2関節という斬新な構造でマイキーを作り、ビッグベイトの新世界を創造した濱田禎二さん。それをチューンした躱マイキーでビッグベイト・カバークランキングを確立した川島勉さん。本質と深奥を知る2人のジョイント・トークが実現。なぜルアーをジョイント化するのか? その本質に迫る!
【Profile】
川島勉(かわしま・つとむ)
関東でもっとも人気の高いメジャーリザーバー・亀山ダムのスーパーロコとして知られていたが、ジャッカルプロスタッフとして「自己満足のルアー」をプロデュースするや瞬く間に機能と釣果が拡散、その名を全国へと轟かせた。本職は美容師さん。
【Profile】
濱田禎二(はまだ・ていじ)
唯一無二のルアーを生み続けるファクトリーメーカー・T.H.タックル代表にして、多くの著名アングラーに愛用されているギル型ベイトの金字塔『ゾーイ』の生みの親。トーナメントプロとしても活動しており、JB最高峰カテゴリーでの優勝経験も持つ。
ジョイントの役割――“ジョイント”についてお聞きします。その構造を採用することによる最大のメリットは何だと感じていますか?
濱田「いろいろありますよね…それぞれのルアーで役割も変わってきますし、あまりにも奥が深いたとえば、デッドスティッキングでも動くようにするには、関節部分にできるだけ負荷がかからないよう浮き姿勢を調整する必要があります。前傾もしくは後傾だと、その時点でジョイント部分に抵抗が働くから動きづらくなってしまうので。一方、ジョイントゾーイなどは、まっすぐ泳がせるため巻いたときの動き出しを抑制したいので、テール側を重くして絶えずジョイントに負荷をかけた状態にしています」
濱田「こんなふうに、ジョイントとひとくくりにしても目的が違ってしまうんですね。ナチュラルに動かすためのジョイントもあれば、あえて動きを矯正するためのジョイントもあるんです」
川島「作るルアーによって、ジョイントの意味が変わってしまいますよね。ひとつひとつのルアーを取り出して、『このルアーのジョイントはこんな役割を持たせています』という説明はできるけれど…」
――では濱田さんにお聞きします。i字系であるゾーイを、ジョイントゾーイにした理由というのは?
【Spec】
●全長:91mm
●重量:33.5g
●タイプ:スローシンキング
本物のブルーギルから型を起こしたリアルベイト。ボディの両サイドにフェザーフック、テールフックにはラバー、腹部にはブレードを装着し、口を使わせる、掛けるを追求した、T.H.タックルの代表作とも言うべき逸品である。
濱田「オリジナルのゾーイは、使う側にある程度のレベルを求めてしまうルアーなんです。動きが破綻するぎりぎりスピードを意識して使わないと、その性能を発揮しづらいと言いますか…ジョイントになっていれば、ちょっとスピードを速めても泳ぎきってくれるんですよ。あと、ロッドワークでアクションをつけやすくなる。アングラーの好みにもよるとは思いますが、いわばゾーイをマイルドにして扱いやすくしたのがジョイントゾーイなんです」
【Spec】
●全長:93mm
●重量:36.5g
●タイプ:スローシンキング
川島「ガンタレルもそうです。あのサイズ(160mm・70g)でジョイントがなければ、アクションを与えるのはひと苦労ですよ」
【Spec】
●全長:160mm
●重量:70g
●タイプ:フローティング
――川島さんがジャッカルでプロデュースしたハードルアーはジョイント搭載率が高いですよね。それはやはり、操作性の高さに起因しているのでしょうか?
川島「もちろんそれもありますが、正直、マイキーの影響がかなり大きいですね。ジョイントという構造自体の魅力にとり憑かれてしまった」
川島さんが初めて亀山ダムで60アップを手にしたときのヒットルアーはジョイントをひとつ増やしたサイレントキラーだった。川島「動きをよりナチュラルにしたくて。マイキーの影響も少なからずあったと思います(笑)」。
川島「ワシマイキーの次に関わったのがボイルトリガーなんですが、まず、ジョイントのポッパーって世の中にないじゃないですか(笑)。あと、このルアーは横向きで水面に浮くんですが、ボディをまっすぐにして浮いている小魚って死んでしまった状態だと思うんです。弱ったワカサギは横たわりつつもテールが下がっていて、なんとか泳ごうとする。そのほうがフッキングも良いし…。自分の周囲の亀山界隈では、『ジョイントがあると動きがナチュラルだよね』っていう人が多くなっていった。それもやっぱり、マイキー以降ですね。ジョイントそのものが、アングラーに釣れるルアーだという認識を与えてくれる。バズベイトのスクイーク音と同じで、それが自信となって投げ続けられる」
【Spec】
●全長:77mm
●重量:5g
●タイプ:フローティング
作り手側の視点
濱田「結局、釣り人が動かすと、ルアーより先にラインが動いたり、魚に見切られる要素が増えてしまうじゃないですか。とくにバスがスレてくると顕著で、アングラーが意図して演出できない自発的な動きというのが口を使わせるきっかけになることもある。1ヵ所でも自然に動いていれば騙せたり。そのひとつがジョイントであり、ラバースカートなんかもそうですよね。じゃあ、そういった構造やパーツをどうやってルアーに盛り込んでいくか…」
川島「自分の場合はニュアンス派で、こういうふうに動いてくれたらいいなというところが出発点だったりするから、イメージを伝えて実際に形にしてもらっても使ってみるまでどんなふうに動くのかがわからない。だから完成まで時間がかかってしまって、ジャッカルの開発スタッフさんに迷惑をかけてしまうことも多々…」
濱田「でも、ルアー作りってそういうものじゃないですか。僕なんかも、理屈から頭でイメージしても、思ったとおりに動いてくれない、機能してくれない、なんてことはしょっちゅうですから」
――お二人が作るルアーを、これからも楽しみにしています。ありがとうございました。
濱田&川島:おつかれさまでした。ありがとうございました。
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