JB TOP50弥栄湖戦準優勝”三原直之”が魅せた非凡な才能【バストーナメント・誇り高き挑戦者たちFILE.2】



DAY3決勝、勝者・青木大介を最後まで追い詰めた若き奇才

6月2日〜4日、国内最高峰・JB TOP50第2戦が開催。舞台となったのは広島と山口の県境に位置するリザーバー・弥栄湖。見事栄冠を勝ち獲ったのは、現代トーナメントシーンにおいて最強との呼び声高い青木大介選手。

エレキ限定戦かつ最高峰戦としては10年ぶりとなる舞台において、3日間トータルで持ち込んだウェイトは何とおよそ14キロ(!!)。ヤサカ、そして青木選手のポテンシャルを再度認識させられた一戦となった。

その模様及び詳細は6月26日に発売されたルアーマガジン8月号でお伝えしている。

今回釣りPLUSでは、その青木選手に食らいつき、わずか713グラム差まで追い詰めた若きリザーバーマスターによる決勝最終日(同船記)をお届けしたい。

その選手の名とは…

三原直之、26歳。難攻不落リザーバー・東条湖の番人

みはら・なおゆき 1991年(平成3年)2月18日生まれ(26歳)、O型。鳥取県出身・兵庫県在住。2015クラシック池原ダムウィナー&生野銀山湖A.O.Y.、2014JBⅡ東条湖A.O.Y.。スポンサー:イマカツ、東レ、リューギ、アウトドアハウス アオノ、東条湖BIGBITE。2017ゼッケンNo.54。*トップ画像は初日。5本5530グラムで単日3位の好スタートを切った。

三原直之選手(以下三原)「昔は弥栄湖って大きな魚、あまりいなかったんですか?」。

第2戦弥栄湖プレビューでは試合直前の2ヶ月間に他フィールド戦で優勝した”勝ちグセ”を持つ4選手にインタビュー。

その一人としてご登場いただいたのが、今季の生野銀山湖シリーズで2連勝を果たし、目下飛ぶ鳥を落とす勢いの三原選手だった。今戦で見事に準優勝を果たしたが、先の言葉からプリプラクティス以前に弥栄湖での経験がないことがわかる。

普段は東条湖のレンタルボート店の雄・BIGBITEでスタッフを務めている三原選手。日々フィールドのリアルをその肌身で感じ、若手ながらも経験値を底上げしてきた。クリアウォーター、特にリザーバー戦に関しては突出したスコアメイクを魅せるのはそんな部分にも秘密があったのだ。

今戦のプリプラは「いつもより短め」の4日間。直前の公式プラまでおよそ2週間のオフリミット期間があるため、多くの選手は未来の水中図を思い描きながらの練習が基本。しかし、三原選手に練習方法を尋ねると、実に興味深い回答を述べ始めたのだった。

「弥栄湖は東条湖ではなく、生野銀山湖に似ている」

今戦最終日に三原選手が使用したのはこれら4つのルアー。1本目を獲ったのはアンクルゴビー2.5インチ(イマエグリーンパンプキンペッパー)の「テールだけで1.3グラムダウンショット」。2本目はギルロイドJr.シェルラミネート(3Dメスギル)、3本目は三原虫(レイダウンシュリンプ)のノーシンカー、4本目はイールクローラー10インチ(イマエグリーンパンプキンブルーフレーク)のノーシンカー。後者2つのワームに、共通点がある。

三原「僕の場合、初めて訪れる湖では、キッカーフィッシュ(=勝利を決める大型魚)はどんなルアーで釣れているのか。まずはローカルベイトを調べます」。

まるで我々一般アングラーが釣行前夜にとる行動にも思えるが、彼が見据えているのは2週間後。現時点で即釣果に結び付くルアーに大きな期待は寄せていない。プリプラでは「ヤサカの魚はスイムベイト(=シャッドテール)を知らんのか!?」と言うほどにグッドサイズが好反応だったというが、飽くまでも「参考程度」に過ぎない。

三原「重要なのはカラーです。(中略)僕の中で大きく分けて『赤ラメ派レイク』と『青ラメ派レイク』があるんです」。

情報をベースとはしているが、そこからは自身が試行錯誤を繰り返す中で、正解を探す過程に入る。水色が影響しているのか、それともベイトなのか、はたまた大型のみに効果的な色なのか。三原選手がどう割り出しているのかはご想像に任せるが、弥栄湖は「青ラメ派レイク」と結果は出た。ベースカラーよりアクセント色を強く意識するようだ。

三原「ただ、アフタースポーン(=産卵後)以降の魚限定です」。

最終日を振り返ると、軸となったワーム3つのうち実に2つが青ラメ系入り。1本目を獲ったアンクルゴビーこそペッパー(=黒)が入るが、三原選手曰く「黒も赤ラメ系の一種」。赤ラメに限らず濃度の高い色がここに属し「産卵後の魚ではなかった」ために色は意識していなかったのだという。対して青ラメはブルーに限らずグリーンやパープル等も含むという。

