バス釣り職業見学させてください!【レイドジャパン社長&プロアングラー 金森隆志】



20年以上に渡り、岸釣りアングラーとして確固たる地位を築いている金森さん。様々なメディアやイベントで活躍するほか、彼はレイドジャパンの代表取締役という顔も持っている。

「一生バス釣りしたいから、会社を立ち上げました」

【Profile】

金森隆志(かなもり・たかし)

岸釣りを中心として活動を続けている超人気プロアングラー。レイドジャパン代表取締役社長でもある。40歳。

Q.会社を立ち上げた経緯を教えてください。

A.「仕事としてずっとバス釣りに携わりたかったからです」

かれこれ20年ほど前からプロアングラーとして活動していたけど、メーカーと組んでプロアングラーとして活動するのみだと必ず限界が来る。年齢を重ねるたびに体力が落ちて気力も落ちがちになる。これは抗えないことです。万が一事故が起きて、思うように動けなくなる可能性もあります。

それと結婚や家庭を持つことを考えると、釣りばっかりできるとも限らない。そういう変化に対して、プロアングラーとして生きていくにはリスクが大きすぎます。仕事として一生バス釣りと関係を持つにはどうすればいいかを考えた結果、レイドジャパンという会社を立ち上げることになりました。正直、たいした学歴はありません(笑)。だけどこの業界で生き残るために必要なことは何か、というのは起業する前に長い時間をかけて考えました。

岸釣りに特化したアイテムを多数リリースしているレイドジャパン。2011年に創立され、今年で11年めを迎えることになる。

Q.最初に発売したのはロッドでしたが、その理由を聞かせてください。

A.「僕が常に気にしているのは『時代』なんですよ」

会社を立ち上げた頃は、時代がいろんな意味で変わりかけてました。バス業界が伸びていく途中、例えば20年前ならルアーを作って売って会社を大きくしていくのが常套手段だった。でもその手段を当て込んでも、後発の人間が何ができるんだろうと。

あの頃思ったのは、時間をかけたら会社が成長できないし、この世界で長くやっていきたいという思いが摘まれるだろうなと。だからリスクは高いけどシンボリックなもの、ロッドに対してアプローチしていかないとダメだろうなと。高額なものを好んで買ってくれるお客さんが一定数いれば、単年で会社を成長させられる。そうすればお客さんに対してもっといいものを提供できる。

例えばダッジは開発に5年かかりました。開発当初のプロトタイプと製品は全然違うものになりましたが、徹底的に時間をかけて納得のいくものを出すことができました。それもロッドによる売り上げが確保されていたからです。

現在はアンチやマキシマムに、グラディエーターの名が受け継がれている。どちらのシリーズも多くのファンに愛されている。
レイドジャパン初のアイテムは岸釣りに特化したロッド、グラディエーターシリーズだった。発売後、絶大な人気を博したのはご存知の通り。

Q.社長としての仕事を教えてください。

A.「社長業らしいことはしてません(笑)」

社長は覚悟と責任さえ負えれば誰でもできると思います。社員の生活を預かる責任や、会社の舵取りの責任です。世の中の変化を見て、会社はこっちに行くべきだとかこっちのほうが面白そうだとかを判断するのが仕事です。社長はいろんなことができないと、頭のいい人じゃないとダメかなと思ってたけど、僕の場合は皆さんのお力添えで的なことで全然やれるなぁと。やってみて、今もなおそう思います。

僕の考えたことがすべてじゃなくて、僕のアイデアに関して社員が力を貸してくれて、1のものを10、10のものを100にするというのがレイドジャパンの根幹です。会社というのはチームで、監督である社長が右往左往しちゃダメだと思います。これはバス釣りと同じ考えで、それぞれのルアーごとに役割があるのと同じで、僕がものづくりに特化してたらデザイナーはいらないし、帳簿がつけられれば経理スタッフはいらないんですよ。それぞれの社員に役割があって、それぞれが得意分野で実力を発揮してほしいと思ってます。

社長が足りていないところを社員が補ってくれてます、とは金森さん。「会社にいるときの俺は価値ないよ、といつも社員に言ってます(笑)」

Q.どういう人と仕事をしたいですか?

