが、PENNの大型リールではキャスティング時の意図しないベイルアーム戻りによるラインブレイク対策として、すでに手動式を導入しており、これによる明確なトラブルも確認されていません」。

あの問題はどうなったの?ゼノンCXの気になるあれこれ

発表以降、まだ使ったわけではないはずなのに賛否両論が分かれているゼノンCX。その背景には、これまでのゼノンの評価がベースにあることは否定できないだろう。

トニー「ゼノンの時、最初期に取り沙汰されたスプールへの巻き込み問題。実際に使った方からは問題視する声はあまり聞こえませんでしたが、万全を期して対応しております」

トニー「例えばスプールスカートの形状を見直し、ローターとのクリアランスも見直しました。また、ラインローラーの脇には『ロケットスラックガード』と呼ばれる機構を設けています。これにより、竿を立てた状態でラインがたるんでも、ローター下部にラインが落下しにくいようにしているんです。実はこれ、25年以上前に似た機構を同ピュアフィッシングブランドであるシェイクスピアのリールで使用していまして、それを現代版にアレンジしたものです」

初代ゼノンといえば、ワンウェイクラッチの緩みを気にする声が多かった。ワンウェイクラッチとリール本体の間にクリアランスが広くとられており、ハンドルが一瞬逆回転してガタつくという症状だ。

トニー「ワンウェイクラッチは、すでにビーストSPから採用しているのと同様の物を使用しています。もちろん、クリアランスはかなり改善されていますし、-30度の屋外でも問題なく使える仕様になっています」。

ボディ塗装についてはどうだろうか?

トニー「オリジナルモデル同様マグネシウムボディですが、塗装剥がれのようなものは起きなくなっています。これはアブワークスのゼノンmgスプールと同じ表面処理を行っているためです。わずかですが、塗装がないことでも軽量化に貢献していたりもします」。

ゼノンよりもさらに軽いとなると、やはり強度も気になるところだが、そのあたりはどうなのだろうか?

トニー「大幅減量に貢献した、ローターとハンドルアームは特に気にされる方が多いかとも思いますが、これらの強度も全く問題ありません。むしろゼノン時代よりも上がっている想定です。例えばローターであれば、約16%軽くなっていますが、当社試験では強度そのものは43%向上しているというデータが出ています。レーシングカーでは金属の代わりに採用するほどの品物ですからね。これは、カーボンの繊維をランダムに分散させてあらゆる方向からの負荷に対して強くできるのと、積層ではなく熱圧縮によって密度を上げることでも強度を高めているんです。加工難度は高いわけですが、それに見合った性能をもっているのです」。

圧倒的ダイレクト感を生み出した『軽さ』の追求

トニー「ゼノンCXは、日本の市場を意識した製品なんです」

その背景には、日本のバスフィッシングやライトゲーム界隈における、感度至上主義があったのだ。

トニー「そういったことへの要求は欧米諸国よりも圧倒的に高いわけです。では感度はどうすれば上げられるかといえば、やはり軽さでしょうと。軽量化は我々の得意分野ですので、最軽量を目指そうとなったわけです」

そして得られたのは他の追随を許さない、圧倒的なダイレクト感だった。

トニー「ロッドに比べるとリールの感度というのは数字化がしにくいのですが、ここまで軽いとやはり明らかに感じられる情報量が違います。ロッド単体しか握っていない感覚というか、よりダイレクトに情報が伝わってくるんですよね。もとのゼノンの時点でリールの重さはほとんど感じなかったわけですが、今回はそれに輪をかけています。これ以上の軽さはなかなか実現できないんじゃないかと。同じ発想を取り入れるか、それでなかったらスプール径を小さくしたりして番手の基準を改めるとか…それぐらいしかないんじゃないかなと思います」。

そしてそれは、アブガルシア、ピュアフィッシングだからこそ、実現した。

トニー「最初は124gくらいに収まっちゃうかなとも思っていたのですが、ここまで来られました。1オンスの軽量化を目標にしていて、じゃあ何ができるかとなったときに、カーディナルだったり、シェイクスピアだったり、ペンだったり、過去のリールからの知見を基にした歴史が詰まったリールともいえます。それと同時に、フォージドカーボンの採用だったり、ハンドルノブを3Dプリンターで造形してみたりといった現代技術を惜しみなく導入もしている。アメリカ人はやっぱり考え方はぶっ飛んでるし、工場も技術は高いし、日本人ならではの細かさもある。グローバルパワーがあるからこそできたリールなんですよ」

現状、ここまでの軽さを体感できるリールはこの『ゼノンCX』だけ。

それこそ持ってみないと、使ってみないとわからない衝撃的な軽さ。

右巻きの人が左巻きに変えるほどの価値があるという『ゼノンCX』。

もう間もなく発売だ。

ゼノンCX(アブガルシア)

自重(g)ギア比最大ライン巻取(㎝)最大ドラグ力(㎏)ボール/ローラーベアリングラインキャパシティ価格(税抜)
1000S1135.2:1632.310+12lb-100m/PE0.3-120m7万5000円
2000SH1146.2:1802.310+14lb-100m/PE0.6-100m7万5000円
2500SH1186.2:184510+16lb-100m/PE0.8-150m7万5000円
3000SH1246.2:189510+18lb-110m/PE1.2-150m7万5000円

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。