この言葉から弥栄湖と生野銀山湖は青ラメ、東条湖は赤ラメであることが判明。次戦の開催地に関しては…現時点では伏せておこう。

弥栄湖はエンジン不可のエレキ限定レイク。多くの選手が2基掛け以上で試合に臨んだが、三原選手も例外に漏れず2基。最終日は記者(体重70キロ)同船というハンディを負いながらも他選手と同等以上のパフォーマンスを魅せた。フロントはフットコンで操舵メイン、リアのハンドコンは高速走行用でON/OFFは手に握るコントローラーで切り替え。

弥栄湖戦決勝の幕が開いた…

決勝の朝イチは、巨大噴水裏側の小ワンドへ。「3日間連続のバッティング」という予選暫定首位の青木大介選手がこの日も同エリアに。この直後、強敵の目の前で三原選手は1本目をキャッチ!

弥栄湖戦の決勝は6時40分スタート。最初のエリアにはリアエレキによる高速走行を活かして5分程度で到着。

動力をフロントエレキに切り替え、スローな展開になるかと思いきや、リアとほぼ同等のハイスピードで岸沿いを上流方向へ下流方向へと移動を繰り返す。おそらく傍目から見れば単なる移動途中にしか見えない。

三原「今日は昨日までとは違う…。魚がブレイクラインにおる…」。

三原選手は魚の姿を目で追っていた。2日目までのメインとも言えるこのエリア。まずは魚の状態及び数を確認した上で、その日の戦略を練るということなのだろう。最終日ともなればプレッシャーは極度に高まり、前日まで岸際で「エビを食う」魚も恐れをなしてやや沖側へ離れたようだ。

前日に3本を仕留めたイールクローラー4.8インチ(1インチカット)のネコリグが全く機能しない。視界の端には”青い強敵”の姿も入る。

万全を期したはずのスピニングのラインが、30分の間に2度ものトラブル。不安と焦りが交差する最中のこと、沈黙は破られた。

三原「ヨシッ! ちょっと軽いけど、まずは!!」。

7時37分、背後に”青”の存在を感じながら獲った1本目。

その後、再びハイスピードで岸沿いを回遊。突如、オーバーハング下へと大胆に船体を潜り込ませた。これは故意に一度エレキで岸際の水を濁らせ、時間を置いて再度入る…という戦略か?

三原「いえ、勢い余って突っ込み過ぎました(笑)」。

智者の一失。簡単に言えば、猿も木から落ちる…だった。ここでやや強張っていた表情も一気に解れ、三原選手のメンタルメーターは平常値に戻された。さぁ、ここからが本当の勝負だ!



“寄せ”ではなく、”獲る”ビッグベイト実戦投入! 

最高峰の舞台とはいえ、ビッグベイトを船上で見るのは稀有の出来事。魚の存在を確認すべく使われることは多いが、三原選手は明らかに獲る意志で投入。ギルロイドJr.のベリーフックをガッチリと食い込んだ姿が見える。

三原「昨日(=2日目)、1本でかいのをミスってしまって…。えぇ、ギルロイド(Jr.)です。これだけには反応してくれる魚がまだいるはずなんです」。

予選首位との差は1145グラム、獲っていれば暫定首位で決勝を迎えたであろうその1本。キッカーとして計算できる魚だけに、朝からその姿が脳裏にチラついていたようだ。

フックはピアストレブル#3に換装済み。アゴ下に2グラム程度の板オモリを貼ったチューンド・ギルロイドJr.。触れば確実に獲れる。キャストして巻き始めるや手を止め、しばし待った後に回収。デッドスティッキングなのか、それともフォールで魅せるのか。

3投目のことだったろうか、突如、三原選手のグランドコブラリミテッドが根元から曲がった!

三原「ぜってー獲る! うぅっ…ぜってーに獲ってやる! ヨッシャァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーー!!」

無事ネットインしたかと思いきや的が外れ、一瞬背筋が凍る。しかし、フックがネットに絡む不運もなく、2度目はスムーズに!! 

