バスプロ金森隆志はトラウトプロとの対談で何を得るのか。異種トップランナーのクリエイターズトーク!【金森隆志×菊地栄一】





勝つだけがルアーの本質ではない。

両雄はメーカー代表という立場だが無論、クリエイターとしての一面も持っている。釣り人である以上、むしろ前者は、後者に付随する単なる役職に過ぎない。

クロストークが進むうちに、いつしかテーマは『モノ作り』に絞り込まれていったのは必然だった。

菊地「釣らせること、いや『釣ってもらうこと』。それが、自分の中で“永遠の課題”になっちゃっているんですよね。元々釣り場を作る側から僕のエリアトラウト人生は始まっていることもあって」

エリアトラウトの釣り場をゼロの状態から作り上げ、軌道に乗るまでの間に全ての情熱を注ぎ込んだ歴史が菊池さんにはある。「根本には、常に『誰が使っても釣れるルアー』」。ヴァルケインが熱い支持を受ける理由がそこに。

金森「エリアトーナメントに参戦し始めたのは、どんなきっかけがあるんですか?」

菊地「勝つためというよりは、最先端の情報を得るために出場を始めたんですよ。全国…といっても関東が中心ですが、いろんな釣り場を見ること、どんな釣り方があるのかを知ること。見識を深めて、自分の職場で活かすことが真の目的だったんです」

金森「あー、僕もそこは近しいかも。陸王という舞台に初めて呼んでもらった年に、それまで人と比べられることなんてなかったから、レギュレーションの中で競うことの面白さ、難しさ、歯がゆさを初めて知りましたね。同世代のコーちゃん(=川村光大郎さん)が活躍しているのを見て、絶対に負けたくないと」

菊地「あー、はいはい。その気持ちも、とてもよくわかります」

2008年の陸王スタートから毎年欠かさず参戦を続ける金森さん。最多優勝を誇る川村光大郎さんへの対抗意識は、やはり存在する。

菊地さんはエリアトーナメント、金森さんは陸王。それぞれ最前線の現場で勝つためのモノ作りが根底にあるのだろうか。

否、答えは異なった。

金森「僕は、半々ですね。自分が釣るためだけのルアーって、自己満足に過ぎない。独りよがりのルアーって、趣味のルアー作りと変わらないんで。お客さんも釣れるルアーを作りたいという意味では、菊地さんと一緒。ウチはそこに2つの要素を乗せますね。お客さんが経験したことのない穴を埋めることができる物。もうひとつはそこへ導くパイプを作ることです」

菊地「僕もトーナメントで戦っているとはいえ、コンペティション的なルアーは好きではなく、その状況に合ったものをチョイスしてどうアプローチしていくか、そこを訴えていきたいと思っています」

金森「ズドンと腑に落ちますわ」

菊地「僕は釣り場のスタッフ精神がおそらく誰よりも強い。どんなに魚が入っているからといって釣れない時はあるものなんです。その苦境をどう切り拓いて、導いていくか、ですね。単純に、今エリアでトレンドになっているマイクロ化を追求するだけでは、限界は見えていると思うんです」

実釣中に菊池さんが「ボトムでバンプしてみてください」と金森さんに手渡したのがこの作品『シャインライド(ヴァルケイン)』。「メタル?」「僕らはリップレスミノーって呼びます」「楽しそう!」。面白そう!

金森「バスで言えば、例えば今年のホバスト。おそらくは急激にパワーダウンしていくことになるのは自然の摂理。ひとつの狭い方向だけを見ていると、本当はレギュラーな釣りが爆発する瞬間を見逃してしまう。難しい場所、難しい魚、難しいアプローチでどんどん釣りを難しくしてしまう傾向になりかねないかと」

陥りがちな罠への警鐘。話は現代シーンがもたらす現象へと進んで行った。