バスが移殖された歴史は日本で2番目に古い湖だが、10年ほど前から徐々にでかバスの釣果がクローズアップされるようになり、いまや関東を代表するビッグフィッシュレイクとして人気を博している相模湖。解説するのは、季節問わず同湖のでかバス持ち画像をSNSで発信し続けている、ハンドルネーム『うなぎいぬ』こと大津清彰さんだ。
【Profile】
大津清彰(おおつ・きよあき)
おおつ・きよあき/バスの胃の内容物を調査して(ストマック調査)、ロジカルにゲームを組み立てていく凄腕の持ち主。本職はティムコのルアー開発担当であり、氏の手掛けた『野良ネズミ』が大ブームを巻き起こしたのは記憶に新しい。
狙うエリアの条件
大津「ルアーのテストを中心に相模湖へ通うようになって5年くらい経ちますが、あらためて振り返ると50cm超えを含むいわゆるデカいバスを手にした数というのは2月中旬から3月末くらいまでが圧倒的に多い。そして、このタイミングで攻略のカギを握っているのはなんといってもワカサギです。早春の相模湖において、ビッグフィッシュの本能はバックウォーターへと遡上するワカサギに完全に支配されてしまう。ストマック調査からも、この時期にデカいバスがワカサギを捕食しているのは明らかなのです。
大津「ここでのバックウォーターとは、メインリバー(桂川)の上流に限定されるものではありません。川筋の各クリーク、あるいは本湖の小さなワンドでも、奥にインレットが存在し水の動きがあればワカサギは引き寄せられ、それにつられて各エリアのバスが越冬場から移動を始めるイメージです」
大津「この時期に関しては魚探ではなく目視に頼ることがほとんどで、実際に釣りをしながら見えバスが多いエリアを特定していきます。サイトフィッシングをするわけではないので、バンクにボートを寄せた際など鉢合わせになってしまったり、こちらに気付かれて姿を消してしまっても、どのあたりにバスが多いかさえ確認できればしめたもの。そういう場所は時間を空けて入り直せばいいし、そもそも僕の場合は川筋から本湖まで上記条件を備えたエリアをどんどんチェックしていくので気にしていません」
ワカサギを擬態する2つのキモ
大津「各エリアで具体的な狙い目となるのは、越冬場~バックウォーターの手前にある、ちょっとした張り出しを含む岬状の地形。要はフィーディングスポットですね。そこを、トラファルガー7の放置」
時には30秒放置も! 動かさずにでかバスを水面へと吸い上げる
大津「最初にキャストするルアーですね。i字系のフローティングタイプですが、『動かさない』が基本。ハードルアーならではの質量と存在感、テールの自然なゆらめきで誘います。精度が確保できるぎりぎりのディスタンスからバンク際にキャストして、そのまま15~20秒放置。そこからロッドでチョンと軽くアクションを与えて再び15~20秒放置。そしてチョン。アクションのキモは“気付かれないように動かす”こと。激しく動かすとバスがしらけて戻ってしまうイメージですね。反応がなければ次のキャストへ移ります。
2つあるラインアイのうち基本はフロントを使用。飛行姿勢が安定し、ディスタンスを稼ぐことができる。ロールを強くしたいならリアアイ。さらに移動距離を抑えて誘うならフックのスプリットリングにスナップを繋ぐこともあります」
【使用タックル】
●ロッド:フェンウィックゴールデンウイング60SLJ(ティムコ)
●リール:セルテート2004CH(DAIWA)
●メインライン:UVFタトゥーラセンサー×8+Si2 0.6もしくは0.8号(DAIWA)/リーダー:LDLフロロティペット0.8号(ティムコ)を1m
大津「反応がなければ、次にホバリングフィッシュのホバスト、さらにレンジを下げてスーパーリビングフィッシュもしくはリンキンシャッドのミドストで探っていきます」
次鋒はホバスト。意識するのは1点シェイク!
大津「トラファルガーに対して反応がない、浮いてきてもバイトに至らないようなら、ホバストで一段下を探ってみます。PEラインの浮力を利用し、リーダー(フロロ)の重さで少し沈めるイメージ(1mくらい)。リールを巻くのはラインスラックの出し過ぎを調整する程度で、スラックを活かしつつ移動を極力抑えたシェイク(ホバスト)で誘ってみましょう。フックはホバーショット#3(リューギ)。ウエイトは太さ1mm程度の糸オモリを使用。適当な長さに切り、頭部から挿して動く速さとレンジを調整しています」
【使用タックル】
●ロッド:フェンウィックエイシス61SULJ “Tight Shakin’ Special”(ティムコ)●リール:セルテート2004CH(DAIWA)
●メインライン:UVFタトゥーラセンサー×8+Si2 0.6号(DAIWA)/リーダー:LDLフロロティペット0.8号(ティムコ)を1m弱
さらにレンジを下げるならミドスト。スローながらサーチも担当
大津「ホバストよりさらにレンジを下げる意味合いもあるけれど、ここに挙げたなかでもっとも広範囲を探れるためサーチベイト的にも機能するのがミドスト。重要なのは、着水後のカーブロールと、『〇mをきっちり通す』なんて難しく考えず“適当に”やること。たまにボトムに着いてしまってもそこから浮かせればいいだけの話。そのアバウトさがミドスト本来の力を引き出すのだと感じています」
大津「ロールが出やすく、ボディ内にはらんだ空気のフラッシングを伴ってアピールするのがスーパーリビングフィッシュ。対してリンキンシャッドはジョイントボディならではのナチュラルな動きが特長。誘う要素が明確に違うのでどちらも欠かせません。ジグヘッドはヴェスパ#3(リューギ)、ウエイトは0.6~1.8gでざっくりとレンジを調整しています」
【使用タックル】
●ロッド:フェンウィックエイシス64SULJ “Mid Strolling Special”(ティムコ)●リール:ヴァンキッシュ2500S(シマノ)
●ライン:シーガーR18BASS3lb(クレハ)
ミドストはカーブロールでバイトチャンスを増やす
根がかりロストを解消するミドストの必需品
大津「これらすべてに共通するキモは2つあって、ひとつは中層から上のレンジで誘うということ(ボトムは完全にパス!!)、そしてもうひとつはとにかくスローな操作を心掛けること。ダマしやすさという点では表層に浮かせて食わせるのが理想ですが、バスのレンジが深かったり、活性によっては、ルアーに気付かない、水面までは出切らないケースが当然あり、反応のようすや有無から判断してリグを変え、レンジを下げていきます。放置をはじめ、移動を極力抑えたアクションは、弱ったワカサギを再現するため。
雨が降っている、もしくはその雨で濁りが入ると、デカい個体に食わせられる確率はより高くなるということを付け加えておきます」