7時53分、吠えた、湖中に響き渡るかのような叫び。2キロにも迫る魚を天に突き上げた歓喜の瞬間がこれだ。

ファイトからランディングまでの一部始終は、釣りビジョン取材艇からライブ配信。操船&解説を担当した沢村幸弘選手は「そりゃ、アドレナリン出ちゃうよねぇ。(魚を)落とさないようにね!」と親心。

三原「ボトムに置いておくだけで見に来るんです。ベイトに支配されている魚なんで。ヨシ! まだまだこれから! 最終的には下流へ行きます」。

2本で2キロは超えただろうか。このペースでいけばあと3本を追加して5キロ、いや6キロも難しくない。逆転優勝も現実味を帯びてきたか。なぜならこれから向かおうとしているのは「いれば1800グラム以上」という本湖下流域。サイトで狙うことは言うまでもない。

一時は数を稼ぐべく美和エリアへ向かうも反応はなく、再び噴水裏へ戻るも「食いそうな魚がいない」。下流へ想いを募らせ高速移動を開始すると、なぜか程なくしてスローダウン。「ちょっとだけ」と、弥栄大橋下の会場に繋がる岸沿いにある、ちょっとした小ワンドにバウを向けた。

三原「ん? 2本でかいのがおる! うぁっ、マジか…」。

魚を見つけるや1投で食わせるも、まさかのフックアウト。アンクルゴビー2.5インチの虫チューン(白系)から三原虫(レイダウンシュリンプ)へとローテした次の1投、今度は確実に食い込んだ!

9時14分、今思えばカラーの差だったのかとも思える1本だった。

三原虫をガッツリ頬張っている3本目。フォグショット#8が確実に上アゴを捕らえた。試合中ながら、口の中をカメラに向けるサービス精神に感謝。

最終日にして初の場所で2連チャン!! 逆転優勝の予感!?

三原「まだまだ魚はおる! まさかのココでしたね(笑)」。

下流へ向かう道中の閃き。『(場所に)呼ばれる』とはこういうことを言うのだろう。20分と間を置かない9時35分、お次は「ウナジュウ」ことイールクローラー10インチのノーシンカーワッキーで追加。3本目は700弱、4本目は1キロを超えたか。

三原「魚はオーバーハングの下にいる。けど、直接狙ったら食わない。おそらく根元がフィーディング場。どちらも魚より内側、岸際にルアーを入れました」。

三原虫はチョーチン釣りで、その下の水深は30センチ、いや目測で10〜20センチだろうか。鰻重、いやウナジュウに関しては岸際というよりもはや岸そのものに着地させ徐々に…。

丸で示したのが3本目、4本目を獲ったゾーン。もはやそこに水はない(!?)。驚くべき釣り方はルアーマガジン8月号のガレージニュース記事内で詳細解説。ぜひご覧になっていただきたい。

三原「今日は自分らしい釣りができています。あと1本!」。

1本目から4本目まで全て別のルアーで別の釣り方。聞けば、2本目を除き、いずれもホームの「生野銀山湖や東条湖で勝ったことがあるルアーなんです!」と目を輝かせて語る三原選手。

この話を聞いた瞬間、記者は心の中で『勝てる!』と踏んだ。

が、しかし…。

ラスト1時間には、魔物が潜む…

帰着終了1時間前。下流域で「枯渇…」を確認した後に再度、3本目と4本目を獲った小ワンドへと向かう。

12時08分、それまで狙っていなかった岬周りに風が当たっているのを確認するやステルススイマーにバイト…しかし乗らず。

12時33分、4本目と同様にオーバーハング下からウナジュウで掛けた魚をオープンへと誘導して、いざネットイン…の瞬間にロッドは力なく一直線。船縁に姿を見せたのは明らかに50センチを超える巨体だった。

三原「今の…(バラした原因となる)反省点が見つからない…」。

さらに12時37分、もう一度ウナジュウにバイトがあるも、宙を飛んで戻って来る始末…。

魔のラスト1時間。

この間に”青い強敵”は、100メートルと離れていない朝イチのバッティング場で”800グラム”を追加。結果、”713グラム”差で、三原選手が最初にチェッカーフラッグを受けることは叶わなかった…。

次世代のバス釣り界を担う存在に向けて…

最強の男をあと一歩まで追い詰めた三原選手。今年のトーナメントシーンではこれからも要注目の存在だ。

試合が終了した翌日、三原選手は自身のブログにこう綴っている。

三原「青木さんのウェイインを待つ間、なぜかドキドキしなかったんです」。

試合を終えた瞬間、三原選手自身『何かが足りない』ことに気づいていたようだ。その『何か』は科学的に説明できるようなものではない。

今戦の三原選手は、頂点にはわずかに届かなかった。しかし、恐れることはない。その非凡な才能は近い将来、『何か』を身につけ完全に開花するはずだ。

近い将来は、意外とすぐにやってくるのかもしれない。

国内バストーナメント最高峰戦、JB TOP50第3戦「東レ・ソラロームCUP」は、7月7日(金)〜9日(日)に奈良県七色ダムで開催される。全5戦のうちの折り返しとなる重要な1戦だけに、一層注目したい。釣りPLUSでは、今回も開催前日に「直前情報」、各開催日の直後に速報をお届け予定。釣りPLUSでしか読めない「現場からのトーナメントレポート」にご期待下さい!

●JB TOP50の開催情報の詳細はJBNBC公式サイトでご確認ください。

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