ルアーをしっかりと投げてくれるサオ
田辺哲男さんがロッドの開発に携わったのは、大学を卒業し、社会人になってまもなくのことだ。当時、世界市場を席捲していたABUリールの、日本総代理店であるエビスフィッシングで『ミスタードン』を手掛けた。
国内トーナメントの黎明期にあって、トップウォーター、ミノー、クランクベイトやスピナーベイトなどの巻き物、ワーム、ジグ、と使うルアーに応じたレングスやテーパーでシリーズのラインナップを揃える明確なスタイルを打ち出した国産ロッドのはしりだったといえる。源流にあるのは、バスフィッシング発祥の地、アメリカだ。
学生時代に西海岸へと留学、現地のトッププロたちがこぞって使っていた『フェニックス』を日本に持ち帰り、使用していたというから、その時点でもう圧倒的なフロントランナーだったわけである。
田辺さんが持ち込み、国内で爆発的な人気を博した『フェニックス』。投げやすく、魚が寄るロッドだと感じたベテランアングラーも多いだろう。ブランクスはGルーミス製だった。
やがて、田辺さんはエビスフィッシングを退社し、さらなるバスフィッシング修道のため再び渡米。帰国後にティファ社で『フェニックス』やそのブランクスのOEM受託先(当時)である『Gルーミス』の輸入を主導することとなる。
淡水からソルトウォーターまで、ルアー&フライの幅広いラインナップを手掛ける世界的メーカー『Gルーミス』。同社のバスロッドを日本に広めたのも、やはり田辺さんである。
その際、契約のためたびたび足を運んだGルーミスでは、伝説のロッドビルダーにしてフライキャスティングの大家、スティーブ・レイジェフ氏に直接、フライキャスティングの手ほどきを受ける機会があったという。
田辺「フライはほとんどやったことがない。にもかかわらず、その頃の最先端だったIMXカーボンのフライロッドを振ったら、俺ですらバッキングライン(下巻きのイト)まで出てしまったという…。そんなロッド、ほかにはなかったからね。“すげぇな、このサオ”って素直に思った。“そりゃレイジェフが世界チャンプになるわけだ”と。いわばそんな、世界の頂点ともいうべき場所で、俺はロッド作りの何たるかを学んできたわけだよ」
田辺さんの自宅に保管してあったIMXブランクスの4ピースフライロッド。その素材とスティーブ・レイジェフ氏のデザインは秀逸で、“ロッドが投げてくれる”ことを現地で学んだ。
『ロードランナー』を使ったアングラーはみな、ひと振り目にはっきりと感じるはずだ。“投げやすいロッド”だと。
田辺「サオがルアーを投げてくれる。それができなければ、俺にとってはサオじゃない。まずはそこだよ」
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