A.「この分野に関してはコイツしかいない、みたいな人です」

採用に関しては僕が全部やってます。定期的な採用はないけど、この分野に関してはコイツしかいない、みたいな人と仕事がしたいです。レイドジャパンが好きです! っていう人はたくさんいるけど、好きが先行しすぎると仕事にならない。好きだということと仕事を区別できて、なおかつ仕事をやり続ける力がある人ですね。

実は面接で採用した人は1人もいなくて、「アナタが欲しい!」と僕が声をかけることがほとんどです。いい仕事をしてる人って目に留まったり耳に入ってくるんですよ。業種が違っても、極論いうと居酒屋でも声をかけることがあります。「目配り気配りすごいね! うちで働かない?」みたいに(笑)。あとは僕と世代交代してくれる、若くて才能あふれる天才アングラーを常に待っています(笑)。

「採用に年齢は関係ない」という金森さんの言葉どおり、分島さん(写真手前)は40代後半でレイドジャパンの営業スタッフとして入社した。奥は経理担当、レイドジャパンの紅一点坂本さん。


Q.レイドジャパンの社員数を教えてください。

A.「全部で13人です」

僕が社長で、ナンバー2が岡(友成)です。その下に開発や営業部門が連なってます。デザインというのはウェブやロゴ、ルアーのパッケージなど、レイドジャパンのビジュアル面に関連するすべてを任せてます。

「バス関連のメーカーでは、会社の規模は小さすぎず大きすぎずという人数かなと。開発や事務関係に長けた人を増やしたいです」と金森さん。
ユーチューブなどの実釣動画は最近、自社スタッフが撮影や編集を行なっているという。「机にスピニングリールが置いてあるでしょ? みんなバス釣りが大好きなんですよ」

Q.アトラスジャパンとの関係について教えてください。

A.「レイドとDUOとヴァルケインの営業部門と流通を受け持つ会社です」

以前誌面でもお伝えしたように、アトラスジャパンの立ち上げにも金森さんは関わっている。

金森「今後は営業面を強化したいという判断が自分の中にあって、だけど求人をかけて営業マンをたくさん雇おうという考えはなかった。営業マンのパフォーマンスを考えていくと、コストの方が高くなると思います。じゃあ、レイドジャパンと関連する会社でコストを割った方がいいんじゃないかと。即戦力となる営業のスペシャリストを何人か雇って、それを従来の半分以下のコストで回していける。流通面にしても同じ考え方です。アトラスジャパンは去年4月に立ち上がって、計画通りのパフォーマンスです。仕事もバス釣りと同じで、釣るための工夫をやめちゃうと安定感のあるものに居座ってしまうので、常に新しいアプローチをするのが意味があるのかなと思います」

ヴァルケイン代表取締役社長の菊地栄一さん、デュオ代表取締役社長の安達政弘さん、レイドジャパン代表取締役社長の金森隆志さんによるアトラスジャパン設立記者会見が昨年3月に行われた。営業コストや物流コストが圧縮できるので、各社が製品開発により注力できるというメリットも。

Q.取材以外にも時間があれば釣りに行くそうですが…。

A.「答えは現場にしかないと思ってます。Keep it 現場!」

僕のものづくりは現場に当て込んでいくんですけど、ストレスとコンプレックスがキーワードです。まずは釣り人として興味があるので、色んなルアーを買って使ってみる。「これ、いいなぁ」と使っていて思うのがコンプレックス。コンプレックスだけで終わったら、そのジャンルには手を付けません。具体的に言うとジョイクロに代表されるS字系や、ブルフラットなどのフラット系ワームです。両者ともに完成度が高いので、「こうだったらいいのに」というストレスがない。それを基準に自分の作りたいものが完成すれば、求めてくれる人もいるんじゃないかなと思います。

あとはフィールドの「今」を常に見ることも大事だと思います。最近怖いと思うのが、何もやってないのにネットで調べただけで体験したり得た気になってることです。実際に体感するって別次元じゃないですか。だから、僕がやることは現場に出てリアルを体感することかなと。こういう感じでみんな遊びに来るんだとか、意外とこういう釣りが流行ってるんだとか、そういうことを確かめたい。メーカーの社長が現場の雰囲気を常につかんでいることは、レイドジャパンという会社全体にフィードバックされていると思います。

ロケの場合は朝早くから1日中集中して釣ることを最優先でやりますけど、普段は偏りをなくすためになるべく違う場所に足を運んでます。最終的な答えはバスしかくれないと思うから、これからも釣り場に通い続けるつもりです。

拠点とする岡山周辺のフィールドに、時間があれば足を運ぶという金森さん。「今の釣り場を昔と比較して考えて、その中でルアーやタックルのテストをして、もっとこういうふうにしないと釣れないとか、楽しくないなと判断しています」
何気なく立ち寄った池で、開発中のフィッシュローラーマイクロにヒット。今年初のロケで初フィッシュ、縁起がいい1本!
「このサイズまで下げると、ファットウィップでも乗らないバイトがちゃんと食い込むようになる。釣り場に足繁く通って、自分でそれを検証できるのは大きなアドバンテージです」

Q.収入について教えてください

A.「社長が給料を取りすぎないように」

レイドジャパンには経理には血縁関係の人間は入れてません。アトラスジャパンの社長という仕事もあって、そちらの月収は…(計算機を叩く)。プラグ1,851個分ぐらいでしょうか。

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